愛と苦痛の花束を   作:黒っぽい猫

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どうも、話数を重ねる毎に本当にこれでいいのか、と悩みが増えていく黒っぽい猫です

まあ、そういう話はあとがきでするとしてまずは本編をどうぞ。今回もよろしくお願いします


第三話

「決闘ですわ!!!」

 

……………頭を抱えながらどうしてこうなったのか考える僕。立ち上がって激おこモードのオルコットさん、憮然とした顔の一夏。

 

そして僕と同じく頭を抱える千冬さん。

 

どうしてこうなったのか……それは数分前に溯る。

 

 

一年一組の午後の授業はHRから始まった。そこで千冬さんは自薦を他薦問わずクラス代表者を募り始めた。

 

多くの生徒は一夏を指名。理由は一番目の男性操縦者だからという短絡的な理由。そして推薦された一夏自身は道連れという形で僕を推薦。

 

男子二人の投票となるかと思われた。

 

だがそこに待ったをかけたのがオルコットさんだった。

 

彼女曰く『最低限の知識すら持ち合わせていない一夏さんにやらせても恥をかくだけですし八代さんが代表を務めるのは彼の体質的に不可能です!!わたくしが自己推薦で立候補しますわ!』との事。真っ当な意見のような気がするが何を思ったのかそれに対してクラスメイトが反発。

 

やれ『空気読め』だの『話題性がある人にやらせた方が目立つ』だの酷く醜い言葉がオルコットさんに投げかけられていた。

 

一夏も、流石に恥とまで言われてカチンときたのかケンカを売るような発言をしてしまい、オルコットさんを挑発。その結果として冒頭に戻る、という訳だ。

 

 

 

 

 

「いいぜ。ハンデはどのくらいつける?」

 

「あら?早速お願いですの?」

 

「いや、俺がどれくらいハンデが必要なのかなーと」

 

それを聞いた瞬間クラス全体が失笑し、オルコットさんは呆れ顔をしている。

 

『男が強かったのなんて何年も前の話だよ?今女と男が戦争したら三日ももたないって言われてるのに〜』

 

『いいジョークセンスだねぇ、織斑くん』

 

明らかに馬鹿にしている口調で話す彼女達を見ていると不快になってくる。千冬さんと山田先生、オルコットさん本人でさえも顔を顰めている。

 

「……なら、ハンデはいい」

 

『今からでも遅くないから付けてもらった方がいいよ?』

 

心配している数少ない生徒の一人は一夏にそんな声をかけるが、男が一度言った言葉を曲げられるか、の一言でその親切心を両断してしまう。

 

なんでそんなつっけんどんに言うんだよ……。

 

「はぁ……取り敢えず、僕は辞退したいんですけどそういう訳にはいきませんかね?オルコットさんの言う通り、僕にはとても務められるとは思えません」

 

せめて僕だけでも辞退したかったのだが

 

「評価されるという事は、期待されているという事だ。本人が望むかどうかではなく、な。それがここまで短絡的な理由になるとは思わなかったが、申し訳ないが辞退は認められない」

 

そう言われてしまえばどうしようもない。

 

「全員注目!!この三人の中からクラスの代表者一名を選出する。選出方法はISでの模擬戦。一週間後に行う事とする。また、それまで織斑、オルコット、八代の三人の接触を禁止する!以上だ」

 

模擬戦………か。嫌だなぁ……

 

「尚、これは決定事項だ!あらゆる異論反論は認めない!!分かったらさっさと席につけ。授業を再開する!まだ決める事はいくらでもあるからな!!」

 

納得するしないに関わらず、決闘することが決まった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「慧君!迎えに来たよ〜」

 

「あ、先輩。そう言えば今日の放課後は生徒会室に行くんでしたね」

 

「何だかげっそりしてる?大丈夫??」

 

「気苦労は絶えませんけど、大丈夫ですよ。ご心配なく」

 

突然の生徒会長に教室全体がざわめいている。どうやら、僕が思っていた以上に先輩は有名人らしい。

 

『ねえ、八代君って生徒会長のお気に入りなのかな?』

 

『えー、だとしたら既に手遅れじゃ………』

 

『やっぱり狙い目は織斑君ね…』

 

驚愕のざわめきに混じってとんでもないのがあった気がするけど気にしない。

 

「そう、それじゃ早く行くわよ!突っ立ってても仕方ないんだから!」

 

「あ、ちょっと引っ張らなくても歩きますから」

 

クラスの大半が呆気に取られながら、僕は教室から引きずり出されてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで〜?イギリスの代表候補生に喧嘩売ったんだって?」

 

歩きながら話を振られる。どうやら上級生にも噂は既に広まっているのだそうだ。悪事じゃないのに千里を数分で走破している。

 

「売ったのは僕じゃなくて一夏です。僕は彼に巻き込まれただけですよ。織斑先生も辞退は認められないとの事で」

 

「ふぅん……機体はあるのよね?確か篠ノ之博士の所の」

 

「まあ、手を加えたのは僕ですけどね。七割方自作ってところです」

 

「ね。今度見せてよ、慧君のIS」

 

「試合の日にお披露目しますよ……そんなに見てて気持ちのいいものじゃないですし」

 

「え?」

 

「いえ、なんでもありません……っと生徒会室はここですか?」

 

『生徒会室』と銘打たれている部屋の前で先輩が急に止まった。思わずつんのめってしまう。

 

「ええ、中に入ってちょうだい。入るわよー」

 

返事を待たずにドアを開け、中にズカズカ入っていく先輩。まるで自室に入るかのような気軽さである。実際生徒会長の部屋と呼べなくもないので問題は特に無いのだろうが。

 

「失礼します、一年一組の八代 慧と申します。楯無先輩に呼ばれ参上しました」

 

「うん、知ってる〜」

 

挨拶をして中に入るとフワフワした返事が返ってくる。どこかで聞いたことがあるような……。

 

「君は確か……布仏 本音さん…だったっけ?同じクラスの」

 

クラスメイトが一夏の失言に笑っている時に心配そうに眉をひそめていた数少ない生徒の一人だったはずだ。

 

「そうだよ〜、女の子苦手って言ってたから忘れられてると思ってたよ〜」

 

「周りが女尊男卑に染ってる中、そうじゃない女子生徒がいるのは印象的だったからね」

 

その言葉に悲しげに目を伏せる布仏さん。

 

「皆、悪い子じゃないの……ただ、それに慣れちゃって──慣れさせられてるんだと思う」

 

「──女性権利団体か」

 

ISの開発発表と共に急速に勢力を拡大させ、公然と女尊男卑を掲げる団体だ。その力は国際連合すらも抑えることが出来ず、国際的な場で差別的な発言をすることすらある。

 

だが、その所属企業や下部組織の規模の大きさゆえに反発できるものはいない。束が姿を隠しているのも彼らに見つかり、自分がこれ以上利用されるのを避ける為だった。

 

当然そこまで大きな組織が教育に関与しないわけがない。歴史を盾に『大戦前の日本は男尊女卑社会だった。だから現在それが逆転しているのは当然の事だ』などと世迷言を植え付けているそうだ。

 

そういった教育を受け、刷り込まれた子供達は差別を容認し、またそれを受け入れてしまう。

 

「…………うん」

 

「布仏さんのせいじゃない。君がそんなに落ち込む必要は無いさ。それに弱いって思われているなら好都合さ」

 

「ありがとね、やっしー。優しいんだね」

 

拗ねている時のアイツみたいだ、と思いながら無意識のうちに布仏さんの頭を撫でる……愛称が某梨の妖精みたいなのはノーコメントで。

 

「別に僕は優しくないよ」

 

布仏さんの頭を撫でながら落ち着かせていると後ろから重さを感じる。何故か抱き着かれているようだ。

 

「招待したのは私なんだけどな〜?」

 

「???」

 

「あれ〜?やっしーは女性恐怖症だよね〜?こんなに接近して大丈夫なの〜?」

 

「僕のトラウマの原因は敵意を向けられて虐待を受け続けたことだからね。敵意やら好奇の視線やらに晒されるのは負担になるけど、布仏さんや楯無先輩からはそういうのが感じられないからかな?

 

それでも、多分今は薬が効いてるからが大きいと思うよ…効果が切れると幻覚で錯乱することもあるからさ」

 

それでもこの二人には本当に嫌悪を感じない。

 

もしかして昔会ったことが………ッ…!

 

昔を思い出そうとして思い出したのは実験室の光だった。そこで行われた麻酔無しの手術が頭を過り脂汗が流れる。

 

「すみません先輩……少し離れてもらいますか?」

 

「ッ!!大丈夫?!」

 

背中から先輩が離れた瞬間二人から距離をとり壁に背中を預け座り込む。

 

「ぁ………痛い…………」

 

左腕が、疼く。もう傷は癒えているはずなのに痛い、熱い。そこだけじゃない、背中が抉られるような激痛も伴ってあの時の光景がフラッシュバックされる。

 

「やめ…っ………怖いっ!………ごめん…なさいっ!」

 

「大丈夫、大丈夫よ慧。私がいる」

 

優しく誰かに手を握られる。夢で金属を捩じ込まれる感覚とは違う、現実の確かなもの(温もり)

 

トラウマと幻覚に囚われた視界が元に戻ってくる。生徒会室、机と椅子、こちらを心配そうに見る布仏さん。手を握って頭を撫でてくれている楯無先輩。

 

「………ごめん、なさい。昔の事を…思い出そうとして。若しかしたら、二人には僕の両親がいた頃に会ったことがあるんじゃないかって思って」

 

「「!!」」

 

「そしたら……!思い出したのは…縛り付けられて左腕を………「大丈夫。無理に思い出さなくていいのよ」……っ!!」

 

今度は手だけじゃない、体全体が温もりに包まれる。

 

「いいのよ。謝らなくて…慧君は何も悪くない…何も悪くないの」

 

「そうだよ〜。私も気にしてないから〜」

 

「ッ!!!」

 

二人の優しい微笑を見た時、自分の中で何かを思い出したような気がした。ただ、それは一瞬のことで、僕がそれの正体を掴む間もなく消えてしまった。

 

「…かた…………な……?」

 

「ぇ…………?」

 

「ううん、なんでもありません………」

 

「本当に……?」

 

「ええっと………」

 

近い。兎に角先輩が近い。先程まで意識していなかったのもあり──というか、女性をそういうふうに意識したこと自体今まで無かったのだが──抱きつかれていることで感じる先輩の心音や僕の耳元にかかる息にドキドキしてしまう。

 

「その、先輩………近いです…もう、大丈夫ですから」

 

「ん………」

 

密着するのはやめてくれたものの、投げ出した僕の足の上に乗っている先輩はじっとこちらを見つめたままである。

 

「あの〜……私もいるんですけど〜?」

 

「「あっ」」

 

それから布仏さんが声をかけるまで、その姿勢のままで、我に返った後に恥ずかしさで僕は死にたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れてすいません、会長………そこの彼は?」

 

顔を伏せたまま誰かが入ってくる音だけが聞こえる。あれから布仏さんと先輩の顔を恥ずかしくて見れない。

 

「ああ……ちょっと…ね」

 

「お嬢様が抱きついて見つめ合ってたんだよ〜」

 

「ちょっと本音!虚に言わないでって言ったわよね?!」

 

「ああ、成程。それで彼は耳まで真っ赤なのですね」

 

「………真っ赤じゃないです」

 

「真っ赤ですよ」

 

「真っ赤だね〜」

 

「真っ赤よ」

 

「っ……」

 

わかっている。反論の余地も無いくらい顔が熱を持っている。

 

「ていうか、原因は先輩でしょ………」

 

「てへっ☆」

 

……可愛いけど無視しよう。反応したら負けだ。そのまま楯無先輩の方は無視して部屋に入ってきた人──恐らく先輩だろう──に挨拶する。

 

「初めまして、申し遅れました。僕は一年一組の八代 慧です。知っているとは思いますが二人目の男性操縦者だそうです」

 

「何故他人事なのかはわかりませんが…ご丁寧にありがとうございます。私は布仏 虚と申します。愚妹がお世話になっております」

 

「いえ、そこまで深い仲でもまだないので」

 

「えぇ〜。やっしーとはもう友達〜」

 

「そうは言っても、お互いのことよく知らないからさ。それにそもそも、友達っていた事ないからまだよくわからないし」

 

僕の人との繋がりは千冬さん、束、それと妹みたいなのの三人だけだったから友達と呼べる人はいなかった。

 

「「「…………」」」

 

「?僕は義務教育も受けてないんだよ?それに今はマシだけど昔は女性だけじゃなくて対人恐怖症だったから、人と会話が出来なかったし」

 

学校、というのは勉強する場という側面と集団生活を学ぶ場というふたつの側面があると本で読んだ。前者は知識を、後者はコミュニケーション能力を養うことを目的としているが僕には後者が圧倒的に不足している。

 

有り体に言えば、他人とどう接していいのかわからないのである。

 

「それなら私と友達になろうやっしー!私が友達の第一号だよ!」

 

布仏さんがニコニコと笑いながら手を差し出してくる。握手を求められているらしい。

 

「ほら早く早く〜」

 

こんなにグイグイ来るタイプだったのか、と新たな発見に驚きながらも差し出された手をそっと握る。

 

「おお〜、やっしーの手は思ってたより大きいですなぁ」

 

「そうかな」

 

何を話していいのかわからない。まともな返答だとは思わないがもう少し何か言えと我ながら呆れてしまう。

 

「こら慧君、そんなに難しい顔しなーいの」

 

後頭部に軽い衝撃、先輩からチョップされていた。

 

「さっきも言ったでしょ?ゆっくりでいいのよ。別に急がなくても周りの人は逃げ出さないわよ?貴方には三年間あって、それが終わるまでに仲良くできればいいじゃない」

 

「そんなものなんですかね……」

 

「そんなものなのよ」

 

そう僕に言って笑った先輩の笑顔に危うく魅了される直前、布仏先輩が咳払いをして楯無先輩の首根っこを掴んだ。

 

「ところで会長」

 

「な、何かしら?」

 

「仕事して下さい。最近サボってたのですからまた仕事が溜まってます」

 

先程までの先輩らしさはどこへやら、居心地が悪そうにしている。

 

「………はい」

 

「先輩、もしかして僕を連れてきたのってこれを手伝わせる為なんじゃ……」

 

「ほら、ご飯ってゆっくり食べた方が楽しいじゃない?だからよ」

 

「………本当は?」

 

「…ごめんなさい、溜め込み過ぎてどうにもならないので助けて下さい」

 

「布仏先輩「虚でいいですよ。本音と被りますから」では虚先輩。この仕事って僕が手伝っていいものなんですか?」

 

虚先輩は少し顎に手を当ててから頷いた。

 

「まあ、はい。基本的に書類を優先度ごとに仕分けしたり、会長が決定した書類を分けるのが仕事なので問題無いかと」

 

「そうですか。それでは先輩、早く終わらせて下さいね。今夜は酢豚を作りますから」

 

「はーい」

 

この時の僕は、まだ知らなかった。これからほぼ毎日生徒会の仕事の手伝いをさせられることを。




いかがでしょうか?原作を未所持の私は図書館ISを借りているのですが、やはり読み込むのは二週間の貸し出し期間では難しいですね……古本屋を見に行こうかしら…

さて、ここからはお礼です

前回の更新後に誤字報告や感想で文体に変な部分があるとのご指摘を下さった皆様、本当にありがとうございました

今後とも誤字やおかしな部分はあるかと思いますがご指摘下さると大変助かります

また、評価やお気に入り登録をして下さった皆様、ここまで読んで下さった読者の皆様にお礼申し上げます
次回もよろしくお願い致します

黒っぽい猫でした
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