白い兎は天然でマイペースな兎に懐かれる   作:ネム狼

23 / 33
令和初の十五夜なのにジェイソンが被るという謎の偶然


ウサギと月見、時々ジェイソン

 九月十三日、今日は十五夜だ。ウサギにとっても大事な日で、エター達は今日は大人しくしていた。十五夜だけでなく金曜日、しかも十三日。これが示す言葉は……。

 

「たえ、それは何なんだ!」

「何がー?どうしたのハク?」

「どうしたのじゃねえよ、何でウサギに仮面とチェーンソー持たせてんだよ!しかも粘土で作りやがって!」

 

 そう、たえは今粘土でウサギを作っていたのだ。作ったのはいいが、何故仮面とチェーンソーなのか。理由は一つしかない。十三日の金曜日、つまりは"ジェイソン"だ。

 

 十五夜なのにジェイソンという、あまりにも酷いコンボだ。これには俺の白髪も抜け落ちるくらいに衝撃を受けたよ。たえなんて知った瞬間に粘土で作っちまったよ。ホントたえって粘土好きだよなぁ。

 

 まぁいいや、とりあえず月見団子用意するか。俺は下に降りて月見団子を作ることにした。市販にしてもいいが、たえがハクの手作りが欲しいと言ったので作ることにした。

 

「ハク、私を置いていくなんて酷いよー」

「ごめんごめん。お詫びにキスするから許してくれ」

「むぅ……じゃあ許す。でもおでこにしてね、唇は恥ずかしいから」

 

 俺はたえに言われて頭を撫でながら唇を額に付けた。たえは額にキスしただけなのに昇天してしまった。たえがこうなると元に戻るのに時間かかるよな。仕方ない、待つとしよう。

 

 待つこと二十五分、ようやくたえは元に戻った。その後、俺とたえは一緒に月見団子を作ることにした。たえと作るなんていつぶりだ?先月以来か。

 

「よし出来た!」

「いい感じだねハク」

 

 たえの言う通り今回はいい感じだった。前は上手く作れなかったが、今年は上手くいった。これなら上出来だな。あとは夜を待つだけだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 夜になり、外は満月が映っていた。月の兎は何をしているんだろう。今頃餅でも突いてるのかな?わからないや。

 

 今回は香澄達も呼んで有咲の蔵で月見をすることにした。もちろんオッちゃんやエターも連れてきた。ハクは月見団子を持っていくことに精一杯だったから、エターを入れたケージは私が持っていくことにした。そして背中にはギターケースを背負っている。

 

「たえ、思ったんだが……ギターいるのか?」

「一応ね、まぁ念のためってやつだよ」

「それはわかる。だがなぁ香澄、お前はいつも通りだな」

「へへぇ!この子は手離せないよ!私にとっては相棒だもんね!」

 

 香澄はランダムスターを抱きながら言った。香澄にとっては思い入れはあるから説得力がある。私やハクもギターには思い入れがある。確かに相棒だ。

 

「ハク君、月見団子作ったんだね。何でも作れるなんて凄いよ」

「何でもって訳じゃないぞりみ。俺にだって作れない物はある。ハンバーグならお任せだが……」

「じゃあハク、今度パンでも作ってみる?」

「さすがにやめておくよ。朝は苦手だからさ」

 

 ハクがパン作り、何か似合いそうだ。ハクならクロワッサンを作り続けそう、私の中ではそんなイメージしかなかった。

 

 さて、そろそろ月見団子を頂こう。そう思っていると、有咲がお茶を持ってきた。月を背景に有咲が映った、意外と様になってる。これは有咲、いや皆バニースーツを着るべきだ。さすがに本人には言わないでおこう。

 

「おーい、お茶持ってきたぞー」

「ありがと有咲、好きだよ!」

「やめろ!何唐突に告白してんだ!」

 

 香澄って有咲ラブだよね。二人とも実は付き合ってるんじゃないの?私からしたらそうにしか見えないよ。今度二人にラブソング送ろうかな?ハクと一緒に作詞作曲してみよう。

 

 外が涼しい、私は隣に座ってるハクの手を繋いだ。皆には気づかれてないけど、ハクは手を繋がれたことに気づき、私の方を向いた。

 

「たえ、皆の前でこんなことは……」

「気づかれてないからいいでしょ?」

「そりゃそうだけど、出来れば二人きりでやろう」

「私達が付き合ってることは知られてるでしょ?それなら手を繋いでるところは見られてもいいと思うけど……」

 

 私は自分でも気づかずに大胆になっていた。ハク、固まってる。その顔、可愛いなぁ。私もハクにこんな顔されたいよ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 月見団子を食べ終え、俺はたえと一緒に花見以来の弾き語りをやることにした。ギターを持ってきたんだ、せっかくだからやろうかと思った。本当に久しぶりだ。

 

 今回弾く曲は二曲、「悠久の月に照らされて」と「想いが歴史に変わる時」だ。とある同人サークルが弾幕シューティングゲームの曲をボーカルアレンジしたらしく、最初に聞いてたえと一緒に弾こうって決めた。

 

 聞いてて歌詞も凄く良かった。しかし、歌詞について考えていたら俺とたえも二人して泣いちまった。聞きすぎたあまりに考察をしたからだ。あんな歌詞を書いたのが悪い。

 

「じゃあ始めるぞ」

「いつでもいいよハク」

 

 俺とたえはアイコンタクトをして弾き始めた。久しぶりに弾くけど、腕は鈍ってないようだ。練習期間は一週間だけだったが、上手くいってる。俺とたえは歌詞を吟味しつつ感情を込めて歌った。

 

 歌詞から伝わる悲恋を匂わせるかの想い、その人を好きであったとしても誰かに先を越され、想いを伝えることも出来ずに終わる。簡単に纏めるとこんな感じだ。もし俺とたえが結ばれていなかったらどうなっていた?

 

 いや、こんなことを考えるのはやめよう。今を楽しむんだ、過去はいい思い出だが、現在(いま)が大事だ。

 

 考えている内に俺達は歌い終えた。拍手が聞こえる、よし成功だな。五ヶ月ぶりとはいえ、失敗なく終わってよかった。

 

「相変わらずすげぇなお前ら」

「そりゃあ私とハクだからね」

「すっごいよ!キラキラドキドキしたよ!」

 

 香澄が語彙力失くなってる、もはやこうなるとこれしか言えなくなる。これが香澄だから仕方ないか。

 

 りみと沙綾からも称賛された。こればっかりは慣れない、照れちまうから慣れるなんて無理だ。まぁいいか、今日は楽しく出来たんだからよしとするか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 はぁ疲れた、私は溜め息を吐いて肩の力を抜いた。ハクと一緒に弾き語りしたけど、凄く気持ちよかった。歌っててお互いに話し合ってるみたいで歌うっていいなって思ったな。

 

 私は窓から月を眺めた。今日は満月、とてもいい眺めだ。いい眺めだけど、なんで今日ジェイソン何だろう?

そこは不思議だ。いや、突っ込んだら負けだよね。

 

「さーて、今日は寝ようかな。ハクも今頃寝てるだろうし」

 

 私は部屋の電気を消して布団に入った。体がバキバキする、これは筋肉痛かな?しばらくランニングは控えよう。

 

 今日はハクの唇にキスしてなかったなぁ。今度キスをせがもう、うんそうしよう。おでこにやってもらったけど、ひんやりとした。唇にやったら首筋にもやってもらおう。

 

 そう思っていると、瞼が重くなった。ああ眠い、これは考えている内に寝落ちしそうだ。昨日徹夜してたからだな。もう寝よう、寝て明日ハクにキスをしてもらわなきゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 




ジェイソンは申し訳程度です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。