ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第11話 箱の中の魔術師はニヒルな個人主義者

 各Bグループによる二回戦、アミの対戦相手は海道だった。しかし次の瞬間、目を疑うような光景がそこにあった。

 バトルスタートと同時にクノイチがジ·エンペラーに接近、先手必勝を狙うもジ・エンペラーの動きはクノイチの動きを凌駕、一撃でクノイチはブレイクオーバーとなった。

 

 

『Cジオラマ、バトル終了。勝者、海道ジン』

 

「そんな···」

 

「アミが一瞬で…一体何が起こったんだ!?」

 

「4秒18…こんなものか…」

 

 

 LBXバトルにかかった時間は僅か4秒、一方的な試合に思わず俺らは唖然としてしまった。そして次はAグループ準決勝、仙道とバンの試合だ。

 

 

「アミ…」

 

「ごめん3人共…私……ッ」

 

「大丈夫だ。アミの仇は、俺が取る!」

 

 

 各Bグループによる二回戦は終了し、ついにAグループ準決勝が始まる。しかしアキレスはハカイオーの右腕を装備している不安要素を抱えていた。

 

 

「へぇ、やるなぁアイツ。そうだな、秒殺の皇帝…っとでも呼んでおこうかな。さて、次は俺の番だな。さっさと切り刻んで、皇帝サマと遊んでやるか」

 

「仙道ダイキ…ッ!」

 

「おいおい、なんだいその無様なアキレスは。見たところ、ハカイオーの腕か。そんな機体で俺に挑むのかァ?」

 

 

 Aグループ準決勝が始まる前だというのに仙道は相変わらずバンを煽る。

 

 

「形で判断するな!パーツ交換は、LBXバトルの醍醐味だ!!」

 

「弱い者同士がいくら力を合わせたところで、無駄だよ。星スターの逆位置、お前の未来は暗黒と証明する暗示さ」

 

『Ready… ─────』

 

「ジョーカー!」

 

「アキレス!!」

 

『─────…GO!!』

 

 

 互いにLBXを草原フィールドに投下、バトルが開始される。

 アキレスが先制攻撃を仕掛ける、しかしジョーカーは持ち前のジャンプ力を生かしてアキレスの先制攻撃を回避する。

 そしてジョーカーの立っていた場所には、大きな穴が穿たれていた。

 

 

「すげぇ、パワーアップしてやがる!あの腕のおかげか!!」

 

「これならいけそうだ!!」

 

 

 アキレスは連続してジョーカーに攻撃をするも、ジョーカーは容易く回避し続ける。会場内の誰もがジョーカーは回避だけで精一杯だと思っていた、しかしこれも仙道の策略の一つであった。

 

 

「ふん…力ストレングスの正位置か、どうやら力をもて余しているようだな?」

 

「そんな事はない!!」

 

「気づいてないようだな、お前のLBXには致命的な弱点がある」

 

「なに…!?」

 

 

 アキレスはジョーカーに勢いよくアキレスランスを突き出す。しかしジョーカーはそれをも回避、外れたアキレスランスはジョーカーの後ろの山に突き刺さる。

 

 

「バランスが…ッ!」

 

「やっぱハカイオーの腕じゃあダメか…!」

 

「腕の重さや形がまるっきり違うから、機体のバランスが悪くなってるんだわ!」

 

「ようやく気づいたようだねェ」

 

「なら…このバランスの悪さを利用するまでだ!!」

 

 

 そこでバンはそのバランスの悪さを逆手に取り、重さを軸にランスを振り回す。バランスを犠牲にして得たパワーや重さを利用し、加速を加えることでさらに威力が増すものの、その攻撃ですら軽々とジョーカーに避けられてしまう。

 

 

「いくら攻撃力が上がったところで、力任せじゃしょうがないよなァ?」

 

「く…ッ!」

 

「避けるのも飽きたなぁ。そろそろこっちから行くぞ」

 

 

 今度はジョーカーが鎌型武器であるジョーカーズソウルでアキレスに攻撃、アキレスは防戦一方となる。

 

 

「もう1つ、なぜ俺がお前に攻撃せず避け続けたと思う?」

 

「それは…避けるだけで精一杯だったから···」

 

「そうだな、確かに精一杯だった。だが実際攻撃はいつでも出来た。なら何故しなかったのか、それはお前の攻撃は俺には通じないことを思い知らせるためさ」

 

「なんだって!?」

 

「マズいなありゃ……」

 

 

 ハカイオーの右腕のおかげで破壊力が増したかに見えた、しかし重いハカイオーの右腕ではアキレスではバランスが悪く、アキレス自体の動きが悪くなっていたのだ。

 

 

「攻撃が決まらず、一方的に攻められる屈辱を味わいながら、無様に負ける、それが俺の見たいお前の姿さ!そして見せてやろう…俺のジョーカーの恐ろしさを!!」

 

「く…ッ!」

 

 ジョーカーはストライダーフレーム特有の敏捷性と軽量さを生かして、アキレスの周囲を回り出す。

 そしてアキレスの周囲を回るジョーカーの速度は上がっていき、ゲームセンターの時に見せた分身を繰り出した。

 

 

「箱の中の…」

 

「「…魔術師!!」」

 

「三機に分身した!?この前と同じだ…!」

 

 

 前回との戦いで見せた分身攻撃でアキレスを追い詰められられる。ジョーカーの分身による連続攻撃にアキレスは回避だけでも精一杯、やがて回避しきれずダメージを受けてしまっていた。

 

 

「どこからでも攻撃が…本当に分身しているみたいだ!!」

 

 

 前を防げば後ろから、後ろを防げば今度は左右のどちらから、ジョーカーの連続攻撃は激しさが増し、次第にアキレスのLPはどんどん削られてしまう。

 

 

「なら…これならどうだ!!」

 

 

 なんとか分身の本体を見破ろうとするバン、アキレスランスを突き刺して回転させて土煙を起こす。土煙を突き破ってくるのが本物のジョーカーだとバンは考える。

 土煙の中のアキレスを、ジョーカーは右側から攻める。

 

 

「そうか!砂煙から出てくるのは、残像じゃなくて実体のみ!」

 

「影を頼りに攻撃を防いで、反撃するのね!」

 

「そこかぁぁぁあああ!!!」

 

 

アキレスは攻撃するもジョーカーは回避、砂煙の奥に消える。そして消えた瞬間、ジョーカーは背後からアキレスを攻撃、ダメージを与えた。

 

 

「そんな!?たしかに完璧に本物を見切ったハズだなのに!」

 

「自分のLBXが切り刻まれていくのをただ見てるしか出来ない気分はどうだァ?」

 

「どうすれば…ッ」

 

 

アキレスは三機の連携攻撃を防ぎきれず、じわじわダメージを受け続ける。LPが半分になってもジョーカーには全くダメージを与えられていなかった。

 

 

「そろそろフィナーレといこうか!!」

 

 

 アキレスは攻撃するも分身したジョーカーはそれぞれ左右を攻撃、咄嗟に避けるもさらに後ろからの攻撃を食らってしまい、アキレスはさらに追い込まれていた。

 

 LPが4割弱になったそのとき、バンのCCMに異変が起きる。突然モニターが光出した。

 

 

《 V mode! 》

 

 

「これは…!?」

 

 

 CCMのモニターがスライドし、左右に1つずつモニターが現れ、スライドしたメインモニターからさらに2つモニターが出現。さらに4つのスクリーンが表示され、合計10個のモニターが現れる。

 異変はアキレスにも及び、アキレスのボディが黄金に輝きだした。

 

 

「なに…!?」

 

「あれって…!」

 

「Vモードが発動した!?」

 

 

 アキレスはバンの操作とは関係なくアキレスランスを振り回し、発生した風圧によってジョーカーの分身ごと吹き飛ばし、フィールドの山に叩きつける。

 そして土煙が晴れた中にいたのは、分身していたハズのジョーカー3機だった。

 

「なにあれ!?」

 

「分身のように見せてるのではなく、本当に3機いたとは…」

 

「ハッタリかよ!?」

 

「ううん、魔術なんかよりすごいわ…3機同時にLBXを操ってたのよ…」

 

「強ければ何でもあり、それがアングラビシダスなのさ!」

 

 

 ジョーカー3機の連続攻撃アキレスを襲うも、アキレスはその連続攻撃全てをガード、跳躍で回避した。そして回避するだけではなく、強烈な一撃を1機のジョーカーに叩き込んだ。

 

 

「くっ…一撃でLPが三割…ッ!」

 

 

しジョーカーは怯まずアキレスに攻撃を仕掛ける。だがアキレスは防ぐだけでなく、反撃まで可能にしていた。 

 

 

「このスピードとパワー…さっきまでとは桁違い、あのCCMが変化したことに関係しているのか…?」

 

「ダメだ…!全然コントロールが効かないッ」

 

 

 ジョーカーは何度もアキレスに攻撃、しかしその度アキレスはでアキレスシールド受け止め、アキレスランスで突き返す。

 

 

「コントロール出来ない?勝手に動いてるってことか、面白い…!」

 

 

 ジョーカーはさらに攻撃を仕掛け、アキレスはまた同じ動作で反撃する。しかしジョーカーはその攻撃を回避した。

 

 

「どうなってるんだ···!?」

 

「へぇ…理解した。今のそいつは一定の動作で動いている。パターンさえ分かれば、

 

回避するのは簡単だ!そして─────」

 

 

 ジョーカーがアキレスの動作の隙を突いて、攻撃を命中させた。バンがコントロール出来ていないことや、アキレスが一定の法則でしか動いていないことに気付いた仙道は、必殺ファンクションでトドメを刺そうとする。

 

 

「見せてやるよ、これがジョーカーの必殺ファンクションだ!」

 

 

《Attack Function! デスサイズハリケーン!》

 

 

 ジョーカーがジョーカーズソウルで黒い軌跡を描きながら、空へ上昇していく。そして描いた軌跡の中心から巨大なハリケーンを生み出し、アキレスをフィールドの山ごと吹き飛ばした。

 

 

「アキレス!」

 

「ヤバい!?このままじゃ…」

 

「バン!」

 

 

土煙が晴れると同時に、ジョーカーの必殺ファンクションによって地面に叩きつけられているアキレスの姿が目に入る。LPは残り1割強というところまでアキレスは追い詰められていた。

 

 

「どうすれば…ん?メッセージ?しかもこのタイミング…えーっと、『これはPANDORAからの贈り物だ』…?」

 

「パンドラだって!?」

 

 

 エンジェルスター潜入の時に俺たちを助けてくれた謎の白いLBX、それがパンドラだ。バンが辺りを見渡すように、俺も会場を見渡した。

 そして、会場の二階にパンドラを肩に乗せた白いスーツにサングラスのいかにも怪しい見た目の男が立っていたことに気づいた。

 

 郷田にアキレスの右腕の修理を任せ、すぐさま二階へと向かった。しかし上がった頃には白スーツの男はもういなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わりだ!」

 

「あれ?何かがインストールされてる…もしかしたら!プログラム実行!…ん?何か表示されてる。“デストロイファンクション解除、コントロール可能”?」

 

 

 ジョーカー三機が一斉にアキレスを畳み掛けに来る。それを見たバンは、すぐさまパンドラから送られてきたプログラムを実行する。

 するとアキレスの目が赤から黄色に戻り、バンの指示通りに盾で一体の攻撃を、残りの二機をスピードを生かして回避した。

 

 

「なに…!?」

 

「よし…コントロール出来る!」

 

 

 アキレスはバンの指示通り、防御し続けられた。パンドラから送られてきたプログラムの正体、それは“Advanced V mode”を制御するためのプログラムだったのだ。

 

 

「へぇ…コントロール出来るようだねェ。けど、アキレスのLPはもう無いんだろ?」

 

 

 もう一度ジョーカーはアキレスを取り囲み、一斉攻撃を仕掛ける。だがアキレスは高速の跳躍で回避、3機にそれぞれ蹴りを入れた。

 

 

「これまでずっと対応出来なかったジョーカーの速度に追い付き、凌駕する動きか…」

 

「檜山はどう見る?」

 

「今はなんとも···ただ、あれを使えばおそらく、海道ジンの機体以上の性能になるだろうな」

 

 

 Vモードのコントロールが可能になったものの、アキレスの残りLPは一撃でも食らえば即敗退である。そこでバンはとある作戦を考え、ジョーカー3機に背を向き、フィールド内にある山岳地帯へと逃げ込む。

 

 

「愚かだねェ!そこは行き止まりだ。前もって地形を頭に叩き込んでおかなかったのかァ?」

 

「そっか!一本道なら、1機ずつと戦うことができる!!」

 

「そう来ると思った。だが…高さを変えれば、三方向から攻撃できる!!」

 

 

 一本道なら1対1の状況を作れる、そう読んだ仙道は高さを変えて三方向からの攻撃を仕掛ける。

 だがアキレスは、ジョーカーが3機重なって見える位置へと移動した。そして────────

 

 

「今だ!!!」

 

 

《Attack Function! ライトニングランス!》

 

 

──────アキレスは槍にエネルギーを集中させ、突き出した穂先から放つ渾身の一撃を放った。

 放たれたライトニングランスは、ジョーカー3機を貫き、一斉に爆発した。

 

 

「よっしゃあ!!」

 

「バンの勝ちよ!」

 

「アキレスとハカイオーの力を掛け合わせた、フルパワーのライトニングランスだ!!」

 

 

バトル終了と共にアキレスが纏っていた黄金の光が消え、バンのCCMも元に戻る。

 

 

「くっ…空中で3機が重なる瞬間を狙っていたとは…」

 

「仙道、お前なのか?」

 

「なんのことだ?」

 

「お前がアイツらの刺客なのか?」

 

「俺が誰かに雇われて、お前を狙っていたとでも言いたいのか?馬鹿な、俺は誰の下にもつかない。俺に命令できるのは、俺だけだ」

 

 

 そう言い放ち、仙道はステージを後にした。バンはCCMを閉じ、アキレスを手にする同時に会場の観客席から歓声が上がった。

 

 

「仙道もイノベーターの刺客じゃなかったのか…」

 

「バン!」

 

「よくやったぜバン!!」

 

 

 アミとカズは一斉にバンの元へと近寄る。

 仙道ダイキとの戦いは熾烈を極めながらも、なんとかバンの勝利に収まったのだ。

 

 

「よう、おつかれさん」

 

「あっ…郷田!ありがとう、ハカイオーの腕のお陰でジョーカーに勝てたよ!」

 

「礼を言うのは俺だぜ、ハカイオーの仇を討ってくれたからよ!」

 

「けど次は決勝、その状態じゃ満足には戦えないだろ?だからほら、アキレスの腕の修理が終わったぞ」

 

 

 バンはアキレスに装備させてあったハカイオーの右腕を取り外し、元の持ち主である郷田に返したそして郷田ーはアキレスを手に取り、電動ドリルを使って修復したアキレスの右腕を取り付けた。

 

 

「これで完全に直ったし、決勝頑張れよ!」

 

「そういえばユウ、途中からいなかったけどなんかあったのか?」

 

「あぁ〜…いや、ちょっとな…」

 

「「「???」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バンと仙道による熾烈を極める戦いから少し前に遡る。

 俺はパンドラを操っていた白スーツの男を追っていた。だが会場内のあらゆる所を探しても、白スーツの男の姿はなかった。

 

 

「くそ…どこに行きやがったんだ…」

 

「何かお困りのようかね?」

 

「…誰だ!?」

 

 

 後ろを振り返ると、見覚えのあるスーツ姿の老人が俺の後ろに立っていた。

 

 

「海道…義光…?」

 

「その様子を見る限り、私のことを知っているようだね。如何にも、私の名は海道義光だ」

 

 

 海道義光、海道財閥会長でLBXを管轄する先進開発省大臣を務める国会議員だ。

 国会議員である海道義光がなぜアングラビシダスにいるのか、その一つの答えが脳裏を過ぎった。

 

 

「……海道ジン、あんたのお孫さんだな?」

 

「正解だ。孫の応援に来ただけだ」

 

「その割にはジンの戦いっぷりを見てないようだが…?」

 

「私の自慢の孫だ、必ずアングラビシダス優勝を成し遂げるだろう」

 

 

 海道義光の孫がジンというのは驚愕ではあったが同時に違和感を覚える。海道義光は独身だ、その為ジンは孫養子だろうと予想した。

 

 

「ふむ、そろそろ急がねばな…君の名は?」

 

「………黒田ユウ…です」

 

「では黒田くん、またどこかで会おう」

 

 

 そう言って海道義光は立ち去って行った。善良な人物だと今日の今まで思っていたが、どうも海道義光が善良な人物を演じているようにも見えた。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……そんなわけないか」

 

 

 一刻も早くアキレスの右腕を修復しなきゃならない俺は、急いでバンたちがいるアングラビシダスの会場へと戻った。

 




Advanced V mode:特殊モードとしてアキレスに搭載されており、発動後はCCMが変形してLBXが金色に輝き、パワーや反応速度が大幅にアップする。

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