・・・・・・誤差ですね。はい。
瀕死の男性が妖怪の大賢者の手によって永遠亭に担ぎ込まれて二週間がたった。この男性について後から説明すると言った、大賢者は未だ現れない。そして、
「目を覚ましませんね、師匠」
彼もまだ目を覚ましていなかった。
「ついつい手足の骨折に目が行ってしまうけれど、頭部へのダメージも相当だったのよ。下手したら一生このままの可能性もあるわ」
「そんな……」
「……。あとは彼の生命力次第ってところかしら」
脳は人体の中で最もデリケートかつ重要な部分。いくら月の技術があると言っても、そう簡単に手が出せる訳では無い。彼の生きたいという思いが折れないことを祈るばかりである。
「……。姫様は?」
「朝からずっと彼のところです。てゐに頼んでイナバ達を監視に付けています」
「なら、いいわ。さすがに重傷者相手に変なことはしないと思うけど……」
さすがに身内というか、自分の教え子が性犯罪者になるのはごめんだ。
輝夜は今日も彼が眠る部屋に来ていた。彼が永遠亭にやって来てからの日課になっている。
(まだ目が覚めないのね……)
早く目を覚まして欲しいと願う。だが、それと同時にこのまま目を覚まさないで欲しいとも願う自分がいるのが腹立たしくてたまらない。それもそのはず。輝夜は幻想郷一のブサイクと言われている。そのブサイク度は紅白巫女に「二度と会いたくない」と言わせるほどだ。そんな彼女が男の顔を見る、まして男の体に触れることはこの先二度と無いことと言っても過言では無い。そんな彼女にとって、この状況は大変喜ばしい物だ。出来れば一生続いて欲しいぐらいには。
(さあ、部屋に戻りましょうか)
イケメンを鑑賞し満足すると同時にムラムラしてきた彼女はそれを治めるために部屋に戻る。その場でシてもよかった、というかシたかったがイナバ達の目がある以上、下手なことは出来ない。もし、そんなことをすれば出禁を食らうのは確実である。そんなことをされれば、この先生きていく自信がない彼女はそそくさと部屋に戻り、催してきた劣情を治めるのであった。
今、私は配下のイナバ達と一緒に姫様を監視している。鈴仙がどうしてもと頼むので人里で人気の羊羹を条件に監視を引き受けた。最初は姫様の何を監視するのだろうかと思っていたが、それもすぐに分かった。姫様は担ぎ込まれてきた男に一目惚れしたらしい。証拠は毎日、足繁く部屋に通っていることとその後、必ず耽るのだ。ナニとは言わないけど。本人はバレていないと思っているが、みんな知っている。ただ、言わないだけだ。
(……。ちょっと羨ましいうさ)
私と鈴仙はできる限り彼に接触しないように永琳から言われている。薬を飲めば、別に良いらしいのだがその薬の味はこの世の物とは思えないほどマズい。あれを我慢してまで、あの男に会う気はない。
(早く目を覚まして欲しいうさ)
そして、さっさと出て行けうさ。
では、また一週間後にお会いしましょう。