ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第25話 愛と平和のLBXバトラー

 俺の目の前で少女が悲痛な表情で叫んでいた。見覚えのない顔だった。

 

 

「起きてよ…ねぇ、起きてよ!!」

 

 

 周りの光景には僅かながら記憶にあった。雨が、慈悲とも無慈悲ともつかない騒々しさで降りしきる崩落した橋の真ん中で、俺は倒れていた。

 アスファルトの道路は見るも無残にひび割れており、鉄骨も今にも崩れそうだった。

 

 

「君は…一体…?」

 

 

 少女はくしゃりと顔を歪ませた唇を噛み締め、鉄骨の下敷きになった俺を死なせまいと必死になって身体の至る所を処置してくれていた。

 だが次の瞬間、がこん、っと何かが崩れる音が聞こえた。そして、どん、と衝突音がした。

 身体がが潰れる感触があった、俺と少女は鉄骨によって下敷きになったようだ。潰れてしまった少女に向かって俺は手を伸ばそうとする。

 

 

《トーナメントDブロック決勝戦ン!!しかしユジンは1人でのバトル!戦力的には不利に見えるが、果たしてェ!?》

 

 

 次の瞬間、ふわリ意識が浮上した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウ、大丈夫?」

 

「ンガッッ⁉︎え?なんで俺観客席にいるんだ???」

 

「カズとアミが俺たちをここまで運んできてくれたんだ」

 

「感謝しろよユウ」

 

 

 目を覚ますと、大会のステージで倒れていたハズの俺はアルテミスの観客席に座っていた。話を聞く限り、カズとアミが力が抜けて倒れていた俺とバンをメインアリーナから観客席まで運んでくれたとのことだ。

 

 

「俺たち相手に1人…」

 

「楽勝だな、このバトル」

 

「たとえ1人でも!私は戦い続けるッ!!ゴホッゴホッ…心に燃える正義がある限りッ!!!」

 

 

 寝起きながらも先程まで最高潮に盛り上がっていた世界大会アルテミスの会場がシンッっと静まり返るのを肌身をもって感じた。

 オーロラビジョンの方に目を向けるとどうやらトーナメントDブロック決勝戦らしく、分かってはいたが仙道チームが決勝戦まで上り詰めていた。

 そんな仙道チームの対戦相手はユジン、またの名はオタレッド。アキハバラを根城にしているアキハバラの長老ことオタクロスの弟子、都市伝説ではオタレッドだけではなくオタブルー、オタイエロー、オタピンク、オタブラックがいるとかいないとか。

 

 

《……ユジン選手!気合い充分の様だ!!》

 

「かかってくるがいい!手品師の使うイカサマなどに遅れをとる、オタクロスの弟子ではないッ!」

 

「……イカサマァ?」

 

「ウワァ⁉︎スミマセン言イスギマシタ……」

 

 

 調子が狂う。けれどもあのふざけた格好をしていながら決勝戦まで勝ち上がってきたと見ると、LBXプレイヤーとしての実力は非常に高いことが分かる。

 

 

「俺をイカサマ師呼ばわりかィ?」

 

「ッ!」

 

「ジャッジ…審判のカード、お前は俺が裁いてやる。森野、風間、お前たちは後ろで見てな」

 

「「!」」

 

 

 プライドが高い仙道にとってオタレッドのイカサマ師呼ばわりは癪に触った様だ。

 確かにアイツは勝ちに貪欲になるあまり、平気で仲間を犠牲にするヤツだ。けれども仙道ははアングラビシダスでもアルテミスでも己の実力で這い上がってきた、仲間を犠牲にするヤツではあるがそれをイカサマで終わらせるのは俺も腑に落ちなかった。

 

 

《これより…Dブロック決戦を行います!!Ready…!》

 

「ジョーカー、Mk-Ⅱ!」

 

「「オルテガァ!」」

 

「ビビンバードXッ!発っ進!!」

 

 

 ジョーカーMkⅡ、オルテガ、ビビンバードXの4機はビルが並び、海に面した港湾都市ジオラマの現代都市フィールドに降り立った。

 

 

《 バトル スタート 》

 

「ぶった斬ってやるよォ!!」

 

「ッ!」

 

「仙道から仕掛けた!?」

 

 

 ジョーカーMk-Ⅱは目にも止まらぬスピードを生かしてビビンバードXに向かって先制攻撃を仕掛ける。ジョーカーMk-Ⅱが向かってくるのを視認したビビンバードXは機体を大きく傾けて咄嗟に回避した。

 

 

「(ヌゥ…やるな…!)」

 

 

 ジョーカーMk-Ⅱは攻撃の手を緩めることなく鎌型武器であるジョーカーズソウルを何度も振り翳す。ビビンバードXは回避に専念しつつジョーカーMk-Ⅱの背後にいるオルテガを観察するも、オルテガたちが動く素振りはなかった。

 

 

「よそ見してる場合かァ?踊りな、俺のイリュージョンで!!」

 

 

 ストライダーフレーム特有の敏捷性と軽量さを生かしてジョーカーMk-ⅡはビビンバードXの周りを回り出す。

 ジョーカーMk-Ⅱはアングラビシダスの時に見たジョーカーの比にならないスピードで加速してゆき、3機に分身した。

 

 

「分身した!?」

 

「3機同時攻撃か…!」

 

「いや…タネも仕掛けもない、ジョーカーMk-Ⅱのスピードが生み出した幻影だ…!?」

 

 

 ビビンバードXに向かって3機同時に急接近、ジョーカーMk-Ⅱはジョーカーズソウルを振り上げる。

 幻影に翻弄されてたビビンバードXは回避する暇もなくモロに攻撃を喰らい、聳え立つビルに向かって飛ばされ、激突した。

 

 

《決まったァ!!仙道選手のジョーカーMk-Ⅱ、恐るべきスピードによる残像攻撃でビビンバードXに圧倒ッ!!!》

 

「チューンナップとカスタマイズを重ねたジョーカーMk-Ⅱ、こいつに勝てるヤツはいない。それに俺をナメるからこうなるんだよ」

 

「ヌゥ……」

 

「流石だなダイキ」

 

「俺たちの出番はなかったか」

 

「……まだですよ、私はまだ、倒れませんッ!」

 

 

 砂塵が晴れる。ビルに激突し、倒れたかに見えたビビンバードXはフェニックスのポーズを構え、立ち上がった。

 

 

「私の後ろには敬愛する我が師、オタクロスと!信頼する仲間たちがいるッ!!私は!決ッして!!負けない!!!」

 

「だったらァ……」

 

 

 ジョーカーMk-Ⅱは持ち前のジャンプ力を生かし、飛び上がる。

 

 

「真っ二つにしてやるよォ!!その生意気な口ごとなァ!!!!」

 

 

 ビビンバードXの前まで飛び上がったジョーカーMk-Ⅱは力いっぱいにジョーカーズソウルを振り下ろした。しかしジョーカーMk-Ⅱの動きを読んでいたビビンバードXは横にそれて回避した。

 

 

「確かに君のLBXはすごく早い、だが早いだけ」

 

「ッ!」

 

「仲間との連携が全くない、ならば!1体1で負ける私ではないッ!!」

 

 

 咄嗟にビビンバードXはジョーカーMk-Ⅱの後ろに回り、渾身の踵落としを喰らわせてジョーカーMk-Ⅱを地面に叩き落とす。そして倒れたジョーカーMk-Ⅱに向かい、ビビンバードXは挑発をした。

 

 

「見せてやろう…我が師より伝授されたオタクロス流LBX原則を!師よ、どうか私の勇気と力を!!」

 

「調子狂うってんだよ!」

 

「とっととくたばれ!!」

 

 

 ビビンバードXに痺れを切らしたオルテガはCWデオマシンガンを構え、標的に向かって乱射する。

 だがビビンバードXは目に見えない速度で回避、CWデオマシンガンを手にしていたオルテガの後ろに回る。

 

 

「1つ!人より先を読み…!」

 

 

 背後に回ったビビンバードXはオルテガを蹴り、隣にいたもう一機のオルテガにぶつける。

 

 

「2つ!振り向く隙もなく…!」

 

 

 ジョーカーMk-Ⅱを捉えたビビンバードXは猛スピードで走り出し、両腕を交差させて前に飛び上がる。

 

 

「3つ!未来をその手に、掴む!!」

 

 

 ビビンバードXのクロスアタックをモロに喰らってしまったジョーカーMk-Ⅱはストライダーフレームの軽さゆえ、思いっきり吹っ飛ばされる。

 

 

「我が名はオタレッド、オタクロスの弟子ィ!!」

 

 

 先程静寂だったアルテミスは一気に盛り上がりを見せた。今や会場の空気はオタレッド一色だった。

 

 

「トドメだ!トゥォォオオオ!!!」

 

 

 会場の空気に活気付いたビビンバードXはジョーカーMk-Ⅱトドメを刺さんべく、ジョーカーMk-Ⅱとオルテガたちに急速に接近する。

 

 

「ダイキ、どうする!?」

 

「………こうするサ」

 

 

 仙道はニヤリと口角を上げる。次の瞬間、ジョーカーMk-Ⅱはオルテガを蹴り、ビビンバードXにぶつけさせる。

 当然後ろの2人は仙道の行動に困惑した。

 

 

「何するんだダイキ!?」

 

「お前たちに見せ場を見せてるのさァ」

 

「仲間を盾にするのか!?」

 

「馬鹿だねェ…お前たちは俺が勝つための駒でしかないんだよォ!!」

 

 

 さらにジョーカーMk-Ⅱはジョーカーズソウルでオルテガを斬り、オタレッドにぶつけさせる。

 仙道のヒールっぷりに会場はドン引きである。

 

 

「俺の弾除けになれること、光栄に思いなッ!喰らえ、必殺ファンクション!!」

 

「まさか、君は仲間ごと…ッ!?」

 

《Attack Function! デスサイズハリケーン!》

 

 

 ジョーカーMk-Ⅱはジョーカーズソウルで黒い軌跡を描きながら、空へ上昇していく。そして描いた軌跡の中心から巨大なハリケーンを生み出し、ビビンバードXと2機のオルテガごとビル共々吹き飛ばした。

 

 

《な…なんと仙道ダイキ、仲間ごと巻き込んでの必殺ファンクションッ!!?あまりの出来事に会場、静まり返っていますッ!!!》

 

「中々楽しいバトルだったよ、なァ2人とも?」

 

「「……ッ!」」

 

 

 あまりのヒールっぷりに会場が絶句していた。あれほど地響きが起こるほど大いに盛り上がっていたアルテミスは今や静けさに支配されていた。

 そんな中、ユジンは仙道ダイキの行動に怒りで燃え上がった。

 

 

「愚か者めぇ〜〜〜ッ!!!!」

 

「ン?」

 

「勝つためならば友を傷つけることも厭わないのか!?なんという見下げ果てたヤツ!」

 

「何ィ?」

 

「君には見せなければならない!友の涙!そして私の怒りの拳をォ!!!」

 

 

 いつのまにかビルの屋上にいたビビンバードXはジョーカーMk-Ⅱを見下ろし、そして大空向かって飛び上がった。

 

 

「喰らえ!!ファイナルクライマックスビビンバードダイナミィーック、エクスプロージョンンンン!!!!」

 

《Attack Function! レインバレット!》

 

 

 空中に飛び上がったビビンバードXは手に持っていた片手銃のビビンバードガンを構え、回転して光弾を連射する。技の名前はまるで違う上、拳要素はどこへ行った。

 

 

「くッ…くっそォ!」

 

 

 雨の様に降り注ぐ光弾を必死に避けるジョーカーMk-Ⅱだったが、対応しきれず呆気なく降り注いだ光弾を喰らってしまい、大爆発した。

 

 

《ジョーカーMk-Ⅱ、ブレイクオーバー!トーナメントDブロックファイナルステージ進出を決めたのは、ユジンだァァァアアアア!!!》

 

 

 トーナメントDグループを制したのは仙道ダイキではなくユジン、いやオタレッドだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トーナメントDブロックが終わり、いよいよトーナメントEブロックが始まるようだ。

 ひとまず俺は売店で何かに使えないかとLBXを物色していたが、見覚えのある男と出会った。

 

 

「…………」

 

「お前は、灰原ユウヤ」

 

 

 相変わらず青白い肌にハイライトのない瞳のせいか、生きた屍ように見えるので不気味な事この上なかった。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 気まずい。もともと灰原が無口なだけに特に話題もなく、俺と灰原の周りは微妙な空気に包まれた。

 そんな中、俺は前々から少し気になることを灰原に聞いてみることにした。

 

 

「………」

 

「……なぁ、灰原、俺ら…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……?」

 

 

 海道邸で出会うよりも前、俺は薄らと灰原を知っている気がした。遠い遠い記憶の中に、病院で出会った灰原に似た子供の姿が幻灯のなかの光景のようにぼんやりした記憶の中にいた。

 けれども灰原は俺の問いを首を横に振って否定した。どうやら人違いだったようだ。

 

 

「………」

 

「灰原ユウヤ、時間だ。至急向かえとのことだ」

 

 

 ちょうど灰原の取り巻きの目隠れが現れたと思えば灰原を連れて会場に向かって行った。どうやらトーナメントEブロックが始まるようだ。

 

 

「気のせいだったか……」

 

 

 特に目ぼしいLBXはなかったのでひとまず別の売店に向かい、LBXを物色することにした。

 後々バンから聞いた話によると、トーナメントEブロック決勝戦で灰原は昨年の南半球LBX選手権統一チャンピオンのハンニバル・ハーンを下し、ファイナルステージ進出したようだ。

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