ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第15話 潜入、海堂邸

《バトルスタート!》

 

 

 バトル開始するや否や、灰原が操作するジャッジが先制攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「くっそ!ジャッジ堅ぇ!?」

 

「………」

 

 

 咄嗟にAX-01はZ=ディフェンダーでジャッジの重い攻撃を防ぎ、槍型武器である機槍ディアブロを構える。それと同時にAX–01は地面を蹴り、一気に機槍ディアブロをジャッジに向かって突き出した。

 しかしジャッジはそれを大きな盾であるトゥループロテクターで受け止めた。

 

 

「………」

 

「これならどうだ…っ!!」

 

 

 一瞬の隙を狙って懐に飛び込み、機槍ディアブロをジャッジのボディに突き立てる。一方のジャッジは突き立った機槍ディアブロに蹴り、お返しとばかりにAX–01を大きく殴り飛ばした。

 

 

「…っ!?しまった!!?」

 

 

 今度はジャッジが機体の重さを活かして、巨大な剣であるジャッジソードを振り下ろした。AX-01はそれを防ぐが受け止めきれずに体勢を崩し、そこにジャッジの蹴りを入れられ、さらに吹き飛ばされた。

 

 

「ちょ…!?スペックが違いすぎる!?」

 

「……必殺ファンクション」

 

《Attack Function! パワースラッシュ!》

 

 

 灰原は必殺ファンクションを発動するとジャッジは大きな横斬りで衝撃波を出し、電気の刃となってAX-01を斬ろうとする。それに対してZ=ディフェンダーで防御体勢に入るAX-01だったが、ジャッジソードによってZ=ディフェンダーは真っ二つに斬られてしまった。

 

 

「嘘ォん…ッ!?」

 

「………」

 

「ジャッジのスペックは今のところ、この程度か…どうやら改良する必要があるみたいだ……」

 

 

 冷静に灰原のジャッジを分析する加納に苛立つも、ジャッジの猛攻にAX-01は防戦一方だった。

 

 

「クソ…これでも食らいやがれぇぇええええええ!!!」

 

《Attack Function! クリムゾンスラッシュ!》

 

 

 AX–01は機槍ディアブロに紅蓮の炎を纏わせ、横一閃で正面のジャッジを焼き尽くそうとする。

 渾身の一撃がジャッジに直撃──────

 

 

「なっ…!?」

 

「素晴らしい、素晴らしいぞ!!これが…ジャッジの力!!」

 

「………」

 

 

──────するハズだった。

 AX-01が放ったクリムゾンスラッシュはジャッジのトゥループロテクターによって、あっさりと防がれてしまった。その事実に俺は とてつもない焦りを感じていた。

 

 

「……」

 

 

《Attack Function! パワースラッシュ!》

 

 

 ジャッジは大きな横斬りで衝撃波を出し、電気の刃となってAX–01を斬りかかろうとする。Z=ディフェンダーという盾がない今、ジャッジの必殺ファンクションを食らえばブレイクオーバーになるのは明白だった。

 

 

「……負けてたまるかァァァアアアアァァ!!!!」

 

 

 負けたくない。そんな思いに応えるかのように、世界がスローモーションと化した。さっきまで速すぎて目で追うのがやっとだったが、今はっきりとジャッジの動きが正確に見えていた。

 AX-01のスピードは異常なまでに加速する。しかしそのスピードをもってしてもジャッジは直ぐに対応、異常なまでに加速し始める。

 

 

「オッラァ!!!」

 

「……ッ!?」

 

 

 AX–01は隙を突いてジャッジのボディに勢いよく体当たり、不安定になっていた体勢が崩れたジャッジだったが即座に回避した。

 

 

「やってくれるじゃねぇか、だが…これで決める!!」

 

 

《Attack Function! グロリアスレイ!》

 

 

グロリアスレイはエネルギーで巨大化したを振りかざし、衝撃波を敵に叩き込む必殺ファンクションだ。しかし狙いはジャッジではない、俺が狙ったのはジャッジが手にしているトゥループロテクターだった。

 

 

「なッ!?ぐわぁ…ッッ!!?」

 

「き…貴様ッ!?」

 

「………!」

 

 

 必殺ファンクションによって吹き飛ばされたトゥループロテクターはそのまま加納の顔に直撃、そしてバランスを崩した加納は頭を打って気絶した。そして気絶した加納に気を取られた黒服の男の頸部を圧迫して意識を狩る。

 

 

「よし…戻れ、AX–01」

 

 

 加納と黒服の男が気絶しているのを確認すると透かさずAX–01を回収した。

 灰原の方に目を向けるとLBXバトルが途中で中断されたのか、ピクリとも動かなかった。

 

 

「まぁなんだ…灰原、悪ィけど今回のLBXバトルはここまでだ」

 

「……?」

 

「あー…加納がくたばったから、ここでお前とはおさらばだ……あばよ!!」

 

 

 俺はすぐさま扉のロックを解除、研究室を後にする。しかし思った以上に身体が動いてくれないので、仕方なく俺は壁を頼りに目的へと向かう。

 

 

「にしても、アイツとはどこかで出会ったことがある気が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入り組んだ通路を抜けながら目的地へ向かう3人、当然そこには警備のLBXもいた。

 

 

「あの距離なら俺の出番だな!」

 

「頼んだぞ、カズ!」

 

 

 ハンターは狙いを定め、ライフルでデクー1機を迎撃する。その際に爆煙が目眩ましとなり、追っ手を振り切った。

 

 

「よし、こっちだな」

 

「そういえば、他の皆は無事かしら?」

 

「みんな普通じゃないからなぁ…大丈夫だろ。多分」

 

 

 バンたちは次々と敵LBXを凪ぎ払っていく中、遂にマップに記された目的の部屋に辿り着くのだった。

 

 

「やっぱこの屋敷の部屋は広すぎるぜ…」

 

「フフフッ…」

 

「誰っ!?」

 

 

 暗い部屋の中、何かを企んでいる笑い方が部屋中に響き渡る。声の主は静かにバンたちの目の前に姿を現すと同時に部屋中の電気が一斉に点灯された。

 

 

「あなたは…!」

 

「待ちかねたぞ」

 

「今日は居ないんじゃなかったの!?」

 

 

 そこにいたのはイノベーターの首領であり、政治の会合で屋敷には居ないはずの海道義光が立っていたのだ。

 

 

「海道義光!父さんを返せ!!」

 

「ふん、それが目的なのは知っている。山野バン君、父親に会いたいか?いいだろう…」

 

「何…!?」

 

「ただし、私の月光丸に勝てればの話だがね」

 

 

 テーブルの上に降り立った海道義光のLBX、月光丸はどこか異様な迫力を持っていた。その証拠に月光丸を見た瞬間、3人は冷や汗が止まらなくなっていた。

 

 

「山野バン、お前たちの得意なLBXバトルで勝てたら返してやろうと言っているのだ。異論はあるまいな?」

 

「バン、今度こそ罠だ…!」

 

「やってやるさ!アキレス!!」

 

「3人一緒でも構わんぞ」

 

 

 余裕の態度を見せる海道義光にバンたちもそれぞれLBXを投下する。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

 アキレスとクノイチの鋭い攻撃を跳躍で回避した月光丸が着地した瞬間、ハンターが狙い撃つ。しかし当然のように月光丸はそれを避けた。

 

 

「ふむ、所詮この程度か」

 

 

《Attack Function! 月華乱舞!》

 

 

 月光丸はムラマサを構え、大きく振り翳す。大きく振り翳したムラマサが生み出す衝撃波は凄まじく、防御手段を持たないクノイチとハンターは為す術なくブレイクオーバーとなった。

 

 

「私たちのLBXが…」

 

「たった一度の必殺ファンクションで…っ!?」

 

「アキレス…!」

 

「ほう、これを耐えるか…」

 

 

 アキレスはアキレスシールドで必殺ファンクションを防いだもののLPゲージは大幅に減少しており、多大なダメージを負っていた。そんなボロボロのアキレスに月光丸が歩み寄り、首を鷲掴んで持ち上げる。

 

 

「アキレス!!」

 

 

 バンは必死にCCMで操作するが、アキレスが動くことはなかった。そして部屋には警備員の黒服たちが押し寄せ、バンたちを拘束してCCMを奪った。

 

 

「フフッ…これでプラチナカプセルは私のものだ」

 

「やっぱり無理だったんだよ、あんなヤツらと戦うなんて……」

 

「諦めるのはまだ早いわ!きっとレックスたちが助けに来てくれる!」

 

「それは彼らの事かな?」

 

 

 海道義光がそう言うと大広間の扉が開き、警備員が拓也や檜山、里奈、郷田、ミカの5人を連れて入って来る。

 

 

「久しぶりだね、檜山君。一年ぶりか。こんなところで君に会えるとはね」

 

「どういうことだ!?ヤツは政府の会合に行ったんじゃなかったのか!」

 

「くッ…まんまと裏をかかれたというわけか…だがどうして俺たちの計画が海道に…」

 

「何故だろうな?ふっ…連れてこい」

 

「はッ!おい、入ってこい!」

 

 

 全員の視線が扉に向けられる。入ってきたのは複数の黒服たちに囲まれている白衣を着たとある人物、山野淳一郎其の人だった。

 

 

「山野博士!」

 

「山野博士…ということは、あの人がバンのお父さん?」

 

「父さん……父さんなんだね……」

 

「大きくなったな…バン……」

 

「申し訳ありませんでした博士。私がついていながら、こんなことに…ッ」

 

 

 頭を下げる檜山に山野博士は気にするなと言う。しかしそれだけでは終わらなかった。

 海道義光はさらにある人物を連れて来いと黒服の男に指示した。

 

 

「海道…今度は一体何をする気だ…ッ!!」

 

「フフフっ…君たちのお友達とやらをここに連れてくるだけさ」

 

「友達…まさか!?」

 

「海道先生!連れてきました!」

 

「よろしい」

 

 

 海道義光の指示に黒服の男が引きずって連れてきたのは、完全に意識を失っている黒田ユウだった。

 

 

「「「ユウ!!!」」」

 

「そんな、ユウが…ッ」

 

「さて…全員揃ったということで本題に入ろう。君たちには永遠に消えてもらう。AX–00手に入った今、黒田くんを除いた君たちもう用済みなのだよ」

 

「うわぁぁああぁ!!?死ぬたくない〜!!!!」

 

 

 突如部屋に響き渡る叫び声に黒服の男たちは困惑した。その声の主の正体、それは海道義光の背後にある巨大なカーテンに隠れていた大口寺リュウであった。

 それをチャンスと考えた宇崎と郷田の2人は互いにアイコンタクトを取り、警備員にタックルして怯ませた。

 

 

「ナイスだ!リュウ!」

 

「ひいぃぃ…」

 

「おっと、全員動くなよ!海道がどうなっても知らないぜ!!」

 

 

 郷田と宇崎が黒服たちを怯ませたその隙に檜山が一気に海道義光に詰め寄り、靴に仕込んだナイフを抜いて人質に取る。

 

 

「海道先生…」

 

「動くな!そしてバンたちから離れろ!」

 

「よっしゃ!これで形勢逆転だな!!」

 

「じゃあ、早くCCMを───」

 

 

 急いでCCMを回収しようとしていたバンだったが、人質になっている海道義光が不敵な笑みを浮かべていることに気づいた。それと同時にバンはこの状況に嫌な予感がして仕方がなかった。

 

 

「まだ勝てていないがいいのかな?」

 

「な…にッ!?」

 

「……動かないで」

 

「……何故だ………何故俺に銃を向けるんだ、里奈ァ!!!」

 

 

 バンの嫌な予感が的中してしまった。海道邸潜入計画を漏らしたのは、紛れもない石森里奈其の人だった。

 

 

「里奈、お前が俺たちの計画を海道には……あのデータも、俺たちをここに誘い込む為か……ッ」

 

「レックス、海道から離れて」

 

 

 檜山はゆっくりとナイフを捨て、渋々海道義光を解放してゆっくりと後退した。

 

 

「フフフ、スパイを送り込むのは君たちだけと思ったのかね」

 

「………ッ」

 

 

 その時だった。いきなり宇崎のCCMがけたたましく鳴った。

 

 

「おや、電話のようだが……。出ないのかね?」

 

「………俺だ」

 

『拓也さん!緊急事態です!シーカー本部が何者かに占拠されました!おそらくイノベーターだと思われます!!』

 

「何!?」

 

『寸前に何者かから通報があり、死傷者はいないのですが…本部は……ッ』

 

 

 電話の内容は海道義光が送り込んだスパイによってシーカー本部が陥落したとの事だった。その事実に宇崎は黙ることしか出来なかった。

 

 

「どうしてだ。どうして裏切った!里奈!!」

 

「………ッ」

 

「私が答えてやろう、彼女にはどうしても必要なモノがあったのだよ。神谷重工の、いや私たちイノベーターが持つオプティマの技術がね」

 

「オプティマ……まさか!」

 

 

 さらに海道義光の説明が続く。オプティマは元々神谷重工がアンドロイド用に開発した臓器技術であり、その技術医療分野に応用すれば難病に苦しむ多くの人の命を救えるという代物だった。

 

 

「……そう、私は妹を助けたかった」

 

「だが、その技術は未だに医療現場で使われていない。金の生る木を独占しようと、海道が政府の認可を止めているのだからな…ッ」

 

「オプティマの技術があれば妹は助かる!妹を助けるには、オプティマの技術が必要なのよ!!」

 

「これでスッキリしたかね。彼女は君たちではなく妹を選んだのだ」

 

 

 人の弱みにつけ込む海道義光のやり口にバンたちはふつふつと怒りが込み上げる。そんな状況の中、誰よりも冷静にしている人物がいた──────

 

 

「これであなたの希望は潰れたわけだ。あなたにはゆっくりと絶望を味わいながら死んでもらう」

 

「………そう上手く行くかな?」

 

「ん?」

 

「残念だが、お前が欲しがっているエターナルサイクラーの設計図は……プラチナカプセルを手に入れただけでは手に入らない。設計図を得るためには、データを解読するためのコードが必要でな」

 

 

 山野博士の発言に、海道義光は僅かながらに目を見開いた。プラチナカプセルを手に入れても解読コードがなければ手に入らない、つまり今の状態では鍵をなくした金庫と同じようなものだった。

 

 

「なるほどな…その解読コードはどこにあるのだ?」

 

「……解読コードは、この世で最も安全な場所にある。LBX世界大会アルテミスにな」

 

「アルテミスに解読コードがあるだと?」

 

「エターナルサイクラーのデータの解析コードは、クリスターイングラム社で開発されているメタナスGXと呼ばれる超高性能CPUの中だ」

 

 

 メタナスGX、それは超並列演算を可能にした夢のCPUであり、製造される数が極端に少ないことから稀少価値も高く、価格をつければ一つ数億クレジットはするクリスターイングラム製のCPUだった。

 

 

「そんな誰もが欲しがる物を、今回のアルテミスの優勝商品にされている。コードはその優勝商品になるメタナスGXに入れてあるのだよ、そのメタナスGXはLBXを管理するオメガダインによって守られている。どこにあるかも分からないが、まぁ…お前程度の権力では見つけられないだろうな」

 

「馬鹿馬鹿しい、そもそもだ。そもそもどうやってメタナスGXに解読コードを入れられるというのだ?」

 

「簡単なこと、クリスターイングラム社にハッキングを仕掛けておいただけだ。まぁ、これは私の手柄ではないがな」

 

 発想が並の人間のそれを越えている山野博士だったが海道義光は不敵に笑みを浮かべた。解読コードが欲しいのならアルテミスに出場して優勝すれば良いだけの話なのだから。

 

 

「さすが山野博士だ、しかしそれが分かった後なら我々でもどうにだってできる。少しばかり生きる時間が長くなってよかったな。では、まずはプラチナカプセルを頂こう…アキレスを破壊してな!」

 

「あ…アキレス!止めろ!」

 

 ついに月光丸がアキレスにムラマサを振るう。しかしムラマサはアキレスに届かず、むしろ月光丸の右腕が斬り飛ばされていた。

 

 

「なんだあの黒いLBXは!?」

 

「AX-00…じゃない?」

 

 

 そのLBXは漆黒の装甲に包まれ、ナイトーフレームでありながらどこか禍々しさを感じる不気味な機体だった。

 

 

「AX–01…まさか!?」

 

「わざわざこの部屋に運んできてくれて助かったわ。おかげでテメェをぶっ潰せる…!!」

 

「「「「ユウ!!」」」

 

「やはり君か…黒田くん」

 

 

 ユウの機体であるAX-01が持つ機槍ディアブロで月光丸の右腕を斬り飛ばしてアキレスを守ったのだ。

 

 

「う、動かないd「うるせぇ…っ!」ッ…!?」

 

「ほう……!」

 

 

 石森里奈が手にしている拳銃を、瞬時にユウは蹴り飛ばした。そして呆然としている石森里奈に用が無くなると、今度は海道義光に目を向ける。

 

 

「おいジジイ、これで終わりだ。さっさと全員解放しろ」

 

「ふむ…君の肉体は既にボロボロになってのハズだ、それなのに何故そこまでして動けるのだ?」

 

「ンなもん知るか、勝手にてめぇが想像でもしてろ…ッ!!!」

 

 

未だに疲労は激しく、今にも倒れそうだった。しかしそれでもユウはこの状況を打開しようと最後の力を振り絞っていた。

 

 

「面白い…月光丸!!」

 

「行け、AX–01ッ!!!!」

 

イノベーターの首領である海道義光が操作する月光丸に対し、肉体がボロボロになりつつもユウはAX-01を操作する。海道義光と黒田ユウの戦いが今、始まる─────────

 

 

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