魔導雑貨屋の『変身物語』   作:キルケー敗北拳!

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2話

 

 

 有名人の登場に驚いたが、自分の客ではなかった様だ。

 

 

「武器の担当は今ダンジョンに行ってる。武器の種類や付けて欲しい属性があるならカウンターの上に置いてある紙に書いといてくれ。後名前と所属ファミリアもな」

 

「あなた、じゃないの?」

 

「オレの担当は魔道具だ。まあ、武器くらいは作る事は出来るが品質は精々第三等級。……先に言っておくがウチの支払いは現金一括払いだぞ?ヴァリスの貯金はあるのか?最低でも五千万ヴァリスはないと話にならんぞ」

 

「え……五千万ヴァリス?!」

 

 

 新人や契約相手なら安くなるかもしれないけど、オーダーメイドで属性付与なんてしたら第二、第一等級並のヴァリスを要求される。

 

 驚くって事は五千万くらいのでかい買い物はしていないのか?ヘファイストス・ファミリアかゴブニュ・ファミリアの新人か鍛冶スキルの低かった奴の武器を買ったのか。まあ、どうでもいいか。

 

 

「用がそれだけなら今日は帰りな。店の外に今日は誰がいるかの看板があるから次はそれを確認してから入ってこい」

 

「……はい」

 

 

 返事はしたがこのまま帰るつもりはない様だから視線を無視して作業に戻る。

 孫の手の掻く部分をナイフで確認しながら削っていく。ドワーフや身体が固い人、他人に触れられたくないエルフ辺りに売れるかもしれないな。

 

 ヤスリが無いから古い砥石を使い角を取っていく。後で不壊属性でも付けてみるか?不変属性の方が良いか?属性付与したら武器になるから却下だな。

 

 

 それと何時まで居座るつもりだこの無表情娘は。

 

 出ていく様に催促しようと口を開けようとした時、新しい客が入ってきた。

 

「いらっしゃい。何をお求めで……」

 

 次に来たのも良くも悪くも有名人だった。

 ディオニュソス・ファミリアの『白巫女(マイナデス)』フィルヴィス・シャリアがやって来た。少し前にあった事件の生き残りで、今じゃあ『死妖精(バンシー)』って呼ばれている。

主神同士が知り合いという事もあり、仲は悪くない。

互いに名前で呼び合い、パーティー組んでダンジョンに行ったこともある。

 

 

 身嗜みに気を使うエルフだが今の『白巫女』は髪を整えずボサボサで白い肌にくっきりついている目の下の隈はまるでお化け、いや『死妖精(バンシー)』だな。

 

 

「ランガ、眠り薬を売って欲しい……」

 

「自殺用なら売らねーよ。此処じゃなくてディアンケヒト・ファミリアで買えよ」

 

「いや、ディオニュソス様や他の団員たちがいるのに団長の私が自分勝手で死ぬ訳にいかない。純粋に眠り薬を買いたいんだ。あの事件から満足に寝ることが出来ない。睡魔に負けて寝ても悪夢で直ぐに目覚めてしまって……」

 

「重症だな。フィルヴィス、耐異常はあるか?」

 

「いや、耐異常は無い」

 

 

 耐異常があると常備している物だと効かないから団長に作って貰わないといけなくなるので今回は良かった。

 

 

「それなら常備してる物で大丈夫だな。ああ、後、手持ちはいくらある」

 

「十万ヴァリスだ」

 

「二十日分合計五万ヴァリスだ。持ってくるから用意しておけよ。後、そこの金髪は物に触んじゃねーぞ」

 

「……む」

 

 

 剣姫に釘を指してから薬を取りに行く。薬を取りに行くついでに自室に行ってある物を手に取り店に戻る。

 

 

「眠り薬は一日一粒寝る前に飲めよ。少し強めの物だから扱いには気を付けろよ」

 

 瓶に入った錠剤を手に持って説明する。ポーション類は液体が主流だが『魔法の月』では粉、錠剤をメインにして扱っている。元はヘカテー様が初めて作り、団長が引き継ぐ感じで薬を作っている。

 

 

「すまない、薬が無くなっても変わらなければまた来る。それでは……」

 

「ああ、ちょっと待てフィルヴィス。ついでだ、コレをやるよ」

 

「それは……ネックレスか?」

 

 オレが取り出したのは黒と灰色の糸を編んで作ったネックレスだ。カリュドーンの牙と霊樹と呼ばれる樹を丸く削った物を飾りにしてある。

 

「まあな。神秘を使って色々試しに作ってた物の一つさ。このネックレスの飾りには身に付けている者に降りかかる呪いだの厄だのから護る効果を付与してある。ちゃんと機能するかどうかはわからんがな。気休め程度の御守りだと考えな。ついでに紐には不変属性という属性を付与してある。この属性の特徴は例え切れても魔力を与えると元の状態に戻るんだよ」

 

「ありがたい、がコレは魔道具に入る品だ。効果の事を考えれば第一、第二等級武装並の値段になるはずだ。そんな物を貰う訳にはいかない」

 

「細かい事なんざ考えんでも良いんだよ。友人としてネックレス(コレ)をお前に贈る。そんだけで良いんだよ。それでもって言うならレベルを上げる事だな」

 

「レベルを……」

 

「あーだこーだと暗いこと考える暇があるなら強くなれって事だよ。自分が強くなければ敵を倒すだの仲間を助けるだの守るだのは夢物語。今回の件で身に染みたろ?」

 

「それは……そう、だが……」

 

 剣姫の方をチラッと見たら首を傾けていた。おい、知らないって事は無いよな?あれだけ騒がれていたのに耳にしないってのは有り得んだろ。

 

ド忘れしてるだけだよな?

 

 

「一人で悩んで苦しむくらいなら誰かに相談しな。自分の所の主神でも団員でもいいし、オレに相談するのもいいし、種族的なものならウチの団長やエリーゼに相談すればいい。まぁ、とりあえずネックレス(コイツ)に関しては難しく考えず貰っとけ」

 

「……すまない」

 

「こういう時は謝るんじゃねーよ」

 

「あっ……ありがとう…ランガ」

 

「おう。次来る時はちゃんと身嗜みを整えてからにしろよな。綺麗なんだから勿体ないぞ?」

 

「ああ、そうさせて貰うよ」

 

 

 ゾンビみたいな顔をしていたが少しだけ柔らかい表情でフィルヴィスは帰っていった。

 

 

「そんで剣姫、お前は何時まで此処にいるつもりだ?」

 

「あ……忘れてた」

 

 

 天然無表情金髪魔法剣士少女って属性盛りすぎじゃね?

需要ある?あるよな~きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランガからの贈り物……ネックレスの御守りか」

 

 

 ディオニュソス・ファミリアの自室に戻ったフィルヴィスはランガからプレゼントされた魔除けのネックレスを見ていてある事に気付いた。

 

 

 コレは遠回しのプロポーズ的なモノなのではないか!?と。

 

 

 灰色の糸は彼の髪の色。

 黒色の糸は自分の髪の色。

 

 動物の牙は恐らく彼の魔法で右肩に出てくる魔猪の牙。

 丸い木片は恐らく霊樹と呼ばれる魔法杖等の材料に使われる貴重な樹。エルフを意識したものと思われる。

 

 牙と霊樹の間にあるのは宝石のトパーズ。それは両者の瞳の色を指している。

 

 

 励まし、プレゼント、遠回しな告白。

 

 フィルヴィスの頭はパンク寸前になり、顔はもちろん耳まで赤色になったフィルヴィスは何も考えない様にしようと『魔法の月』で買った眠り薬を飲んでベッドに倒れ込んだ。

 

 その日から悪夢を見る事が少なくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 因みにネックレスに関してはランガにはそんなプロポーズ的な意味は一つもなかった。ただ直感で作ってたらそうなっただけだった。

 

 

 

 

「ランガってさらっと口説くよねー。狙ってるのかな?どう思いますー、ヘカテー様ー?」

 

「いやぁ、ランガはウチに来て四年になるけどあれは素だよ。あの子は集中力が高過ぎて話を聞いてない時があるし、相手の良いところを素直に褒めるからね。恋愛事に関して言えば、朴念仁で一級フラグ建築士って事かな」

 

「ヘカテー様が何言ってるか分からないけどスゴい事なんですねー」

 

「そうだねぇ……修羅場が無いことを神に祈るよ。あ、神はアタシか。恋愛の神はエロースとアフロディーテとアンテロスだけど、どいつもな~。フレイヤもイシュタルもあんなだし……愛の神にマシな奴がいねぇ件について」

 

「何言ってるのか全然分かんないですよー?」

 

 

 ランガとフィルヴィスの会話を店の奥にある工房でポーション類の調合をしていた時に偶然聴いていた眼鏡神(ヘカテー)熊娘(ルゥラ)の一幕。

 

 

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