起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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話が全然思い浮かびません。全部艦これって奴の仕業なんだ(責任転嫁のつもり


第百十話:0079/11/17 マ・クベ(偽)とオデッサ作戦―3―

「何故でありますか!閣下!」

 

「何故も何もない。地上は地球方面軍の担当だし、こちらに支援要請も来ていないのだ。ならば戦力を送る理由は無い」

 

視線を端末から離そうともせずそう応える司令官に、アナベルが激昂しつかみかからんと一歩踏み出したところで、隣に居たシン少佐に肩を掴まれ押しとどめられる。

 

「突撃機動軍からは戦力が送られると聞き及んでおりますが?」

 

「ああ、欧州担当のユーリ・ケラーネ少将から支援要請があったようだぞ。まあ、地球方面軍は突撃機動軍の傘下だからな、不思議はあるまい」

 

「…閣下、我々は大佐に並々ならぬ恩を受けております。オデッサの将兵にもです。今ここでそれに報いず、いつ報いると言うのですか!?閣下、まさか先日の件をまだ…!」

 

義勇兵部隊がオデッサに引き抜かれたのは、ソロモンに駐留している将兵の記憶には新しく、その過程でドズル中将とマ大佐の間に一悶着があったことは周知の事実だった。それ以来ドズル中将がオデッサに対して連絡を入れていないこともだ。だが、仮に事実がそうであっても、上官に向ける言葉ではないと、シンが鋭く叫ぶ。

 

「口が過ぎるぞ!アナベル少佐!」

 

「止めるなシン少佐!私は」

 

そこまで口にした瞬間、部屋は派手な衝撃音に包まれる。発生源に目を向ければ、ドズル中将の右腕が、思い切りデスクを打ち付けている。よく見れば重厚な木目に細かいヒビが入っていた。

 

「ここは感情発露の場ではなく、俺の執務室だ。喚きたいなら外でやれ」

 

「失礼、しました。しかし、納得がいきません」

 

ここまで叱責されようとも、そうにらみ返してくるアナベル少佐を視界に収め、ドズルは密かに胸中でため息を吐いた。

 

(まったく、アレに関わるとどいつも冷静さがなくなる。それだけあいつが魅力的だと言うことか?)

 

同時にあのことを根に持って支援を渋っているなどと思われた事に、ドズルは計画が順調に進んでいることを感じながらも、地味に傷ついた。自分はそれほど狭量な人間に見えるのだろうか。

 

「支援を送らないのは、あちらから要請が無いだけでは無い。こちらからの提案も断られたからだ」

 

そう言ってドズルは引き出しから紙束を取り出すと、机の上に放った。

 

「連邦が反攻作戦を企てていると言う時点でこちらからも話はした。その時渡されたのがそれだ」

 

見ても良いのかと視線で問うてくる二人に、ドズルは黙って頷き肯定を返す。躊躇いがちに近づいた二人が、表紙を見て固まったのに満足し、ドズルは口を開く。

 

「あの阿呆、相手が殴りかかってこようとしているのに、守るなんて発想は端からないぞ」

 

ルナツー攻略提案書。表紙に堂々と書かれた文字に二人は絶句する。恐る恐る中身を確認するが、その内容も実に過激なものであった。曰く、地上での反攻作戦に物資を集積しているなら、宇宙への支援は最小限まで絞られるはずである。特に攻勢が発生したのであれば、その支援にジャブローも動くため、その傾向は顕著となる。故にそのタイミングを待ち、宇宙攻撃軍は、障害たるルナツーを排除するべきである。事実ここ一月、ルナツーの艦隊は基地に引きこもっており、接敵するのも軌道上にハラスメントとして機雷を散布に来る程度だった。唖然としている二人に、中将は悪戯の成功した子供の顔で結論を告げる。

 

「解ったか?貴様達の師匠は、弟子に心配して貰う必要は無いということだ。そして、解ったなら直ぐに準備にかかれ、この機を逃すことこそ、あいつの顔に宇宙攻撃軍が泥を塗るに等しい行為だ」

 

返ってきた敬礼は、見本にしたいくらい素晴らしいものだった。

 

 

 

 

夜はイイヨネー夜はサー。誰が言ったか知らんが、今日は実に良い夜である。厚く掛かった雲は月明かりをすっかり隠し、しっかり撒かれたミノフスキー粒子は元気に電波妨害に勤しんでいる。何が言いたいかと言えば。

 

「絶好の夜襲日和だな。状況は?」

 

「グフ3小隊より報告が上がっております。敵の哨戒部隊と交戦、損害を与えましたが撤退。今のところ敵本隊への攻撃を成功させた部隊はありません」

 

「投入戦力は?」

 

「グフ3個小隊とマゼラアタック2個小隊です。マゼラアタックは砲撃後即座に撤退していますため、損害はありませんが戦果は不明です」

 

うんうん、順調順調。

 

「うん、初日から上出来だ。マゼラアタックも良い働きをしてくれている」

 

本当に良い働きだ。無人機としてはほぼ満点ではないだろうか。

 

「しかし、お聞きしたときは耳を疑いました」

 

「うん。私もそうだ。ネヴィル大佐の発想には脱帽させられる」

 

あれは、地上限定MS資格が制定された翌日だっただろうか?かねてから生産も停止して台数が絞られていたマゼラアタックが本格的に退役することになったのだが、軍として少々困っていた。何せ、お安い機体だった上に地上侵攻作戦当初は他に有効な支援火力が無かったものでどの戦線でも大量に抱え込んでいたのだ。今でこそ余裕のある台所事情だが、それでも長年染みついた勿体ない精神(貧乏性とも言う)は中々抜けず、廃棄以外に何か使えないかと皆頭を悩ましていた。何せ廃棄にも金は掛かるのだから、ある意味当然なのだが。ちなみにガルマ様は支配地域の自警団に景気よく配ろうとして、流石にキシリア様に怒られていた。南無。閑話休題、欧州はと言えば鳥の巣頭が実に安直な解決方法を提示していた。

 

「全部オデッサに回しておけ、あいつが上手くやるだろう。ああ、代わりにヒルドルブを貰うのを忘れずにな?砲戦仕様のドムでもいいぞ!」

 

あの野郎しばらく喉でも潰れねぇかな?余計なことばかり言いやがって!ちなみにヒルドルブは自走砲用の車体確保が優先されたので、ドムが代わりに配られることになった。ツィマッドの生産ラインに務めていた皆さんの死んだような笑顔は暫く夢に出た。

さて、そんなわけでおよそ500両近いマゼラアタックがオデッサに回されてきたのだが、当然だが乗り手は居ないし、補修部品もラインが閉じられているため在庫分だけ、鋳つぶそうにもそんな溶鉱炉持ってねえよというわけで、暫くそこら中に野ざらしにされていたのだが、ある日そんな状況を見かねたネヴィル大佐が救いの手を差し伸べてくれた。

 

「使い捨てるなら、せめて兵器として使い捨てましょう」

 

100両くらいはパーツ取り用に分解(割とこれが一番大変だった)、残りの内100両はベースとトップに分けられて改造を受け、警備車両や簡易攻撃機に。んで、残った300両はと言うと。

 

「乗り手がいないなら、無線操作で複数台まとめて使用すればよろしい」

 

「何言ってんだおめえ」

 

ミノフスキー粒子撒きまくってる戦場で無線操作?何?レーザー通信機でも積むの?車体と同じくらいの値段しますけど?そう聞くとネヴィル氏は笑いながら答えてくれた。

 

「はっはっは、大佐に教示出来るとは中々貴重な経験だ。積むのはもっと安価なものです…受信マイクですよ」

 

「あ」

 

方法自体は至って単純。超音波で単純な命令を発信出来る装置を母機であるMSに搭載。マゼラアタック側には受信マイクと制御装置を組み込むだけ、それこそミノフスキー粒子用のシールドがしていなければ、子供の小遣いでも買えてしまうような安価な装置だ。当然シールドしたところでレーザー通信機などに比べれば圧倒的に安い。問題は音を受信出来る距離だが。

 

「水陸両用機のソナーが転用できますから、それなりのものになるでしょう。大気中なら精々4~500mと言ったところですかな。まあ、母機を隠して運用するくらいは出来るでしょう」

 

ついでに機体同士で特定の音を出しておけば、複数をまとめて運用も出来ると言う。うん、貴方は神か。

 

「何、オデッサに恩を売っておけば後々良い思いが出来そうだという浅知恵ですよ。頑張って下さい」

 

おいちゃん、大佐の事誤解してたよ。マーマイト中毒の重度紅茶患者なんて思っててご免なさい。

 

「感謝致します。ネヴィル大佐の期待に応えるためにも、このマ、全力を尽くしましょう」

 

「ええ、ええ。ああ、そうでした。一緒に対大型兵器用の兵器も考えたのです」

 

「ほう!連中が攻めてくるとなれば間違いなくあの陸戦艇も現れるはず、是非お聞かせ下さい!」

 

「実は、我が先祖の祖国が開発していた揚陸用の兵器を参考にしていましてね?元の名前はパン…」

 

そこで突然通信が切れてしまい、以後時間の折り合いがつかずこうして攻勢の日を迎えてしまった。あの時ネヴィルさんが言っていた秘密兵器があれば、案外水際防御とか出来ちゃったかもしれない、実に残念だ。

 

「大佐?」

 

ネヴィルさんとの楽しい会話を思い出していたら、ちょっと意識が明後日の方向に飛んでいたようだ。眉間にしわを寄せたウラガンが心配そうに声を掛けてきた。

 

「ん?ああ、すまない。現状で問題は無い。兎に角こちらが手一杯であるフリを続けるよう徹底してくれ。連中が釣り針を完全に呑み込むまで、しっかりとな」

 

オデッサ作戦が始まった初日は、こうしてどちらもたいした損害も出さずに更けていった。無論、これが嵐の前の静けさである事は、誰の目にも明らかだったが。




英国紳士は有能、イイネ?

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