ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第16話 概念を超越した存在

 部屋中に響き渡るのは硬いものがぶつかり合う甲高い音が部屋中に響き渡る。

 ムラマサを振るうのは日本の鎧武者のような外見したLBX ─────イノベーターと手を組んでいる神谷重工が総力をあげ、持てる技術の全てを結集して作り上げた海道義光専用のLBX、月光丸だ。その月光丸と対峙するのは黒い装甲を身に纏い、機槍ディアブロを持ったAX–01だ。

 

 

「オラァ!食らいやがれ !!」

 

「フフフっ…!」

 

 

 互いの距離はほとんど無く、一歩踏み出せば機槍ディアブロを手にしているAX–01の、一歩離れればムラマサを持つ月光丸の距離になる。ユウと海道はそれを理解しているからか、互いに牽制し合い、付かず離れずの膠着状態となっていた。

 

 

「素晴らしい、オーバーロードの力がこれ程までとは…!だが甘いな!」

 

「……ッ!?」

 

 

 その時、AX-01の持つ機槍ディアブロがムラマサに切り裂かれた。

 しかしAX-01は切り裂かれた機槍ディアブロを月光丸に向かって投げ捨てる。その機槍ディアブロは月光丸の目の前で爆発した。

 

 

「ほう…そう来たか!」

 

「武器ねぇじゃねぇかクソが!!」

 

 

 月光丸はそれ読んでいたのか、爆発する直前で後方に向けて跳躍、結果爆風と同速度でAX-01から距離を取ることに成功する。しかしこれを好機だと考えたユウはAX–01を操作して落ちているクノイチの短刀コダチを拾い上げる。

 

 

「必殺ファンクション!!」

 

 

《Attack Function!パワーナックル!》

 

 

 AX–01は撃ちだすパンチから火球を月光丸向かって放つ。しかしAX–01の一撃を月光丸は半歩下がり、短刀コダチにムラマサを当ててAX-01の力で軌道を逸らせることで容易く受け流す。

 

 

「受け流された!!?」

 

「なかなか良い戦いっぷりだ、しかしそれでは私を倒すことなど不可能だ」

 

「うるせぇ…倒すことなど到底不可能だとかぬかしてんじゃねぇぞ!!!!」

 

 

 AX-01は短刀コダチを地面に向かって叩きつけた。そこから生まれた衝撃波が指向性を持って月光丸にへと向かう。

 

 

「甘いぞ…!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

 

 それを月光丸は容易く斬り払う。だが眼前にまで接近していたAX-01が持つ短刀コダチの一撃を喰らった。AX-01は隙を作るために咄嗟に短刀コダチを地面に向かって叩きつけ、衝撃波を出していたのだった。

 

 

「衝撃波を出して隙を作るなんて、なんて戦い方なんだよ!?」

 

「凄い…あれがユウの本気…!」

 

「………」

 

 

 近くに刺さっていた破岩刃を引き抜き、隙だらけの月光丸へと斬りかかる。崩れないことに全力を注いでいた海道義光の月光丸にその一撃を回避する余裕は無く─────アームからボディまで、バッサリと斬られた。

 

 

「よし!このまま押し切れば海道義光に勝て、えほッ、げふ、ぁ、はぁ…!?」

 

 

 ユウが優勢だったのも束の間、突然ユウはゲホゲホと咳き込み、呼吸困難に陥ってしまう。それと同時に手足が震え始め、手にしていたCCMを落としてしまう。

 

「げほ! げふ、はぁ、ぁ、えほッ……」

 

「ユウ!?」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「ユウ…しっかりしろ、ユウ!!」

 

「ぜぇ、ぁ、はぁ、何が…どうなって…ッ!?」

 

 

 咳き込むユウの姿を見てアミやカズ、バンの3人の胸中に湧き上がってきた感情は不安と焦りだった。

 

 

「ふむ…君は自身の肉体を酷使したにもかかわらず、それを代償にしてまで私に挑むとは…君に敬意を表するよ黒田くん」

 

「げほ、おれ、は…ま、だ…ッ」

 

 

 ユウは咳き込みながらも諦めていなかった。まだ俺はやれる、だから頼む、動いてくれ、今の状況で海道義光と戦うことが出来るのは俺しかいない、だから動いてくれと─────だが現実は非情だった。今のユウには CCMを掴む力すら残されてすらなかったのだ。

 そんなユウの姿を見て、再び海道義光は不敵に笑みを浮かべていた。

 

 

「さて…やはり、君たちにはここで死んでもらう。これ以上の小細工が出来ぬようにな」

 

「それはどうかな?」

 

「まだ何かあるのか?答えろ、山野博士!!」

 

「…これが答えだ」

 

「伏せろ!!!」

 

 

 檜山が叫んだ瞬間、起こったのは轟音。ドカンドカンと爆発が海道邸中に響き渡る。

 そして次に起こったのは、先ほどの爆発が可愛く思えるほどの衝撃だった。

 

 

「……爆発だと!?山野博士!」

 

「私は科学者だ。この屋敷にある材料を拝借すれば、こんな芸当は朝飯前だ」

 

「海道先生、ここは危険です!!さぁ、こちらへ!」

 

「……おのれぇッ!!!」

 

 

 不敵な笑みを浮かべていた先程とは一変、悔しそうに顔を歪める海道義光はもはや紳士の皮を脱ぎ捨てていた。怒った顔で両の拳を握りしめながらも、海道義光や黒服の男たちは身の安全の為にその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父さん!」

 

「私のことは気にしなくていい、それに、まだやるべきことがあってな…」

 

「いたぞ!捕まえろ!!」

 

「行くぞ!脱出のチャンスは今しかない!!」

 

 

 バンは必死にここから逃げようと山野博士に訴えるも、山野博士はやるべき事があると言ってそれを断った。

 

 

「そんな…家で母さんに会ってからでもいいじゃないか!母さんは…父さんの帰りをずっと待ってるハズだ!」

 

「真理絵か…すまない。だが、それも含めて今はまだ会うことが出来ない。全てを終わらせ、私の使命を終わらせてから出なければ!」

 

「父さん!」

 

「いいか、よく聞け!アルテミスでは必ず優勝しろ!そして、世界の希望を守ってくれ!」

 

 

 バンにそう言い残した山野博士は屋敷の奥へと姿を消してしまった。山野博士を追いかけようとしたバンだったが爆発によって天井は崩れ、山野博士を追うという選択肢は完全潰えてしまった。

 

 

「父さぁああああぁぁん!!!」

 

「バン、急いで!!」

 

「早くしろ!このままだと逃げ遅れるぞ!!」

 

 

 バンは2人に連れられ、爆発によってボロボロと化した大広間から脱出する。そしてユウを担いでいる郷田とリュウが遅れて大広間から脱出するのを確認すると、バンたちは檜山と宇崎の2人に従って海道邸からの脱出を図る。

 

 

「みんな!早く逃げ…ッ!?」

 

「デクー…それも大量に!?こんな時に限ってかよ!!?」

 

「こんなところで立ち止まっていられない!突破しよう!」

 

 

 海道邸からの脱出を阻む複数のデクーに対抗すべくバンはアキレスを投下する。そしてバンに続き、アミ、カズ、郷田、ミカ、リュウの5人もそれぞれのLBXを投げ、戦闘態勢に入る。

 

 

「にしてもさすがに多くねぇか!?」

 

「ぐだぐだ言ってんじゃねぇぞ!口動かすよりも手を動かせ!!」

 

「郷田さん、カッコいい…」

 

「そんなこと言ってる場合かよぉぉぉおおぉぉおお!!?」

 

 

 郷田はデクーを鬱陶しいと思いながらも右手に破岩刃を持ったハカイオーを操作してデクーに切り掛かり、それに続いてミカの操るアマゾネスは左手に煌びやかな装飾の施されたバルチザンを持って、デクーを視界に収めずに切り捨てる。

 

 

「「「必殺ファンクション!!」」」

 

 

《Attack Function!ライトニング ランス!》

 

《Attack Function! 旋風!》

 

《Attack Function!スティンガーミサイル!》

 

 

 アキレスはアキレスランスにエネルギーを集中させて突き出した槍先から放つ渾身の一撃を放ち、クノイチは素早い動きで敵に拳を繰り出し、ハンターは背中に内蔵したミサイルが一斉発射された。

 複数体のデクーは必殺ファンクションをもろに受け、大爆発する。

 

 

「これでも食らえ!必殺ファンクション!!」

 

「……必殺ファンクション」

 

 

《Attack Function! 我王砲!》

 

《Attack Function!ファランクス!》

 

 

 ハカイオーの胸部から絶大な威力を誇る砲撃兵器を放って辺りを一掃、アマゾネスはバルチザンに集中したエネルギーを一気に解き放って激しい槍の連撃で複数体のデクーを切り刻んだ。

 

 

「お…俺だって!!」

 

 

《Attack Function!アークスエイク!》

 

 

 ブルド改はブルドアックス地面を凄まじい勢いで叩きながら進んでいく。

 

 

「おい、これどうすんだよ!?減るどころか…デクー増えてんぞ!!?」

 

「まさか…脱出させないつもりなの!?」

 

「一体どうすればいいんだよ…ッ」

 

 

 バンたちのLBX6機に対してデクー約200機以上という圧倒的な数の差、いくら必殺ファンクションを発動しようがデクーの数は増える一方だった。

 

 

《Attack Function!我王砲!》

 

 

 窮地だったのも束の間、ハカイオーとはまた別方向の砲撃兵器によって過半数のデクーを吹き飛ばした。

 

 

「なんだ!?一体何が起こってるんだ!?」

 

「俺のハカイオー以上の威力の我王砲だと…!?」

 

「見て、何かいるわよ!」

 

 

 アミが指を指した方向に、皆一斉に振り向いた。

 そこにいたのはパールホワイトの装甲に包まれ、未知の結晶体に覆われたウイング、頭部には赤色のバイザー、既存のLBXの概念を完全に超越した存在だった。

 

 

「……綺麗」

 

 

 アミは思わず口から漏れてしまった。

 檜山と宇崎が警戒する中、そのLBXは一瞬にして数百体いるデクーを常人では見えない速度で薙ぎ払う。その美しい姿にアミたちは目を離すことが出来なかった。

 

 

「もしかして…俺たちを逃がそうとしてくれてるんじゃね?」

 

「分からない。だがどうであれ、脱出するチャンスは今しかない!皆、脱出するぞ!!」

 

 

 宇崎たちはここぞとばかり力を振り絞りながら、警備の目を掻い潜って海道邸からの脱出を目指した。

 

 

《彼、どうだった?》

 

《さァ?結構前だからな…けどあの様子を見る限り、時間の問題……って事だけは確かだな》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高級ショッピングモールのあるグレースヒルズの広場の噴水前、バンたちは無事に海道邸脱出に成功した。

 

 

「ここまで来ればもう安全だろう」

 

「し…死ぬかと思ったぜ…」

 

「………父さん」

 

「バン。山野博士なら、大丈夫だ」

 

 

 バンは自分の母である山野真理絵に父さんは生きていると伝えなくてはならない、その事で頭の中ではいっぱいだった。

 バンはその後帰宅、母親に山野博士の事を話した。しかし返事は意外なものだった。

 

 

「じゃ…じゃあ、母さんは父さんが生きてるって知ってたんだ…」

「ごめんなさい、バン。私も最初、父さんは死んだと思っていたの。でも、ある時電話があって……─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真理絵、私は生きている。そして今、ある危険な研究を強いられている。誰にも言えない極秘の内容だ。近い将来、バンやお前を巻き込んでしまう日が来るかもしれない』

 

『あなた……』

 

『その時は全て話そう。だから、それまでは………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────……ごめんなさい、今まで黙ってて」

 

 

 山野真理絵は今まで隠していたことを全てバンに打ち明けた。飛行機事故でイノベーターに連れていかれたあの日から、山野博士は世界の為にイノベーターと戦っていたのだと。

 

 

「…………母さん、俺もイノベーターと戦うことに決めたよ」

 

「え?」

 

「俺、今日父さんに会って分かったんだ。父さんのやっていることが、どれだけ世界の為に大切ってことが……だから俺も父さんと一緒に戦うよ」

 

 

 山野博士は世界を守る為に今まで戦ってきた、だったら自分も世界を守る為に戦うと、バンはそう決意した。

 

 

「もちろん、危険な目にあうかもしれないけど、それでもやらなくちゃいけないんだ」

 

「バン……分かったわ。あなたが思うようにしなさい。母さんは、あなたと父さんを信じているから……」

 

「ありがとう、母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ア゛ー痛い」

 

 あれからどれくらい寝ていたのだろうか。腕や脚を中心に、至る所で筋肉痛になっていた。やはり限界まで身体を酷使するのがいけなかったのだと身をもって知った。ちくしょう。

 

 

「CCM…CCM……すげぇメール来てんじゃん。主にアミから…………ん?()()()()J()?」

 

 

大半がアミからのメールだから見逃すところだったが、俺の知る限りではマスクドJという知り合いはいなかったハズだ。

 

 

「えっと…『イノベーターから世界を守りたければ、アキハバラの裏通りのアキバ裏店に来い』…って、わざわざあんな治安の悪いところに行かなきゃいけねぇのかよ!?」

 

 

 ご丁寧に集合時間とか指定されてる上に集合場所が治安が悪いアキハバラ裏店ということもあり、怪しさこの上なかった。

 

 

「うわぁぁぁあああぁぁ!!マジで行きたくねぇぇぇえええぇぇえええ!!!」

 

 

 イノベーター関連ということもあり、重い腰を上げて仕方なく出発の準備をする。とりあえず筋肉痛の応急処置として湿布貼った。

 

 仕方なく行こうと決めた俺ではあったが、この出来事がとあるLBXとの運命の出会いだとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。

 

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