ダンボール戦機-Zero-   作:赤倉翔

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第8話 秒殺の皇帝

 今日の学校の朝、俺はバンたちに屋上に呼ばれた。呼ばれた理由について考えたがよく分からなかった。

 

 

「ユウ!」

 

「ん?どうしたんだバン?」

 

「…ごめん!」

 

「もしかして、俺のサラマンダーMk-Ⅱのことか…?」

 

 

 どうやらバンたちはエンジェルスターでサラマンダーMk-Ⅱが壊れたことに責任を感じているようだ。

 

 

「ユウ、ごめんなさい!」

 

「すまんユウ、俺がもっとあの重機に注意していれば…」

 

「全然いいんだよ、サラマンダーMK–Ⅱが壊れたぐらいで…」

 

「でも…私たちは…っ!」

 

「大丈夫だって、俺はLBXよりもお前らが無事で良かった!」

 

 

 確かにあの重機との戦いでサラマンダーMk-ⅡとCCMを失ってしまった。だけどあれは自分の意思でやったこと、バンたちが責任を感じることはないからな。

 

 

「ほら!さっさと教室に戻ろうぜ!」

 

「…うん!そろそろ授業が始まっちゃうし、早く教室に戻ろう!」

 

「あぁ…そうだな!」

 

「だったら早く行きましょ!」

 

 

 こうしてバンたちと俺との間にある気まずい空気は無くなった。

 そして教室に戻るとリュウを筆頭に何やら騒いでいた。どうやら大ニュースらしく、うちのクラスに転校生来るみたいだ。

 

 

「はい、みんな席に着いて〜」

 

「先生!今日って、転校生が来るですよね?」

 

「転校生?」

 

「だって、さっき教頭先生と……」

 

「盗み聞きしてたのね」

 

 

 どうやらリュウは先生と教頭先生の話を盗み聞きしたみたいだ。それを指摘されたのか、リュウはたじろいてしまう。

 

 

「まぁ、いいわ。リュウくんの言う通り今日、このクラスに転校生が来ます。ただちょっと遅れてる見たいで……」

 

 

 みんな転校生がやって来ることに気持ちが落ち着いていないのか、ソワソワした様子だ。

 しかしそんな時間は突如終わりを告げる─────

 

 

「!」

 

「何、なんなの?この音?」

 

「なんだ、なんなんだ?アミちゃん、こえーよ〜!」

 

「海だ!海の方から聞こえてくる!」

 

 

 教室が揺れるとともにキーンとジェット音が響く。音がする方に向くと超低空で飛行する戦闘機が視界に入る。

 

 

「あ、あそこ!こっちへ来る!」

 

「ちょ!?なぜに…!?」

 

「せ…戦闘機!?」

 

「ひぇー、ぶつかる!」

 

 

 身構えるバン、呆然としているアミ、狼狽える先生、己の死を悟ったかのように気絶するリュウ、この状況に対するみんなの反応はそれぞれだった。無論俺は絶句している。

 転校生が初日から戦闘機で登校するなど誰が予想できたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ〜、海道ジンっていうのかあの転校生……」

 

「それがクールっていうか、ちょっと変わってるのよね。先生が自己紹介しろって言っても別に話すことはありませんだもん。先生も困っちゃたみたい」

 

 

 明らかに異質。どこか海道ジンは他人との接触を完全に絶ち近寄らせない空気があった。

 

 

「とにかく、興味ありませんって感じで完全無視なんだから…ね、バン」

 

「え?う、うん…」

 

「ま、転校してきたばかりだし、そういうヤツもいるさ」

 

 

 確かに海道にLBXの話をしても、顔を見つめるばかりで会話が続かなかった。正直気まずかった。

 

 

「それより分かってるよな?」

 

「わ…分かってるってって、ブルーキャッツね。アングラビシダスの情報を聞かないといけないもん」

 

「あぁ」

 

 

 雑談しながら俺たちは下校する。目的地はブルーキャッツ、アングラビシダスの情報を聞くため向かう。

 

 

「ユウはアングラビシダスに参加するのか?」

 

「あー…悪いけど今回はアングラビシダス参加しねぇわ俺」

 

「え?今回は…ってどういうこと?」

 

 

 どうやらアミは俺が過去にアングラビシダスに参加していたことに食いついたようだ。バンたちにも言っていなかったので驚かれるのも無理はなかった。

 

 

「ま…まぁ過去に何回も出場してたってだけだ!だから何か出来ることがあれば一応なんでもするからな…」

 

「へぇ…なんでもねぇ〜…」

 

「…やべっ」

 

「そういうことは、あまり言わない方が身のためだぞユウ?」

 

 

 アミにの言質を取られ、バンにそのことを指摘されてしまった。誠意を見せたいあまり軽い気持ちで言ってしまったが軽く後悔している。そんなことを思っていると目的地であるブルーキャッツに到着した。

 

 

「ようやく来たか、それよりアングラビシダスについて説明する。ルールはアンリミテッドレギュレーション、つまりは…どんな攻撃も許されるルール無用の闇LBX大会だ」

 

「ルール…無用…!?」

 

「参加するのは情け容赦のない強者ばかり、まさに生きるか死ぬかの戦いだ」

 

「生きるか死ぬかの戦いか……」

 

 

 経験者からするとアングラビシダスは曲者揃い、箱の中の魔術師を筆頭に首狩りガトーなど、どれも厄介な連中ばかりだ。それに磁場爆弾、フリーズグレネード、ヒートグレネード、なんでも御座れだ。

 

 

「君たちもアルテミスのこと知ってるな?」

 

「LBX世界一を決める大会でしょ。LBXプレイヤー、みんなの憧れだよ」

 

 

 アルテミスとはオメガダイン主催のLBXの世界大会で、正式名称はTHE LBX WORLD CAMPIONSHIP ARTEMISLBX(世界大会アルテミス)だ。

 出場資格は世界各地の地区別選手権を制した者や、それらと同等の権威を持つ他のLBXバトルの大会で優勝した者、スポンサー枠公式宣伝チームになった者、といった条件で選抜されるといった感じだ。

 

 

「でも、それがアングラビシダスとどう関係あるんだ?」

 

「次のアングラビシダスに優勝した者には、アルテミスへの特別出場枠が与えられる」

 

「特別枠が!?」

 

 

 どうやら今回のアングラビシダス優勝者にはアルテミスの特別出場枠が与えられるみたいだ。中々粋な計らいをしてくれるようだ。

 

 

「あぁ。つまりその特別出場枠を狙って、いつも以上に激しいバトルが行われるだろう」

 

「…ってことはイノベーターのヤツらも、アングラビシダスに参加するってことっすね」

 

「そうだ。もちろんイノベーターの目的はバンを参加させて、バンのLBXを破壊すること」

 

「罠ってことか…」

 

 

 きっとイノベーターは凄腕のLBXプレイヤーを送り込んでくるのは確実だろう。でなければエンジェルスター潜入時にヤツらがアングラビシダスに参加しろと言うはずがない。

 

 

「あぁ……バン、それでも参加するか?」

 

「もちろん参加します!ヤツらが挑んで来るなら、俺は受けて立ちます!」

 

「優勝しても、ヤツらが山野博士を解放するとは限らないぞ」

 

「それでも、何か手がかりは掴めるかもしれません」

 

 

 だからといってバン一人でアングラビシダスに出場させるわけにはいかない。今のバンの実力では仙道どころか首狩りガトーにすら勝てやしない、圧倒的に不利だ。

 

 

「私たちも参加するわ」

 

「そんな危ない大会にバンだけで行かせるわけにはいかないからな」

 

「カズ……、アミ……」

 

「バン…すまん……」

 

「良いんだよ…、俺…ユウの分まで頑張るから!」

 

 

 そう言われたら仕方ない、言われたからにはビシバシとバンらを鍛えさせなければいけない。

 優勝者にはアルテミスの特別出場枠が与えられる。仙道には勝てるようにならなければアングラビシダス優勝は夢のまた夢だ。

 

 

「……分かった、出場登録はこちらでやっておく。次のアングラビシダスの開催は1週間だ」

 

「1週間後!?それじゃあ、早速キタジマに行って練習しないと!?」

 

「その前に、アングラビシダスの会場を見ておいた方がいいだろう」

 

「え?見られるんですか?」

 

「アングラビシダスは、この下……ブルーキャッツの地下で行われる」

 

 

 蓮さんが言うにはブルーキャッツの地下でアングラビシダスがあるとかなんとか。どうなってんだよブルーキャッツ、一応蓮さんからカフェと聞いていたハズだが。

 

 

「地下で行われるなんて、なんかいかにも闇の大会って感じよね」

 

「でもなんでこの店の地下なんですか?」

 

「とりあえずそこの右にあるドアだ。開けてみろ」

 

 

 蓮さんの指示に従ってドアを開ける。どうやら右にあるドアはエレベーターらしく、アングラビシダスの会場となる地下に向かうことが出来るようだ。

 

 

「着いたぞ。ここがブルーキャッツの地下、アングラビシダスの会場だ」

 

「これが、アングラビシダスの会場…」

 

「地下にこんなところが……」

 

「すごい……」

 

 

 久しぶりに会場に赴いたが、やはりアングラビシダスは闇の大会にふさわしい場所だ。その会場で行われていたスパーリングバトルで、俺らは謎の転校生である海道の姿を見かける。

 

 

「へっ!3人がかりで、いきがるからこんなことになるんだよ」

 

「………」

 

「トドメだ!!」

 

 

 あの3人組の操るLBXはズールを中心にカスタマイズを施してるようだが、あれではカスタマイズとは言えない。

 それに対して海道のLBXはどこか禍々しさを感じる。その圧倒的な姿はまるで皇帝のようだった。

 

 

「………」

 

「なに!?」

 

 

 ズール3機が海道のLBXを追い詰め、一気に剣を振りかざした。しかしナーズの攻撃は海道のLBXに当たることはなかった。

 轟音を発する海道のLBXは瞬く間にナーズを踏み台にし、10秒と経たず地面から離れた。

 海道のLBXは地面が離れて行くことを確認すると、ハンマーをナーズ三機に向かって振り下ろす。重力も味方にしたハンマーの威力はバカにならず、一撃でナーズ3機はロストした。

 

 

「24秒17……」

 

「あそこから逆転するとは、すげぇヤツだな…」

 

「いや違う。海道のやつ…3機を同時撃破の機会をうかがっていやがった…」

 

「えっ…!?」

 

「まさか!?」

 

 

 驚異的なLBX操作技術に操縦技術や反応速度、CCMの操作スピード、どれも異常なまでに凄まじい。バンたちがアングラビシダスを優勝する為にも越えなきゃいけない最大の壁だろう。

 

 

「あいつは全て計算していた、あれが…海道ジンの実力!面白くなってきた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3機同時撃破なんて凄いテクニックね」

 

「あんなの真似しろって言われても俺には無理だな」

 

「私なんか、何が起こったのか分からなかったもん」

 

「でも、勝たなきゃいけないんだ」

 

「バン…」

 

 確かに海道の操作技術は異常なまでに凄まじいものだった。だけどバンの親父さんやアルテミスのこともある、必ずバンらには優勝しなきゃならない。

 

 

「1週間後か……よし、それまでみっちり鍛えなきゃな…」

 

「店長が?」

 

「悪いが俺じゃない。バンたちのコーチはユウにやってもらう」

 

「あっ…俺なんですか!?」

 

 

 突然店長にバンたちのコーチを任命された。

 何を教えればいいのか分からなかったが、手っ取り早い方法ならばコアカスタムだろう。それに属性ついての特訓をした方が良さそうだな。

 

 

「ユウって今LBXないだろ?」

 

「店長から借りるから問題ねぇよ。じゃあ訓練始めるから、AX–00装備して俺とバトルだバン」

 

「なッ!?無茶言うなよ!そんなの勝てっこねーじゃねーか!?」

 

 

 破壊の祭典と呼ばれているルール無用のアングラビシダス、通常なら禁止とされるアイテムとか戦法も自由に扱うことができる。そんなことで根を上げるようならば、優勝なんて到底出来ない。

 

 

「どうするんだ?今のお前らの実力じゃあ、アングラビシダス優勝は夢のまた夢だぞ?」

 

「分かってる、だからこそ俺は強くなるんだ!」

 

「よく言ったバン!ホラ、さっさとアーマーフレームをAX–00に変えて特訓すんぞ」

 

 

 俺は預かっていたAX-00の装甲をバンに返した。バンがAX-00の装甲を装備したのを確認すると、俺は店長に借りたグラディエーターを手に取る。

 

 

「でも、どうしてAX–00にする必要があるんだユウ?」

 

「それはだなぁバン、相手の物理属性を見極めるからだ。下手に装甲があると頼りきりなって、物理属性にまでは気が回らないからな」

 

「物理属性……」

 

「たとえどんな強敵でも、どの種類の物理属性攻撃に弱いか、それさえ分かれば勝つことは可能だ」

 

 

 物理属性は、この3種類で構成されている。AX–00は衝属性の攻撃に弱いタイプだ。バンには一度それを体験させようとのことだ。

 

 

《 バトル スタート 》

 

 

 グラディエーターはAX-00に向かってカブトハンマーを振るう。一方のAX-00はアキレスシールドを構えてグラディエーターの攻撃を防いだ。

 

 バンのLBXの性能は従来のLBXをはるかに上回っている。だからこそバンの機体の反応速度とCCMの反応速度について行くには、経験と知識が必要になる。

 

 

「どうしたバン!お前の実力はそんなんじゃねぇだろ!?」

 

「くっ…!」

 

 

 攻撃の隙も与えず、ハンマーを構えて突進する。そしてその勢いでハンマーを振り下ろした。

 しかしその時、ハンマーを振り下ろそうとするグラディエーターの動きが止まった。グラディエーターの反応速度とCCMの反応速度にズレが生じていた。

 

 

「グラディエーターが止まった今なら…っ!!」

 

 

 AX-00は透かさず動きが止まったグラディエーターに対し、アキレスランスによる連続突きを放った。

 当然動きが止まったグラディエーターは防ぐことも出来ず、ランスによる連続突きによって吹き飛ばされた。

 

 物理属性ということもあってグラディエーターはブレイクオーバーした。

 

 

「どうだ?とりあえず物理属性が大事ってのは分かったか?」

 

「あぁ!物理属性って大事なんだな!」

 

「じゃあ第二段階に入るぞ。バン、これを受け取れ」

 

 

 今度はバンにムシャの装甲を渡す。

 バン、アミ、カズの3人はムシャの装甲を渡した俺の行動に疑問を抱いたみたいだ。

 

 

「ムシャ?どうして?」

 

「ムシャは衝属性の攻撃に強いからな、今度はグラディエーターが繰り出す衝属性の攻撃に耐えられるハズだ」

 

「なるほど!」

 

 

 バンらに分かってもらったところで俺はグラディエーターをフィールドに投下した。それに続いてバンもアーマーフレームをAX–00からムシャに変え、フィールドに投下したところでバトル開始される。

 

 

《 バトル スタート 》

 

 

「今からは実戦を想定した特訓だ!ここからはどんな装備でもいいけど、そのかわり俺はどんな手も使うからなー!」

 

 

 俺はそう言ってムシャに向かってロケランを構える。中身はもちろんスタングレネード入りだ。

 スタングレネードの効果は相手のLBXに投げつけるとスタン状態になるため通常ならば禁止アイテムなのである、通常は。

 

 しかし破壊の祭典と呼ばれているルール無用のアングラビシダスは通常なら禁止とされるアイテムや戦法も自由に扱うことができるのだ。

 

 

「オラオラどうした!?さっさとかかって来いやァ!!」

 

「気をつけてバン!一度でもスタングレネードに当たったら…っ!!」

 

「くっ…ユウの野郎!いくらなんでも卑怯だろ!?」

 

 

 アングラビシダスはこんな手を使うヤツなど幾らでもいるのだ、俺も含めてだが。

 結果こそ全て、勝者こそが正義、アングラビシダスとはそういうものだ。

 

 

「これなら…どうだ!!」

 

「奇襲攻撃か?甘いわッ!!」

 

 

 岩陰に隠れていたムシャはグラディエーターの隙を狙って、一気に飛び出した。だがそれを狙っていたグラディエーターはスタングレネードをゼロ距離からムシャに放つ。

 当然ムシャはスタン状態、それを確認したグラディエーターはコマンドハンドガン二丁に変える。

 

 

「必殺ファンクション!!」

 

 

《Attack Function! ブラッディーレイン!》

 

 

 コマンドハンドガン二丁から放たれる銃弾の雨がムシャを襲う。銃弾の雨を浴びたムシャの体力ゲージはじわじわと削れ、最終的にムシャは青白く光って散った。

 

 

「ファイナルブレイク…ってことで今日の特訓はここまでだな」

 

「アングラビシダスの参加者は…今みたいな戦い方をするのか…!?」

 

「当たり前に決まってるだろカズ、基本的にあの大会ってのはそういうLBXバトルをする連中の集まりだ」

 

 

 先程のアングラビシダスの参加である首狩りガトーの戦い方を参考にしている。アイツはLBXの首を切り落とす派手なパフォーマンスを披露する、参考になるだろう。

 

 

「改めて分かったよ。アングラビシダス優勝への道は険しいんだな…」

 

「あぁ…今のままだとダメだって思い知らされたよ…」

 

「でもいつまでもくよくよしてる暇なんてないわよ2人!ほらユウ!今度は私の番よ!!」

 

「あっ!?ずりぃぞアミ!俺まだ一回も特訓してないぞ!!」

 

 

 アングラビシダスに参加することが出来ない俺が出来ること言えば、バンたちの特訓と3人の健闘を祈ることしか出来ない。だからこそ全力でバンたちをサポートしなきゃならない。

 それがアングラビシダス優勝に繋がるのかどうかはバンたち次第だ。




(早くイプシロンを登場させたいなんて…言えない!)
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