魔導雑貨屋の『変身物語』   作:キルケー敗北拳!

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プロローグ

 

 前世はごく普通の日本人だったが、事故に遭って目が覚めればランガ・レーオという名前の獅子人(ライオネル)という獣人の子供に生まれ変わっていた。

 

 転生してから十年、紆余曲折ありすぎて語ると長くなるので割愛する。

 

 

 今、オレは迷宮都市オラリオという場所に来ている……のだが、門の中に入れず門番に剣や槍を向けられている。

 

 

 原因は分かっている。

 

 オレの右肩にある異形。

 黒い毛の猪の頭部が顕れているからだ。

 怪しさ満点だ。

 

 

 

 『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』。

 

 Fateのアタランテが持っている宝具の一つなのだが何故かオレにくっついている。使わなければただの猪の毛皮のまんまの筈。でも使えばバーサーカー同然になるモノだったような………。転生特典というヤツか?だがこれを特典と言うのはちょっと違う気がする。神とやらに逢ってないから違うな。そうに違いない。

 

 

 …………。

 

 現実逃避も程々にして今はこの状況をどうやって打開するかだが……。

 

獣の本能というか勘が目の前の門番はオレより力が強いと訴えている。あくまでも『力』が上ってだけで、今の『神罰の野猪』を纏っている状態でのオレの速さには負ける筈だ。たぶんだけど『自己進化』のスキルもあるから戦えば身体を最適化して有利に出来ると思う。身体のあっちこっちで骨がゴキバキ鳴ってるからな。

後は『アルカディア越え』があれば障害物を無視して街中に入れるけど『アルカディア越え』があるか分からないからこの案は保留。

 

 別に相手を殺したい訳じゃないから闘争ではなく逃走を第一にして戦う。

 

 身体に纏わりついている『闇』を左手に凝縮して弓を作る。

 疑似『闇天の弓(タウロポロス)』を作り出し、身体から湧いてくる『闇』を矢に、相手が動いても牽制出来る様に距離を開けようとして獣の本能が警鐘を鳴らした。

 

 

「いやぁ~、何事かなって来てみれば……うん。メディア、リィガン。彼は当たりだ。適性ありって言うか、もう自力で発現させて使ってるみたいだ」

 

「見れば分かるわよ。それにしても応用力高いのね、魔力がつきない所を見ると効率の良い魔法みたいね」

 

「それよか早く抑えようぜ?他のファミリアが来ちまうぞ?」

 

「おっと、それはマズイね!彼はアタシの子にするのは決定事項だ。二人とも頼むよ」

 

 

 野次馬から現れた三人組。

三人組の内の真ん中でローブを羽織り眼鏡を掛け、目の下に隈をこさえた女性が人間ではない事が直ぐ分かったが問題はその人間ではない奴の両脇を固める二人。

エルフ耳の女性と巨躯の男性。

 

 あの二人には勝てない。

 

 『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』を最大解放してカリュドーンになっても勝てないと本能が叫んでいる。

 

 身体から嫌な汗が吹き出した。

 

 手が震える。狙いが定まらない。

 

 呼吸が乱れる。空気を吸う。

 

 こうなったらヤケクソだ!

 

 

「悪いが大人しくしてくれよ………って、あ?」

 

「オオオオォォォォーーーー!」

 

 

 巨躯の男性の言葉を無視して身体を、力を解放させていく。

 もう形振り構っていられない。身体の半分以上を猪に変え、地面を踏み締め『闇』を全身に纏いながら突撃する。

 

「『神の恩恵』が無いのにスッゲェな、お前」

 

 牙を掴んで止められた!?体感だけど時速百キロは出てた筈なのに一センチも後ろに下がってないってどういうこと!?

 

 

「そこいらのレベル1や2なら吹っ飛ばせたんだろうが、レベル5の俺には効かねーぞっりゃー!」

 

「ゴファッ!?」

 

 牙を掴まれた状態でバックドロップする要領で背中から落とされ肺から空気が出ていき、衝撃の強さにオレは気を失った。

 

 

 

━━━━━

 

 

 野次馬たちは黒い猪を地面に叩きつけた衝撃的なシーンに口を開いたまんまになっていた。

 

 

「あ、ヤベェ、力…出しすぎたか……?」

 

 巨躯の男性、リィガンは冷汗を流す。

 恐らく魔法を使っていたであろう少年の牙を掴んでバックドロップしてから思った。地面に罅が入り身体が地面にめり込む程の威力。下手したら死ぬ様な一撃を与えてしまった。

 

 気絶した事で魔法が解除され、ランガは元の姿に変わっていた。

 

「ちょっと、リィガン!何やってんのさ!?殺すつもりか!メディア、急いで回復させて!」

 

「言われなくてももうやってるわよ。受け身とってなかったから頭打って気絶しただけね。傷らしい傷は無いけど……」

 

「けど、何だい?」

 

 エルフ耳の女性メディアは気絶した少年の身体を視て己の考えを口にする。

 

「彼、たぶん奴隷よ。着ている服と首と手足の痣を診るとつい最近までそうだったんでしょうね。けど、顔に傷一つ付いてないわ。魔法を使って此処まで逃げてきたって所かしら」

 

「まだまだガキだってのに奴隷にされたのか……確かに身体細えな。スラムのガキより細えのはヤバくねーか?」

 

「そういうのは後後、さっさとホームに帰るよ。リィガンは彼を担いでよ。」

 

「はいよ。野次馬どもどけどけ見世物じゃねぇぞ」

 

 

 リィガンの声に観ていた野次馬たちは散り散りになった。

 野次馬の中には担がれた少年をじっと見ていた授業から逃げ出した金髪の少女がいたが保護者に見つかり引き摺られていった。

 

 

 

 

 

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