起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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第十三話:0079/05/15 マ・クベ(偽)と進捗

潜水艦問題は2日でスピード解決してやった。着いて速攻で担当士官を呼び出し、事情聴取とお説教、仕様書を徹夜で造り直させて設計者さんに渡した。帰り際、設計者さんから熱いまなざしと、握手を求められた…厳つい男にばかりもてまくっている。まあ、敬遠されるよりは100倍マシだけど。日帰りになったらユーリ少将が残念そうにしていた。多分一緒に来てた秘書さんと仲良くするつもりだったんだろう、リア充とか爆ぜれば良いと思う。

 

「お疲れ様です。大佐」

 

執務机に座ると、そう言ってウラガンが紅茶を出してくれた。正に副官の鑑である。

 

「有り難う。しかしユーリ少将にも困ったものだ」

 

別れ際も暑苦しい笑顔で肩を叩かれた事を思い出す。この調子でまた頼むじゃねえよ、おめえがちゃんと調整しろよ!とは思ったが、よく考えればあの人ちゃんとしてたわ、マネジメントに失敗してるだけで。

 

「仕方がありません。皆大佐ほど有能では無いのですから」

 

「買いかぶりだウラガン。私程度の男なぞ幾らでも転がっているさ」

 

そう言って紅茶を飲みながら報告書に目を通す。うんうん、オデッサ基地の各セクションは概ね順調。鉱山は現在108鉱山まで稼働中、指定ノルマ分は輸送できている。ただ、これ以上増やすには、人員の増員とHLVが追加で必要とのこと。

ドップⅡの設計は終わって現在1号機の組立作業中、来週頭には実機が出来るそうだ。本当に1月で開発しちゃうとかジオンの技術者はバケモノかな?

ついでにやっときました的なノリでド・ダイの方も再設計案が挙がってきている。これ、08で出て来たド・ダイⅡじゃね?と思ったけど、大型化したり翼面積を増やしたりして更にペイロードを増やしているっぽい。デニスさんがMSが2機乗ってもダイジョーブ!って良い笑顔で言ってた。

ヒルドルブの方は量産化に向けて各種調整を行なってる。と言うのも以前気になってたことを聞いてみたら、なんか俺の意見を取り入れて一部修正するらしい。

グフ飛行試験型の方もかなり順調のようだ。出力調整が繊細だった推進器を安定したツィマッド製に換えたおかげで、ぐっと安定性が増した。ただ最高速度は350キロ台まで落ちてしまったとのことだが、それでも現行機のほぼ3倍である。航続距離に関しても劇的に改善したのでもうすぐ実戦テストがしたい、なんて相談されている。ユーリ少将に適当に良いところを紹介してもらおう。

そうそう、ホバー練習機の名目でツィマッドに持ち込んでもらった新型機も確実に仕上がってきている。来た当初はザクとプロトタイプ・ドムの合いの子みたいな見た目だったが、今ではかなりドムに近い形状に変わっている。グフで取れたデータも反映されているので完成度もかなり高く、ちょっとグフ飛行試験型の開発チームは焦っているらしい。

性能的には、旋回性や加速性でグフに劣るが、耐久性と射撃時の安定性、直進時の安定性はツィマッドの新型機の方が上だ。もう少ししたら基地のパイロットから見繕って実際に乗らせてみるのも良いかもしれない。

ただ、MS用ビーム兵器は全然開発が進んでいないので、胸部の拡散ビーム砲はマルチランチャーに変更されていて、専用装備です!ってドヤ顔で言われたジャイアントバズ用の推進剤タンクは取り外させた。機体に態々爆薬仕込むとか正気かな?一緒にジャイアントバズの方も再設計してもらっているが、なんとなくラケーテンバズみたいになりそうだ。

アッザムは、うん、もうなんだこれみたいな状態だ。なんでもMIP社が試作している次のMAに飛行特性を加味してリファインしたフレームをキャリフォルニアにて作成してもらっていて、早ければ来週末くらいに送ってもらうとの事だが、なんかビグロマイヤーとヴァル・ヴァロの混ざったような機体にメガランチャーみたいなものが腹にくっついている完成予想図を見せられた。もう何処にもアッザム残ってねえ。ところで全長80mとか書いてあるんですけど何かの冗談ですかね?

ちなみに搭載予定のメガランチャーモドキはタカミ中尉の手で既に完成し、昨日試射を行なっている。射爆場の一部がガラス化してたのはこのせいだな。報告書によれば、威力はムサイの主砲並と言うから、中々ヤバイ代物である。ただ、強引に収束率を上げたため、排熱の問題から連射性能は低下、砲身も冷却ユニットだらけで大分重量が嵩んでおりサイズに比べて思ったほど威力は出ていないらしい。次は頑張るとの決意表明で報告書は締められていたが、まだ足りないと申すか。

まあ、おかげでコイツとミノフスキークラフトへのエネルギー供給だけで更新したジェネレーターと推進器からのエネルギー容量を食い潰すので、他の火器は全て実弾になるとのこと。ただそれも4連装30ミリ機関砲とか、175ミリ連装砲とか愉快な文字が並んでいる。やっぱりジオンの技術者は(ry

 

「概ね順調、良いことだ」

 

上機嫌になった俺は思わず手元にあった壺を指で弾く。澄んだ音に思わず口元がほころんだ。ふふ、良い音色じゃないか。明らかに磁器の音じゃ無いけど。

 

「失礼します。セバストポリのモラン少佐よりご相談したいことがあるとの連絡が入りました!」

 

執務室の前で元気な声が上がる。入室を許可すれば、元気が過積載気味な笑顔の少尉が、見た目通りの大きな声で報告してくれる。

 

「報告致します!モラン少佐より、潜水艦搭載用MSについてご相談したいため、お時間をいただけないかとの事です」

 

モラン少佐というのは、昨日OHANASHIした新造潜水艦の担当士官のことだ。オデッサに帰る間際までひたすら謝っていて、なんかこれからも色々助けて欲しいとかで連絡員としてこの少尉をくっつけられた。念願の若くて可愛らしい女性士官なのだが、俺には解る。この子絶対ユーリ少将と同じ人種だ。

 

「ご苦労、エイミー少尉。アラン少佐が良ければ直ぐ話せる」

 

そう告げれば、何がそんなに嬉しいのか元気良い敬礼と承知の言葉を放ち、颯爽と部屋から飛び出していった。嵐みたいな子だな。

 

 

 

 

予想外の早さで返ってきた返事に、慌てて居住まいを正しながらアラン・モラン少佐は大きく息を吐いた。

 

「やはり大佐殿は凄い方だ」

 

自身の失態で遅れが出てしまっていた潜水艦建造を、到着して半日も経たずに解決してみせた手腕は、まるで魔法のようだったとアランは思う。間近で見て居たエイミー・パーシング少尉など、最初のおびえは何処に行ったのか、というくらい心酔してしまい、連絡員を自ら買って出るほどだった。

 

「先ほどぶりだな、少佐。何かあったのかね?」

 

苦笑を浮かべながらそう聞いてくる大佐に、アランは感謝の念を覚えた。あれだけ迷惑を掛けたにも関わらず、大佐殿は嫌な顔どころか即座に対応してくれる。これが突撃機動軍の司令部付きの連中なら、2~3日は待たされたあげく、会話の半分は嫌みとそれに対する謝罪で終わっていただろう。

 

「お忙しい所、何度も申し訳ありません大佐殿。少尉にも伝えたのですが、潜水艦搭載用のMSについてお知恵を拝借致したく思いまして」

 

現在、ジオン軍には水中用MSが2種類存在する。一つはザクを改修したザク・マリンタイプ。もう一つがゴッグである。ただし、マリンタイプは性能不足として試験用に僅かに製造されただけなので、選択肢はゴッグしかない。ところがここでちょっとしたトラブルが起きた。

ゴッグは現在整備中の太平洋艦隊に最優先で配備しているため、欧州へ回せないと言われたのだ。幾ら艦が出来ても載せるMSが無いのでは話にならない、土壇場まで回答してこなかった北米方面軍司令部に腹が立ったが、怒鳴ったところでMSが送られてくる訳でも無い。困り果てたアランは、恥を承知で大佐に泣きついたのだった。

 

「予定しておりましたMSの定数は2個中隊ですが、…ただの1機も回せないと断られまして」

 

「そうか。すまないがオデッサでも水中用機は製造していないな」

 

その言葉に、アランはやはり虫が良すぎたかと反省する。無い物を生み出すなど、それこそ魔法でもなければ出来ないのだ。魔法のような手腕はあっても、大佐は魔法使いでは無いのだから、いくら何でも無茶な願いというものだ。もう一度キャリフォルニアに打診し、それでもダメならユーリ少将に相談しよう。そう考えていた矢先、大佐が再び口を開いた。

 

「まあ、なんとかしてみよう。少々苦労を掛けるが、そこは許してくれよ?」

 

もしかして、本当に魔法使いなのかもしれない。アランは本気でそう思った。

 

 

 

 

大見得切って通信を終えると、ウラガンは驚きの表情で、エイミー少尉はアイドルか何かでも見るような表情でこちらを見ていた。何だよ、照れるからそんなに見るなよ。

 

「あの、宜しいでしょうか、大佐殿」

 

おずおずと手を上げながらエイミー少尉が口を開いた。

 

「ん、何かね?」

 

「大佐はゴッグを何処から手に入れるのですか?」

 

え、何言ってんの?

 

「いや?ゴッグを手に入れる当てなど無いが」

 

「ではマリンタイプを追加製造してもらうのですか?」

 

「あれは試作機だし、そもそも製造ラインも無い。手に入れるのは難しいだろう」

 

ザク・マリンタイプは、ザクの名こそ冠しているが、良く解らん仕様要求のため、殆どを新設計に置き換えられた別機体である。おまけに軍の要求を満たせず、開発が打ち切られたため、当然ながら製造ラインなんて存在しない。だから水中用MSを調達する事は、俺には出来ない。そう言い切った俺を前に、エイミー少尉は眉間にしわを寄せてうんうん唸っている。いや、そんなに難しい話じゃないぞ。

 

「考え方を変えたまえ、エイミー少尉。ウラガンの方はそろそろ解ったようだな」

 

俺が言う前にスケジュールを確認しだしたウラガンを見て思わず笑ってしまった。ほら、俺くらいの奴はここにもいるじゃないか。

まだ考え込んでいるエイミー少尉に、意地悪な教師のように指を立て、ヒントを口にする。

 

「我々が必要としているのは水中用MSではない。イタリア半島に上陸できるMSだ」

 

そう、何も水陸両用機を準備しなくても、防水処置さえすれば普通のMSでも海は潜れる。

無論運用に制限はかかるが、今回のように奇襲となれば相手の隙を突く分、性能が低くともやり様はある。後は必要な装備を調達するだけだが。

 

「大佐、ジオニック社にアポイントメントが取れました」

 

うちの副官は実に優秀である。

 

 

 

 

「はあ?マリンタイプの装備を再生産して欲しい?」

 

帰ろうとしていたハンス・シュミットを呼び止めたのは、地球からきた一本の通信だった。映っていたのは痩せぎすの不健康そうな男、ここの所営業界隈で聞くようになった、オデッサ鉱山基地司令の大佐その人だった。

 

「ええ、バラストタンクとハイドロジェットを取り敢えずそれぞれ30ずつ、関節部の防水シールも同じだけ欲しいのです」

 

その言葉にハンスは考え込む、用意するのは難しくない。タンクもジェットも下請けに作成してもらったので、本社の製造に負担はかからないし、関節用のシール剤もかなりの量が在庫で残っている。考え込んだのは、ただ販売する以上の金の匂いを感じたからだ。

 

「お売りする事は難しくありません、しかし失礼ながら貴方が本当に望まれているのは、別の物ではありませんか?」

 

 

「かないませんな」

 

そう言うと大佐は自身の計画を口にする。曰く、現行の陸戦機に簡易な防水処置と使い捨ての水中移動装置を付け、海から襲撃できるMSを造りたい。大当たりだとハンスは心の中で喝采をあげる。仮にこれが製品化できれば、現在参入に失敗している水中用MSの分野に食い込める。しかも装備は既に開発済みで、機体そのものも新規に造る必要が無い。しかも使い捨てなら、MSより安価でも多くの販売が見込めるから決して利益で見劣りしない。

 

「是非、是非我が社にお任せください。必ずご期待に添う商品をお届けしましょう」

 

満足そうに大佐がうなずき、通信が切れるのを確認すると、ハンスは大声を上げた。

 

「大至急06Mのスタッフを集めろ!全員だ!」




エイミー少尉の名前にピンとくる人は訓練されたおっさん(偏見)

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