彼女からの依頼   作:みるみるみるとん

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二話

 

人はなぜ恋人に理想を求めるのか。

人はなぜ自らよりも市場価値の高い相手を恋人にしたがるのか。

それは、夢を追いかけているからだろうか?現実が見えていないからだろうか?

まあ、いずれにせよ、人が理想を求める理由は人それぞれである。しかし、アドラーはこの命題に一つのある解を出した。それは、『人間は他人からの承認欲求の強い生き物だからである』と。

 

ある一例を挙げよう。

Aさんは1000万円のポルシェを手に入れたとしよう。そこで満足すればAさんは幸せなままである。しかし、仮に近所のBさんが3000万円のポルシェを買ったとしたら、Aさんは何を思うだろうか。

自分は自分、他人は他人と思うタイプの人間であればBさんに対して恨みの感情などなかろう。けれど、もし、Aさんの承認欲求が強い場合はどうなるだろうか?AさんはBさんに嫉妬し、憤慨してしまうだろう。

 

この一例からも分かる通りに他人と自らを比較し過ぎるとデメリットになる場合も多いということだ。

もちろん、自分と他人を比較しそれを糧に成長へと繋げる場合なら大いに結構だが、基本はそうはならないことの方が多いらしい。だからこそ、自分というものを見つめ直し、本当に自らの欲しているものを掴みとれた者のみが真の幸せを手にすることができるというものだ。

まあ、ざっくりまとめると

 

『そんな人と比べなくてよくね?』byアドラー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葉山先輩は裏表のない素敵な人です。

頭脳明晰で、運動もできます。何よりかっこいいからモテるのです。私がなぜ葉山先輩を好きになるかなんて簡単な話です。自分のステータスが上がるからです。あんなに市場価値の高い人間を私以外の人が選ぶなんて許されません。

けれど、先ほども言った通り競争倍率はもの凄く高く、まるで宝くじの一等に当選するようなものです。それにライバルのレベルが凄く高いのです。まあ、私もレベルが高いので十分対抗することは可能ですが。

 

ところで、知らない方もいると思いますが、私はこんな性格なので同性のお友達はあまりいません。嫉妬や妬み、様々な感情をぶつけられることも多々あります。だからこそ、葉山先輩でなくてはいけないのです。彼ならきっと私を救ってくれるはずです。そうして私は告白することを決意しました。

私の作戦は完璧でした。非の打ち所はありません。私はその計画を実行すべく学校の皆さんとディスティニーランドに行きました。

日没になりました。時は満ちたのです。私は勇気を振り絞り、胸の中にある感情を吐露してしまったのです。そして結局、葉山先輩にはフラれてしまいました。

落ち込みました。悲しみという感情が雫となって流れ落ちていきました。そんな時にせんぱいは帰りの電車で私にこう言いました。

 

『凄いなお前』

 

なぜか温かい気持ちになりました。心の芯まで癒されるようなそんな感覚だったと思います。その時にようやく気付きました。『本物』と言う物の存在に。

他人からの承認欲求が人一倍強いことも自覚しています。でも、本当に私が望んでいた物は何かを問い正しました。そして、一つの答えにたどり着いたのです。

 

『せんぱいと居たい』

 

それからもせんぱいは私を何度も助けてくれました。

せんぱいは私のヒーローです。困った時はいつも私を支えてくれます。本当に感謝しています。感謝をしても仕切れないほどにたくさんのものをせんぱいからはいただきました。

ついつい、楽しくなり、私は葉山先輩とのデートの実践練習と題しまして、模擬試験という形でデートをするのことになりました。

模擬試験といってもせんぱいを試すようなことはしません。デートできるだけで満足なのです。

いよいよデートの時がやって来ました。かなり緊張しています。胸の高鳴りが抑えきれません。私のドキドキがばれないかがとても不安です。けれど、頑張ります。

 

「せんぱーい」

 

何とか声をかけることができました。最近は一緒にお話をするだけでも心臓の鼓動が速くなります。なぜなのでしょう。原因が不明です。ですが、今日はそんなことを言ってはいられません。今日こそせんぱいから好意を勝ち取って見せたいと思います。

 

「げっ!」

 

出だしから絶望的です。せんぱいは私のことをどういう風に見てくれているのでしょうか。それにしてもその反応はひどすぎます。私はこれでも乙女なのです。

 

「むうっ、げっ!って何ですかひどいです。早く行きますよ。今日は葉山先輩とのデートの作戦についての実践練習を行う日なんですよ!」

 

まあ、いつものことなので気にはしていません。本当です。それにデートはまだまだこれからです。必ずせんぱいからの好意は私が頂きます。これは決定事項なのです。

 

「けど、、、結構きついな、やっぱり、、、」

 

そして気づいたことがあるのですが、今日のせんぱいはあまり元気がありません。私はせんぱいの観察をしています。だから分かることがあります。今日のせんぱいは、いつもの輝かしさがありません。どうしたのでしょうか。

 

「どうかしましたか?せんぱい?」

 

「なんでもねーよ」

 

今の言葉は真実と捉えてしまっていいのでしょうか。まあ、でも、せんぱいが大丈夫と言った時は大丈夫なことが多いです。この言葉に私は何度も救われています。

 

「じゃあ、行くか」

 

とりあえず、せんぱいの言う通りにしてみましょう。私の思い違いかも知れません。

 

「せんぱい、今日なんか機嫌いいですね。何か良いことありました?」

 

「なんもねーよ」

 

実は今、鎌をかけてみました。浮気相手に良く使えるテクニックの一つなのですが、『あなた浮気したんでしょう』とストレートに聞くのではなく、『何か昨日良いことあった?』と、それとなく聞いてみると浮気をしている場合は素人でも分かるほどの反応が返ってきます。ちなみに浮気している場合は『何が?』とか『どうしたの?』という風に自分の浮気をどこまで相手が把握しているかを探るという態度に出ることが多いです。

でも、今の感じだと多分何も無さそうです。まあ、そもそも浮気など起こりようもありませんが。

 

「そうですか。それは良かったです」

 

せんぱい、私はお腹が空きました。実は、今日のデートが楽しみで朝から何も食べていません。今日はせんぱいに『あーん』をしてもらうのが目標です。

 

「せんぱい、お腹空きませんか?どこ行きます?」

 

「家」

 

「やりなおし」

 

乙女心と秋の空は変わりやすいと言いますが、今のは正直引くレベルです。せんぱいは私に関心が無さすぎます。ひどいです。

 

「じゃあ、あのカフェなんかどうだ?なんかオシャレだし、ああいうの好きだろ、お前」

 

えっ?なんですか?まじですか?

せんぱいがあろうことかカフェを提案してきました。今日は槍が降りそうです。せんぱいにも少しだけ乙女心が分かるようになってきたようです。成長です。いつもならラーメンなどを提案してくるはずです。これは何か裏がありそうな気がします。早速聞き込みです。

 

「何?嫌なの?」

 

「いえ、そういう訳ではなくて、、、その、なんかちょっと意外だったので、、、先輩もちゃんと女の子のこと考えてあげることができるんですね」

 

「まあな、小町のことなら毎日考えてるからな」

 

「せんぱい、本当にシスコンなんですね」

 

言葉を失いそうです。期待した私が馬鹿でした。少しでも私に好意があるのかと思いましたがそんなものは幻想にすぎません。ところで、せんぱいは誰に対して好意を抱いているのでしょうか。 

 

「ところで、せんぱいって、好きな女の子とかっているんですか?」

 

「ふぇっ?」

 

人間は普通そんな声はでません。私の真似ですか?少しだけ似ているのが更に癪です。

 

「なんですか、それ。私の真似ですか、キモいです」

 

私はいつも素で生きています。あざとさなど微塵もありません。本当ですよ!

 

「そんなのいるわけねーだろ」

 

本当ですか!そうなんですか!

皆さん聞いてください。せんぱいには今好きな人はいないそうです。これは言い換えると、いつか私のことを好きになるということですね!良かったです。本当にそれだけで私は満足です。

 

「そうですか、、、せんぱいも好きな人くらい作った方がいいですよ。恋をすると世界が違って見えるっていいますし」

 

私はせんぱいといると世界が変わって見えます。私は今の気持ちを恋と呼ぶのかは自分でも良く分かりませんが、せんぱいと出会えてすべてが変わりました。いつも通る町並みも帰り道もあなたといるだけで素敵な一日に変わります。せんぱいともっと居たいです。たくさんの日々をあなたとの時間でいっぱいにしたいです。

あなたとの時間がこれからもずっと続くように。せんぱい、私から離れちゃダメですよ!

 

「ありがとうな、一色」

 

せんぱいは優しい声音で私にそう囁きました。

 

 

 

 

 

 




見てくれている人が楽しめるようにそして、このSSに皆さんが時間を割いて良かったなと思えるような作品を作っていきたいと思います。
よろしくお願いします。
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