副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
玲を家に送った後、妹は今日は塾に行っていて夕食の心配はないので、カップ麺でも買って帰ることにしよう。
自宅に帰ってお湯を沸かしカップ麺を作る、その間に風呂炊きのスイッチを押しておく。
カップ麺が出来たので、それを食べながらテレビを見る。
食べ終わってしばらくすると、冬華が帰ってきた。
「ただいま帰りました」
「おう、冬華おかえりー」
「ん?また兄さんはカップ麺を食べて、そんなことだと体調崩しますよ」
「ごめんごめん、でも安いしうまいしお湯注ぐだけだし。楽だからさ」
「もう、またそんなことを言って、それなら私が作りますよ」
「いや悪いよそんな。受験生だろ、気にしないで勉強してていいからさ」
「わかりました。でもカップ麺ばかり食べないでくださいね。いいですね。わかりましたか?」
「ハイ、ワカリマシタ」
「むっ、ほんとにわかっていますか?」
「大丈夫だって、心配すんな」
「ならいいんですが。でも兄さんが倒れると悲しむ人がいることも覚えていてくださいね。約束ですよ」
「おう、冬華には心配かけないから安心しろよ」
「私だけではないのですが……」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ何にも。ただ相変わらず鈍感ですね。まったく兄さんは」
「え?なんで俺怒られてるの?」
「もう!それが分からないから鈍感と言っているんです!」
なんだろう、何か怒られることをしたっけか?思い出せ!思い出すんだ俺、さもなくばまた正座させられる。
そうなると兄の威厳がなきものになってしまう。
待てよ、妹は健康に悪いからカップ麺を食うなと言いたいのだ。それにうなずいてもまだ納得しないどころか、鈍感と言うということはまさかあのカップ麺秘蔵コレクションがバレてしまったのか!!
「フッフッフ、妹よ、兄さんはついにわかってしまったぞ!」
「え!本当ですか兄さん!?」
「ああ、そうともわかったとも冬華よ、お前は兄さんがカップ麺を隠し持っていることに気が付いているんだな!」
「はぁ!?全然違います。それと隠し持っているカップ麺とは何のことですか?」
「なに!?やっぱ今のなし、忘れて忘れて」
「いや、忘れませんよ兄さん、とりあえず正座で。いろいろ話してもらいましょうか」
「へ?ちょ待って、待ってください冬華様」
「ダメです。まったく兄さんは人の気持ちが理解できないのかしら」
「やめてくれ、もう一晩中正座は勘弁してくれ」
「ダ・メ・で・す」
こうして佐藤家の夜は更けていく。
翌朝、美味そうな香りで目が覚めた。
布団の温もりから離れて、起き上がり、部屋を出る。
「おはよー」
「おはよう、兄さん。もう朝ご飯が出来るのでとりあえず顔を洗ってきてください」
「おう、わかった」
そう言うと洗面台に行って顔を洗う、水を浴びて意識が覚醒していく。
居間に戻るともうすでに朝食が用意されていた。
「いつもすまないね」
「兄さん、ジジ臭いですよ。さあそれよりも食べましょう」
「そうだな」
「「いただきます」」
うちは基本朝はパン派だ。
今日のメニューは食パン、目玉焼き、サラダ、コーヒーだ。
相変わらず冬華は料理がうまいな!しかし、少し味が薄い。
「冬華悪いんだけど、醤油とドレッシング、あと砂糖を取ってくれ」
「駄目です!もう味はついてます。それ以上かける必要はありません!」
「ならせめて、コーヒーの砂糖だけでも!」
「わかりました。なら私が入れますよ。兄さんは入れすぎますから」
「そんなことはないぞ」
「なら、私が入れても問題ありませんね?兄さん」
「お、おう、そうだな」
「はい、どうぞ」
「に、苦い…なぁもう少し砂糖を追「駄目です!もう充分甘いですよ」加を…そうですよね。ゴメンナサイ」
「まったくもう、そんなんだと体がおかしくなりますよ」
「ありがとう、気をつけるよ。さぁ食べよう!」
「そうですね」
「そういえば、学校はどうだ?」
「はい、楽しいですよ。周りとも仲良くできてますし」
「そうか。それは良かった」
「兄さんはどうなんですか?」
「俺か?どうって言われてもな〜、そんなに面白い話なんてないぞ。相変わらずむさ苦しいよ」
特待生として入れてもらっているので文句は言えないが、 中高一貫の男子校で男しかいないのだ。いわば青春をドブに捨てたといえる。
「そうですか。ならボーダーの方はどうですか?」
「特に面白いことはないぞ。至って普段と変わらないよ」
「そうですか。あの!兄さんもう私も高校生になりますし、私もボーダーに入ってもいいですか?」
「んー、そうかもう高校生だもんな。ちょい考えさせてくれ」
「わかりました」
自分としては、冬華にボーダーには入って欲しくない。
しかし冬華ももう高校生になるのだし、そろそろいいのかもな。
「今日は夜から防衛任務でしたっけ?兄さん」
「そう。午前中は西峰姉弟の家庭教師で、夜から防衛任務だから、冬華は西峰姉弟の家に泊めてもらってくれ」
「わかりました」
西峰姉弟は親同士が親友の関係にあり、西峰の両親は、両親を失って途方に暮れていた俺と冬華を助けてくれた恩人だ。
西峰は旧家の出で、今住んでるマンションも西峰姉弟の両親が経営しているところだ。
日頃のお世話になっていることもあり、姉弟の家庭教師を頼まれた時は喜んで引き受けた。
今、西峰姉弟の両親は海外出張でいないため、姉弟2人で暮らしている。
「よし、食べたら行くとするか」
「そうですね」
「「ごちそうさま」」
「よいしょと、さぁ片付けるか」
「手伝いますよ」
「あぁ、ありがとう」
朝食の後片付けをして、家の掃除を終えて、俺と冬華は各々準備をして西峰姉弟の家に向かった。
姉弟の家に着いてインターホンを押す。
足音が聞こえ、カチャリと鍵が開く音がしてドアが開く。
「おはようございます夏樹先輩。あと冬華もおはよう」
「おっはよーなっくん、ふゆちゃん」
「おう、おはよ」
「おはよう2人とも」
「さぁどうぞ入ってください」
俺のことをなっくん呼びしているのが、姉の西峰優佳。
お嬢様学校の高校2年
そしてもう1人が弟の西峰勇人。
冬華と同じ、普通校の中学3年。
この2人はいわゆる幼馴染というやつで、小さいころからよく4人で遊んでいた仲で、もはや兄弟のような関係だ。
ちなみに2人はボーダーのB級隊員で、たまに一緒に3人で防衛任務をすることがある。
「さぁ2人とも、今日は何して遊ぶ?」
「おい姉貴!今日は家庭教師に来てもらってんだろ、やるとしてもあとにしろよ」
「えー、いいじゃん別に勉強なんてさー。ねっ、そうでしょ?なっくん」
「ねっ、てお前な~。この家庭教師だって優佳の成績が悪くなったことが原因だろ」
「わかったよ。やります!やればいいんでしょ!」
「そうそう、やればいい。じゃあ始めよっか」
「そうですね。兄さん」
「じゃあ居間の方で待っててください。今準備しますんで。ほら!姉貴いくぞ」
「はーい」
居間に行って準備して待っていると勇人が勉強道具と人数分のお茶を持ってきた。
「お待たせです。いつもすいません自分も見てもらちゃって。姉貴ももう来ると思います」
「大丈夫だよ。お茶ありがとう」
「お待たせ〜、さぁ始めよー」
「そうだな。どこからやる?」
「じゃあ数学で!」
「わかった。冬華と勇人は優佳の後見るから、それまでは自由にやっててくれ」
「自分は先に課題とかしとくんで、姉貴をお願いします」
「じゃあ私と一緒にしよう?勇人くん」
「うん、了解。俺もわからないとこがあるから教えてくれると助かるよ」
4人で勉強をしてるうちに時刻は、12時半になっていた。
「疲れた!お腹減った〜」
「そうだな。なんか食べに行くか?」
「そうですね。兄さん」
「どこかに食べに行きます?」
「私、あそこがいい!お好み焼き屋」
「あぁ、かげうらのことか?」
カゲのとこか、そういえば最近行ってないな。
「そう!そこそこ」
「私もそこがいいです」
「俺もそこで」
「よし!じゃあ出発だ〜」
優佳と勇人の家を出て、かげうらに向かう。
かげうらに着いて店に入ると
「おう、夏樹じゃねーか」
「ようカゲ。4人空いてるか?」
「4人?あぁ妹と西峰姉弟か、空いてるぜこっちだ」
「どうも、いつも兄さんがお世話になってます」
「どうも~カゲ先輩」
「こんにちは、影浦先輩」
「おう。で、お好み焼きでいいよな?」
「ああ、頼む」
このワイルドな見た目のやつは、俺の友人の影浦雅人。
B級2位の影浦隊の隊長で、この店の次男坊だ。
「ほい、お待たせ!お好み焼き4人分な。自分たちで焼くか?」
「ありがとよ。そうさせてもらうよ」
「おう。わかった」
「私!私が焼く!」
「待て、姉貴が焼いたらもれなく全部焦げるだろ!!」
「え~、そんなことはないよ!」
「やめとけよ優佳、俺も勇人に賛成だな」
「兄さんたちに私も賛成です」
「ひどいよ!2人まで」
ひどいと言われようが、こればかりは譲れない。
優佳は普通に料理をするだけなのにダークマターを作ってしまう程に壊滅的に料理ができない。
いや料理だけではない、他の勉強や生活面も驚くほどに出来ない。
その分、弟の勇人は姉の優佳を反面教師にしたのか、勉強も料理もこなせる家事メンになっていた。
「とにかく姉貴の分は俺が焼くから、頼むから姉貴は見ててくれ。先輩と冬華はどうします?俺が焼きましょうか?」
「私はいいよ。流石にたくさん焼くのは大変でしょ。兄さん、兄さんの分も私が焼きますよ」
「そうか、じゃあ頼むわ」
「私は納得してない!断固抗議するぞー!」
「ハイハイ、せめて調味料のさしすせそを言えてからな」
「簡単じゃん!「さ」は砂糖、「し」は醤油、「す」はお酢、「せ」は背脂、「そ」はソイソースでしょう!さぁお好み焼きを焼かせろー!」
「ハァ〜、姉貴色々間違ってるぞ。それにソイソースは醤油だ!」
「そうだぞ優佳、「し」が塩、「せ」が醤油、「そ」がソースだ!ソイは余計だったな!HAHAHA!!」
「兄さんも違います。「そ」は味噌です」
「なに!?そうなのか!恥ずかしっ!」
「アハハハ!!なっくんもだめじゃん」
「とりあえず、2人の分は俺と冬華が焼くからじっとしといてくれ」
仕方ない、待つとしよう。
しかしなぜ「そ」だけ味噌なんだよ!なぜ最後だけ後ろの文字にしてんだよ。
だんだん香ばしい香りがしてきた。
空腹感がその香りに刺激されてさらに空腹になる。
「さぁ焼けたぞ!」
「待ってました〜」
「鰹節が踊ってますね」
「さてじゃあいただきますか」
「「「「いただきます」」」」
うまい!口に入れた瞬間広がる鰹節の香り、コクのあるソースの味、ジューシーな豚バラ、そしてそれらの土台たるキャベツの丁度いい食感、全てがいい感じに噛み合っている。
ヤバイ箸が止まらない!
気づけば、俺ら4人は話すことも忘れて食べていたようだ。
「相変わらず美味いな」
「だね〜」
「満足ですね」
「そうだね」
「「「「ごちそうさま」」」」
「カゲ、会計頼むわ」
「おーう、まいど。オイ夏樹、今度ランク戦しようぜ」
「ごちそうさん。じゃあなカゲ、また今度な」
「ごちそうさまでした」
「じゃあねーカゲ先輩、また今度!ランク戦で〜」
「ごちそうさまでした、影浦先輩」
「おう、お前ら。またな」
食べ終わり、かげうらを出る。
「は~食った食った。そろそろ俺はボーダーに行くから、冬華をよろしく頼むな2人共」
「アイアイサーっす!なっくん」
「了解です。先輩」
「兄さん、頑張ってくださいね」
「おう、行ってくるよ」
3人と別れて、玉狛支部に向かう。
誤字報告ありがとうございます。
新キャラは設定に足しときました。