ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第13話 無限稼働機関

「これが海道邸の設計図よ」

 

「よく手に入れられたな」

 

「海道邸を設計した会社のネットワークに侵入したの、潜入ルートを見つけられるハズよ」

 

 

 里奈さんは宇崎さんのパソコンにUSBを挿入、海道邸の設計図と侵入ルートが表示される。

 

 

「拓也さん、この人とはどういう知り合いなんですか?」

 

「俺と檜山、そして里奈はタイニーオービットの研究開発室で一緒に働いてたことがあるんだ」

 

「えぇ…っ!?」

 

 

 タイニーオービットの研究開発室といえばLBXが生まれた場所でもある。そして宇崎さんの話によると、どうやら蓮さんたち3人は研究員だった頃のバンの親父さんの助手だったようだ。

 

 

「お前たちに話しておかねばならんな…」

 

「レックスさん、なんですか?」

 

「レックスさんはカタいな。俺のことはレックスでいい」

 

「分かったよ、レックス…」

 

 

 蓮さんは5年前に起こった飛行機消息不明事件の真実を俺たちに話してくれた。どうやらバンの親父と一緒にいたレックスや里奈さんだけではなく、飛行機に乗っていた多くの科学者が連れていかれたらしい。

 

 

「だが1年前、エターナルサイクラーが悪用されることを恐れた山野博士は、データを持って俺や里奈と共にイノベーターの脱出を計った」

 

「失敗したのか…?」

 

「あぁ…辛うじて逃げ出すことが出来たのは、俺だけだった……」

 

 

 脱出に失敗したバンの親父さんはやがて神谷重工の工場であるエンジェルスター最深部にて監禁、そしてエンジェルスターに侵入した俺たちに奪還されることを恐れたイノベーターはバンの親父さんを海道邸へと移送したということか。

 

 

「…………」

 

「お前の親父さんは天才だよ。エターナルサイクラーは山野博士がLBXの効率化モーター研究中に発想した、無限稼働機関だ」

 

 

 里奈さんによると、バンの親父さんはその設計図が入ったプラチナカプセルをバンに託したは世界中の誰よりも信頼できるのがバンだったからのようだ。

 それを聞いたバンは苦渋の表情を浮かべる。

 

 

「レックス…父さんを助けられないの?」

 

「あぁ、お前の親父さんは俺たちが助け出すんだ」

 

「山野博士を救い出すためにも、これを詳しく解説する場所が必要なの。どこにあるのかしらね…」

 

「だったらあそこでやるしかないな。拓也、車を回してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…?」

 

「トキオシアデパートだわ…」

 

 

 宇崎たちに連れられてやって来たのはトキオシアデパートだった。それはトキオシティにある巨大なデパートであり、そして俺が新しいCCMを買いに一度訪れた場所でもあった。

 

 

「一体どこに向かおうとしてるんだ?」

 

「もうじきわかる」

 

 

 車は慣れたように地下駐車場に着くと宇崎さんはCCMで昇降装置のスイッチを遠隔操作し、昇降横行式の駐車場の様に車ごと地下深くまで降下、様々なルートを使って辿り着いた。

 その場所とは最新設備が揃う基地であった。

 

 

「ここは…?」

 

「ここがテロリスト対策組織シーカーの本部だ」

 

「すげぇ……映画のセットみたいだぜ!」

 

「これは遊びではない、国家を脅かす者たちとの戦いだ」

 

「敵はテロリストだ。こちらも、それなりの組織で臨まねばならない」

 

 

 宇崎さんによるシーカーの大まかな説明が終わり、設備などを見回していると無機質な機械音と共にドアが開いた。目を向けてみれば見知ったメンバーがシーカー本部に現れた。

 

 

「おーっ、アミちゃん!」

 

「リュウ!?」

 

「ミカに……郷田三人衆も!」

 

「どうしたの、こんなところで!?」

 

 

 どうしてその5人がシーカー本部にいるのか分からずにいたが、どうやら宇崎さんが呼んだみたいだ。全員が揃うのを確認すると、宇崎さんは5人を呼んだ理由を話してくれた。

 

 

「これまでの様々な研究から、LBXの操作は大人よりも子供たちの方が上手いという結果が出ている。そこで我々は子供たちをシーカーに加えることにしたんだ」

 

 

 しかし宇崎さんの説明を聞いた俺は懐疑心を抱いた。バンの親父さん救出や打倒イノベーターの為とはいえ郷田三人衆は兎も角、関係のないミカやリュウまで前線に立たせるやり方はあまりにも無謀だ。

 

 

「いいか、お前ら。俺たちは言ってみりゃ、実戦部隊だ。シーカーの最前線で世界のために戦う!気合い入れてけよ!」

 

「そんなこと言われても…」

 

 

 一定の理解はしたものの納得はやはり出来なかった。この件に関してはあまり皆には関わって欲しくないというのが俺の本音だった。

 

 

「やるしかないわカズ、イノベーターの陰謀を知ってしまったからにわね…!」

 

「やだ、惚れそう」

 

「ユウ!?」

 

 

 口が滑ってしまったことはさておき、どうやらみんな打倒イノベーターに意欲的だ。とはいえ相手は政治家である海道義光、迂闊に行動しようものならば間違いなく消されるだろう。

 

 ところで話を戻すが、先ほど口が滑ったのせいなのか、現在進行形でアミが俺の脚を何度も蹴っていた。

 

 

「ぐぬぬ…ユウのヤツめぇ…!」

 

「なにやってんだよ…」

 

「…ふんっ」

 

 

 不貞腐れるアミ、呆れるバン、妬むリュウ、反応はそれぞれであった。

 怖気付くカズを勇気付けるアミの姿を見て、ついうっかり口を滑らしてしまった。雉も鳴かずば撃たれまいというのはまさにこの事だ。

 

 

「話を戻すぞ、それぞれ得意なことが違う。だからこそ、チームとして機能するんだ」

 

「父さんを助けるだけじゃない。俺たちの手で、イノベーターの野望を止めるんだ」

 

「ではこれより、海道邸への潜入ミッションを説明する」

 

 

 照明が消え、スクリーンに海道邸が映し出される。その規模は凄まじく、要塞だと言われても違和感を感じないほどのレベルだった。

 それゆえ海道邸の警備態勢も凄まじく、警備員や監視カメラ、人感センサー、警備LBX配備など至る所にまで厳重なセキュリティで守られていた。

 

 

「これを見て」

 

「これは…?」

 

「地下水路よ、ここを辿って中に侵入します」

 

 

 画面が切り替わり、海道邸の地下水路が映し出された。この地下水路は海道邸に何かあった時に使用される脱出口、いわば逃走ルートであるようだ。

 宇崎さんたちによればこの脱出口を利用して海道邸に侵入する手立てを考えているとのことだ。

 

 

「入り口はここよ」

 

「グレースヒルズのショッピングモール、この噴水に海道邸につながる秘密の入口がある」

 

 

 どうやら海道邸に程近いグレースヒルズの噴水の下に海道邸に繋がる地下水道の入り口があるらしく、そこから侵入するようだ。

 流石はシーカー、イノベーターに対抗するテロ対策組織なだけあって伊達ではなかった。

 

 

「拓也さん、グレースヒルズに行きましょう。今度こそ父さんを助けるんだ!」

 

「待て、バン!突入するなら明日の夜を狙うべきだ」

「明日の…?」

 

「明日の夜なら、海道は政府の会合で留守にするわ。その分、警備も手薄になるの」

 

「では、決行は明日だ。明日、またここに集まってくれ」

 

 

 宇崎さんの一言で作戦会議は終了し、俺はその場を後にする。しかしその瞬間、アングラビシダスの会場で海道義光が含んだ笑みを浮かべた姿が脳裏に浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近所の公園のブランコでひとりユウは考え込む。キィキィと力なく揺れるブランコが、今のユウの心情をありのままに物語っていた。

 

 

「ハァ……」

 

 

 ため息を漏らしながらポケットからとあるLBXのパーツを取り出す。それはかつてユウの相棒であるサラマンダーMk-Ⅱのヘッドパーツだった。

 

 

「なにか考え事?」

 

「うぉ!?あ、アミ!!?」

 

 

 突然のアミにユウは驚きつつも感傷に浸る自分の姿を見られたくなかったのか、咄嗟に手に持っていたサラマンダーMk-Ⅱのヘッドパーツを隠した。

 

 

「ねぇユウ、一体なに考えてたの?」

 

「なんでもねぇよ…」

 

「…本当に?」

 

「…おう」

 

 

 そう言いながらもユウはアングラビシダスで起こったことを思い出し、再びため息をつく。その様子を見兼ねたアミは拗ねたように頬を膨らました。

 そしてゆっくりとユウの元に歩み寄り、息がかかりそうな距離まで近づいてくる。

 

 

「ねぇ…そんなに私って頼りない…?」

 

「ちょ!?アミ、近ッ…!?」

 

 

 頭がくっ付くほど顔を寄せるアミにユウは切迫しすぎで頭がオーバーヒート、耳の付け根まで顔が真っ赤になる。

 

 

「分かった!分かったから!!お願いだから一回離れてくれ!!」

 

「わ…分かったわよ」

 

 

 アミの勢いに押されたユウはブランコに腰掛け、つっかえながらもありのまま打ち明けた。

 

 

「すまん、アミ。今回ばかりは作戦、降りることにした」

 

「え…?ど…どうして?」

 

「……実はアングラビシダスで海道義光に会ったんだ」

 

「…!?」

 

 

 不敵に微笑んでいる海道義光の姿が5分前の出来事のようにはっきりとユウは思い出せた。それを思い出す度、拳が震えるほど握りしめていた。

 

 

「去り際にアイツが微笑んでるのを見て、きっと何か企んでる…って思ったんだ」

 

「で…でも!まだそうと決まったわけじゃ…」

 

「海道義光は政治家でイノベーターの首領だぞ?どんな汚ェ手を使ってきてもおかしくねぇ…」

 

「ユウ…」

 

「それに里奈さんを信用出来ない、だから俺は…別の方法でイノベーターを探る……」

 

 

 ユウは笑うも力はなく、握った拳が小刻みに震えていた。心の中に居座っていた小さな不安や恐怖が、いつの間にか大きくなっていることをユウ自身は感じていた。

 それに気づいたアミはそっとユウの頭を撫でる。

 

 

「分かった、みんなには明日伝えておくわ!」

 

「すまん、アミ」

 

「良いのよ」

 

 

 

 最初は罪悪感から黙っていたものの、アミに頭を撫でられている今の現状を認識したユウはやがて頬がみるみる紅潮してゆき、冷静になろうと壁に頭を打ち付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は当ても無くトキオブリッジ前にある慰霊碑に訪れていた。

 今から9年ほど前、ここではトキオブリッジ崩壊事故と呼ばれる崩壊事故が発生、多数の犠牲者を出した。その事故によって建設費用の圧縮による手抜き工事、規定以下の耐久性になっていたことが明るみに出た。

 

 無論手抜き工事を指示した工事責任者は逮捕される。そしてその工事責任者だった男の名は─────

 

 

「貴様が黒田ユウだな?」

 

「…誰だアンタら?」

 

「もう一度言う、貴様が黒田ユウだな?」

 

「………おう」

 

 

 トキオブリッジ前に止まっていた黒い車からサングラスをかけた黒服の男2人が現れた。昨日のシーカーの件もあり、黒服の男たちが海道義光と何らかの繋がりを持っているのではないかと睨む。

 

 

「海道先生がお呼びだ、一緒に来てもらおう」

 

「……ッ!」

 

 

 ビンゴだ。どうやら海道義光は俺に用があるみたいだ。

 しかしバンを差し置いて俺を呼ぶ海道義光の意図を理解出来なかった。 

 

 

「聞いていなかったのか?一緒に来てもらおう」

 

「くそが…ッ!」

 

 

 下手に動けば黒服たちに何をされるか分からなかった為、男たちの指示に従って黒い車の後部座席に座った。行き先は海道義光と海道ジンが住まう豪邸、海道邸であった。

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