副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
今からもう楽しみです。帯島ちゃんや弓場ちゃんや生駒さんの声優は誰ですかね?
「せりゃあ!!」
優佳の威勢の良い声と共に弧月が振り下ろされモールモッドの弱点部分を破壊する。
「姉貴!」
「あいさぁ」
優佳の後ろにいた勇人が、優佳に声をかける。それだけで勇人のすることが分かったのか、優佳は後ろに跳ぶ。跳んだ先には勇人が出したグラスホッパーがあり、それを着地と同時に踏んだ優佳が、倒したモールモッドの奥から迫るバムスターに向かって跳び上がり、弧月を斬り上げてバムスターを仕留める。
「よっ、と」
優佳が弧月を鞘に戻しながらきれいに着地する。
「ハウンド」
着地してすぐに今度はハウンドを出して、まだやって来るトリオン兵たちに向けて撃つ。そしてハウンドでトリオン兵たちの動きが止まった隙に鞘に収めた弧月に手を添えて
「旋空弧月」
旋空によって間合いの伸びた居合斬りで、動きの止まったトリオン兵を斬る。それでも仕留めきれなかったトリオン兵たちが、優佳に向かっていくが、横の家の屋根に移動していた勇人のハウンドが、横合いから飛んできてトリオン兵たちを仕留めた。
『今倒したトリオン兵でとりあえず近くの敵は片付いたみたい』
二人の元に冬華からの通信が入る。優佳と勇人は念のため周囲を一度見まわしてから弧月を鞘にしまって一息つく。
『わかった。ありがと、ふゆちゃん』
『とりあえずこれでひと段落だな』
『うん、そうだね』
『ふゆちゃん大丈夫? 緊張してない? ほらリラックスリラックス』
冬華の声がいつもと違うのに気付いた優佳が、緊張をほぐすように冬華に言って深呼吸をして見せる。
『そうですね』
冬華も優佳に倣いPCから手を放して大きく深呼吸をする。冬華の深呼吸が通信を通して二人に聞こえる。冬華の幼いころからのそういった真面目さを知る西峰姉弟は、きっとラジオ体操のように手を広げて深呼吸しているのだろうと想像して思わず笑みをこぼした。
冬華がボーダーに入隊し、新たに部隊を組んだ三人は、部隊としては初めての防衛任務に出ていた。そして運悪くその防衛任務中に大規模侵攻が始まり、警戒区域外に行こうとする無数のトリオン兵たちの対処に追われていた。
『冬華、東さん達との合流ポイントまで後どのくらいかわかるか?』
『うん、もう少しみたい。もうすぐそこまで東隊も来てるから合流できそう』
その時だった。東隊のいる方向から、何かが住宅を破壊しながら、ものすごい速さでこちらに迫ってくる音がした。
「勇人、警戒!」
「ああわかってる」
2人は迫る何かに警戒して孤月を構える。
横の家を突き抜け、そのまま向かいの家に突っ込んで行ったのは、東隊の奥寺だった。
「え!? 奥寺先輩!?」
「に、西峰か……」
奥寺はダメージは負っていないが吹き飛ばされた衝撃で動けないようで、それを助けに勇人が近づく。
「奥寺先輩、大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫だ」
奥寺が勇人の手を借りて立ち上がる。
すると、奥寺が吹き飛んで来た方向からドンッと大きな銃声が二回聞こえベイルアウトの軌道が空に走った。
「新型……そうか、そういうことか!」
戦闘中の各部隊やレプリカからの情報を見ていた夏樹が呟く。
「どうかしましたか夏樹君?」
横で同じく情報を見ていた相川が、不思議そうに呟いた夏樹の方を見る。
「戦力を分散させた敵の意図が読めなかったんですが、隊員を分散させたところにトリガー使い捕獲用の新型を出したってことは……」
「敵の狙いは正隊員ということですね。敵の分散に対応して私たちが分散したところを新型が捕獲するつもりのようですね」
「ええ、おそらくは。まぁ俺らボーダー隊員が新型に気を獲られてる間に、他のトリオン兵で街を襲うつもりかもしれませんが……」
(いや……待てよ。何か違和感がある。腑に落ちない……何かを間違えている気がする……)
そう思った夏樹は、机の端に置いてあるチョコバーを口に入れて、目を閉じて
「夏樹君?」
横にいる相川が不思議そうに話しかけるが夏樹は、それに返事もすることなく自分の頭脳をフル回転させ、頭の中で自分の考えを整理していく。
(今回の敵の特徴は……)
(ボーダーの戦力は……)
(敵はこっちのことをどれだけ知っている……)
(俺が敵なら何を狙って、その狙いのためにどう動く……)
頭の中で次々と自問自答していき、頭の中にぽっかりと開いた穴を埋めるように、違和感の正体というパズルをピースをはめて完成させていくようにして違和感の正体へと迫っていく。
(俺は何を無意識に気付いたんだ……)
(新型のことか? ……いや違うな。新型がどうのこうのは問題じゃない。極論ボーダーなら
夏樹は無意識の中にあるソレに、絡まった糸を解いていくように迫っていく。
(ん? 待てよ……敵はラッドを使っていたはず。確かラッドはゲートを開くように改造されたものだったが、元々は隠密偵察用のトリオン兵だ。ならイレギュラーゲートの時の偵察で、俺らに
夏樹は思考を止めて、自分の世界から出る。
「あっ! 夏樹君、大丈夫ですか? 急に黙り込んでしまって心配しましたよ」
夏樹の動きに気づいた相川が声をかける。相川の手にはカップの乗ったお盆があり紅茶のいい香りが漂っている。
「すいません、少し考え事を……」
「考え事ですか? ……なら、よろしかったら私にも教えてもらえますか? 一緒に話し合えば、分かることがあるかもしれませんわ」
相川は紅茶の入ったカップを夏樹に渡し、椅子を回転させて身体を夏樹の方に向けて話を聞く姿勢をとる。
「そうですね。じゃあお願いします」
夏樹は今考えていたことを話した。
「なるほど
「そうですね……はっ!! そうかC級だ。いやでも……あぁまさかあの時か!」
相川のC級隊員を心配した考えを聞いた夏樹の頭の中に電撃が走り、ある一つの推測が浮かんだ。
「どうかしたのですか?」
「葵さん、今戦闘に出ている三雲君に通信を繋いで貰えますか? 少し聞きたいことがあって」
「わかったわ。少し待っていて」
相川は自分のPCに向かい、機器を操作して夏樹と三雲の通信をつなげる。
『佐藤先輩、どうかしましたか? 僕に聞きたいことって?』
「突然で悪いが、こないだの三門第三中のイレギュラーゲートの時、お前トリオン兵に一度倒されたりしたか?」
『はい。あの時は僕がやられてしまったので、僕のトリガーを使って空閑がネイバーを倒しました』
「つまりお前はトリオン兵に戦闘体を破壊されたんだな?」
『はい、そうです』
『なぁ佐藤先輩、一体どうしたの?』
三雲と一緒にいる空閑が不思議そうに聞いてくる。
「少し確認したくてな。ありがとな三雲、これで確信が持てた。気を付けてな。空閑も」
『はい! ありがとうございます』
『先輩も気を付けてね』
三雲との通信が切れる。夏樹は次に忍田本部長に通信をつなぐ。
「忍田さん、佐藤です。敵の狙いが分かりました。狙いは避難誘導中のC級隊員です」
『佐藤、それはどういうことだ?』
「敵は、第三中でのイレギュラーゲートの時、ゲートを開けたラッドを通して、三雲君の戦闘体が破壊されるところを見た可能性が高いです。それによってC級隊員に
『なるほど、確かにその可能性は高いな。……よし、夏樹は基地東部に向かってくれ。そこで風間隊と合流して防衛にあたってくれ』
「了解です」
『頼むぞ!』
忍田さんとの通信が切れる。
「じゃあ葵さん、俺は指令通り東部に向かいます。オペレートお願いします」
「ええ、任せて! 夏樹君も頑張ってね」
「はい、ありがとうございます。それじゃ行ってきます」
夏樹は隊室を出て、外へと向かった。
そこへ通信が入る。戦闘中の全部隊に、敵の狙いが恐らくC級隊員であることが伝えられ、新型に遭遇して捕獲されそうになった場合は無理せず
『なるほど敵の狙いはC級だったか』
「さっきのなつき先輩の質問はそういう事だったのか」
レプリカと空閑はそれぞれ納得したように話す。
「僕のせいだ……いやそれより今は千佳たちだ! 千佳たちが危ない!」
三雲はチームメイトの千佳に避難するように言ったことを後悔していた。
「どうするオサム? チカのとこに行くか」
そしてその三雲の様子を見ていた空閑が千佳の元に行くかと提案する
『B級隊員には全員速やかに合流するよう指示が出ている。どうやら一か所ずつトリオン兵を排除していくつもりのようだ』
「一か所ずつ……!? じゃあその間他の場所……千佳たちはどうなるんだ?」
『トリオン兵の排除は避難の進んでいない地区を優先するとのことだ。避難がスムーズな千佳たちは後に回される可能性が高い』
「そんな……」
ドンッ!!
三雲達の話を遮るように轟音がして、その音と共に近くの建物が崩れ、中から新型が姿を現した。
「目標沈黙!」
新型が動きを止めたのを確認した嵐山が報告する。
三雲たちの目の前に出現した新型は、空閑の
「あれ? 空閑君そんな恰好だったっけ?」
「例の
「下りてないけど、非常時なもんで」
まだまだやって来るトリオン兵を前に話をしている自分の部下と空閑たちを尻目に見ながら、嵐山は本部に新型撃破の報告をしようと通信を試みる。
「本部! こちら嵐山隊! 新型を一体排除した! トリオン兵を減らしつつ次の目標へ向かう!」
『…………』
「……? 本部……?」
報告をした嵐山に帰ってきたのは、次の指示でもよくやったの一言でもなくノイズだけだった。嵐山はそれを不審に思い、耳を澄ますと、ノイズ以外の言葉が聞こえてくる。
『……砲で……迎撃……近……』
通信から断片的に不穏な言葉が聞こえ、嵐山たちは本部の方を見た。
「あれは……!」
「爆撃型トリオン兵……イルガー!」
嵐山たちの目に映ったのは、三体の爆撃型トリオン兵イルガーが、本部基地の砲台に迎撃されながらも本部基地に向かって自爆モードで突っ込んでいく様子だった。
本部に向かって飛ぶ三体のイルガーの内の一体が、本部基地の砲台で撃墜されたが、残りの二体が本部基地に直撃して、本部基地の一角を覆うほどの爆発が起きた。
「基地がやられた……!?」
「いや……」
その光景を見ていた三雲が思わず呟くが、その呟きを爆発を喰らいながらも未だ無事な本部を見た嵐山は冷静に否定した。
「今度は4体も……!?」
追い討ちをかけるようにさらに3体のイルガーが本部へと特攻していく。本部は先頭の1体に砲台の狙いを集中して撃墜する。
「1体は墜としたな」
『だが、まだ2体残っている』
レプリカが言ったように先頭の1体は堕ちたが、後続の2体は依然本部へと特攻を続けていた。だが本部の砲台は砲撃を止めてしまっていた。もう間に合わないと嵐山たちは最悪の事態を覚悟した。
その時だった。
本部の屋上から光の柱が伸びて、縦列で本部へと特攻していくイルガー2体を貫いた。
「爆撃型2体撃破。葵さんデータの方はどうですか?」
夏樹は膝射の姿勢から立ち上がった。手にはアイビスやイーグレットの様に実銃をモデルにしたようなものではない、ライトニングのようなSFチックで、ゴツゴツでメカメカなライフルが握られていた。
『大丈夫よ』
「そうですか。なら良かったです」
『いや〜すごかったね、それ。アイビス改って言ってたけどビームじゃん、ビームライフルじゃん』
「だな。それにしてもなんちゅう威力だ。爆撃型って装甲が硬いんだったろ」
夏樹と同じくイルガーを落とそうと屋上に登ってきた太刀川とその隊のオペレーターである国近が、さっき夏樹が放ったライフルの威力に驚いている。
「それは自分も驚いてますよ」
夏樹がイルガーを落としたのに使ったアイビス改。これはイレギュラーゲートの際に出現したイルガーなど、重装甲の大型トリオン兵に対処するために試作されたもので、入隊日に起きた防壁ぶち抜き事件の詳細を知った鬼怒田開発室長が、アイビスを更に高火力にしたものを思いつき、更にそこに「高火力?ならビームでしょ!」という、どこぞの徹夜続きの開発室チーフの発言によって、出来上がったものである。
『よくやった夏樹! お前はそこにいる慶と、新型の相手をしながら避難誘導をしているC級隊員たちの元に向かってくれ。夏樹が東側、慶が南だ、良いな。トリオン兵はそれぞれ風間隊とB級合同部隊が対処する』
忍田本部長から次の指令が下った。
「佐藤了解」
「了解、了解。なぁ夏樹、どっちが多く新型を倒したか競おうぜ!」
「いいですけど、まじめにやってくださいね」
「わかってるって。それじゃ!」
太刀川は南側に向かい、屋上から飛び降りていった。
「葵さん、東側の地図とトリオン兵の位置を視界に出してもらっていいですか」
『わかったわ』
夏樹の視界の端に情報が表示される。
「とりあえず早めにC級隊員のとこに行った方が良さそうなんで、一直線に向かいますか」
『トリオン兵は?』
「まぁ見ててくださいよ」
夏樹はそう言うと屋上から飛び出す。
「セットスイッチ!」
〔 トリガーセット切り替え
落下中の夏樹の身体にトリガーを起動したときのような光が走る。
「グラスホッパー」
ある程度の高さまで落ちた夏樹はグラスホッパーを出して、東側で避難の遅れているC級隊員の方向へ跳んだ。
「バイパー」
そしてグラスホッパーを踏んだ直後にバイパーを出して、地上のトリオン兵たちに対して放っていく。そしてまたグラスホッパーを出して、それを踏んだ直後にバイパーを撃つ。これを繰り返していく。
「これである程度は削れると思います」
『そうね。でもトリオンは大丈夫なの?』
「タンクにはまだまだ余裕があるんで大丈夫ですよ。それこそさっきのビームを連発しても大丈夫なくらいには」
『そう。なら安心ね』
夏樹はトリオン兵を倒しながら一直線にC級隊員の元へ向かっていく。その姿を上空からトリオン兵が見ていた。
SF映画の宇宙船のような雰囲気のある空間。そこには会議室のように机と椅子があり、椅子には男女七名が腰掛けてそれぞれの目の前に浮かぶディスプレイを見ていた。ディスプレイには夏樹がイルガ―をビームで墜とした映像が流れている。
「今の攻撃は……まさか黒トリガーか……!?」
この集団のリーダー格なのか、議長席に座っている側頭部から黒い角が生えている男が、夏樹の攻撃を見て驚きを露わにする。
「いえ、黒トリガーではありません。反応は通常トリガーのはずですが……この数値は……」
映像に加えて墜とされたイルガーの計測機器の数値を見ていた、一番下座に座っている額から二本の黒い角を生やした女が、男の考えを否定する。
「「金の雄鶏」というわけか……作戦変更だ。ランバネイン、エネドラ、お前たちは予定通りに門で送り込む。玄界の兵を蹴散らしてラービットの仕事の援護だ。だが無理をする必要はない、あくまで戦力の分断が目的だ。危険な場合はミラのトリガーで回収する」
「あぁ?危険だと? オレが玄界のサルなんかに負けるわけねーだろ!」
リーダー格の男の命令に対して納得がいかなかったのか、リーダー格の男から見て右側の上座に座る片目が黒く染まった男が、リーダー格の男に突っかかる。
「以前の偵察の時の奴は確かにトリオン量は多かったが、あそこまでの反応は出ていなかった。おそらく消耗を抑えるために、トリガーか何かで制限していたのだろう。なら今の奴は消耗するのが早いはずだ。奴が消耗したら仕掛ける。ヴィザ、トモエお前たち二人は、その時に他の玄界の兵たちの邪魔が入らない様に相手をしていろ。ヒュースは「金の雄鶏」を街の方へ誘いだせ。そうすれば奴は街を守るために、脱出装置を使って逃げることはしないはずだ」
男の文句を無視して、リーダー格の男は作戦を伝える。
作戦を聞いたこの集団の中で唯一角の生えていない老人と白の長い髪と他の人よりも長い黒い角を額に2本生やした女が頷く。
「もしかすればここで新しい神を拾えるかもしれない」
そう言うと男は再びディスプレイに映る夏樹へと目を向けた。
夏樹の元へ運命の分岐点が迫っていた。
アフトクラトル勢に一人新キャラがいますが、他作品キャラです。そのキャラを知らなくても大丈夫なようにはします。
大規模侵攻編が終わったら、夏樹の新しいトリガーのセットや、オペレーター相川葵と新キャラの設定などを書いて出そうと思っています。
誤字報告ありがとうございます!
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