ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第14話 AXー01 起動

 黒服の男の指示で車に乗せられる。右手の窓に目をやると目的地であろう海道邸が見える。

 その巨大な要塞じみた迫力に圧倒されてしまう。

 

 

「こっちだ、ついて来い」

 

「お…おう」

 

 

 海道邸の中の構造はというとまるで迷路の様に入り組んでいた。黒服の男たちの案内がなければ迷っていたのは確実であった。

 そして迷うこと数十分、突然黒服の男が立ち止まる。どうやら目的地に着いたようだ。

 

 

「ここからは貴様一人で行け」

 

「…それは海道義光の命令か?」

 

「もちろんだ、それと海道義光ではなく海道先生だ。そこだけは訂正しろ」

 

「あーハイハイ、分かったっての……」

 

 

 黒服の男の態度に苛立ちつつも俺は目の前にある重厚な扉を開け、煌びやかな大広間に出る。ホテルのロビーの様な豪奢な大広間は吹き抜けになっており、二階に通じるバロック調の階段が左右対称に付いていた。

 

 

「やぁ、黒田ユウくん。昨日ぶりかね?」

 

「海道義光…」

 

「ずっと立っているのも疲れるだろう、好きな席に座りたまえ」

 

 

 海道義光の方に目を向けるといかにも高級そうな椅子に座っており、執事が注いだであろう紅茶を飲んでいた。

 ここから逃げられないだろうと悟った俺は仕方なく海道義光から一番離れた席に座る。

 

 

「それで、なんであんたは俺を海道邸に招待したんだ?」

 

「君は……自身の秘めた力を不思議に感じたことはあるかね?」

 

「秘めた力だと…?」

 

 

 秘めた力─────どうやら海道義光は俺の身体に起こっている異常な現象を知っているようだ。

 俺の考えているのを察したのか、海道義光は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「素晴らしい、まさに君は選ばれし者だ」

 

 

 しかも海道義光の説明によればその秘めた力とやらは一定時間、脳が極限まで活性化した状態になり、周囲の物体の動きがすべてスローモーションに見えるらしい。 無論そんなものを使えば負担が掛かるのは当然だった。

 

 

「私と共に来ないかね?イノベーターに来れば、選ばれた力であるオーバーロードを十分に発揮できるハズだ」

 

「ふざけてんのか?誰があんなテロ組織に行くんだ」

 

「テロ組織とは心外だ。イノベーターは国を正しい方向に導き、理想の世界へ変革する為に結成した組織だ」

 

 

 あまりにも白々しい。財前総理を暗殺するのも理想の世界の為とでも言うのか。今すぐ海道義光を殴りたくなる衝動に駆られたが、ここで行動を起こせば黒服の男たちに何をされるか分からなかった。

 ひとまず俺は執事が入れてくれた紅茶を飲んだ。

 

 

「それで?俺をイノベーターに勧誘しようとするんだったら、さっさと帰らせてもらうぞ」

 

「まぁ…待ちたまえ、君をここに呼んだのはその力のことだけではないのだよ。加納くん、例のアレを」

「分かりました、海道先生」

 

 

 加納と呼ばれた胡散臭い中年科学者がアタッシュケースを持って現れ、それを俺の目の前に置いた。どうやらアタッシュケースを開けろということらしい。

 

俺は警戒しつつ、ケースを開ける。その中身はAX-01と彫られた銀の金属板と、黒いカバー装甲のLBXが入っていた。

 コアスケルトンを一時的に守るために取り付けられた装甲であるカバーパックを装着してるだけであってか、どこかAX–00に似ていた。

 

 

「開発コード…もとい機体名はAX-01、AX-00から発展する過程で製作されたジ・エンペラーのプロトタイプとも呼ばれるLBXです」

 

 

 AX-01を手にしようとしたがふとエジプトの件を思い出し、俺は咄嗟に手を引っ込めた。しかし考えた末、何をしても無駄だろうと諦めた俺はAX–01に触れた。

 しかし何も起こることはなかった。

 

 

「どうかね、AX-01は?」

 

「…なんでコレを俺に渡すんだ?」

 

「私からのプレゼントだと思ってくれて結構だ」

 

 

 俺にAX-01を渡す海道義光の行動をどれだけ考えても、答えのかけらも浮かんでくることはなかった。

 それにAX-01が呪われたLBXということを知るのは少し遠い未来の話になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高級ショッピングモールのあるグレースヒルズの広場にバン、アミ、カズ、リュウ、ミカ、郷田、拓也、檜山、里奈、合計9人が集まっていた。

 里奈が広場の噴水に手を突っ込む。そして噴水の中に仕掛けてあるスイッチを作動させると隠し階段が出現した。

 

 

「こんな場所に隠し階段があったのか…!」

 

「うっわぁ、すっげぇロマンの塊!!?」

 

「(父さん、今度こそ助け出すから待ってて…!)」

 

 

 全員階段で降りていく、その先は下水道だった。

 里奈が先導し、さらに奥へ進んでいくとしばらくして上への梯子を見つける。梯子を登るとマンホールがあり、それを開けて外に出る。

 

 特に何か起こるわけでもなく、いとも容易く屋敷の庭に潜入する。

 

 

「じゃあ、ここからは打ち合わせ通りに私たちはセキュリティを押さえにいくわ。バン君達は居住区の入り口へ向かって、何かあったら連絡を!」

 

「「「「「「はい…!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バンたちは屋敷内の柱に身を隠しながら、渡されたマップ通りに従い進んでいく。

 

 

「ここを曲がって…こっちか」

 

「警備員はいるけど、どうやら問題なさそうね」

 

「急ごう…!」

 

 

 順調に進んでいくバンたちだったが、警備には黒服の男たちの他にも警備LBXも巡回していた。迂闊に動くのはあまりにも危険だった。

 

 

「後ろにデクーとインビットが来てるわ…!」

 

「このままじゃ進めないな…ん?この壁、なんか変じゃない?」

 

「そういえば…おっ、この壁動くじゃん!」

 

「中は…部屋みたいね。ここでしばらくやり過ごしましょう」

 

 

 偶然3人は隠し扉を見つけ、部屋に入る。中は広いものの一部を除いて部屋は暗いため、バンたちは壁を頼りに進んでいく。

 

 

「それにしても、この部屋広いなぁ」

 

「こんだけ広けりゃ何でも出来るな」

 

「そうねぇ…あれ?あそこだけ明るいわね」

 

「そうだ、な…!?」

 

 

 その部屋にはバンたちにとって出来ることなら会いたくない人物が既にいたのだ。海道義光の孫、海道ジン其の人だった。

 

 

「海道、ジン…!」

 

「なんで優雅にティータイムなの?」

 

「勝手に入ってきて何を言う、ここは僕の部屋の一つだ。それと…来ると思っていたよ、バン君」

 

「…!」

 

 

 執事はティーカップに紅茶を注ぎ、ジンは優雅に紅茶を飲む。それと同時にパチッと照明をつけ、部屋全体を明るく照らした。

 

 

「君とは、アングラビシダスでの決着をつけたかった」

 

「バンこれは罠だぞ」

 

「その通りでございます…が、お坊っちゃまとの勝負を受けていただくなら考えます」

 

「嘘よ…!」

 

「バトルに応じてもらい、そして決着をつける。そのためにバン君、君と勝負がしたい」

 

 

 ジンはそう言い放ち、対するバンは受けるべきどうかと悩む。そして悩むこと数十秒、バンは覚悟を決めた。

 

 

「…分かった、その勝負受ける」

 

「おい!受けんのかよ!?」

 

「どっちにしろ、受けなきゃ捕まる。そのあとはバトルの後で考えよう」

 

「はぁ、分かったわよ…」

 

 

 バンの答えに2人は呆れるものの、今の現状を見て同様に覚悟を決める。

 それを見た執事はバンとアミとカズをジオラマへ案内する。

 

 

「ではバトルしよう、ただし前回みたいにCPUがエラーを起こすことはない。そしてエンペラーも強化してある」

 

「あぁ、今度こそ決着をつけて、父さんを助ける!」

 

「では、レディ…」

 

「エンペラーM2!」

 

「いくぞアキレス!!」

 

 アキレスとエンペラーM2が降り立つ。ジオラマは前回と同様、城壁フィールドだった。

 アキレスはアキレスランスとアキレスシールドを装備、対するエンペラーM2は新型武器であるエンペラーランチャーを装備していた。

 

 

「見せてもらおう、改良したエンペラーの性能とやらを···!」

 

 

 エンペラーM2が先制攻撃を仕掛ける。

 

 

「…!」

 

 

 アキレスが即座に対応、咄嗟にアキレスランスを突き出した。しかしエンペラーM2は高速移動で回避、アキレスを翻弄する。

 

 

「やっぱり速い…!」

 

 

 エンペラーM2はアキレスに急接近、エンペラーランチャーで攻撃した後すぐ背後に回り、追撃を仕掛ける。

 

 

「相変わらず化けもん染みた操作速度だな…」

 

「反応速度も上がっているみたいね…」

 

 

 エンペラーM2の猛攻にアキレスは耐えきれず、吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くそ…っ!」

 

「このエンペラーM2のCPUは、現在最高級の物と取り替えてある。以前のような事はもう起きない、つまりこの戦いは僕の勝ちで終わるだろう」

 

「最高級·…気にしない、どうでもいいさ。勝つための障害は俺が全部倒すんだ!行くぞアキレス、Vモードだ!」

 

 

《 Advanced V mode! 》

 

 

 その瞬間、バンのCCMが変形し合計10個のモニターが表示、同時にアキレスからも黄金の輝きが放たれる。

 

 

「よし、Vモードだ!」

 

「いっけぇ!」

 

 

 アキレスが加速しながらエンペラーM2にアキレスランスで攻撃する。しかしエンペラーM2はいとも簡単にVモードのアキレスの攻撃を防いだ。

 その後アキレスは果敢に攻め続けるも、エンペラーM2はその全て回避した。

 

 

「なっ…!?」

 

「………」

 

 

 エンペラーM2の反応速度はジンの操作速度はVモード状態のアキレスと同等だった。アキレスが距離を開けようと走り出すもエンペラーM2も追走、先回りして道を塞いだ。

 

 

「前もそうだったけど、アキレスのVモード相手にここまで出来るなんて…」

 

「CPUを交換するだけでこんな…」

 

 

 エンペラーM2はエンペラーランチャーでアキレスに強烈な一撃を与え、地面に叩き伏せる。さらにもう一撃与えようとした瞬間、今度はアキレスがアキレスシールドで受け止める。

 

 

「それ以上に、パワーも上がってる…!?でも、負けられない。父さんを助けるためにも!!」

 

 

 アキレスが反撃でアキレスランスをエンペラーM2のヘッドに向け突き出すが、エンペラーM2は紙一重で回避した。

 

 

「無駄だ。君の攻撃は前回のも含め、見切っている」

 

 

 海道ジンがそう言ったの束の間、アキレスの攻撃速度がどんどん上昇していき、遂にエンペラーM2はダメージを喰らってしまう。

 

 

「(スピードが増しただと···!?)」

 

 

 さらに次の攻撃は直撃、危機を感じたエンペラーM2は蹴り上げて距離を無理やり開ける。

 

 

「俺は負けられない!」

 

「それはこちらも同じだ!」

 

「「必殺ファンクション!」」

 

 

《Attack Function!インパクトカイザー!》

 

《Attack Function!ライトニングランス!》

 

 

 アキレスがアキレスランスを回転させ、穂先にエネルギーを集中させ始める。一方のエンペラーM2もエンペラーランチャーを低く構え、一気に持ち上げる。

 

 

「いっけぇ!!」

 

「…!」

 

 

 アキレスが紅く染まったライトニングランスを放ち、同時にエンペラーM2も地面にエネルギーを叩きつけて炎のエネルギーを生み出し、アキレスに向けて放出させる。

 二つのエネルギーの塊は互いに衝突、フィールドの中央で大爆発を引き起こす。

 

 衝突した場所にはこれまで以上のクレーターを生み出し、クレーターの中心でアキレスとエンペラーM2の2機が倒れていた。

 

 

「な…」

 

「これが、アイツらの全力の一撃か…!」

 

「凄まじいパワーだわ…!」

 

 

 アキレスもエンペラーM2も動けるのか、操作を受け付けて再び立ち上がった。しかしアキレスのVモードが終了してしまい、輝きは消えてCCMも元の形に戻る。

 

 

「しまった、限界時間か!?」

 

「ふっ、まだ戦えるだろう?」

 

「くっ!」

 

 

しかしここで広間の扉が開く─────

 

 

「ジン様、実はお伝えしなければならないことが…!?」

 

「おい、こいつらだ!ジン様、そいつらは侵入者です!!」

 

「くそ、見つかったか!」

 

「バン、行くわよ!」

 

「あ…あぁ!」

 

 

 黒服たちにバレたバンたちはアキレスを持って部屋からの脱出を図る。

 

 

「ジン!決着はアルテミスだ…!!」

 

「いいだろう…」

 

「おいバン、急げって!!」

 

 

 3人は隠し通路を発見、そこから脱出して目的の部屋まで走り出す。無論黒服の男たちも逃すハズもなく、バンたちを追いかけに行った。

 

 

「お坊っちゃま···」

 

「どうやら、まだ彼には勝てないようだ」

 

「では、引き続き調整を」

 

「頼んだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では早速、AX–01のテストを始めるとしよう」

 

 

 海道邸の地下にある研究室に連れてこられたや否や、海道義光専属の科学者である加納義一にAX-01のテストをしろと要求されていた。

 本当は抵抗したかったが後ろにいる黒服の男に銃を突き付けられている為、従うしかなかった。

 

 

「つーかせめて手枷外せ、操作しにくいんだよ」

 

「AX–01、きっと素晴らしいデータが得られるハズだ」

 

「おーい、聞いてる?」

 

「だがそれだけでは足りない…一体なんだ?」

 

 

 すると何か思いついたのか、加納はニヤリと口元に笑みを浮かべていた。そんな話が通じない海道義光直属の研究者と名乗る加納に俺は嫌悪感を抱いた。

 

 

「そうだ!ヤツを使えばいい!」

 

「…ヤツ?」

 

「紹介しよう、灰原ユウヤだ!」

 

 

 加納は目の前にある端末を操作すると出口とはまた別の扉を開いた。その開いた扉の先にいたのは、灰原ユウヤという少年だった。

 青白い肌にハイライトのない瞳のせいか、俺は灰原ユウヤが生きた屍ように見える。 不気味な事この上なかった。

 

 

「AX–01とジャッジのテストプレイが行えるとは、私も中々運がいい…!」

 

「………」

 

「では早速始めよう。互いのLBXをフィールドに投下するのだ」

 

「……ジャッジ」

 

「チッ…………AX–01!!」

 

 

 正直こんなLBXバトルは望んではいなかったが、さっさと灰原ユウヤを潰して、今頃海道邸に潜伏しているバンたちと合流しなければならない。絶対に…。

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