作者のネタ切れスランプ、未だ脱出出来ず
九月中旬、突然の大雨、もとい台風がやって来た。朝起きて外を見ると大量の雨が降っていた。しかも風は強いときた。俺は部屋を出てレインコートを着て外のウサギ小屋に入り、エター達が大丈夫かを確かめた。
エター達は何ともない、よかった。ニュースで台風が来ることは予報であったから、対策はしといて正解だったな。俺はウサギ小屋を出て家に戻り、私服に着替えることにした。
「これだけの大雨だとたえが心配だ。直接行った方がいいよな」
「私がどうかした?」
「た、たえ!?いつの間に……」
「今来たばかり。ハク、ドア開けっ放しだったよ」
たえの奴、俺がウサギ小屋の様子を見終わった所を狙って入って来たな。開けっ放しにしたのはわざとだ。たえの所のウサギやオッちゃんは大丈夫だろうか。
「たえのところはウサギ、大丈夫なのか?」
「私は大丈夫、事前に対策しといたから問題ないし、この通りオッちゃんは連れて来たから」
連れて来た、ということはケージの中か。俺はたえの手元を見ると、案の定だった。両手にケージの持ち手を持っている。中にはオッちゃんがいるようだ。しかもギターまで持ってきてるし……。
「さすがだな。俺なんて中に入れようととしたけど、三匹共出たくなかったんだ。はぁ、エター達が心配だよ」
「あの三匹なら大丈夫だよ。前の台風でも平気みたいだったし、大丈夫だと思うよ?」
本当にそうだろうか。まぁエター達は前の台風の時、平気だったし、全く動じなかったからな。俺のところのウサギはメンタルが強いのか、そうだったら頼もしい。
たえが俺の家に来た理由を聞いたところ、おばさんから今日は白兎君の所に遊びに行っていいと言われたらしい。おばさん、何を狙ってそんなことを言ったんだ。気になるが、聞かない方がいいかもな。
▼▼▼▼
私はオッちゃんをケージから出し、リビングに放った。ハクの家はウサギを中でも飼えるようにしてある。ハクは大抵ウサギ小屋に入れてる。本人曰く、家に入れるのはごく稀だそうだ。
雨が降っているせいか、気分は憂鬱だ。私は気分を紛らわすためにギターを弾くことにした。弾いていればこの憂鬱を晴らせるかもしれない。わからないけど、試してみる価値はある筈だ。
「たえ、ギター弾くのか?」
「ちょっと憂鬱でね。ハクも弾く?」
「今はいいかな。隣で聞いてていいか?」
「隣で?い、いいよ……。前は私が隣で聞いてたけど、ハクが私のを聞くって、逆になったね」
確かにそうだな、とハクは言った。うん、今度は私の番だ。前は隣で聞いてたけど、今度はハクに聞かせよう。ハクが側にいてくれるなら憂鬱は晴れる。私はそう信じながらギターを弾いた。
今から弾く曲は「雨音ノイズ」だ。どうしてこの曲にしたのかは私にもわからない。雨の日だからこの曲にしたのかもしれない、それとも何だろう……。ハクに聞かせたかったからなのかもしれない。
――わからないや。ハクが満足してくれるなら、私はどんな曲も弾こう。それだけでも聞いてもらえる価値はあるんだから。
「ハク、どう……かな……?」
「綺麗な音だったよ。さすがたえだ」
「ホント?ありがとハク」
面と向かって言われると照れる。ハクの顔が近いからかな?何か顔が熱いんだけど、気のせいかな?
私はギターを置いてハクに寄り添った。あまり顔を見られたくない、ハクに見られたら蒸発しちゃう。顔を埋めて隠そう、そうしよう。
――そう、これは休憩だ。
「たえ、どうした?」
「ちょっと休ませて……。なんか疲れた」
「そっか、ならゆっくり休むといいさ」
弾き終わってから甘えるのは悪くない、私はそう思いながらハクの胸に顔を埋めた。うん、いい匂いだ。安心するし、包まれてる。そんな気がするよ。
▼▼▼▼
たえの奴、抱き着いたのはいいものの、そのまま寝ちまった。寝顔が可愛いから許すが、このままだと動けない。困ったウサギだな。
このままたえが起きるのを待つか、たえを起こすか、どちらにするか……。だが、起こすと可哀想だ。機嫌が悪くなって一日中口を聞いてくれなくなる。それをされたら俺も嫌だし、たえも強引に起こされるのは嫌だ。
起こすとしたら優しくだ。ウサギには優しく接する、それと同じだ。というか自分の彼女を強引に起こすって考えたことないな。いや、考えたくない。
「たえ、ぐっすりだな。これじゃあ起こそうにも起こせないじゃねえか」
うん、これは待とう。こんな可愛い寝顔を見せられたら起こせない。罪深いウサギだよ、全く。
たえが寝てから一時間、雨は未だに止まない。時間は午後の二時、もうそんな時間か。そろそろ昼飯にしないといけないな。とりあえずたえを優しく起こそう。
「たえ、飯にするから起きてくれー」
「……ハクぅ?」
「やっと起きたか。ほら、涎垂れてる。拭くからじっとしてて」
俺はたえの口元をティッシュで拭き、涎を取り除いた。まだ寝惚けてる、ホント可愛いウサギだ。今日の夕飯はハンバーグにするかな。
たえは目を擦り、欠伸をして両腕を上げた。欠伸が移りそうだ。寝そうになるが、寝たら昼飯が作れなくなる。飯を食い終わったら俺もギターを弾くかな。
▼▼▼▼
お昼ご飯を食べ終えた後、ハクは二階からギターを持ってきて、弾く準備を始めた。今度はハクが弾くようだ。何を弾くのかな、楽しみだ。
「ハク、何を弾くの?」
「スモルワールドロップかな。聞いたことあるか?」
「一応聞いたことはあるよ。ハク、早く聞かせて」
わかったよ、とハクはギターを構えて言った。そして、弾き始めた。綺麗な旋律だ。ギターを弾いているハクの表情は穏やかで、暖かい眼差しをしていた。ハクはどんな想いで弾いているんだろう。
五分程してハクは弾き終えた。弾いてる間にハクの肩に頭を乗せちゃったけど、気づいてるかな?
「ふぅ終わった。たえ、頭乗せてどうしたんだ?」
「気づいてた?」
「弾いてることに集中してて気づかなかったな。まぁいいや、どうだった?」
「とっても綺麗だったよ。曲もハクも綺麗だった」
「俺もか……。ありがと」
ハクは私の頭を撫でてお礼を言った。くすぐったい、ありがとうって言われるのはいいけど、撫でられるのはくすぐったいな。でも、悪くない。
窓を見ると、雨は止んでいた。きっと、ハクがギターを弾いたから雨が止んだのかもしれない。自分でも言ってることはわからないけれど、私にはそう感じた。
今日はハクの家に泊まろう。それで夜は雨のことについて語り合おう。私はそう思いながら、胸を弾ませながらハクに笑顔でまた聞かせてね、と言った。
雨が止んだら目の前に虹がかかるなんていうのは滅多にないかもしれない