気がついたらお気に入り登録が140を超えていました(戦慄)
とても励みになります!期待に沿えるよう、程々に頑張りたいと思ってます。
海道邸の騒動から一夜明け、アルテミス開催まで残り1ヶ月、いつも通りバンたちはキタジマ模型屋へ向かっていた。その道中、アミとカズがブルーキャッツ前で立ち止まった。
「アミ、カズ、どうしたんだ?」
「ブルーキャッツが閉まってんだよ。普段なら開いてる時間によ……」
「シーカーの本部が潰された…って言ってたし、ここも監視する場所の1つなのよ…きっと」
「頭のなかじゃ、ずっと夢でいてほしかったけど、現実だもんな…」
カズはふーっと疲れを吐き出すように吐息をしながら答えた。
これまで何度もイノベーターと戦ってきたバンたちだったが、トキオシアデパートの倉庫の地下にあるシーカー本部はイノベーターによって完膚なきまで潰され、宇崎や檜山の連絡は未だになかった。
「……拓也さん達なら大丈夫、きっと……」
「…うん、そうよね!」
「じゃあ早くキタジマに行こうぜ!郷田も待ってるだろうし!」
■
「久々に来たぞアキハバラ…何年ぶりだよ……」
アキハバラ、それはこだわりの強いオタクが必要とするマニアックなものがすべて揃うといわれ、誰もが認めるオタクの聖地である。観光地においてもトキオシティに匹敵するくらい人気が高い所だ。
「ハァ…筋肉痛で歩くのもキツいぜ……」
何故アキハバラに来ることになったのか、それはとある一件のメールのせいだったからだ。
「えっと、裏通り…裏通り…ここだよな」
アキハバラの裏通りについて簡単に説明するならば、主に個人の手によって改造されたLBXが数多く出回ってるところで有名な場所だと言っておこう。
それに雰囲気のせいもあってか、柄の悪い連中が所々見られた。
そして彷徨うこと数十分、ついにマスクドJと思わしき人物を発見した。
「ハッハッハ!君が黒田ユウくんか?」
「………もしかして、マスクドJってアンタことなのか?」
「如何にも、私こそがマスクドJだ!」
タキシードにマント、シルクハット、目を覆うマスク等の独特なファッションセンスを持つ男は自らマスクドJと名乗った。しかしどこからどう見ても、見覚えのある人物の顔だった。
「……バ「マスクドJだ!!」被せてくんじゃねぇよ!!?」
どうやら正体を言わせるつもりは毛頭ないようだ。何故そんな奇行に走っているのかなど言いたいことがありすぎるが、まず俺はマスクドJの目的を聞かなければならないことがあった。
「それで…あんたの目的はなんなんだ?」
「山野博士がこれをユウくんに渡してほしいとな…」
「…やっぱりアンタバッ……て危なッ!?アタッシュケース投げんな!!?」
マスクドJは余程正体を見破られたくないのか、手に持っていたアタッシュケースを俺を目掛けて投げてきた。咄嗟に回避を成功させた俺は地面に落ちたアタッシュケースを拾った。
《ユーザー認証開始…──ユーザー確認中…──ユーザー確認…──使用が許可されます》
「懐かしいな、AX−00のことを思い出すなぁ……」
機械めいた声が聞こえた後に俺はロックを解除、アタッシュケースを開けた。中には青とオレンジの装甲を包むLBXが描かれている箱だった。そのLBXの名は──────
──────イプシロン」
イプシロンのアーマーフレームのタイプは汎用性に優れたナイトフレームだ。しかしコアスケルトンは入っておらず、アーマフレームのみのパッケージのようだ。
「…こんな高性能なアーマーフレームを俺にくれるのかよ?」
「君はアルテミスに参加するのだろう?今のままではメタナスGXがイノベーターの手に渡ってしまうと危惧した山野博士が君の為に製作したLBXだ」
「……ん?なんで俺がアルテミスに参加することになってんだよ?」
「おや?もしや君、知らないのかい?」
マスクドJが俺にアルテミスの公式サイトを見せる。確かに参加者リストの中に自分の名前がそこにあった。
「………………なんで俺が参加者になってんだ?」
「間違いなく山野博士の手引きだろうね!それに君は過去に何度もアングラビシダス優勝したのだろう、その功績が認められたのだ!」
功績といっても俺が荒れていた頃の話という事もあってあまり良い気分ではなかった。そして過去に何度もアルテミス出場を辞退していたので、本当に出場していいのだろうかと迷った。
「うーん…なんか釈然としねぇな…」
「良いことじゃないか、君はそれだけの実力があったってことだよ」
少しポジティブに考えてみよう、凄腕のLBXプレイヤーたちが集う世界大会アルテミスに出場というわけだからそれだけいい経験が出来るということだ。
それにバンたちと決勝で戦えるかも知れないと考えると、身体の中に炎のようなものが湧き上がってくる。
「ちなみに私や妻もアルテミスに参加するぞ」
「アンタも参加するのか、何か細工でもしたのか………………あー………今なんて?」
今マスクドJの口から聞き捨てならないような爆弾発言を聞いたような気がするのだが、気のせいだと思い再びマスクドJの方へと顔を向けた。
「私の妻もアルテミスに参加するぞ!!」
「気のせいじゃあ無かったんかいィ!!!!!!!」
マスクドJのあまりにも規格外すぎる行動によって、よじれるような胃の痛みを感じた。至急胃薬を持ってきてくれなのである。
「では私はそろそろこの場から立ち去るとしよう!!」
「あっハイ、アリガトウゴザイマシタ」
役目を終えたマスクドJは颯爽とその場から立ち去って行った。それをボーっと見ていた俺は静かにその場を後にする事にした。
先程マスクドJのノリノリの姿や心の準備も無しに爆弾発動を聞かされた後ということもあり、体中から力が抜けたような気持ちになった。
■
家に帰宅とした矢先、蓮さんから呼び出しを食らった。送られたマップを確認すると場所はどこかの工場のようだ。
「ここか……おっ、蓮さん!」
「久しぶりだなユウ、早速だがLBXを出せ」
「おぉう…マジか…」
「お前も参加するのだろう?アルテミスのレベルはアングラビシダス以上だ。世界大会級のプレイヤーを相手に戦えるように、俺が新しい必殺ファンクションを授けてやろう」
どうやら蓮さんは俺に必殺ファンクションを伝授してくれるらしい。クリムゾンスラッシュやグロリアスレイではジャッジの厚い装甲を破る事すらままならなかった為、新しい必殺ファンクションの伝授は有り難い。
「その新しい必殺ファンクションの名は…サウザンドジャベリン」
「サウザンド…ジャベリン……」
「だが使いこなせるかどうかはユウ、お前次第だ」
「……分かった、やってやろうじゃねぇか!!」
「じゃあ始めるぞ」
蓮さんは手に持っていたDキューブを展開させる。今回のDキューブは小高い草原の上から巨大な城が横に流れる河を見下ろす城壁フィールドらしい。
「ちなみに技を完成させるのは構わんが、今から行うのはLBXバトルだ。当然攻撃される、技は戦いながら完成させろ!俺は待つ気はないぞ?」
《バトルスタート!》
蓮さんは市販のLBXであるカブトを投下、俺も対抗してイプシロンをフィールドに放つ
イプシロンはイプシロングレイブで攻撃を開始するもカブトはその攻撃を回避した。そして何度か攻撃をかわすとカブトはイプシロンの背後に回り、カブトハンマーを叩き込んだ。
「中々に頑丈だな、そのLBX」
「そりゃあバンの親父さんが作ったアーマーフレームだからな…ッ!」
「ほう…山野博士のLBXならばもう少し本気を出しても良いというわけか!」
ハンマーを軽々しく扱うカブトに某戦一方となるイプシロン、量産型だと侮っていたがやはり蓮さんはレックスと名乗るだけあってその実力は凄まじかった。
「どうした!?お前の実力はその程度なのか!!」
「……ンなわけねぇだろぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおお!!!!!」
「……ッ!?」
カブトは手にしているカブトハンマーでイプシロンを狙う。しかしイプシロンはイプシロンガーダーで攻撃を地面に受け流して動きを制限させ、イプシロンガーダーを手放す。
そしてカブトの背後に跳躍、イプシロングレイブでカブトを突き刺した。
「くッ…動きが変わったな!だが、それだけでは俺には勝てんぞ!」
「分かってるわ!!」
イプシロンが再び攻撃に出る。その動きは先程よりも動きが鋭く、反撃の隙を与えなかった。
「Cゲージが溜まった今…!超必殺ファンクション!!」
《Attack Function! サウザンド ジャベリン!》
イプシロンはイプシロングレイブを地面に突き刺し、そして──────
■
「流石だ、ユウ。今のタイミングを忘れなければいつでも技が使えるだろう」
「……今すげぇ目が痛い」
どうやら必殺ファンクションを放った瞬間に工場内が光に包まれたらしく、収まった頃にはジオラマ内の全壊したカブトと半壊したイプシロンがいた。
「……そういえば蓮さん…ってアルテミスに参加するんスか?」
「あぁ…伝説のLBXプレイヤーレックスとしてだがな。もちろんただ1人で参加するわけではないが…」
「…ん?それってどういうてん?」
「アルテミスには最大3人までの仲間を連れて挑める、そして俺は郷田と共に出場するつもりだ」
市販のLBXであれだけ強いのだとすれば、蓮さん本来のLBXはそれ以上のスペックになるだろう。
蓮さんはきっとアルテミス優勝に立ち塞がる強大な壁となるだろう。
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海道邸の地下にある研究室。数々の装置に囲まれている灰原ユウヤの周りには白の部隊司令官の加納と3人の研究者、そして海道義光がいた。
「血圧値、正常。心拍数、安定脳波状態、良好」
「メディカルコーディネート、完了。CCMアジャスト、問題なし」
「灰原ユウヤ、実戦可能です」
「これで、プラチナカプセルとメタナスGXは手に入ったのも当然だな」
そう確信したかのように海道義光は不敵な笑みを浮かべた。そんな海道義光を、灰原ユウヤは骨の髄まで凍り付くような、気味の悪い膜のはったどんよりとして生気のない黒い眼で見つめていた。