起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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最近ね、また、思うんですよ。
ちょっと皆さん、この作品の骨子を忘れちゃってるんじゃないかって。
だからね、思い出して貰う為に頑張りました。


第百十九話:0079/11/24 マ・クベ(偽)とオデッサ作戦―12―

ユーリ少将とお通夜みたいな寒いトークを繰り返した後、司令室に戻ってきたらとんでもねえ報告が次々と舞い込んできた。10分目を離した隙にこれかよ!?本当に戦場は地獄だな!?

 

「VOBとはやってくれる!」

 

「V…?なんだそれは?」

 

「ん?あ、いや、なんだ」

 

やっべえ、思わず異世界の知識が口から出ちまった。なんとかフォローしないと。

 

「そう、その、以前何かのノベルだかで出てきた単語だったと思う。大型のブースターで兵器を敵地に送り込む…とても非現実的な手法だと印象に残ったからつい口に出てしまったんだ」

 

その言葉に今一納得のいかない顔で首をかしげるガデム少佐。

 

「そうなのか?まあ、出所はいい。しかしお前さんをして非現実的と言う方法を連中が取ってきている。落着したのは20、つまり推定20機のMSが基地周辺にばらまかれたと言うことか。しかし…」

 

ガデム少佐の疑問ももっともだ。確認されている20機はおよそマッハ10と言う高速で飛翔し、ほぼ減速の無いまま地面に落着した。科学技術がいくら発展した宇宙世紀でも、そんな速度で地面にぶつかって、パイロットを無事に生かしておける装置は無い。

 

「っ!だからこそのEXAMか!」

 

俺の中で線がつながる。先ほどゲンザブロウ氏からハマーンの出撃許可申請が届いた。同時にニムバス大尉からも当該目標の迎撃の意見具申。つまり彼ら、否恐らく彼女たちが、落着したそれから、そう言った何かを感じ取ったのだろう。俺が焦っているとガデム少佐が不機嫌な顔で口を開く。

 

「さっきから何一つ解らんぞ、司令。俺に守備隊を指揮させる気があるなら解るように説明しろ!」

 

その怒声で、頭に上っていた血が引いていく。そうだ、俺は今基地司令なんだ。騒ぐのも悔しがるのも後にしろ、そうしなければ部下が死ぬ。

 

「…恐らく敵は無人のMSを開発、投入してきている。以前亡命したクルスト・モーゼスと言う博士がそれに類する研究をしていたから、あちらで完成させたのだろう」

 

「つまり、20機のMSは問題無く稼働して、これから攻撃に来ると言うことだな?」

 

「そうだ、注意すべきは無人機故に機体の性能ギリギリまでの動作をしてくる。つまり恐ろしく高性能な機体だという事だ。反応速度もマリオン少尉並みと考えてくれていい」

 

「ふん、そいつは随分と厄介だ、そうなると俺も気合いを入れねばな」

 

は?

 

「お嬢ちゃんが出撃するのに、爺がこんな所でふんぞり返っていては示しが付かん。陣頭指揮を執らせて貰う、ああ、マルコシアスの連中を使うぞ」

 

いやいやいや、何言ってんのこのじじい!?

 

「無茶を言うな、指揮官が前線に立つなど、古代の戦場ではないんだぞ?」

 

「北米」

 

「ぐっ、う、ウラガン!?」

 

駄目だよね!?

 

「大佐は駄目ですよ」

 

そうじゃねえ!?

 

「そんなにワシが心配かね?年の割には動けていると思うがね?」

 

ああああ、もう!どいつもこいつも!

 

「…以前の情報を信じるならば、EXAM搭載機は優先してニュータイプ、ウチで言えばマリオン少尉やハマーン少尉達を優先して襲うようプログラミングされているらしい。基地は多少壊しても構わん、上手く彼女たちを使え。…そして絶対に死なせるな」

 

「任されよう」

 

そう言って指揮所から出て行くガデム少佐の後ろ姿を追っていたら、横に来たイネス大尉が口を開いた。

 

「ガデム少佐の実力は本物です、信じましょう。ですから大佐は駄目です」

 

俺、信用なさ過ぎませんかね!?

 

 

 

 

「スカイアイとのデータリンク確立。戦術モニター、FCS同期開始。エコーロケーションアクティブ。グランドソナー、システムオフ。ジェネレーター圧、正常、マスターアーム、ロックリリース。中尉、射撃角度修正+3、お願いします」

 

「はいよ」

 

ハマーンの言葉に応じたエディタ中尉が素早く機体を操作し、機体を僅かに動かす。

 

「ターゲット…捕捉。発射!」

 

トリガーを引くと同時に、主砲として据え付けられたメガ粒子砲から一条の光が放たれる。それは真っ直ぐに闇を切り裂き、そして遙か彼方で爆発を起こした。

 

「当たった?」

 

エディタ中尉の確認に、ハマーンは頭を振って答える。

 

「いえ、外れました。センサー外からなら行けるかと思ったんですが」

 

「流石にあの大佐が化け物呼ばわりするだけの機体って訳ね」

 

「でも、マリオン少尉のように撃つ前から回避に移っては居ませんでした、あくまでセンサーで捉え、その後避けられたみたいです」

 

「それはそれでどうすんのよ?」

 

その質問に、ハマーンは首をかしげながら答えを返す。

 

「簡単ですよ?避けられないだけ火力をたたき込めば良いだけです」

 

幸いにして周囲にはマルコシアスの1個中隊が随伴してくれている。おまけに。

 

「所詮、知恵も知能も無いコンピューター、しかも向こうから態々突っ込んできてくれるんです。あんなの大佐に比べたら足下にも及びません」

 

鼻息も荒く胸の前で握りこぶしを作るハマーンにエディタ中尉は呵々と笑う。

 

「いやいや、やっぱ少尉は大佐の弟子だ。そうだね、大佐より確かに弱いわ」

 

どう言う意味か聞きたいところだったが、それより先に敵が接近を開始した、どうやら漸くこちらをセンサーで捉えたらしい。それを理解してハマーンは冷たい笑みを浮かべる。

 

「連携も何も無い、身体能力しか取り柄の無いバーサーカー。可哀想ね、本当の貴方たちはもっと手強い相手だったでしょうに。ガデム少佐、こちらはお伝えした通りに動きます。でも気をつけて、あの子とても怯えているから、手当たり次第噛み付くかもしれません」

 

その警告にガデム少佐は溜息を漏らす。

 

「やれやれ、戦争と言うより猛獣駆除だな。承知した、上手くやろう。少尉達も怪我せんようにな?」

 

その言葉に笑顔で返事をすると、ハマーンの乗るザメルは基地へ向けて移動する。その後を高速で追撃してくる連邦の機体、その動きが大佐から事前に教わっていた行動と一致したことで、ハマーンは勝利を確信する。

 

 

「情報が確かならば、連中の機体は連携をしない。いや、出来ないと言うべきか」

 

大佐の言葉に聞いていた全員が疑問符を浮かべる。しないのも意味がわからないが、出来ないとはどう言うことか?

 

「あのOSは機体性能を引き出すが大きな欠点があってね、強い感情に反応するようなんだ」

 

「強い…感情?」

 

ますます解らないという表情になるガデム少佐に苦笑しながら大佐は続ける。

 

「この辺りは凡人の私には説明が難しいな。だから、専門家の知恵を借りよう。ハマーン少尉」

 

「え?私ですか?」

 

突然の指名に心拍数が跳ね上がる。

 

「ああ、まあマリオン少尉でも良いのだがね。君たちはある程度感情を見ることが出来ると聞いている、どうかな?」

 

マリオン少尉でも良いと言う言葉に少し傷つくが、即座に否定が頭に浮かぶ。どちらでも良いのに自分を先に選んでくれた。つまり自然に先に選ぶほど、私に親しみを感じてくれていると言うことではないか。恋する乙女の思考は極めてポジティブである。

 

「はい、私の場合ですと人から漏れる光のように見えます。思いの強さは光量、その気持ちは色と言った具合でしょうか?」

 

「え、マジで?」

 

本気で驚いているエディタ中尉に笑顔で返す。

 

「本当ですよ、今中尉は凄く驚いているでしょう?」

 

その言葉におお、と驚きの声が上がる。

 

「話を戻そう、彼女たちのような力を件の機体も持っているのだが、そこまでが機械の限界なのだろうな。連中はそれが誰のものであるのかが区別できない。そして所謂ニュータイプと呼ばれる者はこの光が元々強いらしくてな、その光量で相手がニュータイプであるか否かを判別しているようなのだ。そしてその力を再現している機体も、同様の光を発しているらしい」

 

「あー、つまりなんだ?連中は自分たちもピカピカ光っていて、少尉達と見分けが付かんと?ああ、それで連携が出来ないか!」

 

敵か味方か区別できないのだから連携など出来るはずが無い。

 

「ただしこれは古い情報だし、今の配置もその心理的な隙を突くための罠かもしれん。あちらも我々が奴の研究について知識があることは承知しているだろうからな」

 

「では、どう判断する?」

 

そう腕を組むガデム少佐に、大佐は笑いながら答えた。

 

「簡単だよ」

 

 

(センサー外からニュータイプが狙撃、こちらが単独行動であると認識した際、仲間を呼ぶかどうかで判断。なんでそんなの直ぐに思いつくのかな?やっぱり大佐は凄い!)

 

もしそれが欺瞞であっても、物理的に連携できないだけ引き離せば後は一体ずつ狩るだけだ。そう何でも無いことのように言う大佐を思い出し、ハマーンは頬が緩むのを感じた。今、確かに自分は大佐の役に立っている、その確信と共に。




ニュータイプの云々は作者の勝手な妄想です。
連続更新でガス欠してるので、次はちょっと待ってて下さい。

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