ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

24 / 28



皆様、大変長らくお待たせいたしました…。最新話はこちらデスわよ。



第24話 激戦、アキレスVSイプシロン

 オレは今、モニターに映る光景に自身でも分かるくらい大きく目を見開いていた。

 アルテミスAブロック決勝戦に敗退したオレはさっさと用事を済ませるに目的地へと向かっている中、窓越しから見えるオーロラビジョンに目が止まった。

 そこには、三機のLBXがユウの操るイプシロンによって徹底的に潰される光景が映っていた。

 

 

「全く、なんて戦い方だ……」

 

 

 どんな残酷な行いも厭わない獣のような戦い方にオレはつい溜め息が零れる。

 その姿は過去のアングラビシダスでどんなLBXも力で捩じ伏せるかつてのユウを彷彿とさせた。そして今のアイツの全てを燃やさんとする眼はまるで……────

 

 

「今のオレそっくりだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場の照明が一斉に消えると同時にある人物の登場によって、先程まで騒がしかった会場は静寂に包まれた。その人物とやらは無論黒田ユウ俺本人だ。

 

 

《トーナメントCブロック決勝戦、山野バンチームの対戦相手は!たった1人で数々の強敵を力で捻じ伏せた怪物!!黒田ユゥゥゥウウウウウウウ!!!》

 

 

 どうやら駒を進めていくうちに怪物呼ばわりされていたようだ。

 だが自覚はあった。必殺ファンクションを防ぐために近くにいたブルドを使ってガードベントしたり、ウォーリアーの頭を握り潰したりもした。

 怪物呼ばわりされるのもしかたがなかった。

 

 

「この一戦は楽しめそうだな、互いにベストを尽くそうぜ?」

 

「……どうして」

 

「…あ?」

 

「どうして…どうしてあんな戦い方をした、あそこまでする必要はなかったんじゃないか!」

 

 

 どうやらバンはあんな戦い方、準決勝のことを言っているようだ。確かにやり過ぎた感はあるが、それが俺の戦い方だ。

 ふと自信の身体に異変が起こっていることに気づいた。身体が僅かに震え始め、僅かであるが息も重苦しくなってきた。

 

 

「お…おい!大丈夫かユウ!?」

 

「さァ、LBXバトルしようぜ、山野バァン!!」

 

 

 ふらつきながらもCCMを握り締めた。

 この勝負、必ず勝つ。そう自分に言い聞かせた。

 

 

《トーナメント決勝戦は3対1のLBXバトル!さぁ、どんな戦いが繰り広げられるのでしょうか!?》

 

「イプシロンッ!!」

 

「アキレス…!!」

 

「クノイチ!」

 

「ハンター!!」

 

 

 イプシロン、アキレス、クノイチ、ハンターの4機はサーチライトが夜空を照らす工場地帯フィールドに降り立った。

 

 

《 バトル スタート 》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イプシロンッ!!!」

 

「いくわよ、クノイチ!」

 

「アキレス、出陣!!」

 

 

 アキレスはバンの叫びに合わせてアキレスランスを振り翳し、イプシロンへと斬りかかる。だがイプシロンはそれを予知していたかのように、大袈裟に振るわれたアキレスランスを容易に躱した。

 しかしバンはこの攻撃をイプシロンに当てるつもりはなかった。ユウの視線がアキレスランスに集中しているのを確認すると、アキレスは隠し持っていたバスターソードを手にし、イプシロンのイプシロンガーダーを斬り裂いた。

 

 

「やったな、バン!」

 

「あぁ!」

 

「やるじゃねぇか…だがな、そう簡単にやられるワケでもねぇんだよなぁこれがッ!!」

 

《 ranking order 68 Bmode ! 》

 

 

特殊モードが発動すると同時に、イプシロンはイプシロングレイブを逆手に持つと力任せに暴れ始めた。その動きはまるで獣の様だった。

 

 

「来るわよ2人共、気をつけてッ!!」

 

 

 クノイチは短刀コダチを振るって攻撃を仕掛けるも、獣の動きでありながらイプシロンは的確に短刀コダチをイプシロングレイブで弾いた。

 そして思いっきり横薙ぎに振るわれた一撃によってクノイチは弾き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。

 

 

「アミッ!!」

 

「くっ…!頼むぞ、ハンター!!」

 

《Attack Function!スティンガーミサイル!》

 

 

 ハンターの背中に内蔵されているミサイルはイプシロンに向かって一斉発射された。しかし降り注ぐミサイルを紙一重で躱し、そして大地を思いっきり踏み締めた直後、イプシロンの姿は掻き消える。

 

 

「………そこかッ!!」

 

「ハハァッ!マジか!?」

 

 

 アキレスが背後にアキレスランスを振るえば、ガキリと見事にイプシロングレイブと噛み合う。

 だがそれも一瞬、直ぐにイプシロンは後退し、膠着状態となる。

 

 

「いっけぇぇぇええええ!!アキレス!!!」

 

「させるかァ…っ!!」

 

 

 横薙ぎに振るわれる一閃。当たると思われたが、僅かにイプシロンが軌道をずらし、アキレスランスはフィールドにそびえ立つ工場を切り裂いた。

 

 

「あんま無茶すんなバン!相手はあのユウだぞ!!」

 

「カズの言う通りよバン!アルテミス優勝の為にも超えなきゃいけない壁だわ!!」

 

「カズ…アミ…!わかってるさ…ッ!」

 

 

 時間が経つにつれ2人が操るLBXの機動速度は超高速となり、もはや周囲の人間の目にはもはや残像しか残らないほどのスピードだった。

 

 

「「必殺ファンクション!!!」」

 

《Attack Function!ライトニング ランス!》

 

《Attack Function! グロリアス レイ!》

 

 

 それぞれのCCMから音声が出るのと同時に必殺技ファンクションが衝突、その衝撃によって出来た土煙に包まれた。

 

 

「今思えば…こんな風になるなんて思っても見なかったな!」

 

「俺もだよユウ…だからこそ俺はこの勝負に勝つ!!」

 

「それはこっちのセリフだっつーの!!

 

 

 崩れた体勢を整え、反撃を試みるアキレス。

 それに対してイプシロンは、最小限の動きで攻撃を回避し、アキレスの急所を目掛けて的確に、そして鋭い斬撃を放つ。

 そしてイプシロンがまず狙うは……–––––––––––––

 

 

「まずはカズ、てめぇからだァ!!!」

 

「ちょ!?マジかよ!!?」

 

 

 銃弾を逸らしながらハンターに急接近、ボディに蹴りを叩き込む。

 その後ろから飛び出してくるのはクノイチだ。

 

 

「ハァァアアアアッ!!!」

 

 

 この状況でイプシロンはハンターを蹴り飛ばした反動で完全にクノイチに背を向けていた。

 だがそう上手くいくわけでもなかった。

 

 

「イプシロンッ!!」

 

 

 繰り出される後ろ蹴り。それも下からカチ上げるような軌道で振るわれた足は正確にクノイチの短刀コダチを捉えて蹴り上げた。

 上に蹴りあげられたことでクノイチは体勢を崩してしまう。

 そして繰り出したイプシロングレイブ。ギシリと駆動部にヒビが入るほどに力を込め、飛び掛かりながら腕を振るった。

 

 

「次はクノイチ!!」

 

「アミ、危ないッ!!」

 

《Attack Function!カゲヌイ!》

 

 

 イプシロングレイブを中心に黒いエネルギーを纏わせ、同時にクノイチに向かって投げた瞬間、爆風が吹き荒れた。クノイチ目掛けて放った必殺ファンクション、確実に仕留めた。

 

 

《ハンター、ブレイクオーバー!!》

 

 

 ハズだった。土煙が晴れて姿を現したのは、クノイチを守る為に身を投げ出して必殺ファンクションを防いだハンターの姿だった。

 そのままハンターは動くことはなく、青白く光ってそれが散った。

 

 

「ハハハハァッ!確実にクノイチを仕留めたと思ったんだけどなぁ!?」

 

「…ッ!」

 

 

 クノイチ続けざまに放たれる追撃を躱すも追い詰められていく。短刀コダチがあればまだ戦えるだろうが、短刀コダチは先程弾かれた。

 

 

「アミ、これを使え!!」

 

 

 アキレスはクノイチに向けてバスターソードを投げる。そしてすれ違いざまにクノイチはバスターソードを取りに駆け抜ける。

 

 

「邪魔だ、バン!!」

 

「お前の相手は俺だ、ユウ!!」

 

 

 イプシロングレイブが振るわれる。防御や攻撃にも使え、走力の底上げも行ってくれる炎を纏うイプシロン(貴公子の悪魔)はアキレス駿足のアキレウスを圧倒する。

 

 

「アキレス、Vモードッ!!」

 

《 Advanced V mode! 》

 

 

 瞬間、バンのCCMが変形し、計10個のモニターが表示される。そして同時に青と白の装甲を包むアキレスの装甲が黄金に輝いた。

 

 

「なるほど…目には目を、歯には歯を、特殊モードには特殊モードってわけか!」

 

「あぁ、そうだ!そしてこれがレックスに伝授してもらった超必殺ファンクションだッ!!」

 

「なに…ッ!?」

 

 

《Attack Function! 超プラズマバースト!》

 

 

 アキレスはアキレスランスにエネルギーを集中させ、上空に解き放った。そのエネルギーの塊をアキレスランスで突き、イプシロン目掛けて渾身の一撃を放った。

 

 

「──がああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 超プラズマバーストに敵うはずもなく。アキレスから放たれた必殺ファンクションが、容赦なくイプシロンのボディを貫いた。

 

 

「……っ!?なんだ、一体!!?」

 

 

 だがイプシロンのボディを貫いたのも束の間、再起不能となったハズのイプシロンがアキレスランスを掴み、引き抜いた。

 

 

《Achilleeeeeeeeeeeeseeeeeeeeeees!!!!》

 

 

 咆哮を上げるイプシロン。それを目にしたその時、ユウは何かが千切れそうな衝動が熱さと共に体の中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なッ…なんだよコイツ!?」

 

《Aaaaaaaaaaaaaaaa!!!》

 

 

 獣の様に叫ぶイプシロンを目の当たりにしたバン達が戸惑う中、イプシロンは二度目の咆哮を上げた。そんなイプシロンの姿が、バンたちには悪魔の様に見えていた。

 

 

「来るわよバン、気をつけてッ!!」

 

《Uuuuuuuuuuuaaaaaa!!!》

 

 

 迫り来るイプシロンを前にしてアキレスは焦らずアキレスシールドを展開し、攻撃を防いだ。

 しかしイプシロンの拳が打ち込まれる度に、アキレスのボディは大きく震え、徐々に後退する。

 

 

《……Ach……il…Achil…leeeeeeeeeees!!A!!A!!a》

 

「(なんて力だ!?これがイプシロン…いや、AX–01なのか…ッ!!)」

 

 

 眼にも止まらぬスピードと圧倒的なパワーで繰り広げられる攻防。けれどもイプシロンはアキレスを圧倒していた。

 

 

「バン、伏せて!!!」

 

《Attack Function!Xブレイド!》

 

 

 X字に繰り出される高速の剣から、凄まじい衝撃波がイプシロンに向かって放たれた。

 しかし向かってくる衝撃波を察知したイプシロンはイプシロンガーダーを展開、必殺ファンクションを打ち消しながらクノイチに接近して距離を詰めた所でイプシロンガーダーを投げ捨て、至近距離からの左フックがクノイチのボディに直撃した。

 

 

「…ッグ!!!」

 

《クノイチ、ブレイクオーバー!!》

 

 

 地面を転がるクノイチ、咄嗟にリペアリキットを使おうとするも間に合わず、ブレイクオーバーとなった。

 その時、CCMを操作していたユウの手が止まった。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……ッ!!」

 

 

 無茶が過ぎたか、ユウ口元から流れる血。長時間での特殊モードを使用してしまったが為に、身体に信じられないほどの負担がかかっていた。その一瞬操作が止まった隙を、バンは見逃さなかった。

 

 

「必殺ファンクション!!」

 

《Attack Function!ライトニング ランス!》

 

「ッ!?必殺…ファンクション!!!」

 

《Attack Function! グロリアス レイ!》

 

 

 アキレスはアキレスランスにエネルギーを集中させ、イプシロンはイプシロングレイブを突き出してエネルギーを貯める。

 バン、ユウの互いの声が重なり、互いが必殺ファンクションを繰り出した。巻き上がる瓦礫、砂埃が辺り一面を覆った。

 

 

「「……………」」

 

 

 やがて土煙は晴れ、アキレスとイプシロンの姿を現した。

 アルテミスの会場内に居た者たちは、二機のLBXを固唾を呑んで見守った。

そして……––––––––––––––––

 

 

《アキレス、イプシロン、ブレイクオーバー!!なんとォ!!両者共にブレイクオーバーだァァァアア!!!?》

 

 

 戦いの末、Cブロックファイナルステージはアキレス、イプシロンの両者がブレイクオーバーすることで決着がついた。そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《両チームのLBXが同時にブレイクオーバー!!大会のルールに則り、両チームとも敗退になります!!》

 

 

 第3回世界大会アルテミスC ブロックからファイナルステージ進出するチームは無しとなってしまった。つまるところ俺とバンたちはメタナスGXを手にすることなく、その幕を閉じることとなった。

 

 

「そう、か…終わったのか……」

 

「みたい、だね」

 

「悔しいなぁ……」

 

 

 Cブロック決勝戦で敗退した俺たちは静寂に包まれたアルテミスから去ろうとする。いや、()()()()()()()()()()()

 

 

《皆様ァ!!世界大会アルテミス本部から緊急発表でェす!!大会本部協議の結果ァ!只今敗退した黒田ユウ、山野バンの両チームのファイナルステージ進出が決定しましたァ!!!》

 

 

 大会MCの絶叫に続き、会場が揺れた。会場が溢れんばかりの歓声に包まれた。

 

 

《彼らの熱い戦いぶりに、アルテミス本部を動かしましたァァァアアアアアアアアッ!!!!!》

 

「……ふふ」

 

「……はは」

 

「「アーッハッハッハッハッハ!!」」

 

 

 会場が湧いた衝撃によって張り詰めていたバンと俺の身体は糸が切れるかの様に仰向けに倒れた。

 そんな中、カズが倒れている俺の方に顔を向けた。

 

 

「なぁユウ、もうあの特殊モードを2度と使わないでくれ…!」

 

「………」

 

「お願いよユウ、もう使わないって私たちに約束して!」

 

「頼む!俺たちはユウが苦しむ姿は見たくないんだ!!」

 

 

 バンたちにそう言われると、俺はつい黙り込んでしまった。

 Bモードを初めて発動した時、俺はその圧倒的で暴力的な力に魅了されてしまった。かつての俺はアングラビシダスで力欲しさに対戦相手を蹂躙していたので、魅了されていたとはいえ楽しくなかったといえば嘘になってしまう。

 バンたちと出会う前の俺ならば今の要求にはきっぱりNOと言うだろう。けれども……。

 

 

「あぁ、Bモードは封印するもう2度と使わないって約束するよ」

 

「ほんとか?」

 

「ホント」

 

「ほんとにほんとなの?」

 

「ホントにホント」

 

「ほんとにほんとに本当!?」

 

「ホントにホントに本当」

 

 

 俺はバンに一緒にLBXバトルをする楽しさを、アミにはLBXに関する知識を、カズにはカスタマイズの奥深さを学んだ。キタジマ模型店での彼らとの時間が、俺にとって掛け替えのないものとなっていた。

 力に魅入られた身ではあるが、それでも俺は力よりも友情を手に取った。

 

 

「3人とも、心配かけて悪かった。悪いけど俺のこと起こしてくれない?」

 

「ねぇユウ、私たちホントに心配したのよ?だから……えいっ」

 

「フガァッ!?!?!?!?」

 

 

 アミの手を取ろうとした瞬間、体重を乗せた渾身のパンチを腹部叩き込まれ、体内に響き渡った。

 抗える術もなく、俺はそのままアミによって意識を刈り取られた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。