二人の姉がブラコン過ぎて困ってます 作:闇喰らいの蝙蝠
今日は土曜日。
休日である。
休日は休む日と書いて休日。
そう、僕は基本的に休日は外には出たくない。
ただし僕の意思には関係なく僕の平穏は奪い去られる。
唐突に僕の部屋のドアが凄い勢いで開く。
僕は即座にベッドの下に隠れる。
するとベッドの下を眼をギラギラさせた日菜姉が除き覗き込み、僕を凄い力で引きずり出す。
その細い体のどこからそんな力が出てくるのだろうか?
少し疑問を覚える。
「日菜姉、今日はどこに行くんだ?」
「う~ん、まずショッピングモール行こ!」
日菜姉にしてはいいこと言ったな。
そういえばショッピングモールに新しいカフェが出来たんだったな。
よし、そうしよう。
「新しいカフェできたんだっけ?僕も気になってたんだ」
「そうなの?まあいいや。ハルくんが行きたいならそこもあたしの行きたい所だから!」
前言撤回。
この姉、いつも通りである。
だが日菜姉をここまで重度のブラコンにしてしまったのは僕だ。
責任は取ろう。
そしてこの行き過ぎなまでの愛情表現は幼少時代に僕が紗夜姉にばかり着いていったからだろう。
さて、着替えるとするか。
「すぐ着替えるから、日菜姉はちょっと出ててくれないかな?」
「うん!すぐ来てね!」
「了解」
それから、僕は一瞬と言っても過言ではない速度で支度を終えて部屋を出た。
「ハルくん遅いよ~」
「嘘、これで遅いの?一瞬だったでしょ」
「一瞬でも遅いの!」
無茶苦茶である。
まあ平常運転で助かるのだが。
「日菜姉、その服新しく買った奴?」
「さっすがハルくん!よく見てるね」
日菜姉がここまでせっかちなのは、新しく買った服を誉めてほしい時くらいだ。
16年の付き合いならこれくらい分かる。
「伊達に16年も二人の弟やってないよ」
「それもそーだね。じゃあ、行こっか!」
日菜姉は、僕の手を引っ張り家を飛び出しアスリート並の速さで駅に向かった。
駅に到着しても息一つ切れていないどころか、さらにイキイキしている。改めてうちの姉はヤバイ。
そうこうしているうちに電車に乗った。
満員電車の中で距離が近くなり、日菜姉がシャンプーを変えた事に気づいた。昨日風呂場にあったのは、日菜姉のやつだったのか。
「ハルくん、行こ!」
駅に到着した瞬間、日菜姉は僕の手を引っ張ってもう一度全力疾走した。
一瞬でショッピングモールに着いたが、入り口の側に迷子らしき女の子が居たため僕は日菜姉を止めた。
「どうしたの?家族とはぐれた?」
僕は困っている人を見ると放っておけない体質だ。
というか体が勝手に動いている。
「ママが……どっか行っちゃった…」
「そりゃあ大変だ。僕達が協力するから、一緒にお母さん探そうか」
「お姉ちゃんも一緒に探してくれるの?」
「うん!」
なんかナチュラルにお姉ちゃんって言われたが慣れてるしあえて訂正しないでおこう。
「ハルくんは相変わらずお人好し過ぎるよ~。ま、そこがあたしとおねーちゃんが大好きな所なんだけどね」
日菜姉は若干呆れながらも手伝ってくれるようだ。
まあ向こうもなれているだろう。
「ごめんね、日菜姉。気がついたらもう体が動いてた」
「いいよいいよ。さて、この子のお母さん見つけてあげよ?」
「そうだね。ねぇねぇ、お母さんの特徴教えてくれるかな?」
「えっと、ママは、白いワンピース着てるよ!それと、モデルさんみたいにスラッとしてる!」
「ありがとう。それじゃあお母さんを見つけたら言ってもらえるかな?」
「うん!わかった!」
この子のお母さんの特徴はわかった。
あとはこの子がお母さんを見つけるだけだ。
それから、僕達は少しショッピングモールの中を歩き回った。
「あ!ママ!」
「お母さん見つけた?」
「うん!」
するとその声に気がついたのかこの子の母親らしき人物が駆け寄ってきた。
「うちの娘を見つけていただき、本当にありがとうございます。私があまりみていなかったもので」
母親は、僕達に深々と頭を下げた。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。僕は二人がまた会えて嬉しいので」
「お礼は何が必要でしょうか?」
「さっきの感謝の言葉だけで十分頂いたので結構ですよ。僕も自己満足でしたことなので」
こうして、女の子を母親の元に送り届けてようやく僕達の用事が始まった。
「ハルくん、あのお店行こ!」
それからは先ほどまでと同じように日菜姉に引っ張られていろいろなお店を回って、気づけばもう昼だ。
「お腹空いたね、ハルくん。カフェでもよる?」
「そうしよう。僕もかなりお腹空いた」
そういえば、朝起きてから何も食べて無かった。
僕達はカフェに向かった。
「ハルくんはどれ食べる?パスタとか色々あるけど」
「僕はカルボナーラ食べたい」
「じゃああたしもそうする!店員さん、カルボナーラ二つ!」
カルボナーラが来るまで、二人で他愛もない会話をしていると日菜姉がとあることを言い出した。
「ハルくん、あたし、アイドルやろうと思うんだ」
「日菜姉がアイドルかぁ、いいじゃん。僕は見たいな。日菜姉がアイドルやってるとこ」
「よーし、それじゃあハルくんはあたしのファン一号だ!」
「そうなるね。応援してるよ。日菜姉のこと」
こうしていると、カルボナーラが運ばれてきた。
「それじゃ、食べよっか」
「うん!」
このカルボナーラ、なかなかに美味しいぞ。
これまでの人生で最も美味しいカルボナーラだ。
さすがはパスタが売りのカフェだ。
今度また来て他のメニューも食べてみたいな。
今度は紗夜姉や巧君と来たいな。
午後からもあちこち引き回されてかなり疲れたが、結構楽しかった。
そして何より、喜んでいる姉を見ていると心地が良い。
1~2年程前の苦しんでいる二人は、もう二度と見たくない。
そんなことには、僕が絶対にさせない。
改めてそう思わされる1日だった。