副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
ラウンジで待っていると、
「お待たせしました。佐藤先輩」
声の主は、色の薄い髪にボブカットヘアーが特徴の美人、那須玲。俺の弟子だ。
彼女は「体が弱い人をトリオン体で元気にできるか?」という研究に協力する形で、2年ほど前にボーダーに入隊。
入隊直後、本部内で道に迷っていた彼女を俺が案内して以来、何かと縁があり、今では師弟の関係というわけだ。
「すいません、待たせてしまいましたか?」
ちなみに、俺は彼女に嫌われているようだ。
たまに顔を赤くするほどに怒っている時がある。
まぁ、那須に限らず他の女性の人たちも同じように顔を赤くすることがあるけど・・・
男子校6年間純粋培養の俺だ。
何かしらデリカシーにかけることを自分でも気づかぬうちにしてしまっているのだろう。
妹の冬華からも「兄さんは鈍すぎます!」とお叱りを受けることがあることからも、まず間違いないだろう。
なんてったってサイドエフェクトまで使って考えたんだ。
今思えば、自分でもバカなことをしたと思う。
「いや、大丈夫だよ。さっき来たところだから」
「そうですか。なら、よかったです」
「いいよ、いいよ、気にしないで。それよりさっそく始めようか」
「はい。じゃあ隊室の方に行きますか」
「おうそうだな。そういえば、今日は志岐は大丈夫か?」「大丈夫ですよ。今日はみんな、それぞれ予定があるみたいで、今は誰もいないはずですから」
志岐とは、那須隊のオペレーター、志岐小夜子のことで、引きこもるほどに異性が、特に年上の男性が苦手なのだ。
一度だけ那須隊の隊室で遭遇してしまった時、彼女が青ざめ震えてしまったので、それ以降遭遇しないようにお互い気を使っているのだ。
「そっか。それより体の調子はどうだ?無理してないか?こないだ桐絵が学校で那須が生身だったって心配してたぞ。あまり無理はするなよ」
「大丈夫ですよ、心配してくれてありがとうございます。・・・あの小南ちゃんとは仲がいいんですか?名前で呼び合っているみたいですし」
なんだ?あれか!「あなたなんかが小南ちゃんを名前呼びなんて烏滸がましい!!」的なやつか?
なんだろう?那須から覇気が出ている気がする。答えをはぐらかすことを許さないようなそんな覇気が・・・
まぁいいか、別に隠すことでもないし。
「普通に昔からの腐れ縁?幼馴染?的なやつだよ。特にこれといった特別な関係ではないから安心していいよ」
「そうですか……」(てっきり小南ちゃんに先を越されたのかと思った。ちょっと安心)
「そうだよ。さぁそろそろ始めようか。今日はどうする?」
彼女は最初はバイパーの扱い方とかを教えていたが、そのうち隊の指揮についてだったり、身のこなしだったりを教えるようになっていた。
そして今ではバイパーも複雑な弾道もリアルタイムで設定できるようになっている。
「今日は、バイパーのコントロールでお願いします。熊ちゃんとの連携でもっとコントロールがあればできることもあると思うので」
「わかった。じゃあ、いつものやつでいいか?」
「はい。お願いします」
「じゃあパソコン借りるぞ」
「はい、どうぞ。小夜子ちゃんも大丈夫って言ってましたし。それにしても、フフッ」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、いつもこのやり取りをやってるなって思って、先輩って律儀というか真面目ですね」
「そうか?そんなことないと思うぞ?俺はそんなに真面目じゃないって。そんなことより訓練はじめるぞ。前回の反省点を覚えてるか?」
「はい。常に足を止めないで、先を予測し続ける。ですよね?」
「そう。その点を特にイメージしてやってみてな」
「はい!よろしくお願いします」
「じゃあ前回と同じレベルからはじめようか」
今回の訓練で使うのは宇佐美と俺で作ったシューター用トレーニングプログラムだ。これは背景は何も設定されてない寂しいものだが、
四方八方から銃座がランダムに出現し、そこから弾が発射される。
それを避けるか、防ぐか、撃ち落とすかして銃座を全て破壊したらクリアになる。
最初の内は銃座も場所は変わらず、弾も遅い。しかしレベルが上がるにつれて、銃座は常に動き、弾も速くなる。
レベルは1~100まであるが、90代からもはや理不尽としか言えない難しさになってしまっている。
俺も40%まで副作用を使ってなんとか全クリできたが、さすがにやりすぎたか。
あ、でも迅さんは風刃を使ってたけど全クリ普通にしてたな。
さすが、未来予知のサイドエフェクトだ。
おっとそろそろ始めないとな。
「じゃあレベル52から始めるよ~。5つ刻みで休憩を挟むけど、体調とか悪くなったらすぐに言ってくれよ」
「わかりました」
「よし!始めるぞ!」
〔 シューター用トレーニングプログラム レベル52 〕
〔 3 2 1 スタート 〕
このプログラムは、やってこそ感じられる壁が何個かある。
1つ目は、レベル10あたり。だいたい動きながらうまく的に当てれるかどうかだ。
C級とB級隊員の間くらいに位置している壁だ。
2つ目は、25レベルあたり。周りを見ながら動けるかだ。
B級隊員でもポイント5000あたりの位置だろう。
3つ目は、50レベルあたり。こないだ那須も超えた8000ポイント、所謂マスタークラスだ。
このあたりになると、1発1発を正確に狙いをつけて当てていかないと厳しい。
「バイパー、っく!」
どうやら那須は60レベルあたりで苦戦しているようだ。
さっきから被弾する数が増えてきている。
どうやら撃ってくる弾の対処に戸惑っているようだ。
「那須、一旦休憩にしよう」
「わかりました」
〔 トレーニング 一時停止します 〕
トレーニングルームから那須が出てきた。
出てきた那須に、待ち合わせの前に買っておいたスポドリを渡す。
「お疲れ様。とりあえずほら、飲みなよ」
「ありがとうございます。いただきます」
「どう自分でやっててなんか思ったことある?」
「はい、どうしても来るとわかっていても、回避や迎撃が間に合わないときがあって、対処しきれなくなってしまうんです」
「そうだね。まぁ実戦じゃここまでの弾幕になることもほぼないけど、かといってただ弾幕だけというわけでもないからね。
対処できるに越したことはない。それにこのトレーニングは周りの状況を把握する特訓でもあるからね。
よく跳んでくる弾の弾道を見てみるといい。いくつかの弾は動きを制限するための弾で、体の近くを通るだけのものもあるから見極めて避けるもの、撃ち落とすものを判断してみるといいよ」
「なるほど、わかりました」
「よし、じゃあもうちょい休んでから、再開するか」
「はい!」
その後も、何セットかしたがまだうまく見極められていないようだった。
「じゃあ最後に俺が見本を見せるよ」
「はい!お願いします」
「うん。じゃあ操作お願いね」
「わかりました。頑張ってください!」
「おう」
トレーニングルームに入って、トリガーを起動して、レイガストをシールドモードで構える。
「じゃあ、始めてくれ」
「わかりました。いきます」
〔 シューター用トレーニングプログラム レベル65 〕
〔 3 2 1 スタート 〕
トレーニングが開始されると四方八方に銃座が出現し、弾を撃ってくる。
その弾をレイガストで防ぐものは防ぎ、残りをバイパーで撃ち落としていく。
次第にそれだけじゃ対処できなくなっていく。そこでバイパーの弾道を1つ1つの弾に設定するのをやめて、幾つかの弾道に纏める。
1つの弾道で複数の弾と銃座を撃ち抜いていく。
〔 残り銃座 10 〕
最後は少し、派手にいこう
「バイパー!」
弾道を自分を中心に内側から外側に広がるように回転させていくように設定されているバイパーを撃つ、竜巻のよう広がるバイパーで、銃座から放たれた弾と銃座を撃ち抜いていく。
〔 残り銃座 0 〕
〔 シューター用トレーニングプログラム レベル65 クリア〕
トレーニングをクリアしてトレーニングルームから出る。
「ふぅー、まぁこんな感じかな」
「お疲れ様です。最後の弾道すごく綺麗でした。あんなに精密に弾道を設定出来るなんて流石ですね」
「あれは、リアルタイムで設定したわけではないよ。予めパターンを登録しておいたものだから、やろうと思えば那須でもできるよ」
「ホントですか!なら今度ぜひ教えてください」
「おう、で何か気づいたことはある?」
「はい、1つ1つのバイパーに弾道設定をしてないってことですか?」
「そう、さっきまで那須は1つ1つに弾道を設定してたでしょ?でもそれじゃ次第にきつくなる。だから一度に複数の弾の設定をするとか、最後のみたいによくありそうな状況に合わせてあらかじめ弾道設定をセットしておくとかな」
「なるほど、早速やってみます」
「弾道設定をセットするときとか、困ったら言ってくれ。いつでも手伝うからさ」
「はい!ありがとうございます」
「いいのいいの、一応師匠なわけだしね。ってそろそろ7時半か・・・今日はもう終わりにするか?」
「そうですね。今日はありがとうございました」
「今日はもう俺は帰るけどどうする?もう夜遅いし送っていこうか?」
「いいんですか!?」
「迷惑じゃなきゃな」
「じゃあぜひ!お願いします!!」
「お、おう。じゃあ行くとするか」
なんだろう?この押しの強さ、まさか師弟の立場ゆえに強制させてしまっているのではないか!?
「いやなら、無理しないでもいいんだぞ」
「いえ!決して嫌なわけじゃないです!!」
「そ、そうか・・・それならいいんだけど」
「はい!じゃあいきましょう」
そう言うと那須は俺の手を引っ張って、隊室を出ていった。
心なしか那須の顔が赤い気がする。
「那須大丈夫か?顔が赤いけど、体調が悪いのか?なら医務室に連れてくけど?」
「っ!大丈夫です!」
「そうか、ならいいんだけど」
そう言うと那須は俺の手を離した。やはり俺なんかと手をつなぐのは恥ずかしかったんだろう。
「さぁ帰りましょう。佐藤先輩」
「あぁそうだな」
那須隊の部屋を出て、那須の家がある方向に出る連絡口へ向かう。
「そういえばこの前、くまちゃんが今度剣の稽古をつけてほしいって」
「おう、いいぞ。いつがいいかは連絡くれって伝えといてくれ」
だったり
「こないだ茜ちゃんが指ぬきグローブのコレクションを見せてくれて」
「なに?日浦、コレクションするぐらい指ぬきグローブ持ってるのか?それにそんなに指ぬきグローブって種類あるのか?」
とか
「そういえば冬華ちゃん元気ですか?」
「ああ、あいかわらず元気だよ。ありがとな、冬華と仲良くしてもらってるみたいで」
「いえそんな、一緒にいて楽しいですし、可愛いし」
だったり話しているうちに、那須の家の前あたりまで来た。
「今日はありがとうございました」
「いいよ〜弟子なんだし、なんだったらもっと頼ってくれて構わないよ」
「ありがとうございます。じゃあ、その…今後ともよろしくお願いします」
「うん、よろしく」
「あの!なっ、名前で呼んでもいいですか?私も名前で呼んでもらって構わないので!」
なんだ?でもこの前、冬華に「なるべく女子の頼みは聞くこと!!」と言われたし、それぐらい別にいいか。桐絵のことも名前呼びだし、きっと2人の通うお嬢様学校でブームなのだろう。
「?わかったよ、玲」
「ありがとうございます。夏樹先輩!じゃあまた今度」
「おう、じゃあな那sじゃなかった、玲」
玲が家に入っていったのを見て俺も帰路につく。
~ Side 那須 玲 ~
やってしまった。
ついに夏樹先輩と、名前で呼び合ってしまった。
学校で小南ちゃんが名前で呼び合っていることを聞いてしまい、負けるわけにはいかないと思ってつい言ってしまった。
夏樹先輩に自分の想いがバレていないだろうか?まぁ大丈夫だろう。
夏樹先輩はとても人からの好意に鈍いし、どれだけあなたのことを想う女性がいると思っているのやら。
そう、私、那須玲は夏樹先輩のことが好きなのだ。
初めての警戒任務でのことや、今までのことで気が付いたら好きになっていたのだ。
しかし、先輩のことが好きな子は多いのだ。私、小南ちゃん、綾辻ちゃん、三上ちゃん、国近さん、加古さん、黒江ちゃん、ほかにもいるかもしれない。
でもこの名前呼びは小南ちゃん以外から一歩リードだろう。
うれしい、早速このことをくまちゃんたちに自慢しないと。
誤字報告ありがとうございます。
何故だか「ー。」になってしまう