ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第22話 アーマー&クラウン社の刺客

 白銀の軌跡が迫り来る。それは何処か神秘的な光景でもあった。しかし軌跡は夜空に輝く流星群ではなく、パーシヴァルFに向けられた数千もの光の槍であった。

 

 

「耐えれるもんなら、耐えてみやがれ…!」

 

 

 雨のように降り注ぐ光の槍は轟音を轟かせ、進行方向上の建物を粉々に突き進み、港湾都市をも飲み込んでゆく。

 

 

「りんたー!さすがに防御しナイトプール!!」

 

「やべぇ…こんなのバイブス上がるに決まってんじゃん、必殺ファンクションッ!!」

 

 

《Attack Function!パワースラッシュ!》

 

 

 パーシヴァルFが手にしているグラディウスGのその刀身が黄金に輝く。

 

 

「パワー……–––––––––––––スラッシュッ!!」

 

 りんたはその必殺ファンクションの名を高らかに上げ、大きな横斬りで衝撃波を放った。

 互い必殺ファンクションのぶつかり合いはその余波だけでビルの壁にヒビが入り、砂塵が舞い上がる。しかし次の瞬間、一本の光の槍がパーシヴァルFのボディを貫いた。

 

 

「…ッ!?パーシヴァルFッ!!」

 

 

 閃光となって放たれる光の槍、あまりの物量にパーシヴァルFは為す術なく全身に突き刺さる。

 

 

「まだだッ!!諦めてたまるかっての!!」

 

 

 パーシヴァルFは地面を強く蹴り、 LBXの限界ギリギリの速度で戦場へと駆け出した。

 

 

「流石アーマー&クラウン社のLBX、やけに頑丈に作られてるじゃねぇか…ッ!」

 

 

 イプシロンは接近してくるパーシヴァルFを捉え、光の槍を射出する。その狙いはヘッド、頭を突き破ってやると言わんばかりの勢い、イプシロンをはパーシヴァルF潰す気で放った。

 

 

「サウザント、ジャベリンッ!!」

 

 放たれた千もの光の槍は、まるで夜空から降り注ぐ月や星をを輝かせる白銀の光のようだった。

 

 

「マジやばスギ薬局ッ!けど最&高DJ KOO!!」

 

 眼前に迫る光の槍を見据えるりんたは、Cブロック一回戦を突破した強者である。パーシヴァルFが迫って来る光の槍を躱し、更に後方から迫った光の槍を薙ぎ払って追撃した。

 舞い上がった数百本の光の槍は立ち塞がっていたビルに突き刺さり、一瞬にしてビルがガラクタへと化した。

 

 

「早くくたばってくれね?」

 

「それはムーリー春雨ッ!」

 

 

 パーシヴァルFが一歩踏み込んだ。二本の光の槍がイプシロンの足下に突き立ち、パーシヴァルFが跳ね上がる。

 

 

「pon pon pon!」

 

 

 金属音が激しく、連続で高鳴っていく。雨のように降り注ぐ光の槍をパーシヴァルFは叩き落とす。

  パーシヴァルFは逸らしたイプシロングレイブに沿って、イプシロンの懐に入り込む。伸びきった腕、がら空きのボディ、そこで斬って下さいとばかりに。

 

 

「必殺ファンクションッ!!」

 

《Attack Function!ギロチンカッター!》

 

 

 凄まじい衝撃が空気を震えさせ、地面を揺らした。

そしてパーシヴァルFは紫の軌道を描いきなが

ら、大回でグラディウスGを振り下ろした。

 

 

「…ッ!そう簡単にやられる俺じゃねぇんだよッ!!」

 

 

 しかし、パーシヴァルFの必殺ファンクションがイプシロンに当たることはなかった。

 光の槍が盾になるかのように降り注ぎ、パーシヴァルFの必殺ファンクションを防いだからだ。

 

 

「必殺、ファンクションッ!!」

 

《Attack Function!ライトスピアー!》

 

 

 イプシロングレイブが光に包まれる。それと同時にイプシロンは地面を踏み抜き、瓦礫と化していたビルの壁を足場として利用する。

 

 

「クッ…!」

 

 

 迫り来るイプシロンを直感で察知したパーシヴァルFは必殺ファンクションから逃げるように距離をとるも、蓄積したダメージによって動きが鈍る。

 黒田ユウはその隙を見逃さなかった。大きく後退するパーシヴァルFに、必殺ファンクションを叩き込む。

 

 

《パーシヴァルF、ブレイクオーバー!!》

 

 

 激しい衝撃だった、爆裂音が響き渡り、パーシヴァルFのコアパーツを貫いた。ドサリとパーシヴァルFは力なく倒れ伏し、それと同時に役目を果たした光の槍が白銀の粒子となって消えた。

 

 

「パーシヴァルFは潰したッ!残るはロビンH!」

 

 

イプシロンは辺りを見回すも、瓦礫と化したビルのみでロビンHの姿はなかった。

 

 

「ロビンHの姿が一切見当たらねぇ、一体どこに……?」

 

「ここにいる的なテキーラぁ?」

 

 

 瞬間、イプシロンのボディに衝撃が走り、大きく後方に吹き飛んだ。数メートル程吹き飛ばされたイプシロンは、そのまま砂利の上を転がった。

 しかしイプシロンは咄嗟にイプシロングレイブを地面に突き刺すことで、ようやくスピードが衰えた。

 だが追い討ちをかけるが如く、ロビンHは拾い上げたグラディウスGを固く握り締め、イプシロンに目掛けて力強く振りかざした。

 轟音を響かせると同時に、回避が遅れたイプシロンは致命的な隙を晒してしまう。

 

 

「必殺ファンクション!!」

 

《Attack Function!明鏡止水!》

 

 

 グラディウスGを構えたロビンHは空気を貫くかのような速さで接近、連続して斬撃を繰り出した。踏み込みと同時に斬撃を打ち落としていたイプシロンだったが、それでも全てを打ち落とす事は不可能だった。

 ロビンHの放つ不規則の斬撃、それによってイプシロンの腕を斬り飛ばされた。

 

 

「(油断した!パーシヴァルFじゃない、最も警戒しなきゃいけなかったのはロビンHだったッ!!)」

 

 

 ロビンHがは微かな残像が写るほどの速度で地面を蹴り上げ、疾走していた。そしてグラディウスG迫り、それからガードするようにイプシロングレイブがそれを斬り上げた。

 

 

「かねやん!ぶっかまぁぶちかませ!!」

 

「了解道中膝栗毛分かったッ!!」

 

 

 ロビンHの拳が眼前に迫った。守るように飛び出たイプシロンだったが、イプシロングレイブが折れる音がする。

 直後、イプシロンの身体が吹き飛び、崩れたビルへと打ち付けられた。

 

 

「(ヤバイ…てか、ヤバイで済ませて良いようなヤバさじゃねぇ!)」

 

 

 折れたイプシロングレイブを投げつけ、懐からオートマチックガン取り出し、銃口をロビンHに向けて啖呵を切った。

 

 

「(くそ…ッ!クッソッ!!)」

 

 

 ドクンドクン、とユウは心臓が脈打つ音が聞こえ、同時に、両目が熱く感じる。

 瞬間、世界がスローモーションと化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーバーロードは一定時間、脳が極限まで活性化した状態になり、周囲の物体の動きがすべてスローモーションに見える代物だ。

 だがその代償として使用後の疲労は激しく、倒れることがあった為アルテミス使うつもりは無かった。 

 けれども微かな残像が写るほどの高速で動くロビンHに対抗する方法はただ一つ、超集中力による火事場のクソ力、オーバーロードを使うことだ。

 

 

「行くぞ、イプシロンッ!」

 

 

 そこからの行動は迅速であった。

 オートマチックガンを強く握りしめ、ロビンHとの間合いが五歩に入った瞬間、イプシロンは足を振り上げる。

 そしてロビンHのヘッドに目掛けてオートマジックガンの引き鉄を引く。

 

 

「満身創痍じゃん、君のLBXの片腕だってないし…」

 

「どうした?ごちゃごちゃ言ってねぇで来いよ、かかって来いよ!」

 

「嘘っ、まだ、動くのか……!」

 

 

 イプシロンは僅かばかり左に傾け、凄まじく鋭い一閃を放った。瞬間、閃光の様に放たれた斬撃は、グラディウスGを構えるロビンHの腕を斬り裂く。

  それらの出来事が、僅か1秒という時間で起こる。一時的に脳を極限まで活性化させるオーバーロードだからこそ出来る芸当だ。

 

 

「あまりイプシロン俺を舐めるな!!」

 

 

 ロビンHをゼロ距離から狙いを定め、遠慮なく引き金を引き、銃口から弾丸が溢れ出す。ゼロ距離から弾丸が炸裂したのだから、銃の威力も相まってロビンHの脚があらぬ方向へと吹き飛ばした。

 

 

「こんなハズじゃあ––––––––––––––––!?」

 

「ホラ、しっかり味わえよッ!」

 

 

 オートマチックガンを投げ捨て、地面に突き刺さっていた折れたイプシロングレイブを流れるように拾い上げる。

 剣と槍がぶつかり合う。その衝撃によって巻き上がる風は凄まじかった。

 ロビンHの剣の軌道は余りにも多岐、イプシロンの動きが止まった瞬間、ロビンHは鋭い一閃を放つ。

 

 

「(…ヤバイ、これ以上無事じゃあ済まないな…ッ!)」

 

 

 イプシロンの反射速度はロビンHを大きく上回る、ロビンHがグラディウスGを振り下ろすと同時にイプシロンは行動を開始。その上半身が急激に回転し、振り下ろしたままの腕がロビンHを薙ぎ払った

 

 

「(さっさと決着、これしかないッ!!)」

 

《Attack Function!クリムゾンスラッシュ!》

 

 

 突き立てたイプシロングレイブを中心に、燃え盛る炎が渦を巻く。ビルを焼き、瓦礫を燃やし、全てを焼く尽くす。

 

 

「終わりだ…ッ!」

 

 

 真紅の炎を纏う槍、かつてクノイチ弐式を焼き尽くしたイプシロンの必殺ファンクション。

 炎の軌跡を描きながら横一閃で正面の敵を焼き尽くすソレは、流れる様な動作でロビンHの首を斬り飛ばした。

 ぐらり、と斬り飛ばしたロビンHの首が重々しい音で地面に転がる。そして首を刈り取られたロビンHは動くことはなく、機能を停止した。

 

 

《け…決着ッ!!勝者、黒田ユウ!優勝候補である兼山&仲嶋チームを見事打ち破り、準決勝進出ッ!!!》

 

 

 アルテミスCブロック二回戦の熾烈な争いの結果、俺の勝利で終わった。だがここで問題点が2つ顕在化する。

 一つ目は半壊したイプシロンだ。ロビンHによって右腕は切り飛ばされ、武器であるイプシロングレイブが使い物にならなくなった。

 そして二つ目は次の対戦相手だ。それは前年にアジアチャンピオンとなったチームで、ウォーリアーを使わせたら右に出るものはいないと言われている厄介な相手だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫そうか、ユウ?」

 

「これが大丈夫に見えるんっスか?」

 

「…いや、そうでもなかったな」

 

 

 二回戦が終わり、待機室でイプシロンの調整をしていると蓮さんがやって来た。どうやらイプシロンが半壊したことを知って来たと本人がそう言ってるらしいが、茶化しに来たんじゃないのかと心の中で思った。

 

 

「それでどうだ、イプシロンは…?」

 

「駄目っスね。急ピッチで修理しようにも、準決勝に間に合わない」

 

 

 アルテミスもアングラビシダスと同様LBXを変えるというルールは無く、このままだとイプシロンは右腕がない状態でバトルをしなければならなくなる。

 それはマズい。相手は二回戦で戦ったお笑いコンビ以上の実力だ。下手に戦えば負けるのは目に見えていた。

 そんな状況を憐れんだのか、蓮さんから救いの手が差し伸ばされた。

 

 

「ユウ、AX−01を使え」

 

「AX−01ですか…?でもアレは装甲だけで、肝心のコアスケルトンは……」

 

「ならばGレックスの右腕のコアスケルトンを使え」

 

「用意周到ですね…」

 

 

 イプシロンの右腕をAX-01のものと取り替えることで、右腕問題は解決した。

 そうと決まればば早速イプシロンの右腕とGレックスの右腕のコアスケルトンを取り替え、AX−01の装甲を取り付けた。次にカスタムしたイプシロンに機槍ディアブロとZ=ディフェンダーを持たせ、最期に動作チェックで問題無いことを確認した。

 

 

「イプシロンの腕は任せろ、俺が急ピッチで仕上げてやる」

 

「やっぱ伝説のLBXプレイヤーなだけあって頼もしいですね…!」

 

《それでは、準決勝に出場するプレイヤーは、会場までお集まり下さい》

 

 

 アナウンスの指示に従い、カスタマイズしたイプシロンと共に控室を後にし、メインアリーナへ足を運んだ。

 

「ありがとう、それと行ってくるよ蓮さん」

 

「あぁ、ビシッと決めてこい」

 

 数多くの観客たちが歓声をあげ、それが会場全体に響き渡る中、会場の熱気に負けそうになりかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さぁ〜ッ!Cブロック準決勝、黒田ユウVS森上ケイタチーム!!どちらが決勝戦に駒を進めるのでしょうかッ!!!》

 

「あぁ…黒田ユウだ、宜しく頼む」

 

「木下コウジだ!良いバトルにしようぜ!」

 

「中林レイナよ、絶対に負けないんだからね!」

 

「森上ケイタだ、よろしく」

 

 

 森上は笑顔で手を差し出して来る。一瞬面食らったユウだったが、意図を理解して互いに握手を交わした。

 

 

「(次はアジアエリアチャンピオン、本っ当俺のくじ運悪いなぁー……)」

 

 

 ユウは自らのくじ運の悪さに溜息を吐いた。しかしこうなった以上は仕方ないと思い、素早く気持ちを切り替えた。

 

 

《それでは準決勝、レディ···!》

 

「イプシロンCカスタム!」

 

「ウォーリアーッ!!」

 

「アマゾネス!!」

 

「ブルドッ!」

 

 

 合計4機がフィールド戦場に降り立つ。

 イプシロンの装備は機槍ディアブロとZ=ディフェンダーに対し、ウォーリアーは水月棍槍とラウンドシールド盾、アマゾネスはパルチザン槍、そしてブルドは AMライフル44式AMライフルだ。 

 フィールドはサーチライトが夜空を照らす工場地帯、工場地帯フィールドだ。この工場地帯フィールドは隠れられる場所が多くあり、地形を駆使して戦うユウにとっては正に有利なフィールドだった。

 

 

《 バトル スタート 》

 

 

 瞬間、イプシロンとウォーリアーは同時に地を蹴り、その強靭さによって地面が砕ける。

 そこから湧き上がる観客の絶叫、興奮、熱という熱が伝搬し、そして彼らを見守る者らは言葉では語り尽くせない歓喜と高揚感に身を震わせていた。

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