ロキファミリアに両親を求めるのは間違っているだろうか 作:ルナー
迷宮都市オラリオ。
都市の中央に位置する白亜の塔バベル、その下にはとても深く続く迷宮(ダンジョン)が広がっている。
この都市ではダンジョンに入り未知を求める冒険者という職業がある。
この物語の主人公、少し頼りなさが目立つ白髪の男の子もまた冒険者を名乗っている。
名はベル・クラネル。
炉の女神。神ヘスティアと契約した眷族。
これは、少年が歩み、女神が記す、少し変わった物語。
第一部〜少年退化〜
「っっ!!」
少年に怪物の鋭い爪が肉薄する。
「ベル!下がれ!!」
ベルの元に声がかけられる。
大剣を装備している赤髪の青年。ヴェルフ・クロッゾが前に出る。
「ハァッ!」剣を横に薙ぐ。
怪物の体が両断され灰へと変わる。
「まだ来ます!」
奥から弓矢を装備し、援護射撃をしている小人族(パルゥム)の女の子。
リリルカ・アーデの状況を説明する一声がかけられた。
奥からは更に多くの怪物が押し寄せてくるのが分かった。
「ちぃ、ふざけろ!」
止まらぬ怪物の猛追にヴェルフは苛立ちを隠さずに叫ぶ。
「ヴェルフ!横へ!」
ベルの腕に眩い光が纏う。
ヴェルフの行動は迅速であった、横への移動で
これからおこる魔法の射程外に出る。
「ファイアボルトォォ!!」
英雄願望(アルゴノゥト)10秒分のチャージ。それで十分だった。
ベルの手から放たれる雷炎は通路にいた怪物の群れを一掃した。
そこには魔石以外怪物の姿は残っていない。
「ハハ、いつ見てもすげえ威力だな。」
ヴェルフは冷や汗を流しながらベルを見る。
「ハァ、ハァ」ベルの額にうっすらと汗が流れる。
「ベル様。これを」サポーターのリリからポーションが渡される。
「ありがとう。リリ」ベルは受けとるなりそれを呷った。
「もうそろそろ引き返し始めてもいいかもな。」
ヴェルフもポーションを受け取りながらこの後のことを提案する。
「そうですね、これ以上無理をして危険が及んではいけません。」
リリもヴェルフの案に乗った。
「じゃあ、戻ろっか」ベルが来た道を引き換えそうと体の向きを変え歩き始める。
「魔石もドロップアイテムもいい具合に集まりました!」
リリが大きさの増したバックパックを再度担ぎ直す。
「そうだな!目標には達したんじゃないか?
それはそうとベル、お前また強くなったんじゃないか?」
ヴェルフがベルの方を見て話しかける。
「そうかな?良く分からないや。」
ベルは自分の掌を見てそう答える。
「俺も置いていかれないように頑張らなきゃな!」
ヴェルフは自分の拳を合わせ今一度横にたつ少年に追い付く決意を固める。
「リリももっと、サポートします!」
リリは小振りながらそれでもしっかり出ている胸を張り言う。
「皆で強くなろう!」ベルが二人を振り返る。
「おう!」
「はい!」
三人は向上心を胸にその階層を後にするのだった。
・・・
「最近。オラリオで小人族が拐われてるって噂が流れてるのは知ってるか?」
帰りの道中にヴェルフが話を持ちかける。
「え?そうなの?」
ベルは知らなかったようだ。
「最近、小人族の特に女性を狙って誘拐事件が多発しているそうです。バベルの掲示板にも載っていました。」
リリが少し暗い顔をして、ヴェルフの持ちかけた話の補足をする。
「え!?小人族の女の子ってリリも危ないんじゃ!?」
ベルが小人族のリリの心配をする。
「リリはまだ魔法がありますから、最近オラリオのなかでは犬人(シアンスローブ)の姿で生活してます。ですが。」
そういうとリリは上目遣いでベルを見て、
「もしリリが危なくなったらベル様が助けてくださいね?」そう言った。
「もちろん!リリは僕たちの大事な仲間だから!」
ベルは瞳に決意の炎を燃やし、リリを見る。
「はい!お願いします。」
〜上層〜
「もう少しで地上だ〜」
ヴェルフが伸びをしながら歩く。
「もう!ヴェルフ様!まだダンジョンの中なんですから何が起こるか分からないんですよ!もっと緊張感を持って下さい!」
リリが前を歩くヴェルフを怒っていた時、
「ハハハ、」苦笑いをしていたベルの体が急に黄色い光で発光し始めた。
「え!?」
「うっ!眩しい!何だ!」
リリとヴェルフがとっさに目を覆う。
黄色い光に包まれたベルの体が徐々に小さくなっていく。
「えぇ!?」リリが目を見張る。
「おい!ベル!」
ヴェルフがベルに向かって手を伸ばす。
が空をきった。
「き、消えた!?」ヴェルフが周りを見渡す。
「はわわわわ。」リリだけがすぐに気づけた。
なぜならベルは小人族の女の子よりも小さい身長になったからだ。
ベルの姿が驚くことに三歳児ほどになっていた。
「ヴぇ、ヴェ、ヴェヴぇ、ヴェルフ様!!」リリがヴェルフにしがみつく、
「なんた、リリスケって、はぁ!?なんでベルが小さくなってるんだ!?」
しがみついてきたリリを少し引き剥がすと同時にようやくベルの姿を見つける。
「………」当の本人、ベルはぼーっと遠くを見ている。
「お、おい?ベル?」
ヴェルフが恐る恐るベルに触る。
「?パパ?」
その言葉にヴェルフとリリは固まった。
「ヴェ、ヴェルフ様?い、いつからお父様に?」
リリの首が壊れた機械のようにぎこちなくヴェルフの方を向く。
「いや!!俺は父親じゃない!俺はヘファイストス様一筋だ!?」
勢い余ってとんでも発言をしたヴェルフをからかう余裕は今のリリにないらしく
「で、ですよね、」スルーした。
そのまま一分程が経った。
ベルの指が、リリをさす。
「ママ」
ガァーーーーン!!
その場で父親、母親と呼ばれた二人は暫しの間石と課すのであった。
「はっ!り、リリはママではありません!」
「お、俺だってパパじゃない!」
すると二人から否定されたからかベルの目に涙が溜まる。
「ママじゃないの?」
即座にリリは「私がママです。」
とベルに話しかけていた。
「おい!リリスケ!お前違うだろ!」
すかさずヴェルフのツッコミ。
「っは!つい」
「ついって・・・」
「とにかくすぐにでもヘスティア様にお話をしないといけませんね。ヴェルフ様すぐにでも
戻りましょう!」
リリが荷物を担ぎなおし帰るための準備を開始する。
「あ、ああ、そうだな。ん?」
ヴェルフはあたりを見回す。
「おい!ベルは!?」
「え!?なんでこの短時間で見失っているんですか!」
リリも同様にあたりを見渡す。
「知らねぇよ!気づいたらいなくなってたんだよ。
・・って、おい!」
ヴェルフが焦ったように少し離れたところを指さす。
「え?」
リリが指の先を見るとそこには
ゴブリンに向かって両手を前に出しながら近づくベルの姿があった。
「何やっているんですかーーーーーーーー!!!!」
リリが過去最高速度と思われる速さで走ってベルの元まで走り、
ベルを抱えてヴェルフの元まで帰ってきた。
そしてそのままヴェルフとリリはダンジョンの外、地上に向けてベル(子供)を抱えて走り去った。
第二章~退化の理由~
「「はぁ、はぁ、はぁ」」
バベルを出てヴェルフとリリはようやく一息つく。
「にしても、なにがどうなってるんだ」
ヴェルフはベルを見ながら状況の把握に努めようとする。
「わかりません。リリにも突然のことで何が何やら。」
リリはベルのことを地面に降ろしバックパックを背負いなおす。
「とりあえずはホームに戻るか」
「そうですね」
ヴェルフとリリはベルの手をしっかりと握って帰路につくのであった。
~ヘスティアファミリアホーム~
「ベル君たちはそろそろ帰ってくる頃かな」
ヘスティアは窓の外を眺めながらつぶやく。
「ええ、多分そろそろ皆様戻られるかと」
狐人の春姫はそのつぶやきに反応する。
「にしてもまさか命君が高熱を出して倒れるなんてね。」
ヘスティアは奥の部屋、命が寝ている部屋の方を見やる。
「いつも元気で働き者の命ちゃんだから疲れがたまっていたのかもしれません。」
春姫の心配そうな声に少しヘスティアの顔が曇る。
「子供の体調にも気づけないなんて、主神失格だね」
その言葉に春姫は
「そんなことはありません!それを言ったら気づけなかった私たちにも責任があります!
ヘスティア様だけが気に病む必要はありません!」
春姫は自分だけが悪いと言うヘスティアにそう言い放った。
「春姫くん」
ヘスティアは窓の外の視線を自分を慰めてくれた少女にむける。
「もうすぐベル様たちが戻ってまいられると思いますので
そうしたら薬を調合してもらいに行きましょう!一刻もはやく命ちゃんに元気になってもらうためにも!」
春姫は満面の笑みをむける。
「・・そうだね。そうしよう」
ヘスティアもまた笑みを浮かべる。
その時
「ただいま戻りました!」
なにやらいつもより余裕がない感じのリリの声がヘスティアたちのもとに届く。
「ん?」
ヘスティアは不審に思い玄関まで急ぎ足で出向く。
「お帰り、サポーター君、ヴェルフ君。そしてベ~ル君♡、
なにかあったのか・・・」
固まる。
その異様な光景に神であるヘスティアも脳が思考を止める。
それほどまでに目の前にある光景は目を疑いたくなるようなものであった。
なぜなら、肩で息をするリリとヴェルフ。そして二人の間には
見覚えのある白髪の少年の幼くなった姿があるからだ。
「一応聞くけど、その子はサポーター君とヴェルフ君の子供ではないんだよね」
ヘスティアの目から光が消える。
「そんなわけないじゃないですか!」
リリが真っ赤になって怒鳴る。
「そうだよねぇ。」
ヘスティアの現実逃避も虚しくすぐ現実に戻される。
白髪の少年だけが事の重大さに気付いていないようで可愛らしい頭を少し横にかしげるのだった。
「で、何がどうしてこうなったんだい?」
場所をいつも食事をとっているテーブルがある部屋へと移動し
各々が席に着いてからヘスティアが切り出す。
「それがその・・」
「自分たちにも何がなんやらで」
リリとヴェルフもいまいちこの現状にたいしての核心は持てていないことを主神に告げる。
「困ったな、何が確証がなければもとに戻す方法さえ掴めない。」
ヘスティアが腕を組み、考える。
「ベル君が子供になるってのがまずおかしいんだけどね」
ヘスティアの苦笑がベルに向けられる。
ベルはボーっと見つめ返す。
次にはにこぉっと笑顔をヘスティアに送る。その姿はとても愛らしく
・・・・
「「「「か、かわいい」」」」
その場にいる全員がそのように思うのも仕方ないことだった。
「ちなみにベル君が子供になる前に何かしなかったのかい?例えばいつもと違うことをしたとか」
ヘスティアが自分の膝にベルを乗せながら質問する。
ベルは不思議そうにヘスティアの顔を覗く。
「いえ何も、命様の治療に必要なアイテムを確保して帰路につきました。度々モンスターとは遭遇しましたが全部知っているモンスターでしたし…
アイテムもこの間ミアハ様のところで貰ったポーションを前衛のお二人にお渡ししただけで……。。。あ。」
そこまで話した所でリリとヘスティアの間にはある疑念が生まれていた。
「サポーター君、僕は今とてつもないデジャヴに襲われているんだけど。。」
「ヘスティア様、リリもです。」
その直後であった、
ヘスティアファミリアのホームのドアが焦りを帯びた声と共に叩かれたのは。
「ヘスティア、私だ、ミアハだ。この間のポーションなのだが」
その声を聞いたリリとヘスティアはやっぱりと言うように頭を抱えるのであった。