強化段ボールがイプシロンとクノイチ弐式の必殺ファンクションのぶつかり合いで大きく揺れる。
突風を巻き起こしたクノイチ弐式は薙刀・真斬鉄をイプシロンの頭部に叩き込もうとするが、咄嗟にイプシロンは捉え、クノイチ弐式の真横に超高速で回り込んで迎撃したのだ。
「君、あたしのクノイチ弐式のスピードについて来れるんだね」
「ストライダーフレームのLBXのスピードは身をもって知ってるんだよ、特にッ!ジョーカーとかなッ!!」
イプシロンはクノイチ弐式の拳を掴むと、逃すまいと固定、蹴りを後頭部目掛け放つ。
「…ねぇ?それって、あたしのクノイチ弐式がジョーカーより遅いって言いたいの?」
「……ッ!?」
うっすら額に青筋を浮かべた塔子のCCMの操作スピードが増す。
蹴りの返礼をクノイチ弐式はイプシロンのボディに見舞うと、音を超えた速さで遥か後方に吹き飛ばした。
「ぐっ…オラァアッッ!!!」
イプシロンは即座にイプシロングレイブを地面に突き刺し、ようやくスピードが衰えて止まるのだった。
「ハァァ!!」
体勢を立て直したイプシロンはカタラクトブラストを回収し、飛ばされた方向、クノイチ弐式がいるであろう所へエネルギー弾を放つ。
「どこに向かって撃ってるのかな?」
しかしクノイチ弐式はエネルギー弾の速さを超えるスピードでイプシロンの背後に回り、薙刀・真斬鉄で突き刺そうとする。
「んなもん、自分で考えやがれッ!!」
イプシロンは一瞬で半壊したイプシロンガーダーを展開、クノイチ弐式の攻撃を完全に受け止める。
「オラァ!!!」
「しまった…ッ!」
突如としてクノイチ弐式の真横からカタラクトブラストのエネルギー弾が襲いかかり、大爆発する。
そしてイプシロンは巻き起こった爆炎に自ら突撃し、炎を切り裂いてクノイチ弐式のボティへ渾身の蹴りを叩き込んだ。
「ようやく一撃を叩き込めたかッ!!」
「(あたしの隙を狙ってエネルギー弾を…!まったく、やるじゃないか!)」
今にもボディを破壊されかねない状況にありながらも、クノイチ弐式は薙刀・真斬鉄を振るう。けれども財前塔子は、クノイチ弐式の動きが鈍いことに気付いた。
「(しまった、さっきのダメージかッ!)」
これ以上イプシロンとまともに戦えばこちらが危ないと、塔子の勘が告げていた。
クノイチ弐式はLPを60%回復するリペアキットMを使って回復しようとして……────
「させねぇよッ!!!」
「なっ────!?」
ボディが爆発したかのような衝撃によって、クノイチ弐式は吹き飛ぶ。イプシロンはわずかな体の弛みを利用して密着した状態からのゼロ距離打撃、拳を唸りを上げてクノイチ弐式を吹き飛ばしたのだ。
「やるね!LBXバトルはそうじゃなきゃねッ!!」
「(うぉ––––––––ッ!?)」
クノイチ弐式は衝撃を受け止めながら、恐ろしい加速を以ってしてイプシロンに接近、その突き出した薙刀・真斬鉄がイプシロンの右腕に直撃する。
「イプシロン…ッ!」
辛うじてイプシロンは受けの姿勢に入っていたが、衝撃は殺しきれず右腕の駆動部にヒビが入る。
「中々しぶといね、君!」
「負けるわけにはいかないんだよなぁ…ッ!」
クノイチ弐式が両腕を広げて拳を握る。その瞬間、素早いターンでの回し蹴りがイプシロンを襲った。
辛うじて動作から攻撃を予測したユウだったが、それでも完全に受け流すことは出来なかった。
「あたしだって、ここで負けるわけにはいかないんだ!この大会、優勝するんだッ!!」
高らかにそう宣言する塔子。そして右ストレートがイプシロンののヘッドパーツに目掛けて、打ち込まれる。
「だから、負けてたまるかぁああアぁあァアあああッッ!!!!」
凄まじい衝撃、爆音、余りの衝撃に、クノイチ弐式の足元が陥没する。
そのまま押し切らんとイプシロンに叩きつけたクノイチ弐式の拳はこれ以上ない覚悟を以つ。
その威力は、LBXの限界を超えた一撃だった。
━━━━━必殺ファンクション。
《Attack Function!クリムゾンスラッシュ!》
イプシロンの背に炎が渦を巻き、それは巨大な翼を象る。今までに無い程の熱が周囲に伝搬し、空気が燃えた。
「なに、これ…?」
塔子の肺が熱に満たされ、全身から汗が噴き出る。まるで世界そのものを焼き尽くす様に、大地も、空も、業火に呑まれる。
「ハァ……!分かりやすいフラグを立てやがって…!」
イプシロングレイブに炎が集う、業火はうねり、イプシロンを包み込んだ。
熱によって視界が歪み、もう真っ直ぐ見る事さえ許されない。まともに喰らえば灰すら残らない地獄の炎熱。
「負けるわけにはいかないか…?そりゃ俺だって同じだ」
炎が収縮を始める。イプシロンは歪んだ視界でクノイチ弐式を捉え、紅蓮の炎を纏ったイプシロングレイブを向ける。
財前塔子は息を呑んだ、イプシロンから暴力的なまでの威圧感を感じた。それと同時にその暴力を象った姿が綺麗と思ってしまった。
「イプシロォンッ!!!」
黒田ユウが叫んだ。
イプシロンは大地を焼き尽くす紅蓮の炎をクノイチ弐式を目掛けて放つ。迫りくる紅蓮の炎に塔子はこれまで感じていた危機感が、一段と強く感じた。
「…っ、ァァあああアアああああァアッッ!!!」
最速で放たれた紅蓮の炎を正面から受け止めるクノイチ弐式だったが、次の瞬間には腕の装甲がドロリと溶け堕ちた。
指先から黒く変色し、ボロボロと崩れ落ちるクノイチ弐式の腕を目視する。
恐ろしく、凄まじい光景だ。しかし財前塔子は恐れなかった。
「必殺ファンクションッッ!!」
《Attack Function!シャークブラスト!》
足裏が石畳を踏み砕き、薙刀・真斬鉄を構える。腰の回転、単純な腕力、可動範囲を限界まで活かし、渾身の一撃を放つ。
「諦めて、たまるかァアあああアああッ!!!」
余りの衝撃や爆音に、フィールドの彼方此方で陥没が発生する。露わになったクノイチ弐式のコアスケルトンにイプシロンの炎が纏わりつく、炎に呑まれ、塵となるのも時間の問題だ。
「────ッ!!」
けれど、塔子は負けたくないと鼓舞し、更に一歩踏み込んでクノイチ弐式は薙刀・真斬鉄を押し込む。
互いの必殺ファンクションが交わり、同時に業火が晴れた。
「「……………………」」
地獄と化した世界が静寂を取り戻し、2機を囲んでいた炎の壁が消え去ったのだ。
そして激戦の末、地面に伏したのは……–––––––––––
《クノイチ弐式、ブレイクオーバー!!勝者、黒田ユウ!二回戦進出ッ!!》
■
「はァ、はぁ、ハッ、ハハ…勝ったのか……」
相当疲れが溜まっていたのか、俺はその場で膝を着いた。とりあえず鉛のように重たい体を起こす。
「負けたよ。凄いんだね、君!」
「えっと…ありがとうございます、財前さん」
「財前さんは堅いって!塔子って呼んでよ!」
湧き上がる歓声。
正直最後は何が起きたか分からなかったが、財前、いや塔子さんに勝ったのだということだけ理解できた。
「それと戦い方エグいな、あたしのクノイチ弐式の装甲の一部溶けちゃったし…」
「す…スミマセン…」
「いや、全然良いんだ!こんな白熱したLBXバトルをやれて、あたしは楽しかったぜ!!」
本当、クノイチ弐式の装甲を一部溶かしてすみませんでした。まさかあそこまで火力が出るとは思ってもみなかったんですッ!!
「あたし、君のことが好きになっちゃった!それじゃあ、優勝目指して頑張ってね!!」
「え?ちょ、待っt––––––––––」
言い切る前に塔子さんは飛び降り、止まることなくステージから去っていった。
塔子さんの随分快活さと突然告げられた一言に固まってしまった。
「まぁ…とにかく一回戦は突破したし、次は二回戦だな……」
初戦突破の余韻に浸っていた俺だったが、後に波乱の展開が待っていたとは想像もしていなかった。つまるところ秘密結社イノベーターを見縊っていた。
■
《お待たせしました!これより、予選Cブロック二回戦を行いまぁぁぁぁあああす!!》
大会MCが予選Cブロック二回戦の開始を宣言した。そして、次の対戦相手は……。
「シクヨロで〜す!!」
「yeah yeah yeah!よろたのです〜!!」
どうやらお笑い芸人らしい。テレビではパリピ系漫才師の肩書きで漫才しているようで、あまりの破天荒ぶりに俺は呆然した。
「ボケ担当、かねやんと!」
「ツッコミ担当、りんたーで…」
「「OUTLET!シクヨロです!!」」
「……どうもです」
二人ともにパリピ口調のチャラ男、どうやらこれが新時代系ネオお笑い芸人のようだ。
《プレイヤーが出揃いました!それでは、Cブロック第二回戦…Ready!》
「ロビンH、いっきま〜っす!!」
「パーシヴァルF、よろたの!!」
ロビンHにパーシヴァルF、どちらもアーマー&クラウン社製のLBXのようだ。つまりこの2人はお笑い芸人でもあり、アーマー&クラウン社のテストプレイヤーでもあるみたいだ。
「イプシロンッ!」
ビルが並び、海に面した港湾都市のジオラマ、現代都市フィールドにイプシロンは降り立った。
《 バトル スタート 》
「ちょうどイプシロンをぶっ倒したいと思ってる今日ッ!この頃ッ!!」
「うぉッ!?危ねぇ!?」
ボディにパーシヴァルFが手にしているグラディウスG剣が迫って来るが、イプシロンはそれを強引にイプシロングレイブを割り込ませることで何とか防いだ。
「もう1人…もう1人どこいったッf?」
そう口にした途端、ビュン!と風を切る音がした。俺は音を瞬時に把握、その場から飛び退いた。その瞬間、ビルの壁に埋め込まれる弾丸。
「ちょいと食らって貰いますねぇ~」
二丁のアサルトAR4Cを持つ緑色のLBXがイプシロンを狙っていた。かねやんの操るロビンHだった。
「盛り上がっていこうぜ!!」
「ぶっかましちゃって!!」
身構えていたイプシロンは、パーシヴァルFのその速度を警戒しつつ、防御に回る。
咄嗟にイプシロンは振り下ろされた一撃を弾いたのだったが、姿勢を崩した状態からの蹴りを食らってしまった。
「…っ、嘘だろ!?」
「バイブスいと上がりけりぃぃぃいいいいッ!!!」
さらに後方からロビンHが繰り出した数発の弾丸を、ボディを傾けて回避し、そのまま受け身を取って起き上がった。
お笑い芸人なだけあって息の合った連携プレイ、思った以上に強い。
「予想をはるかにヒュイゴーしてんだけど」
「さすがやばたにえんじゃん」
「(……もはや何言ってるのか分かんねぇ)」
烈火の如く攻め立てるパーシヴァルF。その脅威的な攻撃は当たればヤバいのは確実だが、イプシロンは背後に大きく跳んで距離を取った。
「(てかこのままだと俺が不利になるだけだ。だったら、やるしかない……ッ!!)」
俺は僅かに汗を流した。蓮さんに伝授してもらった
「(けど考える余裕なんて、今の俺にはない。ここで、決めるッ!!)」
イプシロンは片方をロビンHとパーシヴァルFに向け、もう片方のイプシロングレイブを真横に向ける独特の構え方をする。
「必殺、ファンクションッッ!!!」
《Attack Function! サウザンド ジャベリン!》
空間が歪み、そこから何十、何百、何千もの光の槍が現れる。
そして……––––––––––––––
「耐えれるもんなら、耐えてみやがれ…!」
––––––––––––––その光の槍は、放たれた。