今回もよろしくお願いします
この話のあとがきは機体の説明書きとなっております。よろしければ読んでください
また、ここおかしくね?などありましたらご指摘のほどよろしくお願い申し上げます
それでは本編です、どうぞ!!
「これより授業を始める。各自ペアを作り柔軟を行え!五分後に再び整列!」
『はい!!』
アリーナに凛とした声が響く。その中で僕は取り敢えず近くにいた一夏に声をかける。大体の女子がペアで柔軟をしているのでそれに従ってペアを作るためだ。
「一緒に柔軟やろう、一夏」
「おう、いいぜ!」
「背中押してくれる?」
開脚し、一夏に後ろから押してもらう。毎日風呂上がりに柔軟をやっているお陰で特に問題なく腹まで地面につく。
「うわっ、体柔らかいな慧。少し気持ち悪いぞ」
「言ってくれるね……別にいいでしょ、体が柔らかい男子でも」
地味にこちらの心を抉ってくる一夏に仕返しとばかりに今度は僕が思い切り背中を押し込むが、半分をすぎた辺りでピタリと動かなくなった──が、ここで辞めては仕返しにならない。
「いてててて!慧!痛い!!痛いから!!!」
躊躇なく体重を賭け奥に動かしていく。
「痛みを感じないと柔らかくならないぞー」
「気持ち悪いって言ったの謝るからやめてくれ!俺が悪かった!」
「分かればよろしい」
「いてて……股が裂けるかと思った……」
大袈裟な一夏に手を貸して起こしながら元の位置に整列する。僕達が戻る頃には既にほとんどの生徒が整列していた。そんな僕達の耳に、再び千冬さんの声が響く。
「よろしい、では本日の訓練──授業だが、八代。織斑、オルコット。前に出てこい。手本を皆に見せてもらう」
「「「はい」」」
指名された僕、一夏、セシリアさんは急いで前に出る。教官モードの千冬さんはとても怖い。今授業を訓練って言ったよね?
「それでは私の合図によってISを起動してもらう……はじめっ!」
瞬時に首輪が光って僕の機体──閻魔が体に装着される。
手間取った一夏を以外の僕とセシリアさんを見て頷き、一夏を睨みつけながら千冬さんは続ける。
「この様に、ISの扱いになれてくればコンマ一秒以下でISを展開できるようになる。諸君らもIS乗りを志すつもりなのであればこの程度のことは造作もなくできるようになってもらう。次に武装の展開だ、まずはオルコット、慧。遠距離用の武装を展開しろ」
「「はい」」
再び僕とセシリアさんがほぼ同時に武装を展開する。僕が展開したのはセシリアさんとの試合では使わなかった武装だ。拳銃のような形をした黒い鉄の塊──『黒縄』と呼んでいる武装だ。
一度引き金を引くとワイヤー付きの鉤爪が飛び出し的を貫き二度目の引き金でワイヤーを巻きとる。意表を着いた動きをする際にとても重宝する。どちらかと言えば中距離用だが飛び道具はこの程度しかないので仕方なく展開する。
尤も、この前は使う機会もなかったのでお披露目しなかったが。
「うむ、まあこんなものだろう。では次に近接用武器の展開を行え」
その言葉に『黒縄』をしまい込んで今度は試合でも使った近接武装の『剣山』を展開する。やる事は先程と別に変わらない。
だが……
「どうした、オルコット?さっさと展開しろ」
「くっ……このっ……ええい!『インターセプター』!!」
セシリアさんは中々武装を取り出せず、千冬さんに急かされて最終的に武装の名前を呼んで武装を展開していた。
名前を呼んで武装を出すのは初心者、形をイメージして取り出すのが中級者であり、形を思い描く前に欲しいものを取り出せるようになってようやく上級者と言われる。
僕は曲がりなりにも形がなくても呼び出せるし、セシリアさんも遠距離武装は普通に呼び出していた。使う武器に偏りがある故だろうが、呼び出し方が初心者のそれでは本人も不本意だろう。
「オルコット、少しは近接武器の取り扱いにも慣れておけ」
「で、ですが織斑先生。わたくしは間合いにそもそも入らせませんので──」
「この前の試合で二試合ともかなり接近されていたようだが?」
「うぐっ──」
「それとも何か?お前は遠距離戦から近距離戦になる度に武装の名前を叫びたいと?」
「うぅ……」
段々と覇気が無くなっていく。借りてきた猫のようにしょんぼりとしたセシリアさんを見てため息をついた千冬さんは今度はこちらに向き直る。
「わかったらオルコットは今後の自主訓練に近接格闘を加えるように。
よし、八代。そのまま飛んでみろ。織斑、前に出てきてお前もだ。その位はできるだろう?」
「はぁ……」
「気の抜けた返事をするな!!!」
「はいっ!」
呼ばれた一夏は随分と強く当たられているようだ。やはり姉弟だからだろうか。身内贔屓はあまり褒められたことでは無いが千冬さんも人の子だということなのだろう。
専用機──確か『白式』だった──を展開した一夏が勢いよく飛び出した。その速度で行くと──っ!!
「一夏っ!!!」
咄嗟に黒縄を再展開しワイヤーを射出、ドームの天井に突き刺して一気に巻きとる。恐らく一夏は逆噴射の方法は知らないからこの速度で天井に激突したらいくら絶対防御があっても無傷ではいられない。
「のわぁぁぁあっ!!!」
一夏を追い越し天井に着地、そのまま今度は天井に向けて推進剤の全力噴射を行い白式に体当たりをする形で少し強引だが勢いを殺し、地面へと勢いよく突っ込む。
「──っ!」
乱暴な形となる為一夏にもダメージは入るがとてつもなく硬いアリーナの天井に激突するよりはマシだと割り切ってもらうしかないだろう。
ズドン!!!と強烈な音と共に僕と一夏は地面に叩きつけられる。勿論痛みは無いが衝撃が脳を揺らし意識を奪いさろうとする。
「一夏……」
ふらつく視界を無理矢理見ながら立ち上がり一夏を見る。こちらもふらつきながら立ち上がってきたのを見てホッとする。
「いててて……慧、ありがとな。助かったよ」
「いやまあ、あのままだと白式が壊れてたかもしれないし。これからその機体を使うことが増えるのにそんな事になったら副代表として僕が戦場に立つ羽目になるかもしれないでしょ。それはイヤだよ、僕は」
「素直じゃねぇなあ、慧は」
「うっさい一夏……と、織斑先生が来た」
「八代、織斑、無事か?!」
少しの間呆けていた千冬さんがこちらに駆け寄ってくる。
「ええ。無事です。ですが織斑先生、やはりまだ操縦技術が未熟な一夏にこれは早すぎると思います。試合の時完璧に操縦出来たのだとしても彼に基礎知識が不足している状態で今のように突然実習に放り込むのは無謀が過ぎるのでは?」
「うむ……要検討する」
流石の千冬さんも、このような事があっては強く出れないらしい。なんとも言えない雰囲気のまま、この日の実技訓練は終わった。
「訓練の時、一夏君を助けたんですってね?」
「ええ。僕は仮にも副代表ですから。彼に怪我をされたら彼の仕事が僕に回ってくる。そんなのつまらないじゃないですか」
その日の放課後、生徒会室で仕事をしているとニコニコしている楯無先輩がそんな話を切り出してきた。
「その話なら私も聞きました。なんでも織斑君を地面に押し倒したのだとか。クラスの友人が『一慧キマシタワー!!』と叫んでいたのを小耳に挟みました」
……そんな情報は小耳に挟んで欲しくなかった。捏造もいいところである。
「時に、一慧とはなんなのでしょうか?」
「この世界には知らなくていい事の方が多いんだよお姉ちゃん」
首を傾げた虚先輩に本音さんが答えている。その通り、そんな視線を向けられるこちらの身にもなって欲しい。せめて虚先輩にはそういう事を知って欲しくない。
「一慧……アリかも…………?」
「……楯無先輩、お願いですから変な方向に拗らせないでくださいね?」
前者は別にいいと思うが、後者は僕の目に見える範囲でやらないで欲しい……いや、目の届かない所で拡散されても困る。やっぱり僕を対象にしないで欲しい。
「おりむーはともかく、やっしーがそう思われてるのは仕方が無いんじゃないかな?」
「……というと?」
「だってやっしー自己紹介の時に『女性が苦手』って言ってたじゃん」
……一番の地雷を落としていたのはもしかして僕自身?
「もしかしなくてもやっしーの自業自得だよね〜」
フワフワと笑う本音さんと若干頬を赤らめてトリップする先輩を前に、僕は頭を抱えるしかなかった。
閑話休題。
「そういえば、そろそろ春のクラス対抗戦の時期よね。慧君と本音のクラスからはやっぱり一夏君よね?」
「ええ、恐らく。僕に何も言って来ないということは一夏もその気なのだと思います」
クラス対抗戦、ちょうど春の終わりと初夏の始まりの合間に行われる学年別、クラス対抗で行われる試合だ。勿論出るのはクラスの代表の一夏だ。
もし一夏が普通の学生ならあの操縦技術を心配してクラスの全員で特訓を行うが、一夏は普通の学生ではない。
「幾ら操作がおぼつかなくても、専用機持ちの一夏はそうそう負けませんからね。僕にはあまり関係ないですがほぼ勝ちだと思います」
「そーだよねー。今から景品が楽しみだな〜」
専用機と量産訓練機の間にはそのくらいのスペック差があるのだ。僕と、僕の言葉に同意する本音さんに先輩は含みのある笑顔を浮かべた。
「ふふふ……それはどうかしらね?」
「何かあるんですか、先輩?」
「ええ。生徒会の三人には先に話しておくけれども「いや、僕は生徒会の役職に着いた覚えはありませ──」編入生が来るのよ、それも専用機持ちの」
僕の訴えは華麗にスルーされた。虚先輩も特に突っ込まずに話はその編入生の方に流れていく。本音さんもそちらに興味津々のようだ。
「専用機持ち?またどこかの国の代表候補生ですか?」
「ええ。中国からの来校よ。確か今日か明日には到着する予定だけど、1年2組に行くから慧君とは別クラスね」
「ふうん、そうなるとまた話は変わってきますね。一夏がセシリアさん相手に善戦したことは向こうも知ってるでしょうから」
「ええ。恐らく舐めてかかられることは無い。本気で来るでしょうね」
「……厳しいですね、今の一夏だと」
「え〜〜。景品が遠のくのは困るな〜〜」
「そういえば、その景品ってなんなの?」
「食堂のスイーツ無料券だよ〜。それと新メニューの優先試食券。食堂は何時も新メニューが作られた後で試食を集うんだけど〜、それに優先で抽選される券なの〜」
へえ、普段は食堂を使わないのでよく分からないな。僕と先輩の部屋には調理用設備が揃っているし、マーケットも敷地から一歩出ればある。土日は基本的に外出を認められているので週に一度買い物へ行けば二人が一週間食べる分は確保できる。
足りない時は申請をすれば20:30までの外出は認められるのでそれを使ってもいいのだしね。
「新メニューの開発とかだったらもう少しやる気が出たかな……甘いものはそれ程好きじゃないし」
「へ〜、そうなの?」
「ええ。だからもしうちのクラスが貰う事になったら先輩にあげます」
「ホント?!」
ガタン、と楯無先輩が勢いよく立ち上がる。それほど長い付き合いではないが、先輩が甘いもの好きなのは何となくわかる。
「ホント?!嘘じゃないわよね!」
「はい」
「〜〜♪」
嬉しそうに飛び跳ねる先輩の横で本音さんが少し残念そうな顔をしている。その口がもにょもにょ動くのを読唇術で読んでみる。
(貰いたかったのに……?いやいや、食い意地張りすぎでしょ……)
対照的な二人を見て僕と虚先輩は顔を見合わせて苦笑を浮かべるのだった。
ふと、僕のスマートフォンが着信を報せる。こんな不規則な時間に僕に掛けてくる人間なんて一人しか思い至らない。
「少し外に失礼します」
「?ええ」
先輩達に断って外に出て電話に出る。
「もしもし、束?どうしたの急に?」
『やっほーけー君。久し振りにけー君も束さんの声が聞きたくなってきた頃じゃないかなって思って掛けてきたのだよ〜。どうかな?楯無ちゃんとはもうやる事ヤったのかな〜?』
「……切っていい?」
『あー!冗談だよ冗談!待って待って切らないで〜』
「寂しがってるのはどっちなのさ、束……まあいいさ。それで要件は何?」
慌てる様子の束に苦笑いしながら先を話すように促す。
『んーと、けー君に送って貰った『閻魔』の一応の計測結果からできる考察が終わったから報告と、あの子達と4機は送っておいたからあと二、三日でけー君の手元に届くと思うよって話』
「ありがとう、束。それで考察データの方は送るだけじゃダメなの?」
『うん、改めて慧君に釘を指しておかないといけないから』
珍しい、束がはっきり僕の名前を呼ぶなんて。
「ふーん?」
『慧君、結論から言うとね──『閻魔』の《同調》はもう使わない方がいい。使い続ければ、それは最終的に慧君の脳を損傷させる。記憶喪失じゃあ済まなくなる』
「………………」
『あれは、脳にかかる負荷が強すぎる。人間の脳は普段リミッターをかけているから5%程度しか使えない。天才の私をもってしても恐らく全体の10%を使えていればいい方なの。
──今回、慧君は自分の脳の15%以上を活用していた、それも機械で無理矢理活性化させた結果に、だ。そんな無茶を繰り返せば、遠からず慧君の脳は損傷する』
そんな事、私は認められない。強い口調で束は断じた。
「……」
『慧君の目的にあの力は必須なわけじゃない。今回送るあの子達をちゃんと使えば問題は無いはずだよね?だからお願い──もう《同調》は使わないで』
「……わかった。でも、僕は僕で
『……自分の体で試すのは禁止だよ?』
「わかってる。あくまでデータのみにする」
『ならいいけど』
まだ心配してくれる人がいる。その事が、僕をまだ辛うじてこの世界に繋ぎ止めてくれているのだろう。
「…………ありがとう、束」
ボソリと呟いた言葉だったが、どうやら全ては拾えなかったらしい。
『え?どうかしたの?』
「いや、なんでもない。それより、そろそろ先輩達のところに戻らないといけないから行くよ」
『うん……ね、けー君』
「うん?どうしたの、束?」
『今、楽しい?』
「どうかな……少なくとも、退屈することはなさそうだよ。束といた時と同じだよ」
『そっか……』
「?」
『ううん。なんでもないよ!それじゃけー君!今度はそっちに会いに行くから楽しみにしててね!!まったねー☆』
「は?いや、ちょったば──」
ツー、ツー
会いに来るって……あのウルトラ引きこもりで機械オタク、宇宙大好きで外の世界の人大嫌いって言ってた束が?
こんなに人まみれのこの場所に?
「……不安だな」
来る事の喜びより先に不安や心配が出てしまうのは、束の日頃の行いだから気にしないことにするのだった。
第三世代機『閻魔』
全体的に細いフォルムが特徴のISであり、八代慧の専用機。その色は黒く、機体の至る場所に灰白色の線がヒビのように刻み込まれている。
約二年半の歳月をかけて量産用機体から慧がカスタマイズを行って作り上げた。本体の武装は少ないものの『同調』や『換装』を組み合わせることによって最新鋭のISとも互角に渡り合える。
①『同調』について
彼の義手となっている左腕と機体を直結させることによって脳とISを結び付け、通常では不可能な反射速度、機動力を生み出す。
ただし脳にかかる負荷が大きく、リミッターを掛けても一時的な意識の混濁、記憶の喪失が起こる。また、ISに当たった攻撃の何割かを自身の痛覚に反映するフィードバックも発生する。
余談ではあるが、セシリア・オルコットと行った試合で用いた時は『同調』の出力割合は起動可能領域の四割に抑えていた。
現在、篠ノ之束により使用が禁止されている。
②『換装』について
彼のISの武装が少ないのには『換装』を行う際に武器スロットに余裕を持たせる目的もある。
彼の機体にはオプションとして計4機の独立駆動型ビットが付属されている。セシリア・オルコットとの試合では調整と輸送が間に合わず使われなかったが、それらそれぞれ、或いは複数と『換装』を行う事でこの機体は本来の力を発揮できる。
4機のビットについては登場した時に随時説明を挟んでいく。
③武装について
閻魔が持つ武装は以下の通りである。
剣山……無骨な細剣。特殊なものは何も無く相手に対して突いてダメージを負わせる。基本的に背中に背負う。
衆合扇……鉄扇であり、当然折り畳んでの収納も可能。特殊なコーティングにより一定量までならレーザー兵装を無効化できる。物理攻撃も可能。普段は左側に刀のように身に付けている。
黒縄……ワイヤーガン。武器の回収を主に想定され作られた武装。2丁ある為両手が塞がるというデメリットを除けば立体機○装置のような運用もできる。
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如何でしょうか?なにかご不明点などありましたら加筆修正の際の参考にしたいので遠慮なくよろしくお願いします
できればもう少し早く投稿したいなぁ……などと思っておりますがお察しですね、はい。
最近私も鼻風邪気味です。どうか皆様もご自愛なさって下さい
Twitter、もっと遊びに来てくださっても宜しいですよ?()
長話もあれですね、それではなるべく早く、また次回お会いしましょう!サヨナラ!!