『これよりBグループ準決勝を開始します。Ready─────』
「いくぜ、ハンター!!」
「ジ・エンペラー!」
『───── GO!!』
《 バトル スタート 》
カズと海道は自身のLBXをフィールドに投下した。フィールドは小高い草原の上から巨大な城が河を見下ろし、長い城壁が囲っている城砦フィールドだった。
「海道ジン、勝たせてもらうぜ!アミの仇をとるって約束しちまったからな!!」
「………」
ハンターはスモークグレネードで煙幕を張り、狙撃ポイントに向かう。一方のジ・エンペラーは全く動かず、佇んでいた
やがて煙幕は晴れ、ハンターは早速狙いをつける。
「(なんだ?えらく隙だらけだ…)」
「……」
「なんで動かないの?」
「分からない、何が狙いなんだ?」
狙撃タイプを相手にするなら、ハンターから身を隠し、狙撃ポイントを探すのが普通だ。しかしジ・エンペラーは全く動かない。まるでいつでも撃てというかのように。
「じゃあ、早速食いな!」
ハンターはジ・エンペラーを狙い、銃弾を放つ。だがその戦いを見た者は誰もが目を疑った。
始めから銃弾がどこからくるかを予想していたかのように、微かに身を動かすことで回避した。
「な…っ!?」
さらに銃弾を撃ち込むも、どれもジ・エンペラーに当たることはなかった。そしてジ・エンペラーは銃弾を避けながらハンターにどんどん近づいていく。
「なんで避けられるんだ…!?だったら!!」
《Attack Function!スティンガーミサイル!》
ハンター専用の必殺ファンクションが発動、ハンターの背中に内蔵した6発のミサイルが一斉発射された。
ジ・エンペラーは放たれたミサイルを避けず、爆発によって周囲は黒煙に包まれた。そしてゆっくりと黒煙は晴れていき、同時にカズはあることに気づいた。
本来いるハズのジ・エンペラーの姿がどこにもいなかったのだ。
「…ッ!?一体どこに!!?」
ハンターは周囲を見渡したその時、突然ハンターのボディにジ・エンペラーが手にしているハンマー型の武器であるティターニアが直撃する。
「29秒13…その程度か」
「こんなあっさりと…あり得ねぇだろ…」
重力を味方にしたジ・エンペラーのティターニアの威力は凄まじく、一撃でハンターはブレイクオーバーとなった。
■
「いよいよ決勝ね…」
「あぁ…」
「気をつけろよ、バン!海道ジン…アイツはヤバいぜ。戦ってみてはっきり分かった」
「海道に小細工が通用するとは到底だが思えねぇ、真っ正面にぶつかるしかないな」
アングラビシダスもいよいよ決勝戦、バンの相手は今までの試合を秒殺で終わらせてきた秒殺の皇帝の異名を持つ海道ジンだ。
「バン…」
「あぁ…行ってくる!!」
『では…これより決勝、山野バンVS海道ジンの試合を行います。勝利者にはアルテミスへの出場資格が与えられます、健闘を…』
バンは大会MCの指示に従い、指定されたジオラマへと向かう。するとその時、ジンはバンに向かってあることを明かした。
「バン君、父親の居場所を知りたい…そうだね?」
「海道ジン…やっぱりお前がイノベーターの…!」
海道ジンこそイノベーターのトップから送られた刺客だったのだ。そうなると海道義光またイノベーターの一員となるが、この時のユウはまだ確信には至っていなかった。
「僕の目的は君のアキレスの破壊、そしてプラチナカプセルの回収だ。だが君が僕に勝ったなら、山野博士の居場所を教えてやろう」
「…なんでそんなことを教えてくれるんだ?」
「さぁ、何故かな?…心配しなくていい、嘘を言う気はない。最も負けるつもりもないが…」
バンとジンは中央ステージのジオラマ前に立つ。そしてその場を見るものは皆、静かに見守っていた。
『では試合を開始します。Ready─────』
「いくぞ、アキレス!」
「ジ・エンペラー!」
『─────GO!!』
ジオラマは城壁、小高い草原の上から巨大な城が横に流れる河を見下ろすフィールドだ。ナイトフレームであるアキレスとジ・エンペラーの戦いに最も相応しいフィールドだった。
「いくぞ…!」
「フッ…」
試合が始まるやいなやアキレスが先に仕掛ける、しかしジ・エンペラーは持ち前のスピードを活かして回避、互いにアキレスランスとティターニアで激しくぶつかり合う。
今までジ・エンペラーに一撃を与えた者はいなかったが、ここでアキレスの攻撃がジ・エンペラーに掠った。
「なら、これならどうだ?」
「じゃあ俺だって…!」
ジ・エンペラーが高く飛び上がるところを見てアキレスもジャンプで対応、そのまま2機は空中で激しい空中戦を行いながら地上に降りる。
地上に降りた後も、ジ・エンペラーはアキレスのボディを狙い、アキレスはそれをアキレスシールドで防ぐ。
「流石だね、バン君」
「今度はこっちから行くぞ!!」
今度はアキレスランスでジ・エンペラー頭部を狙って突き、ジ・エンペラーはそれを後ろに跳躍することでそれを回避。そしてジ・エンペラーは一気に距離を詰めてティターニアを振り下ろすも、今度はアキレスが跳躍する事で回避した。
「すげぇ!あの海道の動きについていけるなんて!?」
「ここまでは互角ってところね…」
「実力だけなら海道が上だけど、バンは成長し続けている。最後の瞬間まで分からねぇな…」
ジ・エンペラーが攻撃速度を上げたティターニアがアキレスを襲う。咄嗟にアキレスはアキレスシールドで受け止めるものの、受け止めきれず吹き飛ばされてしまう。
「くそっ…だったら!」
「…!」
「必殺ファンクション!!」
《Attack Function!ライトニングランス!》
アキレスはアキレスランスにエネルギーを集中させ、突き出した穂先から放つ渾身の一撃を放った。
だがジ・エンペラーはそれを読んでいたかのようにライトニングランスを避ける。
「甘い…!」
「ライトニングランスを避けた!?」
「マズいわ…このままだと…!?」
「いいや、それが狙いだ!アキレス…Vモード!」
《 Advanced V mode! 》
Vモードが発動すると、バンのCCMが変形、モニターが7つ、スクリーンが3つの合計10個となり、アキレスが黄金の輝きを放つ。
「ほう…それが君の切り札かい?」
「そんな余裕があるのも今のうちだ!!」
アキレスは上空に浮いているジ・エンペラーに接近してアキレスランスで突き出し、地面に叩き落した。どんなLBXも空中だと動きが制限されて防御が難しい、バンはそれ狙っていたのだ。
「ライトニングランスはジ・エンペラーを空中に誘導させる囮に使ったのか…考えたなぁ…」
「そうだねぇ、演歌だねぇ」
「……反応し辛いわ、どこに演歌要素あるんだよ」
「まぁユウ、落ち着け。いちいち反応しても疲れるだけだぜェ…」
「そうなのか…。すまねぇ、ギンジ」
「あんたら、それってどういう意味だい!?」
リコとギンジとユウによる謎のコントが始まる中、アングラビシダスの決勝戦はどんどん激しさが増していく。
叩き落としたジ・エンペラーにアキレスがさらに追撃を加え、その速度にジ・エンペラーは何も出来ず、ダメージを受け続けていく。
「っしゃあ!ぶっ壊せバン!!」
「いっけぇ!!」
アキレスランスが命中、ジ・エンペラーは吹き飛ばされる。そのボディにはスパークが生じていた。
「フッ…バン君とアキレス。ここまでやれるなんてね…」
「な…!?」
その時、ジンから放たれる気配が変わった。
ジンのCCMの操作速度は常人の指の動きではなく、そして操作を受けてジ・エンペラーの動きも大きく変わっていた。ジ・エンペラーは残像を残しながらアキレスに接近、アキレスを空中に打ち上げた。
「ジ・エンペラーの動きが変わった!?」
「なんつう速度でCCM操作してんだよ…!?」
先程の仕返しかのように、ジ・エンペラーは空中にいるアキレスをティターニアで攻撃、そのまま地面へと叩き落とす。
叩き落とされたアキレスはなんとか起き上がるものの、ジ・エンペラーによって追撃される。
「アキレス!」
アキレスは起き上がることすらままならず、一方的にティターニアで攻撃され続けてしまっていた。そのまま吹き飛ばされたアキレスはどうにかして着地に成功する。
しかしVモードの制限時間に到達してしまい、黄金の輝きが消えてしまう。それと同時にバンのCCMも元の形に戻った。
「しまった…!Vモードが!?」
「どうした?その程度か…!」
ジ・エンペラーが追撃に出る。Vモードが発動していないアキレスでは、その速度についていけなかった。アキレスはアキレスランスで攻撃を仕掛けるも、背後に回られ、吹き飛ばされてしまう。
「終わりだ…必殺ファンクション!」
《Attack Function!インパクトカイザー!》
「なんて気迫…!?」
「来るぞ、バン!!」
「地獄の業火で灰となれ!」
ジ・エンペラーはティターニアを高く掲げ、勢いよく地面に叩きつける。すると地面は亀裂が走り、そこから溶岩のエネルギーの塊が吹き出した後にアキレスに直撃、大爆発が起こった。
「ア…アキレス!」
「直撃したんだが!?」
「バン!」
爆煙が晴れた頃にはジ・エンペラーの姿しか見てず、インパクトカイザーによって城壁フィールドの地面には巨大なクレーターが出来ていた。そしてその場所に残っていたのはアキレスランスのみであった。
「アキレスが消えちまった!?」
「これで終わりか…」
「いいや…まだ終わってなんかいない!!」
地面が揺れる。そしてクレーターから勢いよく飛び出す何かがいた。
その正体はアキレスだった。アキレスは咄嗟にアキレスシールドを構える事でインパクトカイザーを受け止めることに成功した。だがインパクトカイザー威力が大きすぎた為、地面に埋まってしまったのが事の真相であった。
「父さんを助け出すまで、俺は絶対に負けない!!」
「そうか、次こそトドメだ!」
ジ・エンペラーが再び高速でアキレスに接近、ティターニアを振るう。だがそのティターニアをアキレスはアキレスランスで受け止めた。
「なんだと!?」
「さっきまで食らい続けたハンマーを、槍…しかも片手で受け止めただと!?」
「バカな…どこにそんな力が…!?」
アキレスはジ・エンペラーの攻撃を受け流し、隙を突いてに攻撃を仕掛ける。
「腕は郷田とユウに!Vモードはパンドラに!今のアキレスには…みんなの力が宿っているんだ!!」
「フッ…面白い!」
ティターニアでアキレスを城壁まで吹き飛ばすも、アキレスはすぐに体制を立て直し、アキレスランスで反撃する。しかしそれもすぐに終わり、ジ・エンペラーに対してまた防戦一方となる。
「どこまでついて来られるかな…!」
「(始めて見る…あんなに嬉しそうにされている お坊っちゃま を見るのは…!)」
どこか楽しそうな表情を浮かべていたジンを見た執事は驚きを隠せなかった。そんな中、アキレスとジ・エンペラーは激しい攻防戦を繰り広げていた。
「なんてレベルのバトルなんだよ!?」
「バン、凄く成長してるわ!」
「まだいけるぞ!アキレス!!」
「フッ…!!」
「(……ノイズ音?)」
バンとジンのCCMの操作速度はさらに上がる。だが同時にジ・エンペラーから微かにノイズの様な音が聞こえる。
そのことに気づいたのは黒田ユウ1人だった。
「この一撃で終わらせる!」
再びジ・エンペラーがティターニアを低く構える。
「またあの技か!?」
「バン、避けて!!」
「必殺ファンクション!!」
《Attack Function!インパクトカイザー!》
「俺だって!必殺ファンクション!!」
《Attack Function!ライトニングランス!》
ジ・エンペラーはティターニアを高く掲げ、アキレスはアキレスランスを回転させて穂先にエネルギーを集中させる。
そして互いの必殺ファンクションが放たれる─────
「…っ!?なぜ動かない!」
《 system error システムエラー 》
「なに…!?」
─────ことはなかった。
なんとジ・エンペラーのCPUが機能停止、動きが止まったのだ。
『ジ・エンペラー機能停止を確認、バトル続行不可とみなします。Winner…山野バン!!』
「か…勝った…のか?」
ジンに勝ったことに、バンは呆然とする。そしてその瞬間、アングラビシダス会場内の興奮は最高潮に達した。
「……ポイント、579-934」
「え?」
「君が望んだ情報だ…」
「お待ちください、お坊っちゃま!!」
それだけを言うとジンはステージを降り、ジ・エンペラーを回収した執事と共に会場を後にした。
「決着はついた!!おめでとう、山野バン。アルテミス出場権はお前のものだ!!」
「やったなバン!」
「優勝おめでとう!」
「ヒヤヒヤさせやがって!でも…良いバトルだったぞ!!」
「何度も諦めずに立ち上がる姿、シビれたよ!」
アングラビシダス決勝戦が終了すると、皆一斉にバンの元へと向かった。しかしただ一人、ユウだけはバンの元へと向かうことはなかった。
海道義光、謎多き人物にユウは頭を悩ませていた。
□
トキオシティにそびえ立つビルの一室、先進開発省大臣の海道義光と、義光の側近である沢村宗人がいた。
「先生、失礼します!」
「なんだね?」
「あの、お孫さんが……」
沢村はアングラビシダス決勝戦の報告をしようとしたその時、義光のCCMから着信音が鳴り響いた。
「私だ」
『おじいさま、ジンです』
「負けたか…」
『はい』
孫の結果を聞いて、海道義光は落胆する─────
「己の力を過信したな…」
『…申し訳ありません』
「それで?」
『彼に伝えました、山野博士の居場所を…』
「そうか…」
─────わけでもなく、むしろ微笑んでいたのだ。そして電話を切り、そっとCCMを閉じた。
「沢村、次のプランに移行する」
「は…はい!」
■
アングラビシダスが終了し、俺たちはブルーキャッツの店内にいた。宇崎さんはパソコンを立ち上げ、バンは海道ジンから得た情報であるポイント579-934を調べる。
「ポイント579-934、海道ジンは確かに言ったんだな?」
「はい、間違いありません」
「確か、そのポイントにあるのは…!」
「あぁ…」
宇崎さんはPCにポイントのマップを映す。そこにはある一軒の屋敷が映し出されていた。
「なんだ?豪邸か?」
「その場所にあるのは、海道義光の屋敷だ」
「海道…義光?」
「先進開発省の大臣じゃない!?」
PCに映っているのは、グレースヒルズの一角にそびえ立つ海道の屋敷もとい海道邸。そしてもう一つのモニターに映っているのは、海道財閥の会長であり、政治家としてLBXを管轄する先進開発省大臣を務める海道義光であった。
「海道財閥の会長で、超が付く大物…。それと同時にイノベーターの黒幕だ」
「なんだって!!?」
「調べたところ、海道ジンは海道義光の孫であることも分かった」
「あの転校生が、そんな大物の孫だったのかよ…」
「………ッ」
海道義光への疑念が、確信へと変わった。よりによって海道義光がイノベーターの黒幕だったのだ。
「海道義光…そいつが黒幕か…!すぐに取っ捕まえましょう!!」
「残念だが…それは無理な話だ」
「どういうことですかレックス…!?」
「イノベーターの権力は警察にも及んでいる、つまり下手をすれば俺達が消される可能性もある」
「クソッ!」
前に宇崎さんに警察に話して安心できる状況じゃないと言われたが、その理由を今ようやく理解する。警察内にもイノベーターがいるとなれば迂闊に行動するわけにもいかなかった。
「でも!バンのお父さんを救い出すんでしょ?」
「そのつもりだったが…博士が奴の屋敷に囚われているとすると、かなり難しい…ッ」
「そんな…」
海道義光はイノベーターの黒幕と同時に政府の要人、海道邸のセキュリティは何重にも仕掛けられているだろう。少なくとも対処するのは難しいということは嫌でも分かった。
「じゃあ…せっかくの情報も無駄ってことなのか…?」
「いいえ、無駄じゃないわ」
すると一人の女性がブルーキャッツ店内に入ってきた。その様子を見る限り、客でとして来たわけではないという事だけは確かであった。
「あなたは…確かAX–00をくれた…」
「里奈か!」
「無事だったか…!」
この人がバンにAX–00を手渡した人らしい。それに宇崎さんや蓮さんの反応を見る限り、知り合いのようだ。
「海道邸のデータなら、ここにあるわ」
そう言って里奈さんはUSBメモリを俺たちに見せる。USBメモリの内容はどうやら街道邸のマップが入っているようだ。
「よく集められたな!」
「まぁ…ね。とにかく時間が無いでしょう?急いで作戦を考えて、博士を救出しましょう」
こうして俺たちはUSBを元にバンの親父さん救出作戦を考えるのだった。しかし皆が作戦を考えている中、俺は嫌な予感して仕方がなかった。
その原因の一つとも言えるのが里奈さんのことだ。あまりにもタイミングが良すぎるあまりどうも裏がありそうで、俺は里奈さんを信用することが出来なかった。
ジ・エンペラー:海道ジン専用の騎士型LBX。ナイトフレーム。ほとんどのLBXを数秒以内に撃破するほどの圧倒的な戦闘能力を持つ。
通信系、駆動系などを含め、全体が最新鋭の設計となっている。基本装備は大型鍵鎚“ティターニア”