ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第18話 アルテミス開催

 一ヶ月後、遂に運命の戦い、第3回LBX世界大会アルテミス大会が開幕される。世界各国から強豪たちが日本のトキオシティにあるお台場ビッグスタジアムに集結していくのであった。

 

 

「すっごいスケール!流石アルテミスね!」

 

「世界一を決める舞台にぴったりだな」

 

「きっと世界中から、とびっきり強いLBXプレイヤーたちが集まってるんだろうな!そう考えただけでも、なんかワクワクするな!」

 

 

 そう言ってバンは大興奮していた。そしてカズやアミは今年の大会の開催国が日本であることに少し驚きながらも初めての挑戦に心が躍った。

 

 

「おう!俺たちも気合い入れてかねーとな!」

 

「見て!ジンよ!」

 

 

 バンとカズはアミが指を指した方に振り向くと2階からバンたちを見下ろす海道ジンの姿がいた。

 

 

「海道ジン……」

 

「間違いなく、最強の敵ね」

 

「チッ…相変わらずスカしてやがるぜ」

 

「ジン……俺はお前と戦いたい!そして、勝ってみせる!!」

 

 

 それぞれの思いを胸に、戦士たちの運命の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、登録完了です。ようこそ、アルテミスへ!!」

 

 受付でエントリーを済ませ、俺はアルテミスの会場へと足を運んだ。

 数百人が入れるアルテミス会場のメインディスプレイには画面を分割する形で、出場するLBXプレイヤーのプロフィールの映像や、LBXのコマーシャルなどが流されていた。LBXのコマーシャルを眺めていると、最も会いたくなかった人物に声をかけられた。

 

 

「やぁ、黒田ユウくん。久々と言ったところか!」

 

「あー………マジか」

 

 

 後ろを振り返るとタキシードにマント、シルクハット、目を覆うマスク等の独特なファッションセンスを持つ男、マスクドJがいた。

 

 

「マジであんたがアルテミスに出場するとは全っ然思いもしなかったわ…てか妻と一緒に出場するとか言ってたけど、来てなくねぇか?」

 

「本当なら一緒に来る予定だったが、どうやら少しばかり遅れているらしくてね。もうすぐ来るハズだが……」

 

「ごめーん!遅れた☆」

 

 

 透かさず声が聞こえた方に振り向くと白いコートを着た女性がこちらに向かって来た。マスクドJと同じ目を覆うマスクを着けている様子からマスクドJの関係者という事だけは分かった。

 

 

「紹介しよう、私の妻のマスクドMだ」

 

「ハートを癒して勝利をゲット☆スーパーアイドル、マスクドM参上!よろしくだゾ♪」

 

「………………………………………」

 

 

 これはひどいの一言に尽きる。自分の知り合いがスーパーアイドルと名乗るその姿に、俺は悲しみで涙が流れそうになった。

 

 

「えい☆」

 

「ゴハァ…!!?」

 

 

 引き攣らせた笑みを浮かべているとマスクドMは俺の考えている事に気づいたのか、姿が消えた。かと思えば俺は見えない速度で繰り出されたマスクドMのパンチを食らってしまい、膝から崩れ落ちた。

 

 

「……あっ、いっけな〜い!勝手に手が動いちゃった〜☆」

 

「グェ………」

 

「今のは君が悪いぞユウくん…」

 

 

 人間では繰り出せない速度のパンチを繰り出したマスクドMに俺は恐怖を覚えた。ふと夫であろうマスクドJの方に目を向けたが、すげぇ引いてんじゃねぇか!?

 

 

「そ…そろそろ時間だ!ではまたどこかで会おう!!」

 

「バイバ〜イ♪」

 

 

 マスクドファミリーのせいで会場内が珍妙な空気に包まれたんですけど。

やべぇ…あの機材爆弾の2人組がアルテミスに出場するとかマジで荒れるぞ、バンの健全な胃が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はアルテミスのメインアリーナへ足を運ぶ。

其処には数多くの観客たちが歓声を上げ、それが会場全体に響き渡った。

 

 

「すげぇ…アングラビシダスとは全然違うじゃねぇか……」

 

 

 アングラビシダスとはまた別の熱気に負けそうになったその時、突然会場の照明が一斉に消え、静寂に包まれた。

 

 

《Ladies and gentlemen!会場ににお集まりの皆様、アルテミスにようこそ!!!》

 

 

 爆音と煙と共にオーロラビジョンの前に大会MCが姿を現した。

 

 

《2046年、強化ダンボールの発明により世界の物流は革新的な進歩を遂げた。革命的な未来の箱は輸送手段の常識を覆した。しかしこの箱はやがて全く別の目的で使われることになった。ホビー用小型ロボット…LBXの戦場として!その戦いは、ストリートから世界へと!!》

 

 

 大会MCの演説に、会場は高揚した。

 

 

《集えLBXプレイヤーよ、世界の頂点を目指せ!これより、第3回LBX世界大会アルテミスの開会を宣言する!!》

 

 

 開会宣言を合図に、会場全体の沸き上がりが最高潮に達した。

 

 

《世界中が注目するこの大会、これからどのような戦いが繰り広げられるのか!どのような結末が待っているのか!》

 

 

 MCの前説が終わると同時に一人の受付嬢がゲートから現れ、モニターやスクリーンに一斉に表示される。

 

 

《ただ1つ言えること、この戦いを制した者が世界一の称号と共に、その者のLBXは最高の性能を得ることが出来る!ご覧ください!》

 

 

 すると現れた受付嬢の胸元が4つに別れ、中から何かの機械が飛び出した。どうやら彼女はアンドロイドのようだ。

 さらにモニターよく見るとその中心には物凄く小さなチップが埋め込まれていた。

 

 

《優勝者にはクリスターイングラム社製の最高性能のCPU、メタナスGXが贈られます!!》

 

 

 そのCPU一つでアンドロイドが動くメタナスGX、なんとその価値は数億クレジットはする。通常のLBX搭載CPUの200倍とのことだ。

 

 

《さぁ、このメタナスGXを手に入れるのは誰か!運命のトーナメント表の発表はこれだぁーっ!!!!!》

 

 

 大会MCがモニターを指差すと、其処にはAからEまでの予選ブロックの組み合わせが表示された。

 

 

「…っ!へぇ〜…これは意外な組み合わせだなぁ!」

 

 

 まずAブロックは海道と蓮さんがいるから激戦になることは間違いない。

 一方のBブロックはマスクドJ &マスクドM以外の目立ったLBXプレイヤーはいないからBブロックはすぐに決着がつきそうだ。

 Dブロックにはどうやら()()()()()の弟子がいるみたいだ。個人的には仙道に勝って欲しいが…。

 

 

「……灰原か」

 

 

 Eブロックにいる灰原は間違いなくこの大会のダークホースだ。必ず灰原は決勝戦まで上り詰めるだろう。

 最後にCブロックは北米LBXチャンピオンやアジアチャンピオンという強者揃いのグループだ。そして何より……–––––––––––––

 

 

「まさかお前と戦うことになるとはなぁ…()()……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《これよりAブロックの予選を行いまぁぁぁああああすッ!!!!》

 

 

 MCのアナウンスの後に続々プレイヤーが会場に集まってきた。

 

 

《中でも注目を集めるのは、あの伝説のLBXプレイヤーレックス!!そしてその相棒、地獄の破壊神こと郷田ハンゾウ!!このアルテミスでどのようなバトルを見せてくれるのでしょうか!!!》

 

 

 伝説のLBXプレイヤーの登場によって、会場が大いに盛り上がりを見せる。

 

 

《そしてもう一人注目を集めるのは、たった一人でエントリーしている海道ジン!チームメンバーは3人までのルールの中、これはよほどの自信の表れでしょう!!》

 

 

 各AグループのLBXプレイヤーたちは大会MCの指示通りにそれぞれ指定されたジオラマに着いた。

 

 

《さぁ、プレイヤーが出揃いました!第一試合は各チーム二機まで出すことが出来ます!それでは、Aブロック第一試合…Ready!》

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンペラーM2!」

 

 

 海道ジンはエンペラーM2をフィールドに投下し、相手もアマゾネスとマッドドックを投下する。

フィールドは緩やかな起伏がある草原フィールドだ。

 

 

《バトル スタート》

 

 

 アマゾネスとマッドドックが左右から攻撃を仕掛ける。一方のエンペラーM2は微動だにせず、敵機の接近を待っていた。

 

 

「おいおい!」

 

「楽勝だなぁ!」

 

 

 アマゾネスの薙刀斬鉄、マッドドックの爪がエンペラーに触れる。

 だがその瞬間エンペラーがエンペラーランチャーを振るい、アマゾネスのナギナタとマッドドックの爪を粉砕した。

 

 

「「!?」」

 

「………」

 

 

 エンペラーM2はアマゾネスとマッドドックのヘッドパーツを吹き飛ばし、破壊した。

 

 

《おーっとぉ!早くも試合が終わったようだ!勝者、海道ジン!》

 

 

 驚異的なLBX操作技術に操縦技術や反応速度を使い、僅かな時間で相手のLBXを叩きのめし、海道ジンは二回戦に進出した。

 

 

「いけ、Gレックス!」

 

《おぉ!これが伝説のLBXプレイヤーの機体!!誰もが一目見たかったLBX、Gレックスかぁぁああああ!!!》

 

 

 どうやら蓮さんのところも大いに盛り上がってるみたいだ。

それにあのGレックス、原型はほとんどサラマンダーだが、俺のかつての相棒のサラマンダーMK–Ⅱより性能が格段に上だ。

 

 

「よっしゃあ、派手にいくぜ!」

 

 

 サーチライトが夜空を照らす工場地帯フィールド内で、ハカイオーが敵機に向かって突撃した。

 

 

「作戦通り、いくわよ」

 

「了解」

 

 

 近くにそびえ立つ建物に、ズールとグラディエーターは身を隠した。

 

 

 「へっ、そんな所に隠れたってなぁ!」

 

《Attack Function!我王砲!》

 

 

 ハハカイオーの胸部から絶大な威力を誇る砲撃兵器が建物に向かって放たれた。だが砲撃兵器は建物を破壊したものの、二機まで届くことはなかった。

 

 

「くそッ…ちょこまかちょこまか動きやがって!!」

 

「パワーだけで勝てるほど、アルテミスは甘くないぞ!」

 

 

 ズールが竜火棍槍でハカイオーに攻撃を仕掛けるの、ハカイオーは破岩刃で防ぐ。しかしその背後からグラディエーターがアサルトAR3銃を撃ち込み、ジワジワとダメージを与える。

 

 

「くっ…!!」

 

 

 破岩刃を盾の代わりにし銃弾を防ぐが、ズールはその隙にハカイオーを竜火棍で攻撃した。

 

 

「もう一度!」

 

 

ハカイオーが銃弾を防いでいる隙を狙って、ズールはハカイオーの背中に攻撃を仕掛ける。

 

 

「何度もやられてたまるかよ!!」

 

 

 しかし咄嗟にハカイオーが竜火棍を手で掴み取り、ズールを盾にして銃弾を防いだ。

 

 

「まずいッ!!」

 

 

 グラディエーターが銃撃を止めた、その隙を郷田は逃さない。ハカイオーが盾代わりにし、動きが悪くなったズールを破岩刃で叩き斬った。

 

 

「なぁ…っ!?」

 

《おぉ〜っと!ハカイオー、相手の連携攻撃を遂に撃ち破った!!》

 

「あとは、テメェだけだな!」

 

「…!」

 

 

 グラディエーターがアサルトAR3をハカイオーに向けるが、その前に立ちふさがる一機のLBX。

 

 

《ここでGレックスが動いた!グラディエーターの正面だ!!》

 

 

 グラディエーターがアサルトAR3をGレックスに構え直す。だがその隙をレックスは許さなかった。

 Gレックスはバーンナックルナックルでグラディエーターを上空へ吹き飛ばし、落ちてきたところをバーンナックルで貫いた。

 

 

《決着!!勝者…レックス&郷田チーム!!!これが伝説のプレイヤーの力!二回戦進出!!》

 

「伝説って言われるだけの実力…流石としか言いようがねぇ……」

 

 

 蓮さんたちか海道のどちらかは必ず決勝に進むだろう。そう考えると、じっとしてる場合じゃない。少しでも優勝の確率を上げる為にもLBXのメンテナンスをすることにした。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タイニーオービット社の社長の宇崎悠介は社長室で、秘書の霧野紗枝と共にアルテミスの試合を観ていた。しかし突然そこに宇崎拓也が入ってきた。

 

 

「…タイニーオービット社の製品の試合でも観ていたのか?」

 

「社の存続のためにも観ておく必要があった。しかしロクに出社していないお前が何をしに来た?」

 

 

 宇崎社長の淡々とした発言に拓也は黙ってしまう。拓也はイノベーターと関わってから会社に出社することが少なくなっていたのだ。

 

 

「頼みたいことが…あるんだ……」

 

「海道義光のことか…いい加減にしろ!復讐をして、その先に何があるというんだ!!」

 

「兄さんは…兄さんは親父の仇を討ちたくないのか!?」

 

 

 海道義光によって亡き者にされた父親の仇を取りたい。今の拓也の原動力はそこにあった。

 

 

「復讐心が無いわけではない。だがその果てに親父の様に殺されてもいいのか?」

 

「…ッ!だが、誰かが奴を止めなければ!」

 

「お前の気持ちは分かる。だがお前は知ったはずだ。奴の持つ力を…その大きさを…」

 

 

 宇崎社長は落ち着いた態度でそう言い放つ。

 

 

「親父は勝ち目のない無謀な戦いに自ら挑んだ。そして負けた」

 

「そんな言い方はやめろ!!!」

 

「現実を見ろ。これ以上何ができる?」

 

 

 宇崎社長は深い溜息を吐きながら拓也にそう答えた。

 いくらタイニーオービット社の社長という立場であったとしても相手は海道義光という化け物。下手に動けば会社を危険に晒してしまうことは目に見えていた。

 

 

「兄さんは、あいつが怖いのか?」

 

「分からないのか拓也?俺たちの復讐に、会社を巻き込むわけにはいかない」

 

「……じゃあどうして、俺たちの周りをコソコソしている?」

 

 

 その瞬間、静寂と寒気が拓也の身を包み、時間も空気も凝結したように感じられた。この時、発言を控えれば良かったと拓也は後から後悔する事になるが、もう遅かった。

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