白い兎は天然でマイペースな兎に懐かれる   作:ネム狼

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高校編です。
投稿遅くなって申し訳ないです。
今回は少し短めになりますのでよろしくです。
では本編です。


白兎は兎の心に音楽を響かせる

 それからさらに時は過ぎて……。

 

 俺とたえは高校1年になった。本当に時が過ぎるのは早い。たえもお年玉を貯めたり、バイトを始めてお金を稼いでようやくギターを買った。どうやら独学で技術を磨いたみたいだ。

 

 そして俺もお母さんの指導の下、アコギとボーカルの技術を上げた。やってて一番に思ったことは、弾きながら歌うということ。こればっかりは本当に大変だった。上達したら最初はアコギで曲のメロディーを弾き、次に歌いながらアコギを弾いたりもした。やってる時に歌詞が飛んじゃう時もあった。

 

 練習してる時もたえにバレそうな時もあったし、指を切って絆創膏貼ってた時も「その指どうしたの?」って聞かれた時は「料理を始めたんだけど、やってる時に包丁で指を切った」って誤魔化した。その時のたえは心配そうな表情をしていた。もう泣かせないって決めたのに、俺ってバカだなって思ってしまった。

 

 

――もう泣かせないってあの日から決めたんだけどな……。

 

 

 それと、俺の家にウサギが2匹増えた。名前は「キル」と「ケー」だ。なんかまるでどこぞの敗北者の魔女のような名前だなって思ってしまう。この2匹はやけに俺に懐いてて、ペットショップで見たときに急に懐いたから気に入って買ってしまった。どうやら俺のウサギ好きは重症になりつつある。これもたえが原因だけど。

 

「なあ、たえ」

「どうしたの、ハク?」

「最近さ、ギターの調子どう?」

「うん、いい調子だよ!」

 

 凄いなたえは。独学で学んだんだからそりゃ凄いか。俺はなかなか上手くいかない。だいぶ上手くなったってお母さんからお墨付きをもらったけど、もう少し練習しようかな。

 

 今のままじゃたえに聞かせられないしな。最高の状態でたえに聴かせたい。路上ライブとかのためじゃなく、たえのために聴かせる、俺もたえと同じく変わり者になりつつあるのかもしれない。

 

 

――いや、それも悪くないか。

 

 

「さすがたえだな」

「ありがとハク。でもまだまだかな」

「そうか?」

「うん。私ももう少し練習が必要かなって思う時があるんだ」

 

 たえもそう思っていたのか。俺も頑張らないとな。だから、俺が弾き始めようとしていることは聴かせるまでバレちゃいけない。

 

「そういえばハクの部屋からギターの音がするんだけど、気のせいかな?」

「えっ!?き、気のせいだろ」

「そうかな?ハクなんか隠してない?」

「いや、隠してなんかないよ。多分お母さんが弾いてるんじゃないのか」

「んー、そうかな?なんか気のせいではないような……」

 

 あ、危ない。たえにバレそうになった。たえはたまに鋭い時があるからな。こんな性格をしていても核心的な事を言う時があるから、ここでバレたらおしまいだ。

 

 それから俺はただひたすら練習した。ピックも結構削れていって代わりのピックも何枚か減っていった。もう何枚使ったのかわからないくらいだった。とにかくがむしゃらに練習して、"たえのために聴かせる"、そんな目標を持ってもうどれくらい日が経ったのだろう。

 

「うん、今日はこれくらいでいいかな」

 

 俺は全く予想していなかった。

 

「ねえ、ハク」

 

 

――今日俺の部屋にたえがギターを持って俺の所に来るということを

 

 

「た、たえ?」

「あれ?ハクギターやってたんだ」

 

 マズイ、たえにバレた!どうする?どうしたらいい?どうするんだ!?ここで聴かせるか?それとも……。

 

 

――俺はこの状況をどう切り抜ければいいのかわからなくなってしまった。

 

 

「ハク?どうしたの?」

「い、いや。なんでもない。どうしたんだ急に」

「そうじゃないよ!ハク、なんで泣いてるの?」

 

 え?泣いてる?どうしてだ?なんで泣いてるんだ?

 

 たえに練習してるところがバレたからなのか?サプライズしようと思ったのにそれが失敗したからなのか?

 

 気づいたら俺の目から涙が出ていた。

 

「ハ、ハク!?大丈夫?」

「な、何でかな。よくわからないや。なんで泣いてるんだろ俺」

 

 俺は泣いてしまった。そんな時、たえはギターを置いて俺のことを抱き締めた。俺はたえの胸に顔を埋めて泣いていた。

 

 どうしてかな。よくわからないしなんで俺はたえがここに来たのかさえもわからなかった。でも今は泣こう。そうした方がいいって思った。まだまだだな。たえの前では大人ぶっていたけど、子供なんだな俺って。

 

 どれくらい経ったのか。気づいた時には昼になっていた。

 

「ん……あれ……たえ?」

「あ、起きた。おはよう、ハク」

 

 そうか……。俺泣いてたのか。恥ずかしいところを見せちゃったな。それにしてもなんで俺横になってるんだ?

 

「なあたえ。何で俺横になってんの?」

「それはね……。ひ、膝枕して……あげてるんだよ」

「えっ嘘!?たえごめん。なんか無理させたかな?」

「いやいいんだよ。私がしたいからしただけ。まだ寝ててもいいんだよ?」

「起きるよ。いつまでもこんな状態だと俺の身がもたない」

 

 そう言って俺は体を起こした。ごめんな、たえ。無理をさせて。

 

「そうだ。ハクなんでギターなんか持ってたの?」

「ああ、そのことなんだけど……」

 

 俺はたえに全て話した。なんでやり始めたのかだったり、練習のことや最初にたえに聴かせようとしたことも。我ながら恥ずかしいな。バレたとはいえ、話すしかないよな。

 

「フフ……なんかハクらしいや」

「わ、笑うなよ!俺だってこんな理由なのは恥ずかしいんだぞ」

「そんなことないよ。私も同じだったからさ。私も上手くなったら最初にハクに聴かせたかったからさ」 

 

 

――えっ?たえもなのか?

 

 

「何か...さ、俺達って似た者同士かな?理由とかもウサギが好きなところとかもさ」

「そうだね。私達って似た者同士かも。なんか嬉しい」

「そ、そうか?何か俺としては複雑なんだが...」

 

 いや、正直に言えば俺も嬉しいかな。こんなことたえには言えないけどな。

 

「そうだ。もしよかったらさ。たえも聴かせてくれないか?ギターをさ。俺も聴かせてあげるから」

「いいよ。ハクに最初に聴かせるって決めてたからね!」

「どんな感じなのかお互いに聴いて感想言おうぜ」

「いいねそれ!どっちが上手いか勝負だね!」

 

 そしてたえはギターを構えて弾き始めた。聴いていて本当にたえは凄いって思う。どうしてお前はそんなに上手いんだ?何がお前を動かすのか、俺はそれを知りたい。

 

 いつかわかることなのかな?俺の心を揺さぶる感じで、まるでたえの音から魂の鼓動を感じる、そんな音だった。

 

「どうだった?」

「うん、凄いよ。心を揺さぶられた、そんな感じだった。ごめん、なんか言葉にできないや」

「いいよ、ハクがそう感じてくれたなら私は充分だよ」

「じゃあ俺の番だな。アコギで弾き語りだけど大丈夫か?」

「いいよ。ハクの歌声聴いてみたい」

 

 なんか恥ずかしくなってきた。予定より違うけど今なら思える。今ならたえに聴かせられるかもしれない。俺の今の想いをこの一発に込めよう。たえのためにギターを弾くんだ、歌うんだ。たえのために!

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 とても懐かしい感じだった。ハクってこんなに歌えるんだ。こんな姿は今まで見たことなかった。聴いていて安心してしまうし、私はハクのこの音楽が好きになってしまう。君を好きになって六年経つけど、そんな君の必死な姿を見ているとさらに好きになってしまう。

 

 なんでかな……。なんか涙が出そうになってしまう。私ハクの音に感動してるんだ。自分でもこんなに涙を流すのはあの時以来だ。君が側にいるって言ってくれたときから好きになって……。ハクは私のために歌っているんだって感じる。ここまで聴いてしまうと離れたくないって思ってしまう。

 

 

――ありがとう、ハク。側にいてくれて。優しくしてくれてありがとう。私のために歌ってくれてありがとう。

 

 

 

――ハク、君を好きになってよかった。

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 そして俺は弾き終わった。なんだろう、喉もだいぶ枯れてきてる。たえのためとはいえ、やりすぎたかな。

 

 

 

「たえ、どうだった……、たえ?」

「な、何?グス……ハク」

「ど、どうしたたえ!?なんかあったか?その、俺の音楽なんかまずかったか!?」

 

 ヤバい、またたえを泣かせちまった。大丈夫かなたえ。

 

「ううん、違うよ。ハク」

「え?違うって……何が?」

「ハクの音を聴いて感動しちゃって...それで涙が出ちゃって」

 

 え?たえが感動……した?俺の音に?あれでなのか?

 

「……そっか。ありがとうたえ。なんかこれじゃ引き分けかな」

「そうだね。そうなるかな」

 

 俺とたえは笑い合った。なんだろうな。こんなことになっちゃったけど、それでもいいかな。

 

 

 俺とたえは疲れて寝てしまった。お互い肩に頭を乗せて寄り添うように寝ていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
これで終了で次から本編です。
次からポピパが本格的に出てきますのでお楽しみに。
感想お待ちしております

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