『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい』
ガチャン…
「ふぅ…」
学生服の少年は駅の構内でつながらない電話の受話器を置いた。
少年は先程も何度か同じ行動をしたが、もう一度周りを見渡す。
だが、それは駅なのに人っ子一人いない言葉通りの無人駅だという事を再確認しただけだった。
「まったく、リニアがここで止まるとは…電話も繋がらないし、どうしろってんだ?…でも」
カシャ…
少年は胸にかけてあるトイカメラで写真を撮り始める。
「無人の駅っていうのも珍しいな」
少年の持っているトイカメラは、昔『おじいちゃん』と『お姉ちゃん』から貰ったものだった。
自分が尊敬する人とまったく同じタイプのモノだが、唯一違うのはその人のはマゼンダで、少年のは白だという事だ。
(貰った時は、『お兄ちゃん』とお揃いだって喜んだな)
少年は一通り写真を取ると、改札口に向かう。
(とりあえず『迎え』を待つか…)
少年は一枚の写真を見る。
知らない女性が悩殺ポーズを取っており、ご丁寧に『ここに注目』なんて胸にチェックをつけている。
(いったい、今日何があるんだろうか?)
事の発端は数日前、少年宛に郵便が届いた。
今まで碌に郵便なんて届かなかった少年は最初は『お兄ちゃん』かと思ったが、それは簡単に打ち砕かれた。
郵便封筒の表には少年の名前…『碇シンジ』と書かれていて、裏の差出人には『碇ゲンドウ』と書かれていた。
(顔も碌に覚えてない父親から来るなんて、『お兄ちゃん』から来るより想像できなかったな)
入っていたのはこれまた父親が息子に送る内容とは思えなかった。
まず、入っていた手紙だが、これがふざけている。
ただ『来い ゲンドウ』と書かれていただけだった。
その時は、こんな人間と結婚したのかという母のキモチと、こんな人間の血を継いでいる自分を少し呪った。
次に真っ赤な無地のIDカード。
一体どこのカードなのかはわからないがこんなモノを送りつけたのだ。ロクデナシにはロクデナシなりの事情があるのだろう。
それと、今ここにいる、『第三新東京』までの片道切符。ご丁寧に日付・座席指定だった。
グリーン車じゃなかったけど。
最後に、この写真だ。なんでもこの写真の人物が迎えに来るらしかった。
「まったく…まぁ、いいか。写真も取れるし。今度は街を撮ってみよう」
シンジは改札を出て、駅の出入り口から出る。しかし、周りには人っ子一人いない。
「まったくの…無人か」
とりあえずシンジは写真をとってみることにする。
人のいない街の風景はどこか、おかしい。
やはり、『街』に人が存在しなければ、『街』も存在を失いかけるのだろうか。
カシャ…カシャ…カシャッ…
(え…!?)
シンジはレンズ越しに人影を見つける。
それは少女だった。
年はシンジと同じくらいだろう、どこかの制服を着ているから学校の帰りかもしれない。
薄いブルーの髪に赤い瞳という神秘的な魅力を持つ少女だった。
シンジはレンズから目を離して再び見ようとしたが、
ゴーーーーーー!
「むがっ!」
低空で戦闘機が飛び、突風で少女から目を離してしまう。再びシンジが見た時、そこには誰もいなかった。
「誰だったんだ、あの娘…でも、一枚撮ってみたかったな」
シンジは先程の戦闘機を見る。
「まったく、あの戦闘機のせいで台無しだな。一体なんでこんな所を…うぉ」
シンジはリアクションとしては薄いが、驚いた。
なんと戦闘機が向かう方向には巨大な怪獣…というかモンスターのようなものが立っていた。
それは人類の敵、第3の使徒…
第三新東京市、某所
その日、薄暗い発令所は喧噪につつまれていた。職員達はあわただしく動いている。情報報告と指示の通信が飛び交いあっていた。
『正体不明の移動物体は依然本所に向かって進行中』
『目標を映像で確認、主モニターに回します』
正面の巨大なモニターに第3使徒が映し出された。その黒い巨体に群がっているのは戦自の戦闘機だ。
「15年ぶりだね」
「ああ、間違いない…使徒だ」
発令所のすみで喧噪など関係ないかのようにサングラスの男と白髪の老人はあらかじめ決められたシナリオを確認する。
彼らにとってこれは予想された事態だ。
『目標は依然健在、第三新東京市に向かい進行中!』
『航空隊の戦力では足止めできません!』
「総力戦だ。厚木と入間も全部あげろ!」
「出し惜しみは無しだ!なんとしてでも目標を潰せ!」
その二人と対照的に戦自の制服を着た将校は大声で叫ぶように各所に指示を出していた。かなり興奮しているようだがその思いを無視するように第3使徒は歩を進める。
戦自の部隊は足止めにもならない。障害物として適当に排除されて行っている。
「なぜだ!?直撃のはずだっ!」
「戦車大隊は壊滅…誘導兵器も砲爆撃もまるで効果無しか…」
「駄目だ!この程度の火力では埒があかん!」
戦車や戦闘機の砲撃は確かに第3使徒に命中していたが第3使徒はまったく意に介さない。
それに比べて戦自の戦力は第3使徒が攻撃する度に確実に数を減らし、消耗するばかりで完全なワンサイドゲームの様相を呈していた。
「やはり、ATフィールドか?」
「ああ、使徒に対し通常兵器では役に立たんよ」
モニターに映る第3使徒はその言葉を証明していた。そして戦自将校達は一つの決断をする。
「…わかりました。予定通り発動いたします」
「おお、戦ってるな。あっ、打ち落とされた。戦っている人には悪いけど、まるで特撮だな」
シンジは飄々と言うが、頭の中では整理するのでいっぱいだった。
(あの化け物…『魔化魍』の『オロチ』、大型の『ギガンテス』や『サバト』並にでかい。しかも…)
シンジは確認している。あの化け物が張っている妙なバリアのようなものを。
(通常兵器がまったく役に立たないか。まったく…こんな所に呼び出していったい…ん?)
急に車の爆走音が聞こえる。
爆走した車は急ブレーキをかけて、助手席側をシンジの目の前にして止まる。
すぐにドアが開き、写真の女性が運転席にいる。
「乗っ(ドス、バン)…て。はれ?」
「初めまして、だ。確か、『葛城ミサト』さんだったな。出迎えご苦労。危ないから早く出せ」
「う、うす」
どこか反論をさせないシンジの言葉に女性はそのままエンジンを再びかける。
「遅れてごめんなさい…いいわけにするつもりはないけど、あそこで電車が停止するのは予想外だったの、しかも緊急事態で情報伝達されなかったからあなたの居場所が分かったのもついさっきなのよ」
「まあいいさ。お陰で写真を撮る時間はたっぷりあったし」
「写真?」
「趣味だよ。で、緊急事態ってのは『アレ』か?」
シンジはおもむろに『アレ』を指す。
「『アレ』、なんだ?」
「あれは使徒よ、人類の敵ってやつ」
「使徒?人類の敵?」
シンジはミサトの顔に殺意が走るのを見逃さなかった。
(なんか恨みでもあんのか?…ん?)
「おい、あの使徒って奴をほっぽって戦闘機がどんどん離れていくんだが、なんかすんのか?」
「え…?ま、まずいN2が!…シンジ君伏せて…」
そう叫んでミサトはシンジをまもるべくおおいかぶさった。次の瞬間、強烈な閃光と共にN2地雷が爆発し衝撃破がおこった。
「やった!」
閃光の中に第3使徒が消えた。
その瞬間UNの将校は勝ちを確信して叫ぶ。町一つを丸々吹き飛ばす火力だ。
生きていられるはずがない。
「残念ながら君たちの出番はなかったようだな」
すべて終わったとばかりに将校達はサングラスと白髪の男に勝ち誇った笑みを向ける。口調が横柄なのは自分たちの最大火力に対する絶対の自信だろう。
しかし男達は将校を無視するように無言…
『衝撃波来ます』
オペレーターの報告と同時にセンサーとメインモニターの映像が消えサンドストームになった。
『その後の目標は?』
『電波障害のため、確認できません』
「あの爆発だ。ケリはついている」
将校の声には勝利者の余裕が伺えた。しかし彼らの天下は一分と持たなかったが…さらにオペレーターの報告は続く。
『センサー回復します』
『爆心地に、エネルギー反応!』
「なんだとぉ~っ!」
さっきまでの余裕がどこかに吹っ飛んだ将校は信じられない思いでその報告を聞く。信じられないと言うより信じたくないと言った感じだ。
『映像回復します』
再びメインモニターが回復して映像が映る。そこに映った物は将校達を絶望させるに十分だった。
「わ、我々の切り札が…」
「なんてことだ…」
「化け物め!」
そこには多少表面に焦げ目を残して丸く蹲ってはいるが健在な第3使徒の姿があった。
致命傷どころか思っていたよりはるかにダメージが少ない。
シンジはひっくり返った車のドアから外に出る。
「いたた…まったくなんてサプライズだ。着いたそうそうこの日本でN2爆撃被害に逢うとはな。神様って奴は俺の事が嫌いなのか?」
「イタタ…シンジ君大丈夫!?」
「大丈夫だ。まったく、ここ確か遷都予定地だろ。なんで今更地図を書き換えるんだ」
「そ、それぐらい使徒は倒さなきゃいけないって事よ」
「じゃあ…」
シンジは指を刺す。
「なんで死んでないんだ?あんな威力の爆弾いくらするだよ。高い金払って変えなくていい地図変えただけじゃねぇか」
第3使徒はぴんぴんしていた。
「くそ、顔が二つになってお得感がでてやがる。コンパチ商品かっての」
「わかっていたけど…早く戻らなきゃ。ゴメン!車起こすの手伝って!」
「ん、そうだな。ちょっとどいてくれ」
「へっ?」
シンジは車を起こす為に頑張っていたミサトをどけると、
「ふんっ!」
ぎぎぎ…ドスンッ!
なんと一人で車をひっくり返して、元に戻した。
「な、ななな…」
「さてと…おい、行かないのか?」
「す、凄いわね。シンジ君」
「鍛えているからな」
と、気を落ち着けながらミサトは運転席に乗ると、車を発進させた。
国連軍の人が電話の受話器を置いた。
「碇君、本部からの通知だよ。」
そう言われ、立ち上がる男。
「今から、本作戦の指揮権は君に移った、お手並み拝見させてもらおう。」
「だが碇君、君なら勝てるかね。」
「ご心配なく、そのためのネルフです。」
中指でサングラスの位置を直しながら『碇ゲンドウ』はそう言った。
シンジとミサトは現在地下に向かっていた。ミサトの見事なドライヴィングテクニックの素晴らしい勢いで直通カートレインに突入してすぐのことだ。
「シンジ君お父さんからIDカード預かってない?」
「これのことか?」
シンジはポケットからIDカードを取り出してミサトに見せる。
「ありがと。じゃーこれ読んでて」
ミサトはシンジからIDカードを受け取ると一冊のパンフレットをシンジに渡した。
パンフレットには表紙に『ようこそネルフ江』とでかでかと書かれている。
まるで温泉地か観光地の案内が書いてありそうだが、隅にある『極秘』のスタンプがある程度重要書類なのを示している。
が…
「激しくツッコンでいいか?」
「駄目」
「極秘なのになんで『ようこそ』なんだ?」
「当方はツッコミを一切受け付けません」
「造ったのか?わざわざ」
「禁則事項です♪」
「それはもうちょっと可愛くて若い子がやるべきだ」
シュッ、ゴスッ…
鈍い音がシンジの頭に直接響く。見事な頬への一撃だった。見えなかった。
「ぐっ…」
「読んでね♪」
「イエッサー」
シンジはパンフを開いてゆっくり読み始めた。
「シンジ君はお父さんの仕事知ってる?」
「知らん」
パンプから眼を話さずにシンジは答える。
「第一、顔も覚えていない人間の仕事なんて知るわけないだろう」
「へっ?そうなの?」
「当たり前だ。金だけは送ってはくれているが、それ以外は何もしらねぇよ」
「お父さんのこと嫌いなの…?」
「それも知らん。まあ、一つ感謝しているのは…」
シンジは言葉をとぎり…
「まあいい。で、親父の仕事ってのはなんなんだ?」
「あ、えっと。『人類を守るための仕事』かな?」
「…環境局?このイカれた地球を元に戻そうとでもしてんのか?」
ミサトは何かを言い返そうとしたが、ジオフロント内に入った時、シンジが目の色を変えて写真を撮り始めたので、会話は中断された。
それから…
ネルフ本部通路。シンジは地図を片手に進むミサトの後について歩いていた。
シンジはさっきまで写真を撮っていたが、今は撮っていない。
さきほどから同じ場所を何度も通っているからだ。
前のミサトは同じ通路を何度も通っては地図を見直してる。
「おい、迷ったのか?」
その言葉にミサトはあわてて振り返り引きつった笑みを浮かべている。
「そ、そんなことは~」
「あるんだな」
「はい、ゴミンね~、まだ配属されたばかりでなれてないのよ~」
シンジはため息をついた。
いい加減同じ所をグルグル回るのは嫌みたいだ。
「こういうときはだれかに連絡を取って迎えにきてもらうのはどうだ?」
「そ…そうよね、システムは使うためにあるのよ」
そう言って内線に手を伸ばすミサトの後姿を見てシンジは『デパートの迷子の呼び出し』を思い出した。
10数分後、エレベーターが開き中から一人の女性が出てきた。
エレベーターを待ってたミサトは彼女の不機嫌を隠そうともしない表情に真っ正面から見つめられ一歩後ろに引く。
「何やってたの葛城一尉。人手も無ければ時間も無いのよ」
「ゴミン!」
そう言った後女性はシンジを振り返る。
女性は金髪に染めた美人だった。
「この子が例の子供ね?」
「そうよ。マルドゥック機関から報告のあったサードチルドレン!」
その言葉にシンジは訝しげな顔をする。
今の会話に聞きなれない単語が出てきたからだ。
(サードチルドレン…どういう意味だ。三番目の子供…どうやら、俺がここに呼ばれたのと関係ありそうだな)
「初めまして、碇シンジ君。E計画開発責任者の赤木リツコです」
「初めまして、碇シンジだ」
(E計画…ね。一体どんな計画なんだか)
「中学生にしては随分体格良いわね。まるで理想体って感じだわ」
確かにシンジの体が14歳にしては体格が良かった。
170ちょいの身長と細く引き締まった体が服の上からでもわかる。
「鍛えてますから」
そう、シンジはある人達の一人からの別れ際のプレゼントで『訓練表』を貰っていた。
それは当時のシンジの年齢から始まって、事細かに示している。
その訓練表に添えられていた手紙に『俺の三番目の弟子へ』という言葉を見た時は泣きそうになったのを今でも覚えている。
それを忠実に守っていると、こんな立派に育ったのだ。
筋肉密度なんかもうすごい。
「で、この後どこにいくんだ?この国家公務員(仮)の道案内とは違ってあんたの案内は信用できるんだろ」
「し、シンジ君ヒドイ」
「黙れエセ国家公務員」
「更に倍増!?」
「もちろんよ。さあ、こっちにきて。見せたいものがあるの」
二人はリツコの案内についていく。
「で、初号機はどうなの?」
パシャッ
「B型装備のまま現在冷却中」
パシャ
「それ、ほんとに動くのぉ~?まだ一度も動いた事無いんでしょう?」
パシャ
「起動確率は0.000000001%。O9システムとはよく言ったものだわ」
パシャ
「それって動かないって事?」
パシャ
「あら失礼ね。0ではなくってよ」
パシャ
「数字の上ではね。ま、どのみち動きませんでした。じゃもうすまされないわ」
「まったくだ。そんな確率の低いもんに頼るのは博打打ちかバカだけだな」
パシャ
その言葉にリツコはシンジを見る。
「ここ、機密機関なんだけど」
「堅い事言うな」
パシャ
改める気はないようだ。
「で、俺に何を見せてくれるんだ?写真に取る価値のあるものなんだろうな?」
「…少なくとも、今とってる廊下とかよりはね。見たら『フィルム使うんじゃなかった!?』って思うからやめなさい」
シンジはそれを聞いて、暫く止まると、カメラを下ろした。
「それ程のものならいいな。で、どこなんだそれは?」
「ここよ」
リツコは目の前の大きめのドアを指す。
扉が開くとシンジはわくわくして一番にはいるが…
「おい、真っ暗だぞ」
「今、照明をつけるわ」
灯りがつくと、シンジの目の前には
「なっ!!顔…ロボットか!確かに撮る価値があるな!デカしたぞアカギン!」
「赤木よ!」
シンジは驚いた後、カメラで写真をパシャパシャ採り始めた。
「厳密に言うとロボットじゃないわ、人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器・人造人間『エヴァンゲリオン』!我々人類最後の切り札、これはその初号機よ…」
「へぇ~、これが親父の仕事か」
「そうだ」
その声を聞き、声のした方にシンジは振り向く。
「久しぶりだなシンジ」
「…誰だ?オッサン」
コケッ
ミサトとリツコはズッこける。
「あ、あなたのお父さんよ。話の流れからそうでしょ」
「ふん。おいおい、ちょっと待てよ。俺を見てみろ。こう見えても俺は結構ないい男だ」
自惚れにも聞こえるが、確かにシンジの中性的な顔立ちでいい男に入る。
「そんな俺にあんな髭付き親父の血が混じってるわけないだろ。ましてや顔が似てない」
「100%親子よ。なんなら証明書みせましょうか?」
リツコのその言葉にシンジは跪いた。
「嘘だろ…なんて奴だ。いきなり俺の人生を半分の確率とはいえ、絶望に染めやがった。流石は俺の親父といったところか…」
シンジがぶつぶつ言っている間にシンジの父・碇ゲンドウは冷静に
「ふん…出撃」
「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりなの!?」
「他に方法はないわ」
「ちょっとレイはまだ動かせないでしょ?パイロットがいないわよ」
「さっき届いたわ」
「…マジなの?」
「碇シンジ君。あなたが乗るのよ」
シンジはまだブツブツいっている。どうやら聞いてないようだ。
「待ってください指令、レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったのに、今来たばかりのこの子にはとてもムリです!」
「座っていればいい。それ以上は望まん」
「しかしっ…!」
「葛城一尉!」
「おいおい、ちょっと待てよ」
シンジはゆっくりと立ち上がる。
顔色が悪いがどうやら復活したようだ。
「随分勝手だな。俺にこんな趣味の悪い紫超人に乗れだと?どうやって動かせってんだよ、髭…お、お、親父」
なんとか現実を受け入れたようだ。
「お前にしかできないからだ」
「『汎用』…なんだろ?他に動かせる人間はいないのか?」
「…あなたの他に二人いるわ。でも、一人はドイツ。ここにいるもう一人は…」
その時、使徒の攻撃によって本部自体が振動した。
「奴め、ここに気づいたか…」
そう言ってゲンドウは内線に手を伸ばした。
「冬月…レイを起こしてくれ」
『使えるかね』
「死んでいる訳ではない」
『…わかった』
ゲンドウ達の会話はこちらにも聞こえた。まるで『聞かせる』かのような大きさだ。
「シンジ君、何のためにここに来たの?」
「写真撮るため」
「悪…へっ?」
「だから写真撮る為だよ。遷都予定の第三新東京の写真がとれると思って、あの手紙の書き方も知らない男の誘いに乗った…」
シンジが言い切る前に扉が開いた。
見るとストレッチヤーに乗せられて一人の少女が運ばれて来る。
その少女は体中に包帯を巻かれていて遠目にも重傷だとわかる。
「レイ、予備が使えなくなったもう一度だ」
「ハイ」
レイと呼ばれた少女は痛みに顔をしかめながら体を起こそうとする。
蒼銀の髪に赤い瞳、シンジはその顔に見覚えがあった。
「あいつは…(ドスン…)ん?」
シンジは小さな振動を感じるとすぐにレイに向かって歩き出す。
ミサトとリツコが止めるまもなく、
グララララッ…!
さらに大きな振動が襲った!
レイの乗って利うストレッチャーが倒れる!が、
「よっと」
シンジはレイをタイミングよく抱きとめる。
「大丈夫か?しっかし、軽いな。ちゃんとメシ食ってんのか?」
「放して…」
「嫌だね。結構抱き心地がいい。それに君みたいな可憐で可愛い女の子があんな暗黒変態髭面親父のいう事を聞くのは間違っている。しかもその大怪我でだ」
「碇司令が乗れっていってるの。私は…乗る。それが…人形の私の存在理由…ぐぅ…」
激痛に顔が歪むレイ。
その言葉を聞き、顔を見て、シンジは…
「成程…これが俺の『試練』、って奴か」
「えっ…?」
「まぁ、その前に」
シンジはグラグラゆれている天井の罅割れをみる。
「次で来るな」
シンジはレイを抱えたまま、ストレッチャーを元に戻す。
そして、レイをストレッチャーの上に乗せると、ズボンのポケットからある物を取り出す。
「本当に使う事があるなんてな。練習しておいてよかったぜ」
それをバックルのように腹部につけると、ベルトのようにそれが装着される。
そして一枚のカードを出す。
「な、何を…するの?」
レイはそのベルトから異様な力を感じた。
「まぁ見てな…変身!」
シンジはカードを装着した『ディケイドライバー』にセットする。
《KAMEN RIDE》
その時、再び振動がケージを襲う。
振動で罅割れていた天井の一部が崩れ、シンジ達の上に落下してきた。
《DECADE!》
ドゴンッ!バンバンバンッ!
二人を襲う瓦礫が赤い冷却用のLCLから紫の手が現れはねとばされ、下から飛ばされるように出てきたビームのようなものが瓦礫を細かく破壊した。
『エヴァが動いたぞ…どういう事だ』
『右腕の拘束具を引きちぎっていますっ!』
「まさか!?ありえないわ!エントリープラグも挿入していないのよ!動くはずないわ!」
「インターフェイスもなしに反応している…というより、守ったの?彼を?…いけ…!?な、なに、あれ…」
ミサトがシンジ達を違う意味で驚愕しているのをリツコもシンジ達を見る…とリツコも口を開けて驚く。
そしてその驚きは伝染する。
それにはゲンドウすら目を見開いて驚いていた。
驚かせている張本人は、
「気が合うな、紫超人。やっぱり可愛い女の子を守りたいと思うのは種族を超えるもんだ」
と暢気に初号機に話しかけていた。
「あ、あなた…」
「ん?」
「あなた…誰?」
「俺か?俺は…」
マゼンタと黒の鎧のようなものを全身に纏い、緑の瞳でレイを見つめながら、
「俺は…通りすがりの、『仮面ライダー』だ。覚えとけ」
照れ臭そうに、憧れのセリフをシンジ…『