今回はちょっとだけストーリーが進行します。
「ハク、ランニングしようよ!」
それは突然のことだった。たえがいきなりランニングしようと言ったのだ。なんでまた走ろうなんて言ったんだ?
「どうしたんだ急に」
「ちょっと気分転換に走ろうかなってね」
「気分転換か......」
最近休んでばっかりだな。エターと戯れてばかりだからたまには走るのもいいだろう。
だがしかし、俺にはある欠点がある。
――その欠点とは、運動が苦手ということだ。
小学の頃、それもたえと出会う前から運動が苦手なんだ。たえに知られた時は「ハク、大丈夫?」と心配そう、正確には哀れむような目で見られた。あの時は本当にショックだった。
それ以来、俺は少しずつ体力をつけることにした。今はほとんどやっていなくて本当にヤバい状態にある。さっきたえが走ろうと言った瞬間に背筋が凍ったんだ。
「わかった。じゃあ準備してくる」
「ハク、無理してない?」
「そ、そんなことない!無理はしてないぞ!」
たえは相変わらず鋭い時がある。こういうときが厄介なんだよなあ。あまり心配を掛けたくない。まあ走るだけ走ろう、その後休めばいいんだ。大丈夫だろう、多分......。
ジャージに着替え、ランニングの準備をする。できるだけたえに着いていけるように調整しよう。体力のない奴が調整って言ってる時点で嫌な予感しかしない。本当に俺大丈夫かな?死なないよな?
「じゃあ走るよハク、遅れないでね?」
「遅れたりはしない、合わせるさ」
不安を胸に抱えながら俺とたえはランニングを始めた。やっぱりたえは早いな。それに控え、俺はちょっと距離が空いてしまった。くっ、遅れるわけにはいかない!
「はあ、はあ。たえ早いな」
「そりゃあ毎日欠かさず走ってるからだよ。ハクも毎日走ったら?」
俺はたえに着いていくことに精一杯で会話ができない。しかしたえは疲れ知らずなのか、走りながら会話ができてる。しかも息を切らさずにだ。運動音痴にも程があるな。
走ってから数分後、ゴール地点の自宅にようやく着いた。俺が息を切らしてもたえはずっと待ってくれていた。着いていけるように調整しようって言っといてたえに合わせられるなんて、情けないな。
「たえぇ、どんだけ......体力......あるんだよ」
「はあ、はあ、ふぅ......。ハクよりは体力あるよ。じゃないとギターなんてできないからね」
駄目だ、疲れた。何キロ走ったんだ?そんなのわからないっていうくらいに走ったな。ちょっと横になろうか。
「ハク、横になるの?」
「ああ。疲れたよ、しばらく走りたくない」
「ふーん。じゃあ私はアレを持ってくるよ」
アレ?アレってなんだ?なんか嫌な予感がする。
たえは小屋から何かを取り出して来た。おい待て、そこにいるのはエターとキルとケーがいるところだよな?まさか乗せるつもりか!?
乗せるならエターにしてくれ。いるならオッちゃんにしてもいい。オッちゃんなら疲れ吹っ飛ぶし、モフモフできるから一石二鳥だ。
「お待たせハク、じっとしててね~」
「やっぱりか!つかエター乗せるんだな!」
エターなら大丈夫だ。キルとケーなら嫌がられるし、俺の心にもダメージ来るから、エターなら安心する。たえはエターを抱えて近づき、俺の腹の上に乗せた。
「モフモフが服越しに当たって気持ちいい」
「ハク、顔ヤバいよ。なんか気持ち悪い」
「やめろたえ、傷つくからやめてくれ。せっかくモフモフで癒されたのにさらに傷つくのは御免だから」
「ハクってやっぱり変人だね」
たえにだけは言われたくない。それを言うなら俺を変人にしたたえこそが変人だと思うが。ていうかモフモフ当たって昇天しそう。
「たえ、(モフモフ当たりすぎたから)あの世逝っていいか?」
「ハク、駄目だよ~。逝かせはしないよ?」
モフモフがヤバい。やっぱウサギって神様だな。オッちゃんモフモフしたいんだけど、また頼もうかな?
「たえ、オッちゃんモフモフして......」
「言わせないよ。駄目だって、オッちゃんにまた嫌われるよ?」
「それならやめよう」
――オッちゃんモフモフできないなんて、ショックなんだけど。
▼▼▼▼
ハクはあの後、ソファーで横になって昇天した。寝顔がすでにヤバい。ハクにウサギはもはや麻薬だ。一体誰がこんなことを?
――あっ、私だ。私がハクをウサギ好きに変えたんだった。
ていうボケは置いといて、ハクの顔は幸せそうだ。エターは小屋に戻したから今は寝ている。エターごめんね。
ギターは置いてきたからやることがない。ハクの寝顔を眺めていようかな。そうするしかないか。ハクって私のことどう思ってるかな?気になるけど、未だにわかってない。
「ハクは私のこと好き?」
「......」
反応がない。寝てるから当たり前だ。ハクは寝てるから今ならファーストキスを奪うことだってできる。でもそんなことはしたくない。私としては雰囲気を作った上でやる方がいい。
ハクにはいくつかスキンシップや好きだよアピールを何回かやったけど、なかなか気づかない。ここまで来ると私のやってきたことは無駄なのか?って思ってしまう。気づいてくれるまでやらないといけない。今度はもう少しやり方を変えよう。
今度は大胆にやるとかがいいかな?大胆にやったら私の身が持たない。それなら音楽で語るか、いややめよう。音楽で語ってわかれば苦労しないし、そんなに都合よく上手くいくはずがない。
恋愛って難しいんだなって痛感させられる。こんなこと考えてると心にグサグサと刺さってくる。なんか泣きたくなってきたな。泣かないようにしよう。
▼▼▼▼
声がする。これは誰か泣いているのか?俺は目を覚まし、体を起こした。そうか、さっき疲れて寝ちゃったんだ。ソファーで横になってたのか。近くを見渡すとたえが泣きそうな顔をしていた。どうしたんだ!?
「たえ、どうした!?なにかあったのか!?」
「ハ、ハク......」
目が腫れてる。なんで気づかなかったんだ俺は。また泣かせるなんて、もう泣かせないってあの時誓ったのに。どうして泣かせるんだ俺は!
俺はたえを安心させるために抱き締めた。俺はここにいるから泣かないでくれ。
「たえ、大丈夫。もう大丈夫だから!俺はここにいるから!」
「ハク、私は......」
「なにかあったのか?」
まだすすり声が聞こえる。まさかたえがここで泣くなんて思わなかった。普段は泣かないのに、なにがあったんだ?
「ねえハク......」
「何?」
「ハクはどこにも行かないよね?」
「離れないよ。前に行っただろ。ずっと一緒にいるって」
そう、俺はずっと一緒にいるって決めたんだ。たえのことを守るって。なのに泣かせた。原因はわからないけど、しばらく離れない方がいいな。
「本当?」
「本当だよ。なにがあっても真っ先に駆けつけるし、側にいる。そう言っただろ」
「そう......だよね」
たえが泣き止んだ。よかった、安心してくれた。バクバクしていた俺の心も収まり、肩の力が抜け始めた。たえも安心したのか、俺の胸元に寄りかかり、俺は受け止めきれず、後ろのソファーに倒れてしまった。
「ハク、今日は一緒に寝ていい?」
「いいよ、側にいてやるから」
なんでたえは泣いていたんだ?原因がわからない。あの泣き顔を思い出すと胸が苦しくなる。こんな苦しい想いをしたくはないな。俺もしっかりしないと。
――白兎は気づいていない。
――兎に想いを寄せられていること、想いに気づかない限り兎が苦しい想いをしていることに白兎はまだ気づいていない。
後半にシリアスを入れてちょっとだけ物語は進行しました。
ここからの展開、お楽しみに。
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