今回は胃腸炎で寝込んでました。
ユルシテ、ユルシテ
今日も輝夜は彼の部屋に向かっていた。もちろん日課のイケメン鑑賞である。
「やっぱり、朝は彼の顔を見ないと元気が出ないわ」
輝夜の中ではもはや、彼は一種の精神安定剤になっていた。これまでに受けてきた心の傷を彼で癒していたのである。
「は〜い、ご開帳!」
彼女は悪くないだろう。彼がここに運び込まれて、もう一ヶ月。その間、彼は一度も目を覚ましていない。その兆候もなかった。そして人は状況に慣れていくものだ、良くも悪くも。だから、彼女は『彼がもしかしたら目覚めているかもしれない』可能性なんて、つゆほども考えなかったのである。
眼が覚めると、見知らぬ天井が広がっていた。
(ここ、どこ?)
病院のような消毒液の匂いはなく、木と畳のい草の日本人なら誰でも親しみを持つ香りに包まれている。
(屋敷……なのか?)
少なくとも病院ではないのは確かだ。そうなると、ここがどういう場所なのか気になる。
(でも、勝手に出歩くのはなぁ)
どう考えても自分の家ではないし、親戚にもこんな昔ながらの屋敷を持っている人はいなかった。完全に赤の他人の家だ。そんな所を部外者が歩き回るのは気が引ける。人を待つか、それとも人を探すかで迷っていた彼の耳に足音らしきものが聞こえてきた。
(もしかしたら、俺を連れてきた人かもしれない)
そうでなくても、何かしら事情を知っている人であればそれでいい。そう思い、足音の主がこの部屋に入ってくることを祈っていると、障子が動いたとおm
「は〜い、ご開帳!」
……やたらとテンションが高い美女が入ってきた。
障子を開けると、そこにはイケメンが寝ているはずだった。
実際は、
「は?」
起きていた。イケメンはきょとんとした顔でこちらを見ていたのである。
「あの……」
「はああああああああ!?!?!?」
いつかは起こるはずの事態であったのにまったく考えておらず、あまつさえ心の準備さえもしていなかったのである。パニックを起こすのも当然だ。しかし、それでも、
「全力で逃げる事はないんじゃないかなぁ……」
「えー!いー!りー!んー!」
彼女は走った。それはもう万年、引きこもりとは思えないほどの速度であった。
「永琳!」
永琳のいる製薬室まで、その間わずか5秒である。
「朝っぱらから何ですか!騒々しいですね!」
「おおお!おおお!ととと!ここ!が!」
「何言ってるか分からないので落ち着いてください。はい、深呼吸して!息を吸って〜、吐いて〜。吸って〜、吐いて〜。お水、どうぞ」
「スーハー、スーハー。……ありがとう、永琳」
もらった水を一息に飲み干して、一息つく。
「じゃなくて!永琳、あの男が!目を覚ましたの!」
瞬間、拳が飛んでくる。
「なんで、言わないんですか!」
「痛い!」
皆さんも季節の変わり目は気をつけましょう!
予定は未定。