あっという間に12月下旬になった。クリスマスが近づきつつある。俺は冷えた手にはぁー、と息を吹き掛け手を暖めた。暖めてもすぐ冷える。その場しのぎでしかないが、寒いとどうしてもやりたくなる。
たえの誕生日が過ぎて大体15日程か。俺はたえと一緒に買い物に向かっていた。クリスマスプレゼントに備えてっていうのもあるし、クリスマスライブに向けてどうするか等々、色々な準備をしていた。
「なぁたえ、本当に俺が来てよかったのか?」
「何のこと?」
「クリスマスライブのこと。俺が来るって場違い過ぎないか?」
「場違いじゃないよ。ハクだから来てほしいんだよ。私の頼み断るつもり?」
「いや、そんなことは……」
そう、俺はクリスマスライブに出てほしいと頼まれたのだ。先日の商店街ライブの後、俺の評判は色んな所で広まった。つぐみがAfterglowに、はぐみがハロハピに俺のライブのことを言った。その結果、俺の評判は羽女にまで伝わってしまったのだ。
遂にはファンまで出来てしまった。たえからこのことを聞いた時には若干引いた。ああ、俺はなんてことをしたんだ、と少しだけ後悔している。
「どうなの?」
「わかった!わかったから顔を近づけないでくれ!やるよ!クリスマスライブ出るから離れてくれ!」
「ありがとうハク。大好きだよ」
だから耳元で囁くな!照れるだろうが!はぁ、たえって本当にこういうこと好きだよなぁ。今度やり返してやろうかな。
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クリスマスライブに向けて練習を始める。ポピパはクリスマスのうたとWhile Afternoonの2曲、ハクはクリスマス関連の曲を2曲やる。ハクは何の曲をやるかは教えてくれなかった。何をやるか気になるけど、本番までに楽しみにしておこう。
今日はハクの家に泊まることにした。12月に入ってからハクの家に泊まってなかったからだ。一緒に寝る時はハクを抱き枕にして寝よう。ハクは抱き心地いいし、耳を甘噛み出来るし、私に得しかない。
「そういえばたえ」
「何?」
「クリスマスイヴはどうする?」
「クリスマスイヴ?うーん、どうしようかな。練習に集中してて考えてなかったなぁ」
そういえばクリスマスイヴのこと全く考えてなかった。いつも通りハクと過ごす、ここまではまだいい。大事なのはクリスマスプレゼントだ。
ハクに何を渡すかまだ決めてなかった。クリスマスまであと少し、急いで決めないと間に合わない。何がほしいか聞いてみよう。聞いて、明日辺りに買いに行こう。
「ねえハク。ハクはクリスマスプレゼント何がいい?」
「クリスマスプレゼント?そうだなぁ……たえのプレゼントなら俺は嬉しいよ。何でもいいかな」
「何でもいいって……。じゃあさ、明日一緒に決めない?」
「一緒に?別にいいけど、もしかして互いにプレゼントを決め合うとかか?」
「ご名答!その通りだよ!」
何でもいいのなら本人に決めてもらおう。それが一番かもしれない。何でもいいは困る、だから二人で決めて、プレゼントし合った方がお互いにいい。明日が楽しみだ。今日はハクにとことん甘えよう。
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買い物に来たのはいいが、まさか二人で決めることになるなんて予想してなかった。まぁ本当にたえからのプレゼントはどんな物でも嬉しいんだ。これは事実だし、嘘でもない。伝え方が下手だったかもしれない。不器用な俺を許してくれ、たえ。
そんなことを思っていると、たえが腕を絡ませてきた。な、急に何をするんだこいつ!?しかも胸が当たってるし、頬が肩に当たってるし、くっつきすぎだろ。てかなんで急にこんなことを……。
「たえ、お前大丈夫か?」
「へ?大丈夫って何が?」
「いや急にくっついてきたからさ、寂しいのかなと思ってな」
「寂しくなんかないよ。私は普通にくっつきたかっただけだよ。一応言っておくけど、当ててるからね!」
たえはドヤ顔で言った。ドヤ顔なのはいいが、顔を赤くしてる時点で意味ないだろ。
ということで互いにプレゼントを決め合い、ギターケースを背負って蔵に向かった。香澄からリハやるよ、と連絡が来たのだ。俺もリハやらないとな。やる曲もまだ言ってなかったから、ここでバラシちまうか。
やる曲は恋人たちのクリスマスと恋人がサンタクロースの2曲に決めている。たえ達に言った瞬間に少し引かれた。2曲共恋人のワードがあるからだ。有咲からは彼氏がいない私達に対する当て付けか、と言われた。解せぬ。
そんなこんなでライブ当日を迎えた。ライブをやる場所はまさかのcircleだ。俺はスペシャルゲストという枠で参加する。頑張っていこう。
今回は俺がボーカル、ポピパがバックで演奏という形となっている。とうとうボーカルをやるなんてな、香澄からボーカルをやってよと言われた時は焦った。ここまで来たらやるしかないか。
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ポピパとハクによるクリスマスライブを終えた後、アンコールが起きた。アンコールに応えて恋人たちのサンタクロースを私とハクで歌うことにした。周りからは暖かい目で見守られているような視線を感じた。
何だろう、何て言えばいいのかな……。これじゃあ付き合ってることバレてるみたいでムズ痒いなぁ。学校でもハクといること多いし、噂になってるよね。うん、これはしょうがない。もうバレてるだろうから吹っ切れてもいいかもしれない。
ライブが終わり、皆と別れた後、私はそのままハクの家に入った。それはもう自然に、まるで住み着いているかのように。
まだやり残していることがある。ハクにクリスマスプレゼントを渡す、これを逃してはいけない。今日のクリスマスライブのお礼で、私の想いを込めた贈り物だ。
「ハク、渡したい物があるんだけどいいかな?」
「奇遇だな、俺もたえに渡したい物があるんだ」
――ハクもか。もしかすると渡す物は一緒かもしれない。
私は赤い包みで包装された箱をハクに差し出した。すると、ハクも一緒だった。タイミングは同じ、けれどそれが同じかはわからない。こんな偶然ってあるの?いや、これは偶然じゃなくて運命かもしれない。
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これはどっちから言った方がいいんだ?たえが先か、それとも俺が先か……。
「たえ、先いいぞ」
「いや、ハクからでいいよ。私は後ででいいから」
「先に出してきたのはたえだろ。俺は次に言う」
ここで言い合いになったら時間が過ぎる。そうなっては先に進まないし、このチャンスを逃してしまう。だから、たえからだ。先に出した人に譲るというのが筋だ。
「じゃ、じゃあ言うね。メ、メリークリスマス……」
「何顔赤くしてんだよ。まぁ俺からも、メリークリスマスたえ」
俺も顔を赤くしている。人のことは言えないが、こんなことは久しぶりなんだ。それも二人きり、しかも付き合って初めてという。今見るとよく恥ずかしがらずに渡せたなと思う。
俺とたえは互いに渡した包みを開けた。中身はウサギのネックレスだった。ちょっと待て、プレゼントが同じってどういうことだ?こんなことあるのか……。
「ハク、私とプレゼント同じなんだね。もしかして狙った?」
「狙ってはいない。たえだって俺が渡すプレゼント知ってたんじゃないのか」
「まさか。私は知らなかったよ。でもこれだけは思った、ハクってウサギ好きなんだなって」
たえは俺に近づき、ありがとう、と言って頬に唇を重ねた。俺は咄嗟のことで焦ってしまった。それはズルすぎるだろ。俺はたえに仕返しをしようと、額にキスをした。
たえも顔を真っ赤にし、俺に抱き着いた。顔を隠してるつもりだけど、その赤くなった顔は充分過ぎるくらいに俺の胸に伝わった。たえの熱は俺の心を暖めてくれるくらいに熱かった。
――メリークリスマス、ウサギさん。
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