第4話 黄金の騎士の災い
「じゃあバン、今回もスタンダードレギレーションってことでいいか?」
「あぁ、それで頼むよ!」
「………早くしろ」
カズが手にしているエジプトとやらの装備は、剣と盾のみ。だがカズには何か策略あるのだろう。
ひとまずバンに、オートマチックガン二丁を渡す。槍と盾だけじゃあ心許ない。
「それじゃあいくぞ、バトル開始!!」
《 バトル スタート 》
「「…っ!」」
バトル開始と同時にアキレスとエジプトは互いに距離を取り、様子を伺う。と思いきや、先にエジプトが先制攻撃を仕掛ける。
アキレスはエジプトの攻撃を避け、オートマチックガン二丁を手放して槍と盾に持ち替える。
どちらも機体を加速させて突っ込み、互いに体勢を立て直して再び突っ込むと、今度は激しく鍔迫り合いが起きる。
「くっ…足場が砂だからやりにくい!」
本当ならバンの方がLBXの操作は上手い、だが今回のDキューブのは乾ききった砂漠の真ん中に、巨大なピラミッドがそびえ立つ砂漠のフィールドだ。
アキレスは足場の砂に足を取られ十分なスピードを出すことが出来なかった。
「やれ、エジプト!!」
対してエジプトは、砂の上での運用が想定されていたのか、全くといって砂という障害を感じてすらいなかったのだ。
エジプトはアキレスの不意を突き、アキレスの盾がエジプトの剣によって真っ二つに斬られてしまった。
「盾が…!?このままだと流石に不利だ…!」
そう言ってバンは再びオートマチックガンを二丁とも拾い上げ、エジプトに何十発かの銃弾を放つ。
だがエジプトは盾を使用せず、剣のみで銃弾を防いだ。
「くっ…一体どうすれば…ってなんだこれ!?」
《 V mode! 》
アキレスのLPが残りわずかとなったその時、それは突如として起こった。
「何っ!?CCMが変化したのか!」
「ねぇバン、これって一体…!?」
「な…何が起こってるんだ!」
バンのCCMが変形したと同時にアキレスが金色に輝き始める。
エジプトは金色に輝き出すアキレスにお構いなしに馬乗り、そのまま剣を突き立てようとして─────アキレスに吹き飛ばされた。
「何やってるんだバン!?ルールはスタンダードレギレーション、このままだとカズのLBXを破壊しちまう!今すぐにアキレスの操作をやめろ!!」
「ダメだ…コントロールが効かない!?」
「なんですって!?」
アキレスはまるで意思があるかのように自ら動きだし、圧倒的なスピードとパワーでエジプトを追い詰める。
そしてダメージが蓄積されて動けなくなったエジプトを、アキレスは素手で痛めつけるようにしてエジプトを殴り続ける。
「やめろ!これ以上やったらエジプトを破壊してしまう……ッ!!」
「くッ…行け!サラマンダーMK–Ⅱ!!」
咄嗟にサラマンダーMK–Ⅱを投下したものの、エジプトはアキレスによって破壊されてしまう。そして同じタイミングで、カズは倒れてしまった。
倒れてしまったカズの事はひとまず2人に任せ、アキレスの暴走を食い止めることに専念する。
「あぁくそ!無駄に強いなぁこのアキレス!?」
ソルジャーシールドで何とか受けるが、アキレスのパワーに押されて地面に叩きつけられてしまう。サラマンダーMK–Ⅱは素早く起き上がり、オートマチックガン二丁をアキレスに向かって撃つ。
だがアキレスの正確な攻撃で、サラマンダーMK–Ⅱが持っているオートマチックガン二丁は破壊されてしまった。
「なんとかなれ……ッッ!!!!!」
暴走したアキレスの動きを捉え、なんとかして無理矢理アキレスの背後に立つ。
「…………ッッ!!!」
《Attack Function!ホエールキャノン!》
サラマンダーMK–Ⅱの足元に突如として水が現れ、薙刀斬鉄を地面に突き刺す。するとサラマンダーMK–Ⅱの足元から、圧縮された水がサラマンダーMK–Ⅱを包み込む。
その圧縮された水は渦へと変化し、アキレスに向かって放つ。巨大な渦に巻き込まれたアキレスはそのまま青白く光り、ブレイクオーバーする。
「ハァ…ハァ……ハァ………っ!」
アキレスの暴走を止めるとその緊迫感から解放され、ドッと疲労感が出る。だがそれと同時に頭に激しい頭痛が起きる。思わず握っていたCCM手放してしまいそうになるほどだ。
「うぅぅ…バン…、アミ…。どうして、俺はこんなとこに…って大丈夫かユウ!?」
「オイカズ……お前が…俺を心配して…どうすん……だよ」
俺はそのまま地面に座り込む。前回の倒れてしまった症状とは違い、今回は激しい頭痛に見舞われた。
とりあえず俺は3人の力を借りながらキタジマ模型屋に向かうことにした。
■
「もしかしたら、催眠術でもかけられたのかもしれないわね」
「催眠術?」
「えぇ…そして、バンのLBXを破壊するように命令されていた」
「でも誰がそんなことを……」
バンらに支えてもらうのもどうかと思うので、店長から椅子を借りることにした。
あの時AX–00を奪おうとした謎のLBX三機と今回のエジプト、何か関係がありそうだな。
「そういえば店長…ユウのことなんだけど……」
「ユウ?ユウが一体どうかしたのか?」
「えっと…ユウのことなんだけどね……─────」
酷い頭痛を喰らってる俺の代わりに、アミが俺の謎の現象について説明してくれた。相手が遅く見えたりすること、操作速度が上がる状態のこと、後の疲労は激しく、眩暈を起こし倒れてしまうこと、俺の身体に起こっている現象の全てを俺の代わりに話してくれた。
「もしかすると、ユウの身体に起こってる謎の現象は…火事場の馬鹿力かもしれんなぁ……多分」
「なわけあるか!?そんな頻繁に馬鹿力起こってたまるか!!?死んでまうわ!!!?」
「だから多分って言ったじゃないかー!?」
仮に火事場の馬鹿力だったとしても、無意識に脳のリミッターをぽんぽん外せば筋肉や骨の負担がとんでもないことは目に見えていた。
「まぁ…馬鹿力のことは置いておいて、カズが元に戻って良かった」
「すまなかった、バン」
「いいよ!カズのせいじゃないんだしさ!」
「そうよ!いつまでもそんな空気でいないで、シャキッとしなさい」
とにかくまたいつものバンらに戻って安心した。
だがアミのさっきの発言、姉貴みたいな感じだな。でもリュウみたいな変な男らに好かれてることもあるから、俺としてはアミの将来が心配だ。
なんて軽く思ってたら、クノイチが短刀コダチを俺の目の前で向けてくる。
「ねぇユウ、今何か変なこと考えてなかったかしら…?」
「あーうん、特に…ナニモー……」
アミの表情は笑顔ではあるものの目が笑っておらず、虚だった。
触らぬ神に祟りなしとはまさにこのことだ。
■
「カズ、次に買う新しいLBXは決まった?」
「う〜ん」
「ウォーリアーはナイトフレームだったから、気分を変えてクノイチと同じストライダーフレームにしてみる?」
「う〜ん」
「郷田さんの、ハカイオーみたいな、ブロウラーフレームが、好き」
「う〜ん」
放課後、カズがどのLBXにするのか迷ってるため、皆で会議を行なっている。俺としては普段からカズが扱い慣れているナイトフレームの方が良い気はする。
「ブルドにしろよ、ブルドに。重火器も装備出来ちゃうし。なんたって、パンツァーフレーム!二足歩行じゃない。なんでも踏み潰して突き進むあの感じ、チョー最高だぜ!」
「う〜ん」
「ワイルドフレームっていうのも、アリかもね」
「ブロウラー」
「ブルド〜〜〜〜〜!」
ブルドに対する熱意が凄まじいリュウであった。
だが色んなフレームを勧めても、選択肢が増えて余計にカズが迷うだけだろう。
「カズ、なにか良いなって思うのないの?」
「う〜ん。よし!今からキタジマにLBX見にいこうぜ!やっぱここで悩んでるよりも実物見たほうが早いぜ!」
カズのLBXの為、目的地であるキタジマ模型屋に向かうことにした。しかし店内を物色してもカズが求めるは無かった。
「それでカズは一体どれにするんだ?」
「やっぱり、使い慣れたナイトフレームがいいんじゃない?」
「う〜ん。どれもなんかピンとこないんだよなぁ…」
「LBXをお探しのようだな?だったら、イイ物があるんだが…」
突然後ろから声が聞こえて振り向いてみると、俺たちに声を掛けた男から微かなコーヒーの香りが漂った。
そしてその人がショートエプロンと赤いストライプベストを着ていたのを見てハッとする。俺はこの男を知っていた。
「レッ……檜山さんじゃないっスか…!」
「堅苦しいなユウ、いつも通り蓮さんって呼ばないのか?」
「あぁ!檜山さん!」
「檜山さん?店長、この人、誰?」
蓮さんの圧力に屈しそうになるが、丁度いいタイミングで店長が来てくれた。正直助かった。
「この人は、最近この商店街にできた喫茶店ブルーキャッツのマスターの檜山さんだ」
「あ、そのお店知ってる。LBXを飾ってる喫茶店でしょ」
結構前にミソラシティの商店街で喫茶店をやるとは本人から聞いてはいたがLBXを飾る喫茶店は斬新な発想、相変わらずLBX愛に溢れてる人だ。
「みんな、よろしくな」
「店長とはお知り合いなんですか?」
「あぁ、北島さんとは、コーヒーとLBXの話で気が合ってね。仲良くさせてもらっているんだ」
「ところでさっき言ってたイイ物って?LBXのこと?」
蓮さんがキタジマ模型店にいるにあたって、そのイイ物とはきっとLBXのことだろう。
だが出会ったばかりの少年にLBXをプレゼントするのもおかしな話、たとえそれが蓮さんといえども怪しさしかない。
「興味があるようだな?だったら、モノを見たほうが早い。今からブルーキャッツに来ないか?」
「行く!いや、ぜひ行かせてください!」
本当に大丈夫かと思いつつ、キタジマ模型屋の隣にある喫茶店ブルーキャッツへ向かうことにした。
■
喫茶店ブルーキャッツの店内はゆったりとしたBGMが流れており、店内に漂うコーヒーの香りと木の温もりが香る空間、ゆったり過ごす至福の時間にはぴったりな場所だ。
ふとカウンター席を見ると、スーツを着こなした金髪の男と目が合った。
「ようこそ、ブルーキャッツへ
」
「君が、山野バン君だね」
「そうだけど……、誰?」
「俺は、宇崎拓也。優秀なLBXプレイヤーの君たちにぜひ見てもらいたいものがあるんだ」
「その前に、君のLBXを見せてくれないか?」
バンは蓮さんの言言われた通りにアキレスを渡した。すると檜山さんはアキレスの隅々まで観察し始める。
「白いLBX…。コイツは、すげぇLBXだな」
「見ただけでわかるの!?」
「パーツは最新式、機体のバランスも良い。それに、メンテナンスも十分にしてあるようだ」
「うん、こいつはすごいんだ。やっと手に入れた、俺だけのアキレス」
アキレスを褒める蓮さんにバンは嬉々としながらアキレスを語る。何故ならアキレスは、LBXはバンの親父さんである山野淳一郎が作ったからだ。
だがバンの親父さんは2045年の飛行機事故で消息、バンにとっては唯一のバンの父さんの繋がりはLBXだけとなったのだから。
「それで…見せたいモノというのはこれだ」
「わぁ…」
「見たことない。これって新型!?」
「すっげぇ…このLBX……」
アキレスの観察をした蓮さんがカウンターテーブルに置いたのは、市販では売っていない新型LBXの箱だ。
箱を見る限り、そのLBXのアーマフレームはワイルドフレームの狙撃型、LBXの名は“ハンター”。
「どうだ、組み立てるか?」
「良いの!?」
こうしてカズはその場でハンターを組み立てることにした。しかしカズはナイトフレームに対応しているコアスケルトンしか無かったため、一旦キタジマ模型屋に戻って、ワイルドフレーム対応のコアスケルトンを購入した。
そしてブルーキャッツに帰ってきたカズはスムーズに組み立て、ついにハンターは完成した。
「カッコいい!」
「うん!」
「君たちに来てもらったのは、単にこのLBXを見せるためではない。これから話すことは他言無用。絶対秘密にしてくれ。わかったな」
やはりうまい話には裏がある。いくらなんでもタダでLBXをあげるわけないと思っていたが、案の定であった。
「財前宗助を知ってるか?」
「ざいぜん…そうすけ?」
「なんで知らねぇんだよバン…」
「そうよバン!新しい総理大臣でしょ!常識よ!!」
宇崎さんの口から出たのは我が国の総理大臣、財前宗助のことだった。褐色の肌色でネイビー色の左に大きく分けた髪型が特徴の総理大臣だ。
「その財前総理の命を狙う組織があるんだ」
「「「え〜〜!?」」」
「俺たちは、それを絶対阻止したい。その為に、君たちに協力してほしい」
財前総理の命を狙う組織、あまりにも話のスケールが大きいすぎてまるで作り話のようなそんな感じた。
俺は宇崎さんに警察はどうかと提案したものの、警察に話して安心できる状況じゃないと言われてしまう。
「どうして、俺たちが?」
「総理暗殺には、LBXが使われる」
「は?LBXだと!?」
「LBXが!?そんな…。信じられない……」
「残念だが、本当だ。だからLBXに対抗するにはLBXを使うしかない。」
怒りが込み上げくる。バンの親父さんが作ったLBXを人殺しの道具として使うなんて消して許されるハズがない。それにバンにとっては唯一のバンの父さんの繋がりはLBXだけ、そのLBXを悪用するなんてふざけている。
「その為には、君たちの様な優秀なLBXプレイヤーの協力が必要なんだ。山野バン、川村アミ、青島カズヤ、黒田ユウ!是非、君たちの力を貸してほしい……ッ」
最初は関わるつもりはないと思っていたが、財前総理を殺す為にLBXを人殺しの道具にする組織を許してはならない。
こうして俺の答えは決まった。
だが俺はここで身を引くべきだった。何故なら、俺の人生はここから大きく狂ってゆくのだから──────────