ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第1話 LBXと少年

 

2046年、強化ダンボールの発明によって、世界の物流は革新的な進歩を遂げた。あらゆる衝撃を吸収し、ほとんど無にしてしまう。革命的な未来の箱は輸送手段の常識を覆したのだ。

 しかしその箱はやがて全く別の目的で使われることになる。

 

 ストリートで行われる少年たちの戦い、ホビー小型ロボットLBXを操る彼らの戦場は、ダンボールの中へと移っていった。

 その四角い戦場で戦う小さな戦士たち、人は彼らをダンボール戦機と呼んだ──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2050年、お台場ビックスタジアム。

 その舞台では、LBXプレイヤーなら誰もが夢見るLBX世界大会アルテミスのジオラマに、2機のLBXが向かい合って立っていた。

 

 

「いっけぇぇぇええええ!!アキレス!!!」

 

「そうはさせるかっての…ッ!!」

 

 

 片方は古代ギリシア風の意匠を持つ装甲に身を包むアキレスに対し、もう片方は青とオレンジの装甲を包むイプシロン。

 互いに槍と盾を構え、両者共に武器を振るい、火花が散る。

 

 

「あんま無茶すんなバン!相手はあのユウだぞ!!」

 

「カズの言う通りよバン!アルテミス優勝の為にも超えなきゃいけない壁だわ!!」

 

「カズ…アミ…!わかってるさ…ッ!」

 

 

 時間が経つにつれ2人が操るLBXの機動速度は超高速となり、もはや周囲の人間の目にはもはや残像しか残らないほどのスピードだった。

 

 

「「必殺ファンクション!!!」」

 

 

《Attack Function!ライトニング ランス!》

 

《Attack Function! グロリアス レイ!》

 

 

 それぞれのCCMから音声が出るのと同時に必殺ファンクションが衝突、その衝撃によって出来た土煙に包まれた。

 

 

「今思えば…こんな風になるなんて思っても見なかったな!」

 

「俺もだよユウ…だからこそ俺はこの勝負に勝つ!!」

 

「それはこっちのセリフだっつーの!!」

 

 

 土煙は晴れ、アキレスはイプシロンを蹴り飛ばそうとするもイプシロンに紙一重で避ける。そんなバトルの中、バンとユウは互いの言葉によって、今までのことを想いに馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったくバンのやつ遅いなぁ〜……」

 

「まぁこのまま待つのもアレだし、先に俺らでバトルするか…カズ!」

 

 

 今日の放課後にミソラ商店街にある行きつけのキタジマ模型店に集合ってバンから聞いていたが、遅刻だろう。それに今日はLBXマガジンの発売日、まぁバンが遅れてる理由は十中八九間違いないハズ。

 

 

「じゃあ今回の勝負もスタンダードレギレーション、フィニッシュはいつも通りのロスト無しのブレイクオーバーだな」

 

「ユウ!今日こそ俺は絶対お前に勝つ!!」

 

「ハッハッハッ…!とりあえず俺に勝ってから言えやカズ」

 

「グゥ……」

 

 

 カズのLBXはウォーリアー、アーマーフレームのタイプは汎用性に優れたナイトフレーム。つまり騎士型のLBXだ。

 装備は相変わらずブロードソードとライトバックラーのようだ。

 

 

「アミ。審判頼む!」

 

「もぅ…仕方ないわねぇ……」

 

「カズ〜今日こそユウをコテンパンにやっつけちゃってよねぇ〜!」

 

「頑張れよユウ」

 

 

 騒ぎを聞きつけたのか、奥からこの店を経営している北島夫妻が来てくれた。いつも通りサキさんの俺に対する扱いはこんなものだ。

 ちなみに俺の使うLBXサラマンダーMk-Ⅱだ。なぜMk-Ⅱなのかというと一般のサラマンダーと違い、俺のサラマンダーは様々な改造を施してあるからだ。

 それと今回は迅雷棍()オートマチックガン(片手銃)を装備して挑む予定だ。

 

 

「それじゃあ行くわよ…バトルスタート!!」

 

 

 アミのスタートの合図と同時にお互いに距離を取り、相手の様子を伺う。

 まず攻撃に仕掛けてきたのはカズのウォーリアーだ。ウォーリアーが急接近してくるのにとっさに気づいたサラマンダーは大きく後退し、迅雷棍を手放してオートマジックガンを手にする。

 

 

「やるなユウ!」

 

「カズも俺の不意を突くとは流石だなぁ…だが甘いんじゃねぇのか!!!」

 

 

《Attack Function! ハイパーエネルギー弾!》

 

 

 CCMから音声が出るのを合図にサラマンダーはウォーリアーに急接近、オートマチックガンから圧縮されたエネルギー弾をウォーリアーに向かって放った。

 

 当然近距離からの必殺ファンクションを想定しなかったウォーリアは避けることが出来ずに命中、青白く光りそれが散った。これこそがブレイクオーバーの証である。

 

 

「はぁ!?必殺ファンクションはずりぃだろユウ!?」

 

「必殺ファンクション無しとは誰も言ってねェんだよなぁこれが!!」

 

 

 アミと店長とサキさんから冷たい視線でこっちを見ているような気がするが気にしたら負け、勝てば良かろうなのである。

 そんなことを思っていると、全速力で走ったせいかゼェゼェと息を切らすバンが遅れて入店する。

 

 

「ハァハァ…遅れてごめん!さぁ!バトルやろう!!」

 

「バン!遅いよ」

 

「何してたんだ…」

 

「まさに主役は遅れてやって来る……いや本当大丈夫かバン?」

 

 

 遅れて入店したバンの片手には今週発売のLBXマガジンを持っていた。Lマガを購入するためにキタジマ模型店に向かう途中でひょっこり本屋に立ち寄って遅れたようだ。

 

 

 「ゴメンゴメン。Lマガの今週号が出てたからさぁ…本屋に行ってきた!」

 

「しまった!今日発売日だっけ!?」

 

「バン。いらっしゃい」

 

「やっと揃ったな。こっち来てみろ…おもしれぇもんがあるぞ」

 

 

 全員いることを確認すると、北島夫婦が店の奥からとあるLBXの入った箱を持ってきた。

 店長の言葉に皆が一斉にカウンターへ駆け寄る、もちろん俺もだ。どうやらこの箱は今日入荷したての新作らしく、そのLBXの名は──────アキレス。

 

 

「白いLBXかぁ!イケてんじゃん!!」

 

「素敵なデザインね!」

 

「アーマフレームのみのパッケージかぁ…」

 

「タイニーオービット製……でもコレ今週のLマガ新製品情報に乗ってなかったけど……」

 

 

 古代ギリシア風の意匠を持つ装甲に身を包む白いLBX。パッケージを見る限りアーマーフレームのタイプは汎用性に優れたナイトフレームだろう。比較的ウォーリアーに近かった。

 

 

「もしかしてバン、このLBX…カタログに載ってない超レアなLBXなんじゃね?」

 

「マジで!?スゲー!欲しい!!」

 

「ムリムリ。どうせお前のお財布事情じゃ買えないし、母ちゃんもLBXやるの…許してくれないだろ?」

 

「ハァ〜…そうなんだよなぁ……。でも!近いうちに必ず手に入れてやる!!」

 

 

 どのカタログに載ってないLBXアキレスに嫌な予感がしたものの気のせいだろうと思い、直ぐにその考えは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったー!勝ちぃ!!」

 

「全く…借り物のLBXのくせに相変わらず強ぇな……」

 

「そりゃ俺の貸してるマシンは、チューニング最高だからなぁ」

 

「ひどいなぁ〜…マシンの性能だけで勝ったみたいに…。ちゃんと作戦を立てて戦ってんだからさぁ〜…」

 

 

 だったら早く自分のLBXを買うんだなとカズとアミに指摘されて落ち込むバンだった。

 

 

「じゃあな。俺今日寄るとこあるから」

 

「さよならユウ!バン!カズ!」

 

「カズ!アミ!ユウ!!また明日!!」

 

「おう。また明日なー」

 

 

 LBXバトルを楽しんだ3人はそれぞれ帰宅。俺もそのまま帰ろうと思ったが今週号のLマガのことを思い出し、本屋に立ち寄ってから家に帰ることにした。そんな思っていると、見覚えのある男が俺の目の前に立っていた。

 

 

「お前は…ッ!?ってなんだ仙道かよ」

 

「なんだァ?俺がいちゃ悪いってのか?」

 

「誰も悪いって言ってねぇだろうがよ」

 

 

 この男の名は仙道ダイキ。中学三年のミソラ一中の番長格 、また()()()()()()()という異名で恐れられる凄腕のLBXプレイヤーだ。

 そんな仙道の愛機はストライダーフレームのジョーカー、なんとそのジョーカー三体同時に操る実力を持っている。イカれてやがる。

 

 

「…それで一体何しに来たんだ仙道?」

 

「とりあえずタロット見ろ」

 

「急にタロット投げんじゃねぇ、危ねぇだろうが」

 

「なんか知らねぇがムカついた」

 

 

 仕方なく仙道に渡されたタロットカードを見ると塔とジョーカーが描かれたカード、塔のタロットだった。塔のタロットの暗示は予期せぬトラブルに見舞われる事を暗示していた。

 

 

「塔のタロットカード…めちゃめちゃ不吉やないか……」

 

「まぁ気をつけるこった……」

 

 

 仙道のタロットは当たる確率が高いから反応に困る。それに塔のタロットは正位置・逆位置のいずれにおいても凶とされている唯一のカードだから本当に困る。

 

「ところで仙道、そろそろお前の妹のキヨカに会わせてくれよ」

 

「絶対に断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が暮れる前に家に辿り着いたと思ったらバンから『急遽来てくれ』っと連絡が入り、すぐさまバンの家へと向かう。

 目的地に着いた俺はバンの家のリビングに向かうと、如何にも怪しいですと言わんばかりの箱をバンが手にしていた。

 

 

「おいなんだその箱?」

 

「俺も分かんないんだよ…。なんかメガネをかけた女性が“希望と絶望の両方が入ってるって言われて渡されたんだけど……」

 

「とりあえずバン、いっそ箱開けてみるか?」

 

「まぁ……………………………………………いっか」

 

 

 そう言ってバンは箱につけられてるロックを解除、箱を開けた。そしてその箱の中身は青いLBXとCCMと説明書が入っていた。

 

 

「LBX…?」

 

「えっと…『AX–00』?それどこのメーカーだバン?」

 

「俺も分かんないなぁ…」

 

 

 通常ならばメーカーなどが記されているが、このLBXはメーカーなどはなく、AX–00ただそれだけだった。バンに聞いた話によると、この箱は希望と絶望の両方が入っているらしいが到底そうには見えなかった。

 そしてバンがAX–00を触れた途端─────

 

 

《ユーザー認証開始…──ユーザー確認中…──ユーザー確認…──使用が許可されます》

 

 

─────AX–00から機械めいた声が聞こえた。この音声を聞く限りどうやら今のはユーザー認証だったらしい。だが仙道のタロットの件もある為、警戒しなければいけないのは明白であった。

 

 

「凄い!きっと最新型だ!!」

 

「バン!あんま迂闊に…ッ⁉︎⁉︎」

 

 

 俺はAX–00触れようとするバンを止めようとした瞬間、突如として小さな銃声が部屋中に響き渡る。

 咄嗟にテーブルの方に目を向けると、AX–00とはまた別のLBXが3機ほどいた。その内の1機が、俺とバンに向かって威嚇射撃を始めた。

 身の危険を感じた俺とバンはすぐさまソファーの後ろへと身を隠した。

 

 

「な…なんかヤバいぞ……⁉︎」

 

「チョイチョイチョイ……明らかになんかヤバいってレベルではねぇな…ッ⁉︎」

 

 

 こっそりソファーの向こう側を見ると、謎のLBXたちはAX–00を見つめていた。どうやら奴らの目的は謎の青いLBXらしい。

 それに気づいたバンはテーブルに置いてあるCCMを手に取り、操作する。するとAX–00が起動し、動き出した。

 

 

「…っておい⁉︎戦うのかよバン⁉︎」

 

「し…仕方ないだろ!俺たちがやらなかったら一体誰がやるんだ⁉︎」

 

「………あぁもう分かった!!サラマンダーMk-Ⅱ!!投下!!!」

 

 

 俺はテーブルに向かって思いっきりサラマンダーを投げ、謎のLBXたちに奇襲攻撃を仕掛けた。もちろん奇襲攻撃は成功、謎のLBX1機撃破する。

 

 

「おいバン、家ン中で悪ィけど必殺ファンクション……使っちゃ駄目か…?」

 

「駄目に決まってるだろ…⁉︎」

 

「だよなー!!!」

 

 

 さすがに家の中で必殺ファンクションをしようものなら確実に俺たちも巻き込まれるだろう。そうなってしまう前になるべく片付けなければいけないことを認識する。

 

 

「バン!行くぞ!!」

 

「分かった!!いっけぇぇぇえええ!!!」

 

 

 サラマンダーとAX-00は謎のLBX2機の隙を狙って近づき、槍で一気に貫いた。そして貫いたところから火花が散り、2機共に爆発した。

 

 

「やったー!」

 

 

 互いに協力し敵LBXを退けることが出来たと喜びたかったが、俺は部屋の周りを見渡し、唖然とする。どうやらバンは敵LBXを撃破し、歓喜しているために現在進行形でヤバい状況に気付いてないらしい。

 

 

「なぁ…バン。喜ぶのもいいけどよ、部屋の周り…見てみ?」

 

「…ん?ええぇ!?わぁぁああああ!!?こりゃ大変だぁぁぁあああ!!!?」

 

 

 所々黒くなった後、穴だらけの壁、ボロボロのソファー、おまけに謎のLBXの破片、完全に言い逃れが出来ない状況である。これをバンの母さんが見られようもんならおしまいである。

 

 

『ただいま〜』

 

「「アッ…」」

 

「バン?帰ってたの〜?それにユウくん…モ゛ッ!?」

 

「アッ…アァ……母さん…これには深い訳が……」

 

 

 俺たちは気まずいあまり目を逸らすが、バンの母さんはバンが握っている()()()()を見て、表情が一変した。そのあるモノとは先程バンが使っていたCCMだった。

 

 

「バン…あなたLBXを……」

 

「母さん!あの…それは……」

 

「その…す…すみませんでした!」

 

 

 かつてバンの母さんはとある出来事で、LBXを憎んでいると俺は確かバンから聞いたことがあった。

 それを思い出した俺はバンと共に覚悟を決め、甘んじて説教を受けようとする。しかしバンの母さんは説教することなく、俺たちに背を向けた。

 

 

「…もういいわ、ちゃんと片付けておくのよ。それともう遅いから、ユウくんは今日は泊まりなさい」

 

「え?あっ…ハイ」

 

 

 バンの母さんはそこまで言うと、隣の部屋に行ってしまう。その様子を見て、俺らは盛大に溜め息を吐いた

 明日は一体どうなってしまうのか、俺たちはそう考えるだけで憂鬱な気分になった。

 

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