次の日の朝。俺は昨日の山野家LBX襲撃事件があってか、山野家に泊めさせてもらっている。
俺はさっきまで飯を食いながら昨日起こったことについて考えていた。AX-00の事や謎の敵LBX3機の事など考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。
し か し 今 そ ん な こ と は ど う で も い い 。
いつもより笑顔のバンの母さんから放たれるプレッシャーがあまりにも怖い、怖すぎる。食卓にいることにもかかわらず、誰一人として喋らない。つらい。
「…?どうかしたのバン?」
「え!?いや…なんでもない…デス……」
バンの受け答えにも少しぎこちなさが残った。無理もない。つらい。
誰も喋らない状況に痺れを切らした俺はなんとかしてこの場を切り抜けるために一言でも喋ろうとする。するとバンの母さんは優しく微笑み、口を開いた。
「やってもいいわよ。LBX」
「「…え?」」
「知ってたわよ。あなたがこっそりLBXしてたことくらい」
バンの母さんはキタジマ模型屋でバンがLBXをこっそりしてたことを知っていたみたいだ。
バンから聞いた話だとバンの親父さんを飛行機事故で亡くし、バンの母さんはそんな大事な人を奪ったLBXを憎んでいると言っていたが、今の様子を見る限りそんな風には見えなかった。
「昨日はごめん…部屋…あんなにして。でも、本当にLBXしていいの?」
「ただし!やるからには…強くなりなさい!誰にも負けないくらい」
「…っ!うん!!もちろん!!」
「良かったなバン!」
これでバンは今まで出来なかったLBXが出来るできるようになり、これで一件落着─────
「そういえばユウくん、最近あなたインスタントやレトルトばっかりで栄養偏ってるらしいわね、自炊はどうしたのかしら?」
「え゛…!?いや…あの…その……っ」
───── とはいかなかった。
どうやら自炊サボってレトルトとインスタントを食ってたことがバレたようだ。
結局今日の放課後にキタジマ模型屋に行く予定は取り消し、バンの母さんによるお料理教室とやらに行く羽目になった。許せバン、お前と一緒にLBXバトルとはいかなくなった。
■
「良かったなぁバン。今度俺のウォーリアーとバトルしようぜ」
「うん。でさ…郷田のことなんだけどさ……」
「ちょっと待て、なんで急に郷田とやらの話になるんだ?」
「あっ…そういえばユウは昨日いなかったもんな。母さんとなにs「たのむ、その件は聞くな」なんか…ごめん」
昨日の放課後に俺はバンの母さん、いやお師匠から色んなことを学んだ。洗濯、料理、食器洗い、買い出し、部屋の掃除、あらゆるノウハウを叩き込まれた。最初は料理教室のハズだったんだがなんでだろうな。
そして後に頑張った礼としてお師匠のカレーをお裾分けしてもらった。
ちなみにカレーは家に帰って食ったが、まだまだ大量にある為しばらく飯には困らない。
「ねぇバン…ユウは大丈夫なの?」
「う…う〜ん…多分大丈夫…なんじゃないかなぁ?」
「とりあえずユウは置いておいて、郷田ハンゾウかぁ…」
カズの話によると、ミソラ二中の不良グループ四天王の番長を張る中学3年生。相手のLBXを容赦なく破壊する戦闘スタイルから”地獄の破壊神“とも呼ばれ、恐れられている。どうやら天王の番長とそのグループによってアキレスを奪われたようだ。
そして仙道の情報によればミソラ一中とミソラ二中とは常に対立してるとかなんとか。ミソラ一中の番長だもんな仙道。
「とにかく、とんでもねぇヤツさ…」
「カズ。一緒に探してくれないかな?」
「相手が悪すぎる。諦めろ…バン」
「カズ!」
そう言ってカズのは教室から立ち去ってしまった。きっとそれだけヤバい相手なのだろう。カズを止める理由がない俺たちは仕方なく郷田ハンゾウの居場所を地道に探すことにした。
「とにかく!郷田を探すわよ!」
「うん!」
「アミちゃん!LBXバトルやろうぜぇ〜!!」
「ハァ…リュウ、今忙しいんだけど」
急に現れたソイツの名は大口寺リュウ。ミソラニ中に通うのバンの同級生である。
LBXの腕はイマイチだが、重機マニアで、パンツァーフレームの機体に愛着を持っているらしい。アミのことが好きだが、軽くあしらわれている。
「あっ…リュウ!手伝ってくれよ!」
「んぁ?」
「番長を探すの」
こうしてパーティメンバーに、大口寺リュウが新たに加わった。はっきり言って強いかどうかと言われたら、否だと思う。
■
「疲れた…。なんで誰も知らないの…?」
「今日は学校…来てねぇんじゃねぇのぉ?」
「それにしても皆…本当に関わりたくないって感じだったわね……」
「まぁ地獄の破壊神だもんな。大切なLBXを破壊されたくないんだろうよ」
誰でもいいから郷田知ってるヤツが来てくれればいいのにと都合のいいことを考えたら、こっちに近づいて来るとある人物と目があった。バンの同級生の三影ミカだ。
「三影…?」
「私、知ってるよ、郷田さん、何処にいるのか知ってる」
「マジで!?ちなみに何処だ!?」
「スラム、あそこ、溜まり場」
ミカが向いている方角の方に向くと、体育館裏を見つめていた。どうやら郷田らは体育館裏のスラムとやらを根城にしてるらしい。
「というか…なんで知ってんだ三影?」
すると三影は無言で、俺らにCCMを見せてきた。画面を覗くと郷田らしき影が背を向けているホーム画面だった、所々にハートがある。
どうやらミカは地獄の破壊神である郷田ハンゾウの大ファンのようだ。
「郷田さん、背中で語る男」
「へぇ…ってイダダダダダダダッ!?アミ!?足!!踏んでる踏んでる!!?アミさん!?俺なんかしましたっけ!!?」
「………………べつにぃ〜?」
「と…とにかくありがとう!ミカ!」
ミカに郷田ハンゾウの居場所を教えてもらい、すぐに体育館裏のスラムに向かった。しかしいざ向かってみると体育館裏のスラム明らかに日本とは思えない、海外でよく見るような雰囲気の路地裏だった。
「なんか…出そうだな……」
「アミちゃん…俺がついてる…。怖かったら、俺にしがみついてくれてもいいんだぜ……?」
「べつに全っ然怖くないけど?」
またアミにあしらわれるリュウ、哀れである。
さらに路地裏の奥に向かうと、のっぺりした大男1人と少女1人の2人組がいた。ミカの情報が正しければ、アイツらはミソラ二中の不良グループだと推測する。
「ここはあんた達みたいな優等生ちゃん達が来る所じゃないんだよねぇ〜」
「大人しく教室に帰って予習してるでゴワス」
しばらく裏路地を歩いていると突如身長差の激しい2人組が現れ、来た道を塞がれてしまった。
「ここが何処だかわかってんのぉ〜?」
「あぁ。だから来たんだ!郷田ハンゾウを探しに!!」
「郷田ってヤツ!泥棒なのよ!」
「ヒッヒッヒ……リコ、テツオ、コイツらだぜ。郷田君を嗅ぎまわってるってヤツは」
「ふんっ…コイツらかぁ」
立ち上がったリコと呼ばれた少女とテツオと呼ばれた巨漢の男、そして肌色が悪い猫背の男ギンジが立ち塞がる。
「お前たち…郷田の仲間だな!!」
「ふっ…ちょっと違うかなぁ」
「郷田君は同士でゴワス」
「んじゃ!この辺で自己紹介と行っちゃう?」
「行くでゴワス!」
「えぇ…やんのかよアレ」
四天王の3人はそれぞれLBX、クイーン、マッドドック、ナズーの3機を取り出す。そしてそれぞれポーズを決め始めた。
「クイーンのリコ!」
「ナズーのテツオ!」
「マッドドッグの…ギンジ!」
「四天王!郷田三人衆!!」
「「見参!!」」
郷田三人衆がポーズを決めた途端、当然だがその周辺は気まずい空気に包まれた。もちろん気まずい空気を郷田三人衆、特にギンジが感じ取り、仲間のリンとテツオに向かって声を荒げる。
「……なぁやっぱ引いてんじゃねぇか!?だからヤダだったんだよその自己紹介とやらァ!!?」
「えっと…………こ…ここに入ったやつがどうなるか、思い知らせてやるわ!Dキューブと、展開!」
「……ゴワス!」
場の空気に耐えられなかったリカがDキューブを投げる。すると小さかったキューブが70cm×70cmのフィールドへと変化した。
Dキューブの戦場を見据える。どうやらステージは濁った河を挟んで熱帯雨林が広がるジャングルのようだ。
「行け!クイーン!!」
「ナズー!投下でゴワス!!」
「マッドドック!!…っヒッヒッヒ」
郷田三人衆のLBX3機をDキューブに投下するのを確認した俺たちはそれぞれのLBX、クノイチ、ブルド、サラマンダーMK–II、AX-00をを構え、フィールドに投下した。
「リュウ!行くわよ!!クノイチ、出陣!!」
「ブルド!!」
「行くぞ、サラマンダーMK– ll!」
「いっけぇぇえええ!!!」
それぞれのLBXたちがDキューブに降り立つと同時に、戦闘が始まる。
《 バトル スタート 》
まず攻撃に仕掛けてきたのはバンだ。AX-00お得意の機動力で、クイーンに先制攻撃を仕掛ける。しかしその攻撃を読んでいたクイーンは身軽に回避、AX–00に向かって銃を放つ。
通常のLBXならば大したダメージにはならないが、AX–00は保存用装甲のカバーパットのまま。そのため、通常のLBXよりも受けるダメージは大きい。
「やっぱり…アーマフレームが無い分、ダメージが大きい…ッ」
「バン!今の状態で攻撃を受けたら、すぐにブレイクオーバーで負けちゃうわよ!?」
「だから言ったろ?ハッタリのカバーパット野郎!!」
すると水中に身を潜めいていたナズーはすかさずクノイチに向かって一斉射撃を行う。水陸両用LBXは伊達じゃないのはこのことだ。
「リュウ!アミのフォローを頼む!!」
「ちょっと待て!?ついてけねぇよ…!!?」
「3倍の追尾機能はどうなってるのよ!?」
「ホバーは想定してなかったんだ…っ!?」
クイーンとナズーは最初の獲物としてブルドに狙いを定める。AX-00とクノイチはブルドの援護に向かおうとするも、クイーンの小型ミサイルによって妨害されてしまう。
妨害に成功したクイーンとナズーは銃弾をブルドに向け、一斉に放った。集中砲火を受けたブルドは防御できぬまま爆発、機体はロストとなった。
「いっちょあがり!」
「っでゴワス!」
「なんて上手い連携だ…ッ!」
「伊達に四天王って呼ばれてる訳じゃなさそうね」
その直後、リュウはボロボロと化したブルドを手に取り、逃げるようにして立ち去った。
自身の愛機があんな無残な姿にもなれば逃げたくもなるだろう。そんなことを思っているとなにやら向こうで進展があったみたいだ。
「な…なんで?」
「なにしてんのよ!!」
「へっ…またテツオがドジったかぁ」
どうやらバンがCCMを使って敵の動きを予測し、鋼鉄棍をぶん投げ、ナズーを貫いたというところだろう。
「仕方ねぇなァ、久しぶりに俺もやるかさせるかぁ!!」
「させると思ってんのか?そんなこと」
すかさず薙刀斬鉄でマッドドックを突き刺そうとするもの、一瞬でマッドドックの姿が消えた。どうやらマッドドックは周囲に同化する光学迷彩っていう機能が備わっているようだ
「ユウ!後ろ!!」
「んなことは分かってんだよ」
「なにぃ!?」
しかしいくら光学迷彩だろうと俺の前では無意味。マッドドックみたいなLBXの行動パターンは大体読める。
俺は薙刀斬鉄でマッドドックを仕留めようとすると、突然マッドドックが青白く光りそれが散った。マッドドックのブレイクオーバーに困惑するも、背後に見覚えのあるLBXが立っていた。
「…ってオイ!?なんでカズのウォーリアーが後ろにるんだよ!?」
「お前らが心配で来たんだよ」
「「カズ!」」
カズに美味しい所持ってかれたことで郷田三人衆の中で厄介なマッドドックはブレイクオーバー、残りはクイーン1機のみ。
4対1は卑怯?このフィールドで儚く散ったブルドの仇だ、仕方ない。
「くっ…圧倒的不利!引き上げるよ!!」
「ちょっと!郷田の場所を教えなさいよ!」
「やーだねー!」
逃げだした郷田三人衆にアミは憤慨したが、その間にも郷田三人衆はスラムの奥の方へと走り去っていった。
「おいバン、AX–00にこれ使え。少なくとも今の状態で戦ったら完っ全に負けるぞ」
「え?いいのユウ!?助かったよありがとう!!」
「ホレ、アミもこれ使え。お前もさっきの銃弾でダメージ受けただろ」
「え…?その……ありがとう……」
俺はバンとアミにリペアキットLを渡す。このリペアキッドLはLBX一機だけLPを80%回復するので、これでAX–00とクノイチは万全な状態で戦うことができるのだ。
「とりあえずカズ、前の時よりも上達してねぇかLBX?」
「おう!少しでもお前追いつきたくてな!!」
□
スラムの奥に進めば、何やら大きな扉がある。その中に入ると他とは違う大広間に出た。
そしてその奥でこちらに背を向けている男がいた。素肌に長ラン、下駄といかにも番長という出で立ちをしており、木刀を手にしている。
「お前が郷田だな?」
「そうだ…」
その男の名は郷田ハンゾウ。ミソラ二中の不良グループ・四天王で番長、地獄の破壊神と恐れられていた。