ええい、私の機体は百式だと……! 作:カタクリコン
拝啓、
「……」
周りからの異常な注目という慣れない環境で、いささか困惑しています。
IS―正式名称、インフィニット・ストラトス―。それは、現行の兵器を置き去りにする世界最新のパワードスーツ。高性能なセンサーに柔軟な慣性制御による三次元機動の可能、また通常の兵装を寄せ付けないシールドエネルギーと搭乗者を確実に保護する絶対防御などなど……まるでSF作品の兵器をそのまま持ってきたようなこのシロモノは、ただ2つ重大な欠点を持っていた。それは、ISが467機しか存在しないこと、また女性にしか乗れないことである。
これにより、世界は女尊男卑という、IS搭乗以前よりも酷い世の中となった。世界は、ISに関する国際条約として「アラスカ条約」を締結。そして、この状況を作った人物の出身国である日本にIS搭乗者の養成学校を設立した。それが、IS学園である。
(何故こうも見つめられるのか。せめてもの救いは、注目の的が他にもいることか……)
少女は見てくれこそ泰然自若としていたが、精神的に疲弊していた。。この教室に入ってからずっと、全方位から来る視線の数々を黙って耐えていればそうなるだろう。そもそも、何故席が窓際の真ん中なのに視線が集まるのだろうか。一瞬横を一瞥すると、廊下にも人だかりができている。そこまでするのか、と心中でため息を吐きつつ、少女――バジーナ・アズナブル――はただ耐えていた。少なくとも、授業になればある程度視線が無くなるだろうと踏んでのことだ。早く授業よ始まってくれ、と人生で初めて授業の大切さを噛みしめながら、バジーナは視線の矢に耐えながら今までの人生を振り返る。
バジーナ・アズナブルは、前世を所有するアメリカ生まれの少女である。と言っても、肝心の前世の内容は一般的な教養と
(図らずもかつて望んだ夢を叶えてしまったのが運の尽きか……)
視線もそうだが、聞こえそうで聞こえない会話もちらちら聞こえてくる。十中八九、自分か彼の事だろう。自意識過剰とかではなく。それもこれも企業の経営戦略の弊害である。当初、バジーナが所属する企業は宇宙開発からの半ば強引な切り換えのため、業績に伸び悩んだ。その状況を一変させるために取った方策が、広告塔による世界への発信である。これにより、元々中性的な美人であったバジーナは、メディアに露出するという新たな仕事が増えた。その成果もあり、企業の業績は鰻上り。そして、沢山の女子からのファンレターならびに贈り物が増加した。何故だ。
そんなことを考えている内に、ようやく予鈴が鳴り響く。自分に付き纏っていた視線も幾ばくか消えたのを安堵した。そして、勢いよくドアが開き、慌てて少女が現れた。揺れている、何がとは言わないが。
(……)
一瞬、自由落下運動と振り子の法則について真剣に考察しようと考えたバジーナだったが、少女が教卓に立ったので思考を止めた。少女は少し落ち着かない様子ながらも、声を上げる。
「改めて、皆さん入学おめでとうございます。先生は、副担任の
少女ー山田先生ーはそう言って笑みを浮かべる。どうやら少女だと思っていたが教師だったようだ。自分と同い年のように感じる童顔、そしてあの弾頭。悩ましい。そのまま山田先生は、学園についての概要と授業や試験といった全体的な説明を進めていく。そして、大分緊張が解れてきたのか、
「はい、それでは皆さん。自己紹介をしていきましょうか」
自己紹介。バジーナは心中で頭を抱える。自己紹介自体は別に問題ではない。問題は、自己紹介をする際に全員からの視線が一気に自分に来ることである。ISのパイロットを兼ねて過ごしてたハイスクール時代。やたらと女子から色々な贈り物を様々なイベントで貰ったり、付き纏われたりした。挙句の果てには、ストーキングに勤しむものまで現れ、精神が疲弊したこともある。そんな経験があり、尚且つ顔が知れている自分が自己紹介するとなれば、と想定してバジーナは小さく溜息を吐く。そうして色々考えていると、どうやら順番が
織斑一夏。ISの世界的競技大会であるモンド・グロッソの初代勝者で、“
(彼はこれから色々と大変だろう。環境にしても、状況にしても)
名前を言うだけで終わった自己紹介で周りがリアクションを取るのを見ながら、バジーナは苦笑する。そうしていると、教室のドアが開き、スーツ姿の女性が躊躇なく一夏少年に出席簿を叩きこんだ。苦痛に呻く一夏少年に気にせず、自己紹介の内容に苦言を呈している。
(千冬姉……一夏少年がそう呼んでいたということはつまり、あの女性が織斑千冬か……)
バジーナがそんなことを考えていると、織斑千冬は教卓の前に立ち、口を開いた。
「私は織斑千冬。このクラスの担任だ。私の仕事は、1年間でひよっこを少しまともなひよっこにすることだ。そのために私が導いてやる、だから私に従え。返事はハイだ、それ以外は認めん」
まさかの開幕独裁宣言である。ここに、我が1年1組は独裁学級となった。
(……聞き間違いか?昨今は教師も色々と気を付けなければならないというのに。ISについて教導する人材が少ないからといって、これはどうなのだろうか)
そうバジーナが考えていた次の瞬間、
「「「「「「キャァァァァァァァ、千冬様よー!」」」」」」
(彼女達は今の発言に何も思わないのだろうか……乙女というのは恐ろしいものだな)
興奮する級友たちに内心戦慄している、憧れを前にした乙女たちは止まらない。
「私、千冬様に憧れて頑張って田舎からIS学園に来たんです!」
「お姉さま、会えてうれしいです!私の制服にサインしてください、家宝にします!」
「私を妹にしてください!」
「千冬様、私を雪片で斬ってください!斬られたいんです!」
などなど、普通の声もあれば性癖などを晒け出している声も聞こえてくる。一部の生徒のアピールに、かつてのストーカー少女を思い出しバジーナは身を震わせた。生徒たちの態度に辟易しているのは眼前の
「……全く、何故こうも私のクラスは問題児ばかり集めてくるのか……んんっ、兎も角だ。これk」
何かを言おうとしていた織斑先生だったが、SHRの終わりを告げる予鈴が鳴る。
「……途中だが、SHRは終了する。これから諸君らは基礎と実習に明け暮れるだろう。私の言うことを聞き、実践しろ。出来なければ感じろ。返事はハイのみしか認めん。以上だ」
そう言って、授業の準備があるのか山田先生を伴いながら教室から出ていった。さて、そうすると厄介な問題が出てくる。おそらく女子たちは、一夏少年に対しては見つめるだけで済ますだろう。しかし、自分はどうだろうか。
「……あの、アズナブルさん」
早速来た。傍らに来た級友である生徒に、まともな人格者であってくれと失礼なことを考えながらバジーナは口を開く。
「どうしたんだ?」
バジーナの問い掛けに、少女は俯きがちになりながらも、ゆっくりと口を開く。いつの間にか、周囲もそれを固唾を飲んで見守っていた。バジーナも内心身を震わせながら答えを待つ。
「あの……サインください!」
少女はノートとサインペンをこちらに突き出す。良かった、本当にありがとうございます。バジーナの心は平穏を取り戻した。普通の人だ、いや良い人だ。
「ああ、それくらいならいくらでも構わんよ」
快く受け取り、慣れた調子でサインをした。このぐらいなら仕事でやることもあるため、全然いい。開幕告白&異臭のする飲み物よりは、ずっといい。しかし、バジーナは失念していた。この身はもはや、半ばタレントのようなものだ。そんな自分が快く対応したとなれば……
「アズナブルさん!私にも頂戴!」
「アズナブルさんの話、色々聞きたいな!」
「彼氏はいるの?それとも彼女?」
「ずっと前から好きでした、付き合ってください!」
少女たちが自分の眼前で雪崩込み、混沌としている。その状況を早く打開するため、バジーナは、事態の収拾を迅速に行うためにまずはサインの要求から捌いていくことにした。
IS学園は流石エリート校というべきか、初日から授業が始まる。しかし、既にある程度の知識は企業の人間からISの必須知識を叩き込まれていたバジーナにとっては覚えのある内容ばかりだった。また周囲を見れば、倍率の高い一般枠を勝ち取った学生らも集中して授業に臨んでいる。そんな中、明らかに憔悴している者がいた。
「織斑君、ここまでで何か分からないことがありますか?」
山田先生も少し様子がおかしいことに気が付いたのか、キリの良い所で様子のおかしい一夏へと問い掛ける。一夏の視線は、山田先生と机の上に開かれた教科書を往復ている。
「分からないところがあったら遠慮せずに聞いてださいね。分からないままにしておくのは良くないですから」
優しい山田先生の言葉に、覚悟を決めたのか。一夏は真剣な表情で口を開いた。
「先生、全部分かりません!」
瞬間、教室の空気が凍る。あくまでも一夏少年は、部分的に知識に穴が開いている程度だと予想していたため、バジーナもこれは流石に予想外だった。たまらず苦笑を浮かべる。この段階の知識は、学園に入学する前に配布される参考書に記載された内容であり、あくまでこの授業はそれの復習によって知識の定着を図るというものだ。まさか、女子に配って唯一の男子には配らなかった、ということはまずありえないだろう。国から推薦を受けた代表候補生や企業所属であるバジーナは勿論、一般学生もこの段階の内容で分からないところは無いはずである。
「えっと……織斑君の他には、ここまでで分からないところがあった人はいますか?」
この答えに顔いっぱいに困った笑いを浮かべながら、教室全体に山田先生が問いかける。やはり、誰も手を挙げる者はいなかった。まあ当然だろう。
(まさか、参考書を間違って捨てた……などということはないか。ジョークでも笑えんな)
果たしてことの真偽はどうなのか。バジーナ以下全ての女学生が見守る中、教室の隅で授業を見守っていた織斑先生が口火を切った。
「織斑、入学する前に届いた参考書があっただろう。あれはどうした?」
織斑先生の問い掛けに、一夏は頭を捻っている。およそ2分それを続けていた一夏は、何か思い出したのそれに答えようとする。
「あー!あれか!あれは……」
そう答えようとした口は、突如止まった。そして一筋の汗が顔から流れる。まさか……
「古本と一緒に間違って捨てました」
再び騒然とする教室。そこに重い打撃音が響き、それによってまた静寂に包まれる。
「あれは必読だ、馬鹿者」
出席簿を叩きこまれ悶絶している一夏に呆れつつ、織斑先生は続ける。
「再発行はする。1週間で覚えるように」
「あれ、を……ですか?」
「他の者もそれを行っている。出来んとは言わせん」
その言葉にぐうの音もでない一夏だったが、更に言葉は続いた。
「ISは実際、世界を変えた代物だ。無論それだけでなく、その能力も高い。反面、何かが起こればそのとばっちりが必ず来る。知識は無駄にはならん、訓練もまた同様だ。集中して臨めよ」
しかし、当の一夏少年は納得しかねる顔をしている。
(おそらく望んできたわけではない、と言いたいのだろう。しかし、それは言ってはならない言葉だ)
気持ちこそわかるものの、それは言ってはならない。元々人気が高いこの学園の倍率もさることながら、今ここにいる一般生徒たちは皆血の滲む努力をしている。入ることが出来ない者も然り、だ。織斑先生も一夏のそれを察したのか、
「お前が望んで来たわけではないのは皆知っている。だが、その陰で望んでも叶わなかった者もいることを忘れるな」
と付け足し、また元の場所へと戻っていく。一夏は最後の言葉に何かを感じたのか、納得のいかない表情は消えがむしゃらにノートを取っていく。
(良い顔だ。稀に見る“男らしい男”と言った所か)
どうやら女尊男卑に心が折れた男とは違うようだ、とバジーナは感心する。女尊男卑が活発になってからというもの、女性権利保護団体という良く分からない活動をする過激な集団が頭角を現し始め、その結果男性が難癖を付けられて社会的に抹殺されかけるというケースが相次いでいた。ISが世に現れたことによる弊害である。だからといって、ここまで女性の権利が優遇されるいわれはないとバジーナは考えている。
まず、男女で仮に戦争状態になったとする。女性側がISを持っていたからといって、圧勝するのだろうか。これはまず有り得ない。467機しかいないのもさることながら、ISのパイロットは基本的に代替が出来ない。代わりのパイロットを搭乗可能にするためには、ISの中心的なユニットであるコアの搭乗者データを初期化しなければならない。この作業はかなりの時間を要するため、ISのパイロットを戦えなくさせるだけで男性側は戦況を優利に変えることが可能だ。
(いくらISが強かろうと、メンテナンスや機体調整まで女性で行っているわけではない。男性だって様々な場所でIS業界で活躍している。本当にこの世界、大丈夫なのだろうか?)
世界の今後について真剣に考えるバジーナだったが、そうしている内に授業の終わりを告げる予鈴が鳴る。このまま意味のないことを考えて呆けていると、確実に
休み時間、周囲に集まってきた級友たちと談笑していると、ある女子が一夏の元へと近づいている。バジーナの周囲の級友もそれが気になったのか、そちらへと顔を向けた。その少女は、気品が溢れる金髪を見事にロールが施されており、さながら掘削機のドリルのようだ。そんな失礼なことを考えながら、バジーナは顛末を見守る。どうやら件の少女ーセシリア・オルコットーはイギリスの代表候補生らしく、おそらく国の方針で一夏に声を掛けたのだろう。しかし、
(あの高圧的でいて男を人とも思わぬ態度と物言い……女尊男卑主義者か。IS学園へ送る人材は彼女しかいなかったのだろうか?)
純粋に疑問に感じるバジーナは、そのまま会話を見ている。彼女はどうやら自分がエリートだという認識を彼に持たせ、そのまま力の違いを見せつけて隷属させるように接触を図っているようだった。馬鹿なのだろうか?対する一夏といえば、代表候補生の意味すら分かっておらず、更には彼女を煽らんとばかりの態度を取っている。
(もう少し穏便に事を済ませた方が良い。彼女は明らかにプライドが肥大化している。反発したい気持ちも分かるが、いなすことも時には必要だ)
今までの流れを見るに、一夏は自分を小馬鹿にしたような言動にいちいち反応し過ぎる。それは男の意地とは言わない。意地とは、必要な時に張るものであって、常時張るものではない。彼のそれは、見ているバジーナからは強がりでしかなかった。そうしていると予鈴が鳴ったため、セシリアは一夏に捨て台詞を掛けながら自分の席へと戻っていった。
授業が始まり、キリが良い所で山田先生が授業の進行を止める。一同はそれに怪訝な顔をしていると、織斑先生が教卓に立ち、こう言った。
「さて、山田君には丁度いい所で授業を止めて貰ったのは他でもない。このクラスの代表を決めるためだ」
クラス代表。それは、ことIS学園においてクラスの雑事や先生の手伝いを代表して行うもの以外にも意味がある。それは、
「クラス代表は、行事や他の雑事・我々の手伝いは勿論として、クラス代表戦に出場する代表者でもある。自薦・他薦は問わん、今決めるように」
クラス代表対抗戦とは、学年ごとに代表を選抜してISによる戦闘を行うものだ。優勝すれば学食のデザートの年間無料パスが得られる、と学生が言っていたのをバジーナは聞いていた。本来ならば、こういったものには専用機を有する代表候補生やバジーナが出る方が良いのだろう。しかし、バジーナ自身は正直興味が無かった。
(様々な相手と戦闘を行える点は、悪くない。しかし、それはいずれ戦闘データの収集を目的としている候補生たちと放課後にでも行えばいい)
バジーナは広告塔以外にも仕事はある。試作武装のデータ検証、各国の試作ISに対する
「はーい、織斑君を推薦します!」
「私も私も!」
「織斑くんが良いと思います!」
これを聞いたバジーナは内心呆れていた。クラスの代表ということは、クラスの顔になると同時にそのクラスの実力を意味する。明らかに経験不足である一夏を推薦しても、公の場での対抗戦で大敗を喫する可能性が高い。何故ならば、他のクラスは確実に実力者を選んで来るためだ。当の一夏も、この発言には困惑している。
(仕方がない。あまり水を差したくないが……)
このことについては慎重な議論が必要だ。バジーナが切り出そうとしたその時、
「納得が、いきませんわ!」
セシリアが机に手を叩きつけながら、そう発言した。
(不味い、早く彼女を止めなくては……!)
この流れは良くない、プライドの高い彼女の事だ。感情に流されて大きな失言を犯してしまう可能性がある。バジーナは止めようと動く。しかし、セシリアは矢継ぎ早に話し始めた。
「何故、イギリスの代表候補生である
流石にこれにはカチンときたのか、一夏が立ち上がり反論した。
「何偉そうに言ってんだ、イギリスだって食事事情が底が知れてるじゃんか。それに、推薦した子を悪く言うなよ。悪気はないんだから」
どうやら、一夏はセシリアに言ってはならないことを言ったようだ。みるみる彼女の顔が憤怒に染まっていく。
「……ッ、貴方ねぇ!私の国を馬鹿にしていますの!?ええ、良いでしょう、なら決t……」
怒りに震えるセシリアが何かを提案しようとしたとき、
「はい、先生」
手を挙げた生徒がいた。織斑先生は、彼女の発言を促す。
「私は、バジーナ・アズナブルさんを推薦します!」
彼女は、堂々とそう言った。周囲の喧騒が嘘のように静かになる。バジーナはそれに対して、笑みを浮かべていた。そして、立ち上がり口を開く。
「2人共、落ち着け。いくら罵倒し合ってもどうにもならんよ」
「うるさいですわ!エリートである私に向かって何て態度ですの!」
矛先がこっちに来るのか、と苦笑しながらそれに応える。
「ほう、エリートか。確かに君は、国家を代表する候補生であるエリートなのだろう」
急に諫めてきた相手に褒められ、一瞬セシリアの毒気が抜かれる。そこを畳みかけるようにして言葉を発する。
「しかし、それは個人の優秀さを表すのと同時に国家の顔としての側面を持っている。それがいわゆる君の言う“責を負う”というやつだ。では、君は今、ソレを果たせているのかな?」
冷静になりその言葉の意味を悟ったセシリアは苦し気にこちらを見ている。次は一夏だ。
「織斑君。君が自分ではなく他薦した相手を馬鹿にされたから怒ったのは、正しいことだと思う」
「そうだろ!?じゃ「しかし、そのために人の国の悪口をいうのはどうだろうか?そこが残念でしょうがない」
その言葉に、一夏も納得するしかなかった。止まらなくなりそうだった一夏とセシリアの口論をあっという間に止めたバジーナの手腕を、周囲は感心の目で見つめている。更にバジーナは、アフターケアを付けることにした。
「過ちは認めて次の糧とする、それは人間の特権だ……なんて、偉そうに言ってすまない」
そう言って場を収めた。周囲からの期待の視線が明らかに大きくなっている。
「……どうやら、誰がなるべきかは決まったようだな」
織斑先生の呟きに、バジーナは戦慄した。このままだと自分がクラス代表になってしまう。何とか、何とかしなければ。その時、電流が走ったような閃きがバジーナに舞い降りた。
「いえ、先生。それでは他薦してくれた他の人には申し訳ない。なので、提案があります」
「ほう、言ってみろ」
「先生も言った通り、クラス代表は実力も関わってくる。ならば簡単です、この3人で1度模擬戦を行うのはどうでしょうか?代表候補生の戦闘機動は他の生徒の見本にもなるでしょうし、何よりも2人の蟠りを解くには最も良いのではないでしょうか?」
バジーナの提案に、山田先生も賛同する。織斑先生も顎に手を当てて少し考えた後、了承した。
「ふむ、面白い。確かに腕を見せた方が分かりやすいし、私好みだ。2人はそれで良いな?」
織斑先生の問い掛けに、2人は了承の頷きを見せる。
こうして、3人によるクラス代表選抜戦の幕が上がった。