読者の方々、申し訳ないです
秋なのに寒いな。俺はエター達に餌をやりながらそんなことを思った。バイトを始めたのはいいが、月島さんから体力付けた方がいいんじゃない、と言われた。機材を何個か運び終わった後にバテたのが原因だ。
ギタリストなのに体力が無いのはまずいかもしれない。弾き語りをやるのにそこまで体力は使わないだろうと思ったのが仇となった。そうなると、たえにどうすればいいかを相談するか。今月は体育祭があるんだ。それまでに少しでも体力は付けとかないと……。
俺はジャージに着替えて家を出る。たえはいるかもしれない。今日は練習はないと言ってたから、相談は出来る筈だ。俺は入り口のチャイムのボタンを押してたえを呼んだ。
「はーい。あ、ハクおはよう。ジャージなんか着てどうしたの?」
「おはようたえ、実は相談があるんだ。今時間空いてるか?」
「今は大丈夫だよ。入ってどうぞ」
俺はたえに手招きされ、靴を脱いでたえの部屋に入った。兎と戯れたいが、今日は目的が違う。体力作りのためにどうするか、何をしたらいいのか相談して、そっからスタートしていくんだ。
たえがコーヒーをトレーに乗せながら部屋に入って来た。俺はお礼を言い、コーヒーを飲んだ。最初は熱くてちょっとしか飲めない。話ながら冷めるのを待とう。
「それで今日はどうしたの?」
「今日はだな、体力を作るにはどうしたらいいのかについてなんだが……」
「体力作りかぁ……。ランニングとか筋トレ辺りが妥当かな」
俺はたえに月島さんに体力付けた方がいいんじゃないのかを言った。筋トレやランニングか。前はバテちまったが、少しずつ体力付けていけば着いていける筈だ。
たえは立ち上がり、ランニングをしようと言った。いきなりランニングって、急過ぎるな。まぁすぐにでもやらないと時間が惜しいからな。俺はたえと話をし、冷めたコーヒーを飲んで走る準備を整えた。
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ハクが体力を付ける。確か夏の時だったかな、ランニングしてすぐバテちゃって倒れちゃったのは。あの時のハクは不安だった。けど、こうして体力を付けようってなったのはまりなさんに言われて悔しいって思ったからかもしれない。
小学の頃もハクは運動オンチだった。本人はあまり気にしていなかったけど、機材の準備ってなると体力を付けておかないといけない。circleでバイトをするんだから、ここでやっておかないといつか後悔するかもしれない。
「お待たせハク、準備運動してから走ろっか」
「わかった。走ってる途中でバテたらごめんな」
「そうならないようにペースは合わせるよ。無理だけはしないでね」
わかってるよ、とハクは言った。準備運動を終え、家を出て私とハクは走り始めた。まだ大丈夫だけど、いつバテるかわからない。隣にいながらサポートしよう。この前は笑わせちゃったけど、今回は真面目にやろう。
――なんかフラグ?みたいなことを言ったかもしれないけど、気にしないでおこう。
私はハクと歩を揃えながら走り始めた。外が冷えるから上着を着たけど、大丈夫かな?私はいいけど、ハクが心配だ。走ることに集中しすぎて倒れなきゃいいけど……。
「なぁたえ」
「何?」
「たえはさ、走ってて疲れたりしないか?」
「疲れたりはしないかな。私は走るのが好きだから、そういうことはあんまりないんだ」
凄いな、とハクは引き気味に言った。ここまで引かれるのは傷つくなぁ。まぁ引かれてもしょうがないか。
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走り続けて早三十分。俺は走っている途中で息切れを起こし、公園で休憩をすることにした。たえは飲み物を買いに行って来ると言って自販機の所に向かった。
頬から汗が垂れる、首に巻いたタオルで汗を拭き、深呼吸をして息を整えた。少し休憩したらまた走ろう。今の俺はたえに着いていくことに必死になってる、このままだと体力を付けることを忘れそうだな。
「ふぅ……はぁ……。走るのってこんなにキツかったっけ?こんなことは考えても無駄か」
「お待たせハク、スポーツドリンクでよかった?」
「冷たっ!たえ驚かすなって心臓に悪い」
「ごめんごめん。ハクボーッとしてたからさ、元気出してあげようかなって」
今のはたえなりの気遣いだろう。だが、冷たい物を当てられるのは心臓に悪いから、それだけはやめてほしかったな。今回は気遣ってくれたから、よしとするか。
たえに渡されたスポーツドリンクを飲み、乾いた喉を潤す。あと五分程したらまた走ろう。今度はたえに着いていけるように、足を引っ張らないように頑張ろう。ここでギブアップしたらおしまいだ。
「ふぅ……よし!」
「ハク、まだ走れる?」
「もちろん、ここでギブなんかしねえよ。たえ、よろしくな」
「頑張ってハク。私もサポートするから、力付けていこうね」
たえはそう言った後、ドリンクを飲み干してゴミ箱に捨てた。俺もスポーツドリンクを飲み切り、ゴミ箱に捨て、深呼吸をして息を整えた。ここまで言われたんだ、力を付けて月島さんを見返してやろう。
――ここで諦めたら負けだからな。
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二週間後、私とハクは機材の準備に入った。ハクは前よりも成長した。まりなさんからも「さすが男の子!」と褒めてくれた。褒めてくれたのはいいけど、私の目の前でハクの二の腕をぷにぷにするのはやめてほしかった。さすがの私も妬いちゃうよ。
「月島さん、くすぐったいんでそろそろやめてもらえませんかね?」
「ごめんごめん、白雪君の反応が面白かったから、手が滑っちゃった!」
「マジで頼みますよ!たえに何か言われると怖いのでお願いしますね!」
やだなぁ、私は何も言わないよ?私は妬いてたけど、そこまでやったりはしないよ?私は機材の準備に戻り、後でハクの二の腕を堪能しようと考えた。でも、あんまり鍛えすぎるとどうなるんだろう?マッチョになったりしないよね?
私は一瞬、ムキムキの兎を想像してしまった。へ!?何でこんな兎を想像しちゃうの!?いやいや、これはおかしい。私は頭を左右にブンブンと振って忘れよう、これは忘れようと、心の中で誓った。
そろそろ秋が終わる。まだ十月末だけど、今年は異様に寒い。まるで秋を越して冬が来ているんじゃないのかと、私は白い息を吐きながら思った。
久しぶりの更新で内容が無茶苦茶になりましたが、次もよろしくです