ええい、私の機体は百式だと……!   作:カタクリコン

2 / 3
 1話でまさかのルーキー日間51位はさすがに驚きました。そんなことよりも、感想・評価・お気に入り登録・誤字報告などありがとうございます。評価バーが赤になっていて、びっくりしている自分がいます。
 本格的な戦闘は今回の時点では書けませんでしたが、ISを題材にしている以上、必ず書くので楽しみに待っていただけると幸いです。

※念のため、一部タグを変更しました。


金色のIS

 何とか事態の収拾を終え安堵の息を吐くバジーナの元に、セシリアがやって来た。その視線はどこか曖昧で、不測の事態に備えて思わず身構える。

 

「私に何か?」

「……先ほどは、ありがとうございました。私、冷静さを無くしてしまいましたわ」

 

 その言葉に一瞬呆気にとられるバジーナだったが、笑みを浮かべながらその言葉に応える。

 

「気にすることは無いよ。さっき言った通り、実力を見せてから皆に謝ればいい。実際、専用機を持った代表候補生なのだから、実力は確かなのだろう?」

「ふふ、ありがとうございます。貴方には借りが出来ましたが、ISでは勝たせていただきますわ」

 

 微笑みが不敵に変わり、バジーナも真剣な表情で頷く。それを見て納得したのか、セシリアはこちらに背を向けた。そして、

 

「バジーナ・アズナブルさん。噂の貴女の実力、実際に確かめるのが楽しみですわ」

 

 そう言って、髪をかき上げながら優雅に去っていった。

 

(ただの女尊男卑に染まったプライドの高い人物だと思っていたが、中々どうして……)

 

 やはり代表候補生、そう簡単にはいかないか。今の邂逅で改めてセシリアの力量を感じ取ったバジーナだったが、更に入れ違うようにして一夏がやって来る。

 

「アズナブルさん、さっきはありがとな。俺、ついカッとなっちゃって……」

「誰かのために怒ることは良いことだ。しかし、それも行き過ぎれば罵倒だということを忘れてはならないよ」

「ああ、これからは気を付けるよ」

 

 どうやら彼もまた好人物であるらしい。だが、だからこそ忠告しなければならない。

 

「君は、ISに乗ってどれくらいだ?」

 

 その質問に対して、何の意味があるのだろうという顔をしながら一夏は答える。

 

「そうだなあ……20~30分とかかな」

 

 それは、少し不味い。何事においても経験は大事だが、ことISではそれが最も重要になってくる。ISは現行の兵器群と違い、センサーや宙に浮く慣性制御システムーPICーなどによって戦闘機動を行うため、乗り慣らしておかないと機体に引っ張られてしっかりとした機動がとれないだろう。

 

「それだと不味いな。私や代表候補生はその150~200倍は少なくとも搭乗している」

「それってどう違うんだ?」

「そうだな……機体の動きの細やかさ・正確さが違ってくる。ISは高速を維持しての機動戦が主だっているため、一瞬の操作が勝利を分ける戦いだ。慣熟をすればするほど、有利な状況へと運べるだろう」

 

 今のままなら勝ち目は薄い、とバッサリ言うと一夏は頭を抱えていた。事の発端はセシリアであるとはいえ、自分が事を大きくしたことへの負い目もあるのだろう。しかしその目は、勝利を捨ててはいなかった。

 

「なら……アズナブルさんが教えてくれないか?」

 

 一夏はそう言うと、周囲から羨望の眼差しや茶化した口笛が聞こえてきた。普通の女子なら、顔の整っている一夏にぽっくりやられてしまうのだろうが、生憎とこの前世持ちの少女は伊達では無かった。

 

「残念だが、断らせてもらうよ」

 

 人が良い彼女の予想外の答えに、周囲も一夏も驚いていた。

 

「ど、どうしてだ?」

「これから戦う者同士、と言えば理解してくれるかな?」

「で、でもさっき……今のままじゃ勝てないって。なら経験者の君に教えて貰ってもいいだろ?」

 

 成る程、確かに筋は通る。しかし、

 

「君だけに肩入れしては、フェアではない。それに、手の内を知られるのは互いに良くないのではないか?それは即ちハンデになってしまう。君は、本当の意味では勝てなくなってしまうぞ」

 

 そのバジーナの言葉に、一夏ははっとする。今まで反応から、一夏が女尊男卑の主義に染まっている者を気に入らないことは知っていた。また。彼女に“本当の男”を見せつけようとしていることに。ならば、それは自分の力で示さなければならない。

 

「本来ならば教えることは問題ないのだが……すまない」

 

 バジーナは申し訳なさそうに謝罪する。一夏は、笑っていた。

 

「良いって良いって、こっちこそありがとう。アズナブルさんのおかげで、改めて気が引き締まったよ。ISについては誰かに教えて貰う。じゃあ、お互い頑張ろうぜ!」

「ああ、健闘を祈る」

 

 一夏はバジーナに背を向けて去っていく。だが、先達としてのアドバイスの1つくらいならば許されるだろう。

 

「1つだけアドバイスを送ろう。相手のデータ収集も戦略の1つである、と」

 

 こうして休み時間は終わり、また授業へと移っていく。そこで、選抜戦が一週間後の第3アリーナで行われることが発表された。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。バジーナはグラウンドの隅で走っていた。IS学園のグランドは、ISでの実習にも使われているため一般的な高校のものよりも20倍を超える大きさを誇る。そのため、運動部が練習で使っていても問題なく敷地が有り余るので利用させてもらっていた。インターバル走を15本終え、休憩もために歩いていると

 

「はい、アズナブルさん。これ良かったら」

 

 その声と共に、タオルとスポーツドリンクが視界の端から現れる。その声の主はバジーナからサインを貰い、そしてクラス代表に推薦した少女ー谷本癒子ーだった。

 

「ありがとう、助かるよ谷本さん」

「良いって、偶然見かけただけだから」

 

 そう言って朗らかに笑っている。しかし、直ぐに消沈してしまった。

 

「ごめんね、アズナブルさん。私、勝手に推薦しちゃって」

 

 癒子は申し訳なさそうに頭を下げる。彼女の優しさが伝わり、バジーナは微笑む。

 

「気にしなくていいさ。君のおかげで教室の空気が悪くなることは防げた。こちらが感謝したいぐらいだよ」

「で、でも……」

 

 それでも気が沈んでいる癒子に、何とかして元気になって欲しいと考えるバジーナ。そこで、前世の記憶を頼ることにした。

 

(確か……こういう時、あるアニメのキャラがこうしていたな……)

 

 そう思いながら、癒子に手を伸ばす。そうして、その頭を撫でた。

 

「ひゃ……っ、あ……アズナブルさん!?」

 

 見る見る内に癒子の顔が赤くなっていく。無理もないだろう。バジーナは自らの見た目が平凡であると考えているものの、端から見れば中性的な見た目の柔らかい金髪をした青い瞳の美少女だ。そんな下手な男よりもカッコいい、更に言えば憧れである存在に頭を撫でて貰っているのだ。今日はもうシャンプーは絶対にしない、と癒子は一瞬本気で考える。

 

「すまない。気が沈んだ相手には、どうしたらいいか分からなかったので……つい、な」

「い、いひぇっ。もう大丈夫れす!ありがとうございましたー!」

 

 そう言い捨て、癒子は赤い顔のまま走り去っていった。

 

「……トイレを我慢していたのだろうか」

 

 ただ、癒子の顔が赤くなっていたその意味をバジーナは正しく理解していなかった。

 

 

 

 

 

 その夜、学食の食堂は少しざわついていた。原因は間違いなく、1年1組が行うクラス代表選抜戦の事だろう。人の口には戸は建てられない、ましてや代表候補生レベルの戦闘を見れるばかりか話題の男子の実力も見れる最高の舞台なのだから。そう盛り上がっている女子たちだったが、ある人物が学食に入った途端に静まりかえる。その人物は、柔らかい金髪に青い瞳を持つ中性的な少女、即ちバジーナだった。食堂に入った瞬間にくる視線の数々をもはや気にすることも億劫になってきたバジーナは、視線に気付いていないかのように歩いていく。そこで注文を取り、料理を待っていると

 

「あのっ、アズナブルさん!」

 

 数名の生徒がこちらにやって来た。谷本癒子とその友人たちのようだ。癒子の友人は、先頭を切る彼女の行動に心配になっているようだったが、癒子自身も緊張しているようだった。

 

「えっと……もし良かったら、一緒にご飯食べませんか!?」

 

 期待半分、不安半分の眼差しを見て、バジーナは微笑む。その気遣いは、正直に言って有難かった。

 

「ああ、喜んで」

 

 その返答に、癒子は顔を輝かせる。後ろで見守っていた友人たちも喜びが抑えきれず騒いでいた。

 

(友人がいないハイスクールの生活なんて味気ない。このまま友人になれれば僥倖だな)

 

 いかにISの企業専属パイロットで前世持ちだとはいえ、バジーナもまだ女子高生。友人がいない学園生活はさすがに息苦しい。そう思っていると注文したものが目の前に置かれる。思考を一旦止めてその渡された夕食を受け取り、癒子たちのいた席へと一緒に向かうこととなった。

 

「アズナブルさんって、あのAI社のテストパイロットなんでしょ?」

 

 癒子の友人である清香―相川清香―が興味津々といった様子で聞いてくる。周囲もすごいよねー、と同意の声を上げていた。その様子に苦笑しながらもバジーナは応える。

 

「ああ、両親がそこの職員でね。割の良いバイトがあると釣られてしまい今に至る、というわけさ」

 

 そうだ。あれはジュニアハイスクールの2年に上がってすぐのことだった。学校から帰ってきたバジーナを待ち構えていた両親は、自然な会話の中で仕事の勧誘をそれとなく彼女にする。いかに前世を持っていようとただの少女。「バジーナに向いている割の良いバイトがある」、その言葉に乗ってついOKをした後、大急ぎで会社に連絡を入れた時にこの謀略に気が付いたのが全ての始まりである。割は確かに良かったが、まさか仕事に忙殺されるサラリーマンの気持ちを中学生で経験できるとは思っていなかった。

 

 遠い目をしているバジーナを見て、少女たちも流石に細かいあれこれを聞くのはためらわれた。しかし、その空気にすかさずフォローが入る。

 

「でも~あずあずってすごいよね~。AIってけっこうおっきい企業だよ~?」

 

 ぽわぽわ、という表現が具現化したような少女ー布仏 本音ーである。

 

「あずあず?……まあ、まだ中堅企業といった感じだが。業界では新参者だからね」

 

 勝手に付けられたあだ名にやや困惑したバジーナだったが、本音のその独特なオーラに何も言い返せぬまま質問に答える。

 

「私、AI社ってTVで見たことあるけど詳しいことは知らないな……アズナブルさん、教えて貰っても良いかな?」

 

 そう言って、眼鏡の少女ー岸本 理子ーが問いかけてくる。まあそうだろう。確かにCMやら広告塔である自分が宣伝活動こそしているが、具体的な内容は調べようと思わない限り知らなくて当然である。そう思い、快く答えようと口を開くバジーナだったが、

 

「AIっていうのは略称で、正式名称はAnaheim(アナハイム)Industry(インダストリー)。北アメリカのカルフォルニア州にあるアナハイムから始まったからこの社名になったの。元々は宇宙や航空関連の機械やシステム、部品なんかを扱っていたんだけど……ISの開発によって宇宙の事業は各国が消極的になったから縮小。航空はなんとか一定の利益をあげるんだけど、会社の延命にしかならなかったの。それで……」

 

 それに答えたのは癒子だった。水を得た魚のように、つらつらと言葉が出ていくようでその勢いは止まることが無い。バジーナと癒子の友人たちは呆気にとられてそれを見つめている。数秒経って視線に気づいたのか、癒子の顔は見る見るうちに赤くなっていった。主に羞恥で。

 

「あっ、ごめん。アズナブルさんがいるのに、つい……」

「いや、気にすることは無い。むしろ、私よりも詳しそうだ」

 

 バジーナがそう言って笑うと安心したのか、癒子の顔の赤みが取れていく。しかし、ここにいるのは皆腐っても乙女。顔の赤さを煽るように周囲が茶化す。

 

「癒子って本当にAI社……いや、アズナブルさんが好きだよね~」

「あ~わかる~。ちょっと反応が違うもんね~」

 

 清香が悪戯っぽく笑いながら爆弾を投下し、本音が追撃した。理子はその言葉に顔を赤くしながらも、事の成り行きを見守っている。癒子は再度顔から蒸気を出さんばかりに赤くなり、口をパクパクさせていた。

 

「な……そんにゃ、そんなことないよ!?何言ってるの!?」

「いや、その反応分かりやすすぎるって……」

「まあ気持ちはわかるよ~。あずあずって男前だもんね~」

 

 そう清香と本音が囃し立てる中、バジーナから反応は無い。そのことに気付いた癒子は、ちらりと様子を窺う。そこには既に、バジーナはいなかった。理子も。

 

「成る程、そういうことをやってたんですか」

「ああ。広告塔は勿論業務であるが、本業は武装のテストやら各代表候補生の模擬戦の仮想敵(アグレッサー)だよ。こちらとしても機体の稼働データは欲しいし、向こうは第三世代の戦闘データが欲しいわけだからな。持ちつ持たれつ、というやつさ」

 

 理子とバジーナは既に席について食事を摂りながら談笑している。2人とも楽しそうだ、ずるい。

 

「あ~!理子ちょっと何で先言ってるの!?」

「だって皆の話ながそうだったから、バジーナさんと私蚊帳の外だったし……」

 

 そう言っているが、顔は笑っている。こいつ、抜け駆けを……!癒子たちはすぐに自分たちの席の場所取りを争うため、2人の元へと走り出した。

 

 

 

 

 何とか癒子は、バジーナの隣を死守した。清香と本音は向かいの席に座っている。しかし、癒子はそっちの方が良かったのではないかと考え始めていた。

 

(顔が……顔が近くに!それに綺麗な金髪に良いにお……じゃなくて!青い瞳に吸い込まれそう……じゃなくて!)

 

 皆で談笑こそしているものの、癒子の心中は混乱の最中にあった。それはそうだ。憧れの存在が触れられる距離にいる。興h……もとい、緊張しないわけがなかった。それは周囲も同じようで、何とかスムーズに会話が出来ているもののどこかぎこちない。

 

「……やはり、私がいると遠慮してしまうのか」

 

 バジーナもそれを感じたのか、少し寂しそうだ。

 

「ち、違うよ!ただ、ちょっとアズナブルさんと一緒に食事するのが嬉しいから緊張してるだけだよ!?」

(な……私何言っているの!?)

 

 癒子の急なカミングアウトに、バジーナ以外の面々はあらあらまあまあ、興味深そうに癒子を見つめている。バジーナはその言葉に一瞬目を見開くと、照れ臭いのか咳払いをしている。そして、

 

「ありがとう。私も、君たちとこうして話せて嬉しい」

 

 そう言って微笑んだ。それは、バジーナの心からの笑顔だった。こちらが照れ臭くなってしまうほどに、それは眩しかった。

 

「こちらこそ光栄です!」

「あはは~恐縮で~す」

「こっちも嬉しいよ!」

 

 三者三葉で反応を示す本音たち。だが、癒子からの反応がない。バジーナに憧れを持っている彼女が無反応なわけがない、とそちらを見てみれば。

 

「……」

 

 癒子はバジーナの隣で、真っ白に燃え尽きていた。   

 

「ゆ、癒子……」

「やっぱり刺激が強すぎたね」

「お~こうかはばつぐんだ~」

 

 こうして、夕食は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏は、同室であり幼馴染である篠ノ之箒とクラス代表選抜戦について話していた。「お前の剣を見てやる」と少し不安になる言葉を残して、取り敢えずは箒が一夏を教えることで話はついた。

 

「問題は相手だよな……戦い方が分かるものって無いのか?」

 

 一夏の問い掛けに箒はこめかみを抑えて呆れている。そして、一夏にも分かるようにため息を吐いた。

 

「な、何だよ……」

「一夏、聞いていなかったのか?部屋にある専用の端末からそういったデータは見れると先生が言っていたではないか」

 

 そんなこと言ってたっけ、と頭を掻きながら机に内蔵されている端末の電源を入れる。そして、データベースに繋いで情報を探った。箒は隣でそれを見ている。

 

「……ん~、オルコットさんのデータは短い動画が1本だけか……」

「代表候補生だからな、国家の機密に関わるからだろう」

 

 そう言いつつも、動画を開く。そこには、2機のISが対峙していた。1つは蒼い機体で、背中に薄い直方体の突起が4つ付随している。もう1つは灰色で世界でありふれた機体の1つ、ラファール。セシリアは蒼いISで、余裕の表情で浮遊している。ラファールの方のパイロットは、バイザーで口元以外が見えなかった。独特の緊張感を保ち、始まりを待ちわびているその姿は、まるで自分がその場にいるかのようなプレッシャーを感じさせた。その様子に思わず一夏は固唾を飲んだ。瞬間、

 

《試験戦闘開始》

 

 開始を告げるブザーが鳴る。その瞬間、2機は互いの射線から逃れながら射撃を行う。セシリアの得物は長い砲身のレーザーライフルで、ラファールはコンパクトなアサルトライフルである。本来なら、弾数の問題上セシリアが不利のように見える。実際、セシリアは射撃よりも回避の方に重きを於いて戦闘を行っていた。

 

「なあ、オルコットさんの方が不利じゃないか?」

 

 一夏がそういって箒を見つめる。しかし、箒は画面を見つめながらある1点を指さした。

 

「これを見ろ」

 

 言われるがままに示された場所を見る。そこには、各ISのSE-シールド・エネルギーーや集弾率などが細かく表示されていた。ラファールの方は、開始時からSEの減りが大きい。しかし、セシリアは違った。

 

「う、嘘だろ……」

 

 確かにSEが減っている。だが、それは少なく、一定であった。

 

「どういうことだ?」

「……おそらく、分かっているのだろう。どうすればどうなるのかが(・・・・・・・・・・・・)

 

 箒の言葉を、一夏は飲み込む。つまり、セシリアは相手の攻撃から来るSEのダメージの度合いをある程度自分で把握できているのだ。そも、わざわざ素直に当たってやる必要はない。ある時は逸らし、ある時は受け止め、ある時は回避する。これをして、セシリアはダメージを最小限に抑えていた。しかし、それを実際に戦いの中で長時間続けるのは至難の技だ。武道をやったことのある2人は理解する、挑む壁の高さを。そうしている内にラファールのSEが限界になり、試合は終了した。

 

「……一夏、お前は勝てるのか?」

「……それを今言うのは止めてくれ」

 

 気分が些か落ちてはいるものの、次の相手のデータを探す。

 

「えーと……バジーナ・アズナブルっと」

 

 端末に名前を打ち込み、検索を行った。すると、少なくないデータが結果として表示される。

 

「多っ!?何でこんなにデータがあるんだよ……」

「待て、一夏。ファイルの名前を見ろ」

 

 箒に促されるままに、一夏はファイルの名前を見る。そこには、

 

「『ISの機動 基礎編その1』って……これ教材か?」

 

 それは、ISの機動に関する教材のデータだった。バジーナがラファールに乗って行うそれは事細かに分かりやすく纏められていて、確かに教材としては申し分ない出来だ。

 

「何でアズナブルさんがこんなのやってるんだ?」

「一夏……彼女が企業所属のISパイロットだということは知っているだろう?おそらくこれも仕事の一環だ」

 

 そっかぁ、と納得している一夏をよそに箒の心はかき乱されていた。

 

(何故そんなにコイツが気になるのだ……!)

 

 想い人が自分の好意に気付くことなく、他の女に興味を持っているさまを見せつけられて憤らないはずがなかった。しかし、箒は今回はそこをぐっと堪えて再びデータを探す一夏を見つめる。

 

「お、つい最近の模擬戦闘のデータがある。箒、これ見ようぜ」

「ああ……」

 

 そう言って一夏はデータの閲覧を始める。どうやらこのデータはある状況を想定して行うタイプの戦闘訓練だった。窓の無い、壁だらけの部屋。そこの壁が開き始める。そこから現れたのは、

 

「何だ、これ……」

 

 無駄な装飾の無い装甲。背部にはバックパックがあり、その左右の側面にはくの字型のバインダーが付けられている。また、そのスリムな機体とは裏腹に重厚感も感じられる。肩や脚部にあるバーニアから、機動力が高いのが見て取れた。しかし、何よりも一夏が目を引かれたのが、

 

「金色の……IS?」

 

 それは、金色のISだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。