今回は少し長いです
帰ってからの放課後、たえから突然話はまた今度でいいかと言われた。俺は「いいよ、また今度で」と返事を返した。
ちょうどよかった。たえの想いを知った上で話をしたら、気まずくて話ができる状態じゃない。しかし、どうしてたえは俺のことを好きになったんだろう。それが疑問だ。
なにか理由があるのかもしれない。俺が小学生の時に「何があっても一緒にいる!」って言ったからか?それとも、一緒にギターを弾いていて好きになったからか?
全くわからない。じゃあ、俺はどうなんだ?俺はたえのことは好きなのか?でも、それは親友としてなのか、パートナーなのか。もうわからなくなっているな。
「たえ、どうして俺のことを好きになった?どうして俺なんだ?」
俺は一人、自分の部屋で呟いた。今日はたえはいない。いないというより、しばらく来れないと言っていた。たえがいないだけで寂しいと感じてしまうなんて、どうしてだろう。
俺は思った。ギターや料理はたえのためにできるようにした。たえのためと言っても、何故やったのか。どうしてできるようにしたのか。あと、たえがなんで俺に甘えて来ているのか。どうして甘えて来る頻度が増えたのか。
たえが俺の耳に甘噛みをしてくる理由は何故なのか、色んなことが俺の頭の中に浮かび上がっていく。様々な疑問や昔の思い出が交錯していった。
あともう一つ、俺は何故たえを守る、側にいると言ったんだ?今になってこんなことを思い出すなんて......。
俺はたえと出会った時、最初は変な奴だと思った。しばらくして、たえとギターを弾いたり、一緒に同じ音楽を聞いたり、一緒にウサギの気持ちになったり、たえのために料理を作ったり、色々なことがあった。
俺は中学の時にこんなことを思っていたな。確か、おばさんもいた時だったっけ?
――たえはもしかして、俺のことが好きなのか、と。
俺は思った。ギターや料理はたえのためにできるようにした。そんなこと、好きな人のためでなければできないことだ、と。そう、要するに......。
――俺はたえのことが好きだった。
やっと気づいた。自分の想いにやっと気づけた。なんでここまで鈍感だったのか、情けないと思う。たえをここまで悲しませたのは、俺だ。答えを出した瞬間、俺の目から一滴の雫が流れた。これは、涙だ。
「たえ、ごめんな。本当に......ごめんな」
ごめんよたえ。お前の想いに気づけなくてごめんな。待たせちゃって本当にごめんな。
「今なら言える。俺は......いや、僕はたえのことが好きだ」
久しぶりに一人称が変わった。あの日から変わろうって決めたのに、昔に戻っちまったな。でも、過去には戻れないんだ。だから、この想いを伝えよう!たえに好きだって伝えよう!
▼▼▼▼
よし、今日はここまでにしよう。私はハクに音楽で想いを伝えると決めたあの日から、ずっと練習をしていた。ハクと一緒になった時はなるべく普通にしている。
ハクも私と合わせてくれているのか、普通にしていた。香澄達は応援してくれている。もちろん、私はハクの家には行っていない。寂しそうにしているかもしれない、ごめんねハク。私はハクのために練習をしていた。
「ハク、今頃どうしてるかな?」
「元気出してよ、おたえ!」
「ハクのことだ、あいつなりになんか考えてんだろ?」
香澄と有咲は言った。ハクもなにか考えているに違いない。ハクからはしばらくクラレンには来れないって連絡が来ていた。なにをしているんだろう?気になるけど、そんなことを気にしている場合じゃない。
「ここまで必死なおたえちゃん初めて見たよ」
「おたえとハクってロマンチックな関係だよね~」
ギターを弾いている手が止まった。さ、沙綾!?なにを言ってるの!?私は焦ってしまい、ギターを落としそうになった。連れてきていたオッちゃんもビックリしてしまったようだ。
「沙綾!なにを言ってるの!?」
「ごめん、ごめん。ついからかいたくなっちゃってね」
沙綾は手を合わせ、ウィンクをして謝った。許せないけど、どうしても沙綾が憎めない。なんなの?この複雑な気持ちは?
「おたえ、お前大丈夫か?」
「し、心配しなくても大丈夫だよ!私はこれでも大丈夫だから!」
「全然大丈夫なようには見えねーよ!」
有咲にまでツッコまれた。なんか酷いなあ。私ってそんなに大丈夫じゃないのかなあ?なんかわからなくなってきたし、頭がクラクラしてきたよ......。
「おたえ、一旦休もうよ」
「でも香澄、私は止まれないよ」
「......はあ」
りみが溜め息を吐いた。りみ、どうしたんだろう?
「おたえちゃん......」
「な、なに?」
「休めって、言うとんねん!」
りみに関西弁で怒られた。私、なにかしたかな?
「りみりん!?」
「あのりみが......」
「マジギレした!?」
あ、なんかヤバイかも。
「おたえちゃん!少しはみんなの言うこと聞いた方がええよ!」
「は、はい......」
「ハク君に想いを伝えるっていうのはわかるよ!でも、おたえちゃんが倒れたりしたら、ハク君は悲しむと思うよ」
――だから、おたえちゃん。冷静になろう?
りみは怒りながら言った。そうだ、ここで私が倒れたりしたら元も子もない。
「ありがとう、りみ」
「それでいいんだよ、おたえちゃん」
「今日はこれで終わりにするよ。悪いけど、先に帰るね」
私はギターをしまい、オッちゃんをケージに入れて帰る準備をした。蔵から出ようとした時、香澄に声を掛けられた。
「おたえ、頑張ってね!」
「おたえ、砕けるなよ!砕けたりしたら、承知しないか、な!」
「おたえ、ファイト!」
「おたえちゃん、頑張って!」
香澄や有咲、沙綾、りみから応援の言葉を貰った。駄目だ、泣きそうになる。ここで泣いたら駄目だ!私は涙を堪え、言葉を紡いだ。
「ありがとう、みんな。行ってくるね!」
さあ、ハクに想いを伝えよう。待っててねハク!
▼▼▼▼
たえが来なくなって一週間が経つ。この一週間の間は昼食は別で食べることにしていた。
たえが隣にいないだけなのに、寂しく感じる。好きだと気づいて、俺はたえに何もしてあげられない。正直言うと、どう告白したらいいのかわからなかった。こんなこと初めてで、どうしたらいいのか、どうすればたえは喜ぶのか、考えていたが全く思い付かなかった。
たえが恋しい。この寂しさをエターやキル、ケーと一緒にいても補えなかった。ウサギが駄目なら人か。たえがいないだけで胸がズキズキと痛む。弾き語りをする気が出てこない。
はあ、と溜め息を吐く。俺がたえの想いに気づけなかったのが悪いのに、何故溜め息を吐くのか。じっとしている場合ではないのに、この状況をなんとかしなければいけないのに、体が動かない。
後ろを振り返ると人影が見えた。あれは、有咲か?
「ここにいたのかハク」
「有咲、何故ここに来た?」
「お前を探してたんだよ」
有咲が俺を?俺に用があるのか?俺は気になり、有咲に探していた理由を聞いた。
「俺に何か用か?」
「用というか、主におたえの件でな......」
たえのことでか。そういえば、たえはどうしてるんだろう。心配になっていた。一週間も一緒にいないんだ。
「たえはどうしてる?元気にしてるか?」
「ああ、元気だよ。あと、ハク。これだけは聞くけど......」
――お前、おたえのことどう思ってるんだ?
有咲の一言は直球だった。俺の心臓をナイフで刺したかのように直球だった。聞かれた瞬間、心臓が止まりそうになった。俺は心臓がバクバクと鳴っているのを感じた。息が止まりそうだ。
「......た、たえのことか?それはどういう意味でだ?」
「どういう意味って、その、恋愛的......な意味でだよ」
「'恋愛的な意味でか」
俺の中では答えは出ている。たえを十年も待たせてしまった。俺の頭は待たせてしまったという罪悪感でいっぱいだった。
「もちろん、好きだよ」
「言っておくが、友達とかっていうのは無しだからな」
「わかってる。有咲が知ってるってことは、たえから聞いたんだな」
そもそもおかしいんだ。恋愛的な意味でってことは、有咲はたえが俺のことを好きだと、知っている上で聞いたんだ。つまり、たえは俺のことを好きだということか。
「......ああ。おたえが自分で言った」
「そうか。たえにしては珍しいな」
「そうだな。なあ、ハク」
「なに?」
「ハクは、これからどうするんだ?」
有咲はこれからどうするかを聞いた。わからなくなっているんだ。たえに告白するのか、このまま親友というままで終わらせるのか。
「もう、わからないんだ」
「はぁ!?お前、自分がなにを言ってるのかわかってんのか!?」
「ああ、わかってる。わかってるよ」
わかってるさ。俺が何を言っているのか、言っている意味も。こんなことを言っている時点でたえを傷つけていることも、悲しませていることも。
「俺はさ、どうしたらいいかわかないんだ。告白するべきなのか、親友のままで終わらせるのか。どうすればいいのかわからないんだよ」
「ハク、おたえが待ってるんだぞ!お前がそんなんでどうするんだよ!」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!有咲にはわからないだろ!俺がどういう気持ちなのか、たえを十年も待たせて、散々傷つけて......。あいつに想いを伝えたとしても、許してもらえないかもしれない」
俺は息が切れるように言った。喉は枯れて、泣きそうになって、心は傷ついてボロボロ、俺の心は折れる寸前だった。
きっと、無理なんだ。たえのことが好きだとしても、許してもらえない。俺は......。
――俺は、薄情者だ。
逃げているのはわかっている。今更、どんな顔をして会えばいい?どうすればたえに想いを伝えたらいい?好きだと気づくのが遅すぎたんだ。
パチンッ!
頬に乾いた音がした。叩かれたんだ。叩かれて当たり前だ。当然だ。逃げるようなことを言って、駄々をこねて、たえを悲しませて、どうすればいいのかをわからないと言っている。俺には叩かれる資格があるんだ。
「バカ野郎!ハク、お前はなにやってるんだよ!」
「あ、有咲......」
「だったら......。おたえのことを幸せにしてやれよ!ハクしかいないんだぞ!お前がおたえのことを幸せにしないでどうする!」
有咲は怒りながら言った。俺がたえを幸せに?でも、俺はたえを傷つけたんだぞ?俺にその資格があるのか?
「でも、俺は......」
「でもじゃねぇ!ハク、もうそんなこと言うな。おたえが待ってる。だから、行ってやれ」
「いいのか?今更会わせる顔がないのに、俺がたえに会っていいのか......」
「いつまでもウジウジしてんじゃねぇ!いいから、早く行け!」
そうだよな。こんなところで止まっててもしょうがないよな。許してもらえないとかはどうでもいい。たえに想いを伝えよう。俺が幸せにしてやらないと!
「わかった。行ってくるよ」
「よし、行ってこい。落ち着いたら結果言えよな?」
「え、言うのか!?」
「当たり前だろ。同じポピパとしてっていうのもあるし、私がなんのためにここに来たと思ってるんだ?」
結果まで言わなきゃいけないのか。まあ、そうだよな。有咲にここまで言われたんだ。とりあえず、俺のできる限りのことをしよう。当たって砕けろだ!
「行ってくるよ、有咲」
「おう、頑張れよ!」
「あと、さ。怒ってくれてありがとう」
「は!?な、なんだよ急に!?」
ここで折れていた俺を有咲は怒ってくれた。もしここで止まっていたらこんな状況にはならなかった。だからお礼を言ったんだ。
「まあ、お礼だよ」
「そ、そっか」
俺はたえの元に走った。たえが家にいると有咲から聞いた。走ろう、全力で走ろう。前へススメ!
最後蛇足気味になりましたが、読んでいただきありがとうございました
次で白兎とおたえが結ばれます
次をお楽しみに
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