アルテミス編も残るところあと1話……とんでもなく長かったな()
会場の照明が消え、静寂に包まれた。先程まで数多くの観客たちが歓声を上げ、それが会場全体に響き渡っていたアルテミスはシーンと静まり返る。
《いよいよクライマックスを迎えます!世界一のLBXプレイヤーを決める、アルテミスファイナルステージ!!ご紹介しましょう、激戦を勝ち抜いてきた最強のファイナリストたちです!!!》
スポットライトがファイナルステージに立つ選手たちを照らす。そして観客たちは皆、スポットライトに照らされる選手たちに視線を向けた。
《まずは秒殺の皇帝の異名を持つ天才、海道ジン!操るLBXはエンペラーM2!》
粛然としている海道ジン、しかし目線は真っ直ぐバンを見据えていた。
《雰囲気、戦闘スタイル、全てが謎!ミステリアスな仮面の騎士、マスクドJ!!LBXはマスカレードJ!!》
マスクドJはマスクドMの手を取り、天に掲げる。今まで会えなかった分なのか、堂々と公然の場で仲慎ましい姿を見せつける。
《脅威の新人、奇跡の超新星、山野バン!LBXはアキレス!!》
目線に気づいたのか、同じく海道ジンを見据える。
イノベーターにも、ライバルにも勝ち、優勝する。バンの気持ちはそれ一心だった。
《数々の強敵を力で捻じ伏せた怪物、黒田ユウ!LBXはイプシロン!!
マスクドJとマスクドMの仲睦まじさが溢れる光景を見せつけられ、殴りたくなる衝動に駆られるも、LBXバトルで殴ればいいと自分に言い聞かせてなんとか理性を取り戻した。
《特撮ヒーローを彷彿とさせる戦いで勝ち上がってきたこの男はファイナルステージで真のヒーローに成れるか?ユジン、叉の名もオタクロスの弟子!LBXはビビンバードX!!》
「愛と平和のLBXバトラー、オタレッド参上!オタクロス師匠の名にかけて、必ずアルテミスの頂点を獲る!!」
ユジンもといオタレッドはポーズを決め、アルテミス優勝を宣言する。
《今大会のダークホース、謎に満ちたLBXプレイヤー、灰原ユウヤ!LBXはジャッジ!!》
「………」
取り巻きが灰原ユウヤが羽織っていた布を脱がし、異質な姿の灰原ユウヤが露わとなる。
その姿は身体にフィットしたウエットスーツ状の全身タイプを着ており、更に特殊なグローブを装着していた。
《以上!6名により、優勝が争われます!!》
ステージが上がり、五角形の巨大なジオラマが展開される。フィールドは火山から流れる溶岩に、遺跡が埋れている火山遺跡だ。
《ファイナルステージは生き残りを賭けたバトルロワイヤル!!自分以外は全て敵という状況の中で最後まで生き残った者が勝者となる過酷なサバイバルバトル!!メタナスGXを手にするのは一体誰なのかぁぁぁぁぁ!!!!!》
観衆が興奮して大声を上げた。いよいよファイナルステージが開幕する。
それぞれ6人がLBXを手に取った。
《では第3回LBX世界大会アルテミス、ファイナルステージバトルロワイヤル!Ready!》
「ビビンバードX!」
「マスカレードJ!」
「………………………」
「エンペラーM2!」
「イプシロン!」
「アキレス!」
大会MCの合図に6機のLBXたちは決戦の地に降り立った。
■
「スタンバイだ」
「………」
LBXが降り立ったと同時に灰原ユウヤが手を掲げ、ホログラム画面を展開した。どうやらあのスーツはLBXを操作する為のCCMの役割を担っているようだ。
《 バトル スタート 》
「行け、アキレス!!」
「エンペラーM2!」
灰原ユウヤに気を取られる最中、ファイナルステージの舞台の幕が上がった。
行動を開始したアキレスとエンペラーM2は激しい攻防戦を繰り広げていた。互いに水月棍とエンペラーランチャーで激しくぶつかり合っていた。
「よそ見をしてる場合かな?」
「なッ…!?」
マスカレードJは軽々しいステップで反応が遅れたイプシロンの懐に潜り込み、駆動部に狙いを付ける。駆動部を狙わせまいとイプシロングレイブを力任せに地面を叩きつけ、無理矢理距離を離した。
「ビビンバードXっ!」
「………」
ビビンバードXはビビンバードガンをジャッジに狙いを定め、光弾を放つ。しかしジャッジは自身に迫る光弾を軽々と躱した。
並のCCMではできないジャッジの俊敏な動きに会場は響動めいた。
「行くぞ悪党ども!」
ジャッジに光弾を避けられたビビンバードXは対象をエンペラーM2とアキレスに変え、光弾を放った。
狙われていることに気づいたエンペラーM2は即回避行動に移り、一方にアキレスは反応が遅れ、モロに光弾を喰らってしまう。
《なんと!初ダメージを受けたのは山野バン、アキレスだ!》
よろめくアキレス、その隙を逃さまいとイプシロングレイブを構えてアキレスに攻撃を仕掛ける。だがアキレスは咄嗟に水月棍を振るい、火花を散らせた。
「おいおいバンさんよ!水月棍なんて珍しいな、いつものアキレスランスはどうしたァ?」
「ひび割れて、ファイナルステージじゃとても耐えきれなかったんだ!けどケイタくんが水月棍を俺に、託してくれたんだ!だからケイタくんの思いも背よって、俺が勝つ!!」
「そりゃいい心意気だ、なぁ!!?」
鍔迫り合いが起こるアキレスとイプシロンの合間に漁夫の利を狙ってマスカレードJがデュエルレイピアを振るう。しかしマスカレードJの攻撃をイプシロンガーダーで防ぎ切り、マスカレードJを投げ飛ばした。
《おぉっと!?息を吐く暇もないバトルロワイヤル!大混戦だぁ!!!》
「サイコスキャニングモード」
「………!」
《 Psycho scanning mode 》
各所で戦いが繰り広げられる中、灰原ユウヤに異変が起こる。
灰原ユウヤの髪の色素が抜け、瞳が真っ赤に染め上がった。
異変が起きたのは灰原ユウヤのみならず、ジャッジにも変化が現れる。機体が緑色に輝くと、ジャッジは禍々しいオーラを纏った。
「サイコスキャニングモード、データ収集開始」
禍々しいオーラを放つジャッジが狙いを定めたのはビビンバードXだった。ジャッジは一気にビビンバードXに急接近し、ジャッジソードを振るった。
ギリギリ機体を逸らしてギリギリ回避したビビンバードX だったが、ボディにはスパークが生じていた。
どうやらサイコスキャニングモードによってジャッジはパワーや反応速度が飛躍的に上昇しているようだ。
「エンペラーM2…!」
「なっ……!?」
エンペラーM2はイプシロンとの距離を詰め、容赦なくエンペラーランチャーを振るい、上へと吹き飛ばした。そしてその隙を逃さないとばかりに大きく跳躍、エンペラーM2は重い一撃をイプシロンに与え、地面に叩き込んだ。
「痛ぇな…!流石は秒殺の皇帝様だな…!!」
「君の方こそ、咄嗟に盾で落下ダメージを緩和させたのは見事だ」
エンペラーM2の重い一撃を空中で喰らってしまったイプシロンだったが地面に勢いよく叩き落とされる寸前、咄嗟にイプシロンガーダーを下にすることで落下による大ダメージを緩和させ、ブレイクオーバーから逃れた。
「『これを受け取れ』…?マスクドJ?」
「…………」
エンペラーM2とイプシロンの鍔迫り合いが起こる中、俺はバンたちの方を見た。どうやらバンとマスクドJの間に何かが起こったようだ。
「反応速度、攻撃力、全てにおいて上昇」
『システムとのシンクロは?』
「以上ありません」
『サイコスキャニングモード、続行』
激しい鍔競り合いが起こっている最中に突如としてジャッジが乱入、ジャッジソードとトゥループロテクターを巧みに使ってエンペラーM2とイプシロンを薙ぎ払った。
『パワースラッシュ!』
「パワースラッシュ」
《Attack Function! Power Slash》
「………ふぅ!?グッ……ガッ……ッ!アアア!?!?」
ジャッジソードにエネルギーを貯めるジャッジ、しかし次の瞬間、灰原ユウヤの顔が歪み、苦痛に満ちた呻き声を上げる。
それと同時にジャッジは大きな横斬りで凄まじい衝撃波を全てを薙ぎ払わんと直線上にいるLBXに放った。
「アキレス!?」
「……ッ!」
ジャッジの必殺技ファンクションに気づいたビビンバードX、エンペラーM2、イプシロンは咄嗟に大きく後退し、パワースラッシュから逃れる。しかしマスカレードJとアキレスは鍔迫り合いの最中、ジャッジに背後を向けていた事で反応が遅れた。
身構えるアキレス。しかし次の瞬間、アキレスを守らんとマスカレードJがアキレスを押した。
直後、大爆発が引き起こった。
《マスカレードJ、ブレイクオーバー!!マスクドJ敗退!!》
「マスクドJ!どうして…?」
バンはマスクドJの不審な行動に問おうとするも、マスカレードJが倒れたのを確認したマスクドJはマスクドMと共にファイナルステージを去った。
呆然とするバンだったが向かってくるエンペラーM2に気付き、水月棍で迎え撃った。
「グゥッ……ウワァァ……アアアア!!!!」
《ERROR》 《ERROR》 《ERROR》
『実験中止!』
「サイコスキャニングモード、緊急停止!」
「解除不能、停止出来ません!」
「……フフ…フハッ…フハハ………!」
ホログラム画面にエラーが生じ、危険信号のアラームが鳴り響いた。取り巻きたちはすぐさまサイコスキャニングモードを停止させようとするも、サイコスキャニングモードは停止を受け付けなかった。
声にすらならぬ歪な音を上げる灰原ユウヤ、しかし次第に狂気に支配されたかのように笑い出した。
「何!?」
「フフフフフ……!」
そんな狂気に応えるかのようにジャッジはビビンバードXをジャッジソードで斬りつけ、地面に叩きつけた。そしてジャッジソードを地面に突き刺し、トゥループロテクターを投げ捨てるとジャッジはビビンバードXの首を掴み、古代遺跡の柱に叩きつけた。
「ウフ」
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、ジャッジはビビンバードXを柱に叩きつけた。
そして……–––––––––––
「アハハハハハハハハハ!!!!!!!!」
「アァ…ビビンバードXッ!!!」
飽きたと言わんばかりにジャッジは力尽くでビビンバードXの首をもぎ取った。
《ビビンバードX、ブレイクオーバー!!ユジン、またのなもオタクロスの弟子!敗退!!》
ジャッジは首のないビビンバードXを投げ捨て、ジャッジソードを回収すると倒れたビビンバードXに向かって何度も、何度も、何度も、激しく突き刺した。
灰原ユウヤを止めようと駆け寄るオタレッド、しかし狂気に満ちた灰原ユウヤ見たオタレッドはその得体の知れなさに恐怖を感じ、逃げるかのようにファイナルステージから去った。
「アハッハッハッハッハッハッハッハ!!ハハッ…ウゥ…1人に…しないで…」
狂ったかのように笑ったかと思うと、絞り出すかのようにぽつりと呟いた。1人にしないで俺は一度何処かで聞いたことのある気がした。
再び動き出したジャッジは投げ捨てたトゥループロテクターを拾うとイプシロンに向かってジャッジソードを振るった。
「1人にしないで……ウフッ…ハハハ」
「一切の指示を受け付けません。被験体、制御不能です!」
『被験体を破棄!データを保全し、帰還しろ!』
「「……了解!」」
誰かからの指示を受けた取り巻きたちはノートパソコンを閉じ、灰原ユウヤを置いてファイナルステージを去った。
「灰原、ユウヤ……」
「1人に…ヴゥ……アハッハッハッ…!」
ジャッジは見境なくジャッジソードを振るい、柱を斬りつけて古代都市のジオラマが崩れた。
今やジャッジは、灰原ユウヤは狂気に身体を蝕まれ–––––––––––獣となっていた。
「ウワァァァァァァアアアアアアア!!嫌だァ!!1人に…僕を1人にしないでぇ……!!」
「灰原ユウヤァァァアアア!!!」
悲痛な叫びを上げる灰原ユウヤはスーツの一部を破り、身体に残った痛々しい古傷が露わとなる。
そして思い出した。アイツは9年前に引き起こったトキオブリッジ倒壊事故の生存者なのだと、同時にこのままこの状況が続けばいずれ灰原ユウヤは死んでしまう、そう確信してしまった俺は彼を救うべくイプシロンを駆る。
「山野バン、黒田ユウ!一緒アイツを止めるんだ!あのスーツのコントロールシステムが暴走している、LBXを倒さなければヤツの精神は崩壊、最悪死を招く…!」
「無論そのつもりだ…!」
「…ッ!分かった、Vモード!!」
《 Advanced V mode! 》
一方の灰原ユウヤの暴走を止めるべく海道ジンは俺とバンに共闘を提案、バンはそれに応えてVモードを発動する。バンのCCMが変形、モニターが7つ、スクリーンが3つの合計10個となり、一方のアキレスが黄金の輝きを放った。
「暴走したジャッジの行動は予測不可能、至近距離からの一撃で決める」
「うん!」
「了解!」
ジャッジに向かって3機同時に急接近、間合いに入るもののジャッジソードを横薙ぎに振るい、3機ともに吹き飛ばされて迂闊に近づくこともままならなかった。
「どうすればいいんだ…!」
「俺が牽制する、そのうちにエンペラーランチャーを頼む!」
「……!」
必ず救う。そんな思いに応えるかのように、世界がスローモーションと化した。
加速を以ってしてジャッジに接近、激しい鍔迫り合いが起こる中で僅かにミサイルが発射される音を聞き取った。
咄嗟にイプシロンは大きく後退、反応が遅れたジャッジはミサイルに直撃した。
「行くぞ!!」
「あぁ!!」
多連装ミサイルがジャッジに直撃したのを確認するとアキレスとエンペラーM2は大きく跳躍する。一方のジャッジは砂塵が晴れると高く飛ぶアキレスとエンペラーM2を認識、2機に向かってパワースラッシュを放とうとした。
その隙を、イプシロンは逃さなかった。
「必殺ファンクション!!!!!」
《Attack Function!クリムゾンスラッシュ!》
突き立てたイプシロングレイブを中心に、燃え盛る炎が渦を巻く。空気を焼き、瓦礫を燃やし、全てを焼く尽くす。
炎の軌跡を描きながら横一閃で正面の敵を焼き尽くすソレは、流れる様な動作でジャッジソードを手にする腕を焼き斬った。
斬り飛ばしたジャッジの腕が重々しい音で地面に転がる。
「今だ、バン、ジン!!!」
「「必殺ファンクション!!!」」
《Attack Function!インパクトカイザー!》
《Attack Function!ライトニングランス!》
アキレスがアキレスランスを回転させ、穂先にエネルギーを集中させ始め、一方のエンペラーM2もエンペラーランチャーを一気に持ち上げた。アキレスは突き出した穂先から放つ渾身の一撃を放ち、同時にエンペラーM2も地面にエネルギーを叩きつけて炎のエネルギーを生み出し、放出させる。
二つのエネルギーの塊はジャッジに直撃、フィールドの中央に大爆発を引き起こした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁああああああ……アァ……アアアアァァ………」
断末魔の叫びを上げる灰原ユウヤ、次第にサイコスキャニングモードによって変化した髪と瞳が元に戻った。
その場に倒れる寸前に俺は灰原ユウヤを抱えた。
《ジャッジ、ブレイクオーバー!灰原ユウヤ、敗退!!》
《選手救護の為、大会はここで一時中断させていただきます》
会場が響動めく中、イノベーターの呪縛から解放された灰原ユウヤが救護スタッフによって搬送される様子を俺たちは見届けた。
「2人とも、灰原ユウヤを知ってるのか?」
「決着をつけよう、2人とも」
「あぁ、そうだな」
「……うん!」
《アルテミス、ファイナルステージを再開します!!》
今やファイナルステージに残ったのはアキレス、エンペラーM2、イプシロンの3機のみとなった。
俺は再びCCMを手に取る。
《バトル、スタート!!!》
「アキレス!!」
「エンペラーM2!!」
「イプシロン!!」
開始されると同時にアキレスとエンペラーM2とイプシロンの間に激しい鍔迫り合いが起こる。中断されていたファイナルステージが再び幕を開けた。