起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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ネット死んでました


第十七話:0079/05/20 マ・クベ(偽)と重力戦線

「成程、やはり現状のミノフスキークラフトは扱いが難しいようですな」

 

「ええ、概念実証機の建造に入っていますが、やはり出力不足の解決が難しい。現状では実用的な速度で飛ばすだけで精一杯です」

 

晩餐会とか色々無駄じゃね?今晩は、マです。あの後シャトルに乗ってからはあっと言う間で、半日しないでロサンゼルスに到着である。うん、高速シャトルって凄いね、次から宇宙に上がるときは是非あれで送り迎えして欲しい。

んで、着いて早々にガルマ様からお小言頂いた。なんかグフⅡの開発責任者を名義変更しなかったのがご不満らしい。いいじゃん、どうせ責任者なんて名前だけで大した功績でも無いんだから。

どうも先の鹵獲ザクによるゲリラの件も含めて、俺がガルマ様に功績を譲ってると感じているようだ。いや、なんでそうなる?まあ、気になるって言うなら、ちょっと装備とかで融通してよ、具体的には今後のグフⅡ配備に向けてホバー練習機増産させてと頼んだら、なんか釈然としないといった顔で了承してた。あんま気にすんなよ。ハゲるぞ、遺伝的に見て間違いない。

そんな訳で俺より先に運び込まれていたグフⅡを昼間地球方面軍のお偉方の前でデモンストレーションした後、夜に開発記念晩餐会的な場が用意され、現在着飾った皆さんがキャッキャウフフしていらっしゃる。お偉いさんの前だから折角の飯も食えないし、酔っ払う訳にもいかんから酒も飲めない。来てる女の子はまず間違いなく現地企業とかのハニトラなんでお近づきにもなれないと、全然楽しくないので、壁にもたれてソフトドリンクをちびちびやってる…帰っちゃダメかな?

そんなことを考えてたら、目を¥マークにした女の子達にたかられてイケメンが困っていたので助けることにした。

 

「初めましてですね、ギニアス・サハリン少将。お噂はかねがね」

 

空気読まずにずかずか女の子バリヤーに突っ込んでいくと、あからさまに安堵した表情を浮かべるギニアス少将。そういやこの人かーちゃんのせいで軽い女性不信なんだっけか?

 

「これは、名高いマ・クベ大佐に知られているとは光栄だ。貴官とは是非一度話をしたいと思っていたのだ」

 

そんなわけで壁際のソファを陣取って楽しいボーイズトークである。内容は冒頭の通りだが。なんかユーリ少将とかの話を交えたらすっかり意気投合しちゃって、ギニアスさん敬語しゃべりになっちゃってる。立場上頑張って偉そうに喋っているけど、こっちが素らしい。一応俺大佐なんで…って改めるようお願いしたらすっごい悲しそうな顔されたんで、諦めて敬語OKにしてる。傍から見たら俺すっげえ態度悪くない?大丈夫かな?

 

「ここに居たのか、大佐。探したぞ?」

 

そう言って、女性の腰に手を回しながら話しかけてきたのはガルマ様、抱いてるのはイセリナ嬢だったかな?さっきまでテラスの方で乳繰り合っていたのだが、気が済んだらしく双方幸せそうな表情でくっついている。うんリア充もげろ、爆発しろは洒落にならんからNGで。

 

「紹介しよう、グフⅡ開発の功労者にして欧州方面軍の支柱、マ・クベ大佐だ。大佐、彼女は元ロサンゼルス市長エッシェンバッハ氏のご令嬢でイセリナ嬢だ」

 

「初めまして、欧州方面軍隷下オデッサ基地司令を務めております、マ・クベ大佐です」

 

「初めまして、イセリナ・エッシェンバッハと申します」

 

綺麗な会釈に感心する。流石いいとこのお嬢さん。

 

「このようなご令嬢に懸想されているとは、ガルマ様は幸せ者ですな」

 

「た、大佐!」

 

慌てるガルマ様に対して、嬉しそうなイセリナ嬢。ほんと、戦争中でなければ心から祝福したい。そんな気持ちで見て居たら、でも私怒ってるんです、的な表情でイセリナ嬢が口を開いた。

 

「でも、ここの所ガルマ様ったらお仕事ばかりで…ちっともお相手してくれませんの」

 

あれ、なんか嫌な予感。

 

「きっと、私よりお仕事の方が大事なんだわ」

 

うわ、初めてナマで聞いた、その台詞。

 

「そんなことは無い!君と一緒になれるなら私はジオンだって捨てる覚悟だ!」

 

「まあ、ガルマ様…」

 

そう言って抱き合う二人、自分たちの世界にはもう少し人気の無いところで入ってくれませんかね?

半眼で眺めていたら、赤い顔で咳払いしつつガルマ様が口を開いた。

 

「わ、私の事は置いておいて、マ大佐。話したいことがあるんだ、少し良いかな?」

 

ギニアス少将に視線を向ければ静かに頷いてくれた。うーん、大人の対応。

 

「はい、こちらでお伺いしても?」

 

「いや、人目が少ない方が良いな」

 

「では、あちらのテラスにでも。君、済まないがガルマ様と大事な話がしたい、テラスの人払いを頼めるかな?」

 

近くに居た警備の兵に頼むと、俺とガルマ様は連れだってテラスに出た。少し肌寒い風が、会場の熱気に当てられた体に心地よい。

 

「ガルマ様、お話とは?」

 

黙って外を見つめているガルマ様に声を掛ける。待ったのは一瞬、振り返ったガルマ様は真剣な面持ちで、口を開いた。

 

「正直に答えて欲しい。大佐、ボクは将の器か?」

 

「何故そのような事を?」

 

なんか怪しい雰囲気なんですけど。

 

「君が色々と功績を譲ってくれるのは、私に実績を付けさせようという姉上の心配りでは無いかと思っている。違うか?」

 

そんなん考えてもみなかったわ。びっくりして黙ってたら思い詰めた顔でガルマ様が続ける。

 

「…正直に、忌憚の無い意見を聞かせて欲しい。覚悟は出来ているつもりだ」

 

本当かよ。でもまあ言いたいこともあるし、ここは一つ言っちゃいますか。

 

「では、率直に申し上げさせていただく、ガルマ様は将の器ではありませんな」

 

言い放った言葉に一瞬呆けたあと、ガルマはみるみる顔を赤くし憤怒の形相を作り出した。いや忌憚の無い意見を言えと言うたじゃないか。しかも全然覚悟できてないし。

 

「それは、僕が親の七光りだと言いたいのか」

 

うーん、実に坊や。そらこれならぶっ殺しても大勢に影響ないかもとかシャアも思っちゃうかもしれん。ここは少し活入れるふりして丸め込もう、そうせんと俺今死ぬかもしれん。

 

「では、先ほどのお言葉は如何なお考えで仰られたのか。お答え頂きたい」

 

「先ほどの言葉だと?」

 

考え無しにしゃべってるとかー。

 

「小娘一人のためにジオンを捨てると仰いましたな?」

 

「あ、あれは、その言葉のあやと言うか」

 

「あやであれ本心であれ、その言葉が出たと言うことが既に問題です。解っておいでなのですか、貴方はこの重力戦線の最高責任者なのですよ?」

 

その言葉にはっとした表情になるガルマ様。いやいや、こんな事言われなくても気づいてください・・・無理か。士官学校出て今二十歳だっけ?大学生じゃん、そんな若造に一軍の将の自覚と所作を求めるのは、まあ酷だよね。

 

「望もうと望むまいと、貴方はザビ家の方でありその肩にはジオンの命運が乗っているのです。それを気軽に放棄するなどと言う者に将たる資格はありません」

 

「覚悟が足りなかったことは、認める。しかし私は・・・」

 

続く言葉が無かったのは矜恃か、羞恥か。それは俺には解らなかった。そして、その沈黙から察する事が出来るのは、彼の立場だろう。

ドズルはガルマに期待しているから、表だって対立はしていない、けれど重力戦線の総指揮官といいつつも、その重力戦線は機動軍主導、言ってしまえばキシリア隷下の部隊で行われている。簡単に言っちゃえば今のガルマは精々支店長、それもザビ家的には身内がいることをアピールしたい程度には重要だが、能力重視で選ばんでもいい程度の重要度の支店というわけだ。いやいや、ふざけんな。

 

「ガルマ様、我が国はサイド3が独立した、宇宙に浮かぶ国家です」

 

「いきなりどうした、大佐」

 

「お聞きください。宇宙に住まうが故に、ザビ家のお歴々は大きな勘違いをしておられる」

 

俺の言葉に、訝しげな表情を浮かべながら、ガルマは耳をかたむけている。うん、ここはしっかりと洗脳・・・もとい教育しておこう。

 

「今、我々は地球へと攻め込んでいます。つまり敵の領内で戦争をしております」

 

短期決戦が出来なかった事による泥縄の一手ではあるが、それでも地上に戦線を構築したのは、戦略的に見て極めて正しい。戦争を相手国でやれば、相手の国力に直接被害が出るからだ。だが、宇宙という広大な空間で生き、しかもその大半が無価値な空間で占められているスペースノイドには、どうにもそうした概念が希薄になるようだ。

 

(仮に地球における戦線が失敗して宇宙に撤退しても、それは元に戻っただけ、むしろ今度はこちらのホームグラウンドで存分に戦える)

 

頭が痛いことに将官クラスですらこんな認識を持っているのがゴロゴロ居るのだから始末に負えない。確かに兵站という観点からすれば負担は減る。しかし代わりに被るデメリットが大きすぎるのだ。

何せ自分の領内で戦争をすると言うことは、襲撃されてはまずい生産拠点が脅威にさらされる、最悪その拠点そのものが戦場になるからである。特にそうした拠点以外が極めて無価値な宇宙では、その傾向が尚のこと顕著だろう。

まさかおっさん、宇宙に移民までした世代の人類が総力戦を理解できてないなんて思わなかったよ、しかもその道で食ってるプロの皆さんが!

 

「我々の敗退は、戦場を宇宙に移すことと同義、そして戦場が宇宙になれば、必ず祖国は焼かれるでしょう」

 

何故って、それが総力戦だからだ。相手の国の生産力を奪いきらない限り止まらない、それが俺たちのやっている戦争。コロニー落としからの短期決戦が失敗に終わった今、勝たねば必ずそれは起こる。

 

「今は解らずとも、などと悠長な事は申せません。今すぐ、この瞬間覚悟なさっていただきたい。我々は祖国の剣の切っ先であり、そして最後の盾なのだと」

 

そう言い切ると、ガルマは顔を蒼白にして明らかに目を泳がせた。 我ながら酷なこと言ってるよなぁ。そう思ったらちょっとフォローしたくなった。

 

「ご安心ください。貴方には共に背負うと言ってくれる将兵がおります。彼らと共にあるならば、必ずやこの地に勝利をもたらせるでしょう」

 

それは、とても厳しい道のりではあるが、と心の中で付け加える。それでも少しは心が晴れたのか、ガルマは幾分表情を和らげ息をついた。

 

「解った、大佐、ここに私は誓おう、いかなる困難が来ようとも私は決して逃げ出さずこの務めを全うすると」

 

その言葉に、俺は黙って頭を垂れる、俺も覚悟を決めよう、ただ生き延びるだけの闖入者であり続けることは終わりにしよう。そう決めて顔を上げた先には、一端の男が笑っていた。

 

「ところで、大佐、君も一緒に背負ってくれるのかな?」

 

挑みかかるような言葉に、思わず笑いながら、俺も答えた。

 

「こんななで肩でよければ幾らでも」

 

 

 

 

パーティーに彼を呼んだのは、偶然では無かった。

ここの所姉上とのやりとりの中で増えた名前。扱いにくくなった、と評しながらも、珍しく喜色を含んだ物言いに興味がわいたからだ。

都合よく挙がっていた新装備開発の報告を理由に、わざわざ呼び寄せてみたが、最初は切れる男、と言った程度の感想だった。この程度の男ならそこらにとは言わないが、それでも傑物と称するにはいささか物足りないと感じたのは、やはりあの規格外の友人のせいだろうか。企画したパーティーが無駄になったと思いつつも、久しぶりに会えるイセリナのことを思いそれで相殺と考えた。

まさに節穴と言われても否定できない鑑識眼だ。

パーティーの合間を縫っての逢瀬、彼女の関心を引きたいがため、いや、偽るのは止そう。あのとき私は確かに彼女と暮らせるなら、今の立場など捨ててもいいと考えていた。

その気持ちを彼は正しく見抜いたのだ。

 

故に彼は言う、私は将の器では無いと。

 

自分で聞いておきながら、その評価に憤った。ああ、お前もほかの奴らと同じか。公王の息子、偉大な指導者の弟、身内、それは近しいとしながら、絶対にそれとは違うと告げる言葉。

ただただ生まれだけでこの場に座った男だと、私をそう呼ぶのだな。

怒りに傾く思考に冷や水をかけたのは、続いた彼の言葉だった。更に掛けられる言葉に、血の気が引いていくのを自覚した、それは正しく彼の言葉が理解できたからに他ならない。

成程、確かに私は、まったく将の器では無い。

責務を放り出して己の欲に走る人間が、一体どうして将を名乗れるというのか。

それに今気づけた事は全く僥倖であったし、それを伝えてくれる者と出会えた私は実に恵まれている。

 

成程、姉上が手放しに褒める訳だ。

 

今のジオンは危うい。

兄さん姉さんがなまじ才能があるものだから形にはなっているものの、最近の周囲の反応は2極化している。簡単に言えばザビ家に近づいて甘い汁を吸おうと考えるものと、勘気に触れぬよう貝のように口を閉ざすものだ。

正直これは国をまとめるためにギレン兄さんがダイクン派を中枢から排除したのが原因だが、あれが無ければ今頃ジオン公国は存在せず、最悪あの頃のサイド3首脳陣は片端から適当な理由で投獄されていただろう。そのくらい両派の関係は悪化していたし、解りやすい見せしめに出来る機会を連邦議会が見逃すはずが無いからだ。

経緯はどうあれ、兄さんは独裁者としての振る舞いを必要とされ、それに応えた結果、周囲は自ら望んだ独裁者を恐れ、追従しかしなくなってしまっている。

組織としてこれが健全であるはずが無い。

そんな中で、ザビ家に堂々と文句を言える人材のなんと貴重なことか。

この日私は、重力の底で、久方ぶりに光明を見た気がした。




本作のイセリナ嬢は適度に面倒な子です。ご容赦下さい。

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