愛と苦痛の花束を   作:黒っぽい猫

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珍しく早い、でも別人じゃないです!
黒っぽい猫ですよ!黒っぽい猫!!

今回は初の戦闘ですが、どちらかというと慧君のISお披露目に近いです。未熟なのは許してくだせぇ()

さて、それでは本編をどうぞ!!


第五話

大歓声の中、ISの視界フィルターを用いて観客達を視界に入れないようにしながら周囲に目を光らせる。すると、反対側のハッチが開き青い機体が出てくる。

 

『さあ、対するはイギリスの代表候補生。貴族の名に恥じぬ立ち居振る舞いは忽ちファンを惹き付けた!上から目線も「そこがいい!罵られたい」などと一年生のみならず二年、三年生をも新たな世界へと誘ったお嬢様!セシリア・オルコット!!!』

 

………僕は思ったよりヤバい高校にいるのかもしれない。自分の体質とかそんなのを抜きにして背筋を嫌な汗が流れ落ちたのを感じる。

 

「人気なんだね……セシリアさん……」

 

『目を逸らしながら仰らないで下さいな?!わたくしはノーマルです!』

 

IS間のみで用いられる無線で話しかけると悲痛な叫び声が返ってきた。なんだか随分と大変なようだ。

 

『……学友としてなら良いのですがね。IS関連の女性達はなんといいますか……貞操の危機を感じます』

 

「ご愁傷さま………」

 

戦う前にオルコットさんは元気を失ったものの、僕にとってはいい具合に気が紛れた。お陰で直前の暗い気持ちを引きずらなくて済みそうだ。

 

『さぁ!!両者向き合った!試合開始まで残り五十秒だ!』

 

アリーナの中央に数字が浮かぶ。段々と減っていくそのカウントが徐々に頭を冷やしていく。

 

殺す必要は無い。勝てばいいんだ。

 

30…28……25…………20……………

 

左側に差してある扇を広げながら言い聞かせるように何度もその言葉を繰り返す。

 

………9、8、7、6、5、4、3、2、1──0

 

ブザーが鳴り響く。その音が僕の耳を叩いた直後、全力で接近する。

 

「踊りなさい!!わたくしとブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

オルコットさんの脇で何かが光る。あれは──

 

「ビットか!!」

 

「もう遅いですわ!!貫きなさい!」

 

計四本のレーザーが僕のことを焼かんと駆けてくる。狙いは当然僕のいるコックピット。短期決戦で僕のシールドエネルギーを削り切るつもりなのだろう。

 

「──フッ!」

 

四本のうち最も接近の早い一本を『衆合扇』を用いて射線をずらし、残りの三本を前のめりに倒れることで回避。その前へ倒れた運動エネルギーを支えに加速し再びの接近を試みる。

 

僕に遠距離兵装がない時点で、相性は最悪と言ってもいい。だが、不意をついた近接格闘の一撃であれば、食らわせるチャンスがあるはずだ。

 

「させませんわよ!!」

 

が、やはりこれもセシリアさん本人から繰り出されるレーザーに阻まれてしまう。

 

「追撃ですわ!!!」

 

「チッ!」

 

さらに休む間もなく放たれるビットからの追撃に再び距離をとることを余儀なくされる。どうやら深追いするつもりは無いらしい。ビットはオルコットさんと一定の距離離れると戻っていく。

 

「………随分と慎重だね」

 

「ええ。慧さんはどう仕掛けてくるのか予想できませんからね。勝つ為に無茶をしてカウンターをされてはかないません」

 

慢心はしませんわ。そう言って再びオルコットさんはライフルを構える。

 

「やれやれ。ただでさえ薄い勝ち筋なのになぁ……」

 

「では降参してくださいまし?白旗なら何時でも受け入れますわよ」

 

挑発するような笑みを浮かべているオルコットさんに対し、僕はどんな顔をしているのだろうか。

 

「──冗談!!!」

 

そう短く切り返し、僕は三度オルコットさんへの接近していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナに轟く歓声は途切れることを忘れたのか、狂ったように響き続ける。どの生徒の目もアリーナで戦うふたりに釘付けだ。

 

『すごい、スゴすぎる!!この二人の激闘は最早男女間の差別意識など周りから吹き飛ばすほどのものです!誰の口からも二人ともすごいという言葉が漏れております!

 

攻め続ける八代君と、それを防ぎ反撃をするオルコットさん!どちらが勝ってもおかしくありません!!』

 

「凄いですね……あの二人…」

 

「ふっ、このくらい当然だよ、山田先生」

 

感嘆の声を漏らす山田先生に織斑先生は誇らしげだ。織斑先生が直々に手ほどきをしたらしい慧と代表候補生であるセシリアさんの戦闘は、その目に入る派手さだけでなく、見る人を魅了する美しさを持ち合わせていた。

 

レーザーを紙一重で避け続ける慧は隙を見て接近戦に持ち込もうとし、それを阻むべく何手も先を読み隙を作らないようにセシリアさんは立ち回って対抗する。その構図がまるでダンスのように絶え間なく行われている。

 

代表候補生の彼女は兎も角、男性操縦者である慧の動きの良さには皆驚いているようだ。

 

(あの時の言葉は、嘘じゃなかったのね…)

 

朝言われた操縦技術だけなら負けないという言葉。その言葉通りの…いや、その言葉以上の動きを慧は私に見せている。その事実に嬉しさを感じる一方、胸の奥が少し寂しげに揺れたのを自覚する。

 

(守れると思っていただなんて……高慢もいいところだわ)

 

自虐しながら彼の試合に再び目を向ける。相変わらず二人とも互角な立ち回りをしている。

 

とは言っても、現状近距離戦に入れていない時点で不利なのは慧だ。ジリジリとシールドエネルギーは削られている。

 

(このままではいずれ──)

 

「「あっ!!!」」

 

私の不安は的中し、遂にセシリアさんの一撃が慧の機体を捉えた。慧はそのまま地面に叩きつけられ砂煙に覆われる。

 

「慧!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が始まりもう五分は経過しただろうか。未だに僕はセシリアさんに一回も攻撃を当てられずにいる。焦りを抑え、歯軋りをしながらもう何度目としれない接近をする。

 

「今度こそ………!」

 

「甘い!」

 

同じことの繰り返しのように、ビットが行方を阻む。そしてビットの攻撃を避けた先──ほんの五メートル前方の地点にオルコットさんがライフルを構え立っていた。

 

「んな──っ?!」

 

決して油断していた訳では無い。ただ、試合当初の言葉が僕の頭の中に残っていたが故、カウンターを受けかねないこの距離にオルコットさんが入ってくる可能性を無意識に頭の中から除外していたのだ。

 

「これで…チェックメイトですわ!!!」

 

回避不可能な距離だと悟り僕は彼女の銃口から着弾地点を予測し、両手で衆合扇を構える。

 

「──っ!!!」

 

凄まじい衝撃を体に受ける。射出されたレーザーの光が僕の目を焼き、オルコットさんの姿が目の前から掻き消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──見てるから。かっこいいところを私に見せて?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ハッ!!!!」

 

背中に走った衝撃が沈んだ意識を現実まで引き上げる。どうやら一瞬だけ意識が飛んでいたらしい。その一瞬の間に、今朝の先輩の言葉を思い出したような気がする。

 

「本当に厄介な呪いですね、先輩……」

 

身体はまだ動く。ISも解除されていない。それならまだ戦える。

 

「でも、このままだと埒があかない」

 

溢れるような闘争心を捩じ伏せ、一度冷静になろうと現状を整理する。

 

いくら操作性で僕がオルコットさんを上回ろうと、ジリ貧なのは遠距離攻撃ができないコチラだ。同じように戦っても勝てないだろう。

 

兵装も僕はほとんど近接用なのに対し、オルコットさんは遠距離特化型。もはや絶望的と言ってもいいのかもしれない。

 

(ああ、でもどうして──どうして僕は今こんなにも)

 

楽しいのだろうか、と自問する。この体を包み込む高揚感、強く脈打つ鼓動は今まで味わったことの無いものだ。こんな状況下で、負けてしまうかもしれないというのに僕は今とても楽しい。

 

「人を殺すのではなく、ただ勝つ為に戦う…か……」

 

成程。人が『試合』としてのISに意義を見出す理由が初めて理解できた。

 

「使おう………あれを」

 

こんなところで使って良いのか、などという躊躇いはなかった。勝つ為に全てを出し尽くす。試合は、きっと全力だから楽しいのだ。

 

「……『同調(コネクト)』」

 

左腕の人工皮が剥離し、無骨な金属が露呈する。そしてその左腕が閻魔に飲み込まれる。すると閻魔の全体がうっすらと赤く光を放ち始める。

 

「っ!」

 

左腕を介して膨大な量のデータが頭の中を駆け巡る。その多さに処理落ちを起こしかけるがなんとか堪える。

 

目から赤い液体が流れ落ちるが今はそれを拭っている暇はない。顔全体をバイザーが覆っているのもあり、オルコットさんはこの現象に気づいていないようだ。

 

脳を全力で回し逆転の一手を模索する。彼女のビットの動き、ISの動き、何より彼女自身の武装。

 

そしてISの頭脳を借りつつ僕は一つの結論に落ち着く。

 

「これしか………無いか」

 

危険ではあるし、体に負担もかかる。だがやらねばどのみち次で負ける。

 

砂煙も収まり始めた。やるなら今しかない。僕は思い切り衆合扇を空へ放り投げた。

 

「そこですわ──!?」

 

オルコットさんは、煙の中から出てくる物体をビットと手持ちのライフルで撃った。その攻撃で敵の待機位置を把握、最も撃たれる数の少ない方角から飛び出す。

 

「──!!逃がしませんわ!」

 

意表を突かれて慌てたのか、オルコットさんはこちらにビットを差し向けてくる。

 

予定通りだ。

 

僕に向けられたビットの砲身が輝き──()()()炸裂した。

 

「!たかだかビット一基!まだまだ!!」

 

驚愕に目を見開くオルコットさんだが、一瞬で切り替えたのか再びビットに指示を出す。

 

だが今の僕には、その命令の内容が全て見えている。

 

一基を背後から、そしてその一基を起点に三角形に展開。一箇所だけ逃げ場を作りそこに逃げた僕を狙撃するつもりの様だ。

 

「なら………!」

 

僕は地面を蹴りあげ全力で飛び上がる。目指す先は僕に砲を向けているビットだ。

 

「何を?!迎え撃ちなさい!」

 

「…介入(マインド)

 

腕を伸ばしオルコットさんが出した指示に介入、書き換える。

 

自爆せよ、と。

 

それによって4基あったビットの2台目も無力化に成功する。

 

「そんなっ……?!」

 

絶句したオルコットさんは今度こそ動きが一瞬止まる。

そして僕はその隙を突こうと突進する。

 

「あがぁっ!!」

 

だがしかし、どうやらそんなに甘くないようで僕の思惑に反して突如襲ってきた頭痛に僕の体の動きも止まる。

 

ISと情報共有を行っている故、本来の処理能力を遥かに凌ぐ速度で情報の処理を僕の脳は行う。そんな行為に負担がかからないはずがない。

 

その上、運動神経とISを連動させてもいるため、体全体への負荷もかなり大きい。

 

僕の目から血が流れているのもそのデメリットだ。そして今の頭痛も。

 

(でも──それでも僕は!!)

 

勝ちたい、負けたくない。

 

「はぁぁぁぁああっ!!!」

 

身体を奮い立たせて駆け、背中にある『剣山』を掴み一閃。僕の攻撃が初めてオルコットさんに直撃する。搭乗席に与えたその打撃により一割ほどシールドエネルギーを削り取る。その手応えに達成感を覚えるがそれで終わるわけにはいかない。

 

「きゃっ!?」

 

脳の処理速度をギリギリまで引き上げ、ひたすらに物理攻撃を叩き込む。今の僕を突き動かすのは『勝ちたい』という衝動だけだ。

 

「もう一撃!!!これで──終わりだっ!!」

 

僕の目に可視化された彼女のシールドエネルギーはあと僅か。これで勝てる。そう確信した。

 

その時、確かにオルコットさんは笑っていた。自分の負けが確定したというのにとても嬉しそうな笑顔だった。

 

「わたくしも、タダで負けるほど甘くはありませんわよ?」

 

僕の十数回目の攻撃がオルコットさんのシールドエネルギーを全損させると同時に、後ろから放たれたビットのレーザーにより僕もシールドエネルギーを全て失う。

 

「──ッ!!!」

 

強烈なフィードバックと同時に。同調のもうひとつのデメリット、それはISと運動神経を連動させる代償として痛覚までもが再現(フィードバック)されることだ。

 

背中を焼かれるような激痛を歯を食いしばることで堪える。この機能を知っているのは束だけなので気取らせなければ心配をかけることは無い。

 

ブザーの音が耳を突き刺す。どうやら試合終了の合図らしい。やっと周りの歓声が戻ってくる。

 

『な、なんと!!!!両者同時にエネルギー全損!!試合は引き分けだァァあ!!』

 

熱狂的に繰り返される拍手の中オルコットさんがこちらに近づいてくる。

 

その表情は穏やかで、どこか晴れやかだった。

 

「お疲れ様です、慧さん。良い試合でしたわね」

 

「どうだろうね……僕は必死に食らいつこうとしただけさ」

 

余裕なんて無かったし、今も肩で息をしている。頭痛に苛まれているし吐き気も酷い。もう起きているのもやっとだ。

 

「たった二つの武装でわたくしの攻撃を受けきったというのに、それではまるで嫌味のようですわよ?

 

……もし慧さんが全力でしたら、わたくしは瞬殺されていましたわね」

 

自虐するように笑いながら、オルコットさんは目を伏せている。本当にそう思っているのだろう。

 

「それなら、もっと強くなればいい。上がいるってことは、今以上に強くなれるってことなんだから。それは君の伸び代だと思うよ、オルコットさん」

 

上手い言葉をかけられたかはわからない。人と話す機会があまりにも少なかったから口下手だろうし。

 

「そう……ですわね………」

 

でも感慨深そうにオルコットさんが頷いているところを見るに、上手く言葉をかけられたらしい。

 

「さ、僕達は一旦引こうオルコットさん。しばらくピットインの時間だろうしね」

 

「そうですわね。あ、わたくしのことはこれからセシリアと呼んでくださいな。慧さんであれば構いません。殿方にファーストネームを呼ばせるのはこれが初めてですが♪」

 

ウインクをしているオルコットさん──もといセシリアさんに僕も笑みを浮かべた。

 

が、そこまでが限界だった。不意に体から力が抜けるとISが解除される。勿論、僕達がいるのは空中だ。

 

「あっ──」

 

「慧さん!!!」

 

セシリアさんは手を伸ばしているけれども僕が彼女に伸ばした手は空を切った。僕の落下を妨げるものは何も無かった。

 

(身体──動かないや)

 

さすがに歴史上こんな間抜けな落ち方をするのは僕だけだろうな、なんて事を考えていると、ガクン!と急に落下が止まる。

 

「──痛!」

 

その衝撃に頭が揺らされ頭痛が再発する。痛む頭を撫でながら上を見ると、水色の機体が僕の足を掴んでいた。

 

「…………先輩?」

 

「………」

 

先輩と思われる搭乗者は何も言わず僕のことを運んでいく。もちろん逆さまのままなので血は頭に上る。当然、頭痛は悪化する。

 

「………先輩、せめて宙ずりは勘弁して貰えませんか?というか、なんで僕こんな運び方されているんですか?」

 

「………」

 

何故だろう、先輩から不機嫌なオーラを感じる。

 

そして僕はそのまま出撃口まで連れていかれ、丁寧に降ろされた。

 

「………あの、先輩」

 

「………」

 

無言のまま先輩は自分のISを解除しこちらに近づいてくる。その目はジトッと僕のことを見ている。起き上がることも億劫な僕はそのまま先輩を眺めることしか出来ない。

 

「………慧君、私は怒っています」

 

「はい、それはなんとなくわかります」

 

僕の上に跨り、僕の逃げ場を塞ぐように先輩は両手を顔の側面につく。所謂床ドン状態だ。

 

「じゃあ、どうして怒っているのかは?」

 

「………カッコイイ姿、見せられませんでした。ゴメンなさい」

 

「…………」

 

おかしい。僕は確かに正解を口にしたはずなのに先輩の機嫌が直るどころか寧ろますます悪くなっている。

 

「ええっと………違い、ますか?」

 

どうやら違ったらしい。とぼけているわけではないとは理解したようで、先輩は一つため息をついてから諭すように言ってくる。

 

「………想像してみて、慧君。もしも慧君の大切な人が頑張ってたらどうする?」

 

大切な人……束だろうか。一番身近にいた人だから思い浮かべるのは容易なことだ。

 

「応援、すると思います」

 

「うん、そうね。でも、もしその人が自分の身体を全く顧みないで死にそうなほど頑張っていたとしたらどうする?」

 

大切な人が……死にそうなほど…?

 

「もしもそんな事になっていたら、まず止めます。身体が心配ですから。その後は──お説教ですね」

 

束の徹夜を諌めた回数はもう十や二十ではきかないだろう。その度に説教をしたのはいい思い出──ではないな。その度にむくれるし。

 

「はい、今の大切な人を慧君自身と重ねてみて」

 

そこまで言われて、僕はようやく先輩が言わんとしている事を理解した。要するに、僕は先輩を心配させてしまっていたのだろう。

 

「………ごめんなさい、心配をおかけして」

 

「…ん。医務室に行くわよ、慧君」

 

笑顔は浮かべなかったが、先程より幾分か穏やかな顔で先輩は肩を貸してくれた。

 

「でももう一試合残って「駄目に決まってるでしょうが、お馬鹿」はい」

 

一応言ってみたものの全て言われる前に却下されてしまった。

 

「織斑先生からも、もう慧君の試合はしなくていいって言われたわ。身体をしっかり休めて明日からの授業にちゃんと出席しなさいって」

 

「………そう、ですか…千冬さんにも迷惑を…」

 

「そう思うなら、自分を傷つけてまで戦わないでよ、慧君……」

 

「…………」

 

先輩の言葉に、僕は何も返せなかった。

 

 

 

 

 

 

アリーナの中にある医務室に入ると、ベッドに寝かされる。しばしの沈黙のあと、先輩の細い綺麗な指が僕の頬に触れる。その手が僕の流した血で濡れるのを見て僕の胸には得体の知れぬ痛みが走った。

 

「……慧君のISの力、私に教えてくれる?」

 

「………何故です?」

 

「貴方を守りたいから。貴方のことを知っておけば、何かあった時に対応もしやすいでしょ?私も話すから」

 

「守られるほど、僕は弱くありません」

 

「知ってる。でも、その力でさっき落ちたのは誰かしら?」

 

軽い雰囲気で言う先輩だが、その目に雰囲気ほどの軽さはない。

 

「……先輩、意地悪ですね」

 

「あら、今更気づいたの?おねーさん、結構イタズラ好きよ?」

 

「わかりました、降参です。お話します。

 

僕の専用機『閻魔』は、戦闘を見ておわかりいただいた通り僕の義手とドッキングさせることが出来ます」

 

左腕を見せると、先輩の表情が歪んだ。あまり見ていて気持ちの良いものでは無いし当然か。

 

「この力を使うと二種類の力が使えるようになります。

 

一つ目はこの機体以外が用いる遠隔操作武装の操作権を強奪すること──より正確に言えば、敵の遠隔操作武装への通信に介入して書き換えるということです。セシリアさんのビットを破壊したのはこの効果ですね。

 

そしてもう一つ──僕の脳から流れる運動の指令を左腕を介して直接ISに伝達する力があります。剣山を用いての攻撃はこれを利用したが故にあんな速度で連撃ができました」

 

「そう………それだけ?」

 

「単一仕様能力は──ぁ」

 

ぐにゃり。と擬音が聞こえそうなほど視界が歪んだ。そして──

 

「──────────!!!!!!」

 

「ちょ………い?!どうし」

 

僕の視界は、まるで電源の切られたテレビの様に不意に暗闇に染った。視界だけではない、聴覚も、嗅覚も、声帯すらも動かない。

 

そして、その暗闇の中に僕の意識は溶け落ちていくのだった。




如何でしたでしょうか?戦闘描写は今後まだまだ伸ばしていきたいと思います……未熟でごめんなさい。

もし、主人公機体の情報をまとめて出して欲しい!という要望がありましたら次回かその次のあとがきか前書きに書かせていただこうかと思います

前書きと後書き、どちらが良いかまで記入していただけると助かります



露骨な感想稼ぎはここまでにして(おい)、ここからは私事です

まず、この作品のお気に入りが90件を超えました
二つ目に、この作品が日刊ランキング71位にランクインしておりました

これも一重に読者の皆様のおかげです
誠にありがとうございます

これからもよろしくお願い致します

長くなりましたがここまで読んで下さった皆様に重ねて感謝をさせていただき、後書きと致します

それではまた次回更新でお会いしましょう!
サラダバー(・ω・)ノシ

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