審神者の力は砕けない   作:きど

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003 再会

今日は私の3歳の誕生日だ。

 

 

私には前世の記憶がある。審神者という職業で、時の政府の元歴史修正主義者たちと戦っていた。

ある日戦場で死んだら生まれ変わっていた。幸いなのはまた日本に生まれた点だろうか。今日はその時の夢を見た。夢の中であってもみんなに会えたのは嬉しいが、最後には自分の刀と共に激痛の中死ぬ夢だ。皮肉な誕生日である。

 

 

いつも通り顔を洗って食堂に行く。両親は死に、親戚もいなかったので今は孤児院に住んでいる。集団で生活するのは本丸で慣れていたから良かった。

朝食を食べていつも通り子供たちの相手をする。本丸の短刀たちは見た目こそ子供だったが、中身は私よりも歳上だった。本物の子供の相手はちょっと疲れる。

 

 

今日あんな夢を見たからだろうか。無性にみんなに会いたくなった。

この世界では私は独りだ。寂しい。またみんなに会いたい。

審神者になった日も本当は不安だった。あの日誰よりも早く顕現して、誰よりも長く一緒にいてくれた私の初期刀…陸奥守吉行。寂しさや不安を吹き飛ばしてくれるあの笑顔にもう一度会いたい。

そう思った時だった。部屋いっぱいに桜吹雪が舞う。暖かい…分かる。ここに彼がいる。

ありったけの霊力を込めて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「来い!!陸奥守吉行!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

桜吹雪の中に、見慣れた姿が立っていた。

 

 

 

「わしは陸奥守吉行じゃ。せっかくこがな所に来たがやき、世界を掴むぜよ!…おまさん、なんちゅう顔しゆうがか」

 

 

 

あの、優しい笑顔が、そこにはあった。

思わず飛び付くと、笑いながら抱きしめてくれた。あの日、目の前で主を斬られたこと、守れなかったこと、きっと気にしていただろう。

彼が目の前で主を失ったのはこれで2回目になる。本当に申し訳ないことをした。

 

 

しばらくすると、部屋は桜でいっぱいだし、知らない男はいるし、私は泣いているして職員さんが大慌てで部屋に入って来た。

周りにいた子から事情を聞くと「優ちゃんにも個性が発言したのね!おめでとう!」と言って嬉しそうにしていた。

 

 

次の日は役所に個性届けを出しに行った。もちろん個性は「審神者」である。私は他の刀剣男士にも会うために猛特訓を始めた。個性も身体能力らしい。鍛えれば強くなる。

と言っても、鍛え方も分からない。他にこんな個性を持った人はいないから参考にはならない。ここには資材も鍛刀部屋もないければ戦ってはレベル上げに一役買っていた歴史修正主義者もいない。ドロップもない。

仕方がないのでひたすら霊力を上げてむっちゃんと組手をした。

 

 

そして私の4歳の誕生日、同田貫正国が顕現した。


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