副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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お待たせしました!!

気がつけばこの作品を始めてからから一年経ちました。一年で大規模侵攻編を終わらせたかったです!


第26話

「二人だけか? 拍子抜けだな。どうせならあのイルガ―を落とした奴と撃ち合いたかったものだが……文句を言っても仕方がないか」

 

 基地南部の警戒区域外の高架下にいた東と別役の元にトリオン兵ラッドによるイレギュラー(ゲート)が開き、(ゲート)から赤髪の大男が姿を現した。

 

「ひ、人型近界民……!?」

 

 姿を現した人型近界民ランバネインに驚く別役

 

『距離をとるぞ太一。この間合いはまずい……下がって警戒区域に誘い込むぞ』

 

 東は冷静に、正面の近界民の男を警戒しながら次の行動を練っていく。

 

「……いや、数を見て侮るのは良くないな。コツコツと片付けていこう」

 

 ランバネインは両手の掌にトリオンのエネルギーを貯めて、二人に対して攻撃態勢をとった。

 

『来るぞ!』

 

 東と別役が攻撃に備える。

 

「「ハウンド!」」

 

 その時だった。ランバネインと東たちの上にある高架の左右から、ランバネインに向かってハウンドが降り注いだ。ランバネインはシールドを張ってそのハウンドを防ぐ。ハウンドを防いだランバネインの元に、二つの人影がランバネインの左右の背後から襲い掛かった。

 

「硬ッ!」

 

「東さん、俺らが時間を稼ぐんで一先ず逃げてください」

 

 ランバネインを襲ったのは西峰姉弟だった。

 西峰姉弟はランバネインと東達の間に立って、優佳がランバネインのシールドの硬さに驚きながら警戒している間に、勇人が東達に今のうちに撤退よう促す。

 

「殿だぁー!!」

 

 優佳が気合の入った声を上げる。ふざけているように見えてもその目は、ランバネインから離れることはなく、相手の動きを一つとて見逃すまいと警戒している。

 

「気を付けろ! こいつはもう攻撃態勢に入っている!」

 

 ランバネインは東の言葉通り、射手(シューター)のように両手を西峰姉弟にそれぞれ向けて、そこからビームを放った。

 

「勇人!」

 

「ああ! グラスホッパー」

 

 西峰姉弟はビームを躱すためにそれぞれ左右に飛んだ。そして優佳は弧月を構え自身の背後にハウンドを出して、勇人に声をかける。勇人は優佳が声がかかる前から何を姉が望んでいるかわかっていたのか、返事と共に宙に浮く自分と優佳の足元にグラスホッパーを出す。2人はグラスホッパーを踏んでランバネインへと一気に近づく。

 

「太一、走るぞ!」

 

「り、了解っす」

 

 西峰姉弟とランバネインが戦い始め、自分たちから西峰姉弟にランバネインの注意が移った隙に東は太一を率いて警戒区域に向かって後退し始めた。

 

『佐藤、俺と太一が撤退したら西峰達もそこから警戒区域まで退かせてくれ、奴を警戒区域に誘い込む』

 

 東が西峰姉弟のオペレーターをしている冬華に指示をする。

 

『了解です』

 

 冬華は西峰姉弟のサポートをしながら、二人が撤退する時に警戒区域までの最短ルートを調べる。

 

 西峰姉弟は二人で協力してランバネインを翻弄していた。優佳が攻めれば勇人がそのサポートをする。ランバネインの意識が優佳に集まれば、死角から勇人が弧月で斬りかかったりハウンドを撃つ。ランバネインが反撃しようとすれば、二人は狙いからうまくずれランバネインの攻撃を危なげなく躱していく。

 

 ランバネインは二人の連携の完成度に感心し、それとは別に二人の動きにまるで自分と戦ったことがあるかのような慣れがあることを感じていた。

 

「なかなかにやるようだな。だがこれならどうだ!」

 

 ランバネインは、二人に向かって手からビームを撃ちその隙に後ろに下がって距離を取ったうえで、マントの背中辺りを膨らませて、そこからさっきまでの掌から出すビームよりも細くてたくさんのビームを二人に向けて放った。

 

「ハウンド」

 

 2人はビームを危なげなく避け、勇人がハウンドを撃つ。そして優佳が弧月を下段に貯めるように構える。

 

「旋空弧月!」

 

 ランバネインは勇人のハウンドをマントとシールドで防ぎ、優佳の旋空弧月を身体をずらして躱す。優佳の旋空弧月はランバネインに躱されたが、優佳の狙いはランバネインではなくランバネインの頭上の高架だった。旋空弧月は狙い通り高架を斬り、斬られた高架は崩れて瓦礫となってランバネインに降り注いだ。

 

 ランバネインが瓦礫を躱したころには西峰姉弟は、ランバネインを警戒しながらもかなり遠いところまで移動していた。

 

「誘い込もうというつもりだな……いいだろう。乗ってやろうじゃないか!」

 

 ランバネインは二人のいる方向、警戒区域側へと歩き始めた。ランバネインと距離を取った西峰姉弟は、警戒しつつ後ろに下がっていく。

 

『人型はこっちに向かってくるみたい。このまま警戒区域まで引き込みましょう』

 

「だね。さっきみたいに誘導よろしく!」

 

『西峰、俺達全員狙撃位置に着いた。必要だったら援護できる。いつでも言ってくれ』

 

 荒船から通信が入る。どうやらいつでも援護できるようだ。他にもランバネインを討伐しようとB級各隊が集結し始めていた。

 

「狙撃はやめた方が良いと思うっすよ。シールドも硬かったっすから多分誘いっすね」

 

 優佳は戦った感触からランバネインを分析して、狙撃に反対する。

 

『そうだな西峰が言うように狙撃は警戒されてるだろうな。西峰と荒船はそのまま奴を警戒区域内に誘い込んでくれ。無茶はするなよ。ここで戦力ダウンすれば後がきつくなるからな』

 

『荒船了解』

 

「了解っす! でも大丈夫ですよ東さん。こんなの、なっくんに比べたら余裕っす!!」

 

『…………まぁとにかく油断はするなよ』

 

 優佳の言う事が何となく納得できてしまい返答に困る東なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ックション!! ……風邪ひいたかな?」

 

 噂されてるとはつゆ知らず。夏樹は倒したトリオン兵の残骸の上に座って二度目の休憩をとっていた。最初こそC級隊員にまでトリオン兵がせまったものの、風間隊に警戒区域の内側を任せて、警戒区域から出ようとするトリオン兵に絞って倒していたためスムーズに片付いて、余裕が出来ていた。

 

『大丈夫ですか? これが終わったら風邪薬飲みますか?』

 

 相川が心配して声をかける。

 

「いや~必要なのは風邪薬よりも頭痛薬ですかね……」

 

 夏樹はそんなことを言いながら何個目か数えるのもめんどくさいほど食べたチョコバーを頬張る。

 

「まぁどちらにしてもこの大規模侵攻を乗り切んないとですね。現在の各場所の状況を教えてもらってもいいですか?」

 

『わかりました。映像も送るわね』

 

「お願いします」

 

 夏樹の視界に今までの各所戦での戦闘の映像や、三門市の地図にトリオン兵の分布が記されたものなどが映し出され、相川が戦況を話し始めた。

 

「なるほど……今の主な戦場はB級合同と赤髪の近界民(ネイバー)、基地南西部のC級を守りながら二体の近界民(ネイバー)相手をしている玉狛支部組、風間さんと(ブラック)トリガー、嵐山隊と空閑、太刀川さん、天羽さん、迅さん、自分って感じですかね」

 

『そうね。私たちはこれからどうしましょう?』

 

「東側のトリオン兵を片付けて南か風間さんのところに援護に行った方が良さそうですね。近くのトリオン兵の反応を送ってください」

 

『わかったわ。ちょっと待ってね』

 

 少しして夏樹の視界に映る周辺の地図に、トリオン兵の位置が映し出される。夏樹は立ち上がりトリオン兵がいる方向へと向かった。

 

「あっ! そういえば新型討伐ランキングってどうなってます?」

 

 太刀川との賭けを思い出した夏樹は、移動しながら相川に聞いた。

 

『えーっと……これね。夏樹君が四体討伐で一位みたいね。夏樹君の後ろには三体で嵐山さんと風間さんがいるみたいだわ』

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

 夏樹は話しながらもトリオン兵の元に近づき、戦闘を開始する。

 

『いいのよ。……あら?』

 

「どうしました?」

 

『それが……今本部の通信室から挙がった情報なんだけど、基地の西側にある固定砲台や基地への連絡通路との接続が途切れてしまっているみたい。故障かしら? 近くの監視カメラからの映像を見たところ異常はなかったそうなのだけど……あと玉狛や鈴鳴との通信も途切れがちになっているらしいわ』

 

「敵の攻撃ですかね? でもだとしたらC級を連れた南西側の人たちヤバいんじゃないですかね」

 

『そうなんだけど、通信が繋がりにくくなっているみたいなの。今玉狛のオペレーターに直接連絡しようとしているらしいわ』

 

「まぁでもあそこにはレイジさん達がいますからそこまで心配しないでも良さそうですけどね。自分たちはやれることをやりましょう」

 

 そう言いながら夏樹は最後の一体のトリオン兵にとどめを刺した。

 

『そうね。次のトリオン兵の場所を送るわね』

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは(ブラック)トリガーなんでな」

 

 エネドラがそう言うと風間の身体から無数のブレードが突き出て、風間にとどめを刺した。

 

 

 〔 トリオン供給機関破損 緊急脱出(ベイルアウト) 〕

 

 

 トリオン体を破壊された風間は、戦っていた廃ビルから緊急脱出(ベイルアウト)先の本部基地内の自身の隊室のマットへと軌跡を描いて瞬時に転送された。

 

「一瞬でもオレに勝てると思ったか? 雑魚チビが。来いよガキども遊んでやるぜ! チビの仇を討ってみろ!」

 

 エネドラは残った菊地原と歌川を挑発する。挑発された二人は、風間の仇を獲るために再びエネドラへと戦闘態勢をとった。

 

『退け二人とも』

 

 緊急脱出(ベイルアウト)した風間が、通信で冷静さを失いかけている二人に撤退するように指示を出す。

 

攻撃手(アタッカー)はそいつの液体化トリガーとは相性が悪い。ブレードは不利だ』

 

『液体化しても伝達脳と供給機関はどこかにあるはずです。どっちかを見つけて叩けば……』

 

『俺がやられた正体不明の攻撃もある。不用意に戦えば無駄死にだ』

 

『ムカつくんですよこいつ。このままじゃ引き下がれないでしょ』

 

『諏訪隊の笹森はおまえらより聞き分けがあったぞ』

 

『……!』

 

『好きにやりたいならそうしろ。おまえたちの仕事はそれで終わりだ』

 

 風間は、風間の指示に納得が行かず食い下がる二人に対して少し前に似たような状況になった時に引き下がって自分たちに後を任せた諏訪隊の笹森のことを引き合いに出すことで、二人を冷静にさせる。

 

『…………ちぇっ、わかりましたよ』

 

『戦闘を離脱します』

 

 笹森のことを言われて冷静さを取り戻した二人は不満を抱えながらもカメレオンで透明になりエネドラの前から姿を消した。

 

「……! あァ!? ……逃げる頭が残ってたとはガキのくせに冷静じゃねぇか。まぁ別に他の奴でも……? あれは……くっくっ……あそこなら面白そうじゃねぇか」

 

 風間隊の二人に逃げられたエネドラは、他のところに行こうと崩れそうな廃ビルから出ようと崩れた壁から外を見る。周囲を見渡すエネドラの視界にトリオン兵の集団に空中で大きなキューブを出して攻撃している奴が映る。エネドラはなにか考えてにやりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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