その強烈な一撃と衝撃をもって、どうやらこちらの目的が達成できたことを実感した。複数回にわたって身をさらけ出しその度に傷を増やしながらも橋との距離を詰めていたが、どうやら本格的に邪魔者だと認識されたか、もしくはこちらが何らかの策を呈していると察して行動を起こす前にと、本気を出すことにしたのか。
─っくぅ、一撃で死ななかっただけましとはいえこのままだと死ぬぞ。
脇腹をかすめた一撃は、その衝撃だけで骨にまでダメージを与えたようだ。ここで初めて身体強化以外の魔術の行使を決める。治癒魔術は苦手──得意な魔術があるわけではないのだが──なのだが、と悲観に暮れている間も痛みは続くわけで、一瞬意識を飛ばしかけた。
意識を取り戻すと同時に現状に対する疑問がわく。その疑問とはなぜ掠めたのかということだったが、痛みで思考がまとまらない。治癒魔術が苦手とはいえ最悪止血だけでもしなければ。治癒魔術を使用する工程を思い出しながら、されど体は異なる行動をとっていた。
─heal(16);
口をついて出た言葉に自身で驚く、そして何よりそれが十全に自分の知る形で効果を発揮していることにも同様に。
傷がふさがり思考速度が元に戻る、その勢いのままにこの現象に関しての考察を始めるが、それよりも先に考えるべきことがあったことを思い出す。
なぜアーチャーは
これではまるで最初から狙いが急所以外の場所を狙っているかのような。
岸波の動揺は当然であり、その疑問は射手本人もまた抱いていた。
(外しただと……?
投影精度に問題はなかった。考えられるとすれば
縁があったというだけでこのサーヴァントは獲物に温情をかけるようなサーヴァントではない。もしも、可能性があるとすればその霊基が
そして彼の想像通り幸か不幸か、岸波白野はあきらめてはいなかった。
─あと数発撃たせる。
move_speed();
足に力が籠る、これで次の障害物に隠れるまでの時間が短縮できるはずだ。障害物に隠れている間に攻撃しないという保障はないが岸波はそれでもそれに賭けるしかないのだ。さして長所のない自分だが、これでも諦めの悪さだけは数少ない長所である──と自負しているのだ。
───
所長の休憩が済み、事前から取得していた地形データを参考に近くに流れる川辺の調査に赴いた。あたりに広がる火の手もこの付近はやや弱めで気持ち的にだが涼しく感じる。遠くには大きな橋が見える、川幅も考えると向こう岸に行くにはあの橋を渡るしかないだろう。
「街の主要施設はこちら側だけど、魔術的には対岸のほうかしらね」
地図を確認している所長がそう漏らす。魔術的の意味は分からないがそうなるとあの橋を渡る必要があるのだろうか。
「そうなるわね。見晴らしのいい直線、黒幕がいるとしたら格好の的ね」
悪態をつく所長だが、異論があるわけではないようだ。そんな話をしながら川を下る。少し歩くと景色が一変する。あたりを蠢く火の手で暑かったはずが急に背筋が凍り付く、身の毛のよだつ感覚に襲われた。その感覚は三人とも抱いたようで、揃って足を止める。そうして見つけたのは見渡すほど大量の人の石像だった。
「先輩っ!
敵性サーヴァントです!」
石像の中から黒いフードを被り、先端に鎌状の刃物がついた武器を構えた女性が揺れ蠢きながら現れた。この異常な雰囲気に溶け込む女性は一歩一歩近づいてくる。この状況下で不自然なほどに冷静に。
金属のこすれるような音が聞こえたと思った瞬間、戦闘が始まっていた。
───
鎌を持った女性──サーヴァントはその手に持った武器で猛攻を仕掛けてくる。マシュが盾で防ぎきっているものの、サーヴァントは愉しそうな笑みを浮かべたままで猛攻は止まる気配がない。所長は二基のサーヴァントの攻防の合間を縫って怪物に放っていた攻撃を放ち微力ながらもマシュの援護をしていた。
そんな中、俺だけは何もできていなかった。目の前で繰り広げられる人知を超えた争いに何もできずただ見ているだけ。必死に盾を構えて守ってくれる
肩をつかまれる。とても強い力で引き止められ、前に踏み出そうと挙げた足は行き場を失った。そのまま後ろに引き戻され、マシュのほうからは目をそらさないまま、所長は厳しく言い放った。
「藤丸、あなたは魔術師としてもマスターとしても未熟よ。そんなあなたが前に出るということの意味がわからないのかしら?
あなたを守るために、
その言葉に心臓を握りしめられ、何か言おうと言わなければと口を開いても出てくる言葉はない。何もなかった。
聞こえてくるのは所長のため息、しかしそれは失望からくるものではなかった。そんな気がした。
「一度しか言わないからよく聞きなさい。
強くなりなさい藤丸立香、魔術師として以上にあのことともに戦うマスターとして強くなりなさい。今できることを全力でやる、それがマスターの仕事なんじゃないかしら」
所長は一度もこちらを見向きもしない、だが彼女の伝えたいことは十全に伝わってきた。知らずに俯きがちになっていた顔を上げる。
今できることは
「小娘かと思えばそれなりに
青いフードを被ったさらなる乱入者が、敵サーヴァントと同じように唐突に現れた。
───
赤原猟犬による最初の一撃から数えて二度ほど、障害物の間を駆け抜けアーチャーに対し身を晒した。その度に喰らった攻撃を
性懲りも無く身を晒した傷付く岸波と何度穿とうとも急所を射抜けぬ自身の霊基に、アーチャーは根負けを認めた。しかし、それは決して岸波の勝利という意味を持たず。岸波とアーチャーによる
そこからのアーチャーの行動は迅速だった。
─っっつ!?
狙撃を諦めての斬撃をアーチャーは選んだ。唐突に目の前に現れるアーチャーに岸波は身動ぎ一つ取れない。
振り上げられる白黒対の剣には嫌という程に見覚えがある。かつて頼りにしていたほどのものだ。それがこちらに向かって振り下ろそうとされる。なるほど確かに、手に持って振り下ろすのであれば射撃よりも確実に獲物を殺すことができる。
番狂わせの剣は今この手にはない。ただ死ぬ気だけはなかった、そんな俺にできることはただ一つだった。
「アーチャー!!」
生身でサーヴァントに挑むような大馬鹿者の咆哮に応える愚か者は──ただ一人。
朝のうちに投稿したかったのですがコラボイベ走ってて間に合わず断念しました。
オルガマリーのカリスマさを表現したい、あの人もう少しいい具合にことが回っていればもっと輝けたはず。間が悪かった(ガトー談)んですかね。
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