Fate/Grand Order Ex   作:Luegner

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第六話

「極東の島にこんなものがあるとはね。

超抜級の魔術炉心じゃない」

 

 所長が毒吐くように、目の前に鎮座する魔術炉の規模は魔術師として三流の自分にも分かるほどに、強大だった。

 しかし、その威圧さえも矮小と錯覚させるほどの存在が立ちはだかる。

 

─アーサー・ペンドラゴン。

神秘の終わりを担ったブリテンの常勝の王。

 

 これは、確かに勝つのは少し難しいかもしれない。

 

「やっこさんも気づいたみてえだな。

見た目こそ華奢だが奴は筋力じゃなく魔力放出でぶっ飛ばしてきやがるからな」

 

 キャスターの警告にロケットの擬人化だと認識したマシュの言葉に締まりの良さを感じる。神秘の時代の伝説をそんな近代的なものにたとえていいのかはわからないが。

 

「……ヤツを倒せばこの異変は消える、オレもヤツも例外なくな。

その後はおまえさんたちの仕事だ。しっかりやんな()()

 

───

 

 地に突き刺した剣の柄頭に両手を乗せたセイバーは嫌にゆっくりと目を開く。その眼はケルトの大英雄でも錬鉄の英霊でもなく、生まれたばかりの紛い物(デミ・サーヴァント)を捉えた。

 

「……面白いサーヴァントがいるな」

 

 重々しく開かれた口から出てくる言葉にいの一番に反応を示したのはキャスター。

 

「テメェ喋れたのか!今までだんまり決め込んでやがったな」

 

「何を語っても見られている、故に案山子に徹していた」

 

 先頭に立ち盾を構える少女は常勝の王の視線だけでその身を竦ませた。しかしその手は後ろに控える仲間を守るため盾から離さない。

 

「──だが、その宝具は面白い」

 

 そんな少女の決意を嘲笑うかのように、セイバーは眼光を鋭くし少女の持つ盾を射抜く。

 

「構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で試してやろう」

 

「っつ!

──敵サーヴァント来ますっ!

どうか私の後ろに!」

 

 紛い物が本物から授けられた宝具の真実を図るべく、黒く堕ちた星の聖剣がその力を解放する。

 

「卑王鉄槌、極光は反転する。光を呑め──」

 

 膨れ上がる魔力にカルデアの面々は体を硬ばらせる。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

 黒き魔力の放出が挑戦者を飲み込んだ。

 

───

 

 反転し真名を解放した聖剣による魔力放出に対しマシュは授かった宝具で対抗を試みていた。

 それによりカルデアの面々は守られたが、魔力放出を押し返すことができなければその先はない。

 とめどない魔力放出に対し最初に動きを見せたのは岸波だった。

 

 魔力放出を防ぐも、その余波の黒い魔力がカルデアの面々の周りを凄まじい勢いで駆け抜けている。その隙間を睨みつけ脚に力を入れる岸波だったが、それをオルガマリーが引き戻した。

 

「あそこに飛びこんで抜け出そうなんて言わないわよねっ!?

掠っただけでも肉体が吹き飛ぶのよっ!」

 

 岸波はそれでもそうでもしなければ攻撃する間も無く全滅すると訴えるもオルガマリーは引き止める手の力を緩めない。通信越しではロマンも計測できないレベルの魔力に対策を提案できずにいる。

 

 そんな中、一人の男が動き出す。

 

 岸波のようにその状況から抜け出すためでも、言い争いを続ける二人を止めるわけでもなく、ただ彼の信じたとおりに身体を動かす。

 

──すなわち、彼のサーヴァント(マシュ)の元に。

 

「せ……先輩?」

 

 必死に宝具から手を離すまいとしがみつくマシュは隣に立つマスターの存在に気付く。彼はこうすることが当然のようにマシュの盾を共に支える。

 

 この状況を覆すには捨て身覚悟の無茶でも、盤面をひっくり返すような奇策でもなく、己がサーヴァントの力だと信じて。

 

 聞こえはいいだろう、少女を信じる勇気ある青年と青年たちを守らんと死力を尽くす少女。しかし青年の横に立つ少女も青年の後ろに控える仲間も、何より青年が一番気づいている。

 人知を超えた強大な力を前に青年は恐怖から涙を流し脚を震わせている──お世辞にも英雄とはかけ離れている。

 

──()()()()()()()()。それこそがサーヴァントと共に戦うマスターの資格なのだから。

 怖い、辛い、それでも人のために頑張れる人物だからこそマシュは守りたいと思ったし、彼女に宿った英霊は力を貸した。真名こそ分からずともその力は確かに少女の元に。

 

 語られるような奇跡が起きたわけではない。だが確かに絶望的な状況は覆される。

 マシュの盾が次第にセイバーの魔力放出を押し返し始め、そして跳ね返した。

 

 魔力放出を跳ね返されセイバーはやや後退させられる。だがそのすぐ次の瞬間には第二波を放とうと構えていた。

 しかしその隙を付けないような戦士ではその男は英雄ではない。

 

「させるかよっ!」

 

 状況が覆された瞬間にマシュの後ろから飛び出しセイバーの真横にその男はいた。攻撃のそぶりを見せるもセイバーはその英霊がキャスターであり自身の次の攻撃よりも先に放てる有効打が存在しないことを見切り、第二波を強行させようとした。

 

─いけっ!()()()()

 

「行くぞ。この一撃、手向けとして受け取るがいい!」

 

 カルデアのもう一人のマスターとそれに呼応するクー・フーリンの叫びに思考が乱れる。視界の片隅であの男は確かにあの槍を構えていた。

 

突き穿つ(ゲイ)──」

 

 キャスターとして現界したクー・フーリンがあの槍を持つはずがない。しかし現実としてあの男は槍の矛先をこちらに向けている。刺突技としてのそれであればセイバーに阻止するすべはない、だが投擲技としてのそれであるならば──

 第二波の矛先を変える。多少の隙を作ろうともあの技の威力を相殺することをセイバーは選んだ。

 

死翔の槍(ボルク)

 

 放たれた魔槍をセイバーの魔力放出が呑み込む。黒化しステータスが底上げされたセイバー、だがその代償に未来視と大差ないレベルであった直感は僅かに低下していた。

 

 そして、それが仇となった。

 

「かかったぜ坊主っ!」

 

 魔槍を放ち直ぐに魔力放出の射線から逃れたキャスターが吠える。そして呑み込まれた魔槍はいとも容易く砕け散った。

 

「っ!」

 

 そこになってようやくセイバーは己の失策に気付く。そして自身に迫る一つの影の存在にもまた。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 つい先刻までセイバーの視線一つで硬直していた少女が、盾を構えて突撃してくる。怖いけど戦う──マスターから信頼を得た少女はその域にまで成長を見せていた。盾突進(シールドバッシュ)をくらったセイバーは完全に体勢を崩す。

 詰めの一手は外さない。

 

─アーチャーっ!

 

「鶴翼──」

 

 吹き飛ばされたセイバーの背後から迫る白黒の双剣が二対、そして同じ双剣がアーチャーの手に握られている。

 

「──三連!」

 

 アーチャーの愛用する白黒の双剣──干将・莫耶の引き合う性質を利用した投擲と斬撃による三方向同時攻撃。それを受けたセイバーは剣を降ろした。

 

───

 

「……ここまで、か。

己が執着に傾いた挙句敗けるとは、やはりどうあっても私は勝てぬのだな」

 

 致命打を受けてもなお凛と立つセイバーに勝利したはずの面々は実感を持てない。勝ったというよりがむしゃらに全てをぶつけただけであって、マシュがセイバーの宝具を弾き返していなければ何も出来ず、そして何故弾き返せたのか──それを理解できたのはセイバーだけである。

 

「サーヴァント、その守りは紛れもなく真実だ。例え其の名を知らずともな」

 

 肩で息をするマシュは藤丸に支えられながらもセイバーから目を逸らさない、その光景をその言葉を自身に刻み込んでいた。

 

「だがグランドオーダー──聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだ」

 

 セイバーが口に出した単語にこの場で反応できたのはオルガマリーのみ、しかし返せる言葉は持ち合わせていなかった。

 

「テメェ何を知っていやがる!」

 

「いずれ貴方も知る、アイルランドの光の御子よ」

 

 キャスターの問い詰めを流すセイバーの身は徐々に粒子となり崩れ始めた。キャスターも同じように崩れ始め、そのことに気がついたキャスターは問い詰めよりもカルデアの面々との会話を優先した。

 

「時間のようだ。

今度呼ぶとしたらランサーとして召喚してくれや、勿論あんな紛い物の槍じゃなくてな」

 

 アーチャーを睨みつけながら毒吐くキャスターにアーチャーは澄まし顔で肩をすくめる。

 

「クレームならうちのマスターにしてくれ。

私だって武器屋扱いは御免被る」

 

 会話の流れで自然と視線が集まった岸波はやや気まずそうに頬をかく。悪びれのなさにキャスターも毒気が抜かれた。

 

「ったく。

なんにせよ後のことは任せたぜ」

 

 この後に待つであろう何かを危惧して言葉を言い残したキャスターも、セイバーと同じように粒子となり去っていった。

 

「グランドオーダー、何故サーヴァントがそんなことを……」

 

 先ほどの会話に参加していなかったオルガマリーはセイバーの残した言葉を何度も反芻し考えを巡らせていた。そんなオルガマリーの姿を見たマシュが声をかける。

 

「所長?」

 

「え、あ、そうね。

皆良い働きでした。特に藤丸、貴方を我がカルデアの一マスターとして認めます」

 

 我に帰ったオルガマリーはそう藤丸を賞賛する。褒められたことに実感を持っていない藤丸以上にマシュの方が喜んでいるが、藤丸の信頼があってこその勝利だとカルデアの面々は理解していた。

 理解はしていたがそれはそれ、褒めたことに気恥ずかしさを感じたオルガマリーは生暖かい眼で見てくる岸波を無視して咳払いする。

 

「それじゃぁマシュ、聖杯を回収してちょうだい。貴方の盾で回収できるから」

 

 強大なサーヴァントであるセイバーを打倒し特異点の原因となっていた聖杯を回収する。これで任務完了だと藤丸達が肩を降ろした瞬間。

 

──この事態の真の原因(黒幕)が現れた。

 

「まさか、君たちがここまでやるとはね。

計画の想定外にして、私の寛容の許容外だ」




キャスターによる槍の投擲の流れとしては
岸波、アーチャーにゲイボルクの投影を指示
キャスターに槍を渡す代わりに相談を持ちかける
セイバー戦にてマシュが宝具を押し返したタイミングでキャスターは嬉々と()()()()()槍を持って飛び出す
キャスター、投げボルクのフリをして投擲
といった流れになってます。
あくまで投影物なので真名解放は出来ません、せいぜい壊れた幻想させるくらい。マシュ──というよりその宝具に意識が向いていたセイバーは間に受けて対処、黒化前だと恐らく直感でバレる模様。
キャスニキも無銘もそれぞれ槍ニキとエミヤからワンランク幸運上がってるし、ね。

前回コメントに関して色々言ってましたが、どちらにせよコメント貰えるとかなり励みになるので気軽にしてくださるととても助かります。図々しいとは思いますがよろしくお願いします。

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