起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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連休最後の投稿になります。


第二十三話:0079/05/28 マ・クベ(偽)と残念MA

「その、災難だったな。大佐」

 

暫く頭を抱えていたが、当然事態が好転する訳もないので、取り敢えず上司に相談することにした。ただし、流石にキシリア様だと軍同士の軋轢になりかねないと思ったので、双方が甘いガルマ様にチクる。

 

「ドズル閣下の仰ることは十分理解できるのですが」

 

「繋いだのは私だしな。姉上には上手く言っておこう。兄さんにも今後は姉上をちゃんと通すよう注意しておく」

 

「ご配慮有り難うございます」

 

先日の一件以来、ガルマ様は後方での執務に注力することが多くなっている。直轄にしていた部隊の幾つかも他の部隊に割り当てて、自身で戦果を上げるよりも、北米戦線全体が安定することに尽力しているようだ。おかげで最近は親の七光り、なんて言うヤツは殆ど居なくなり、どちらかと言えば虎の子はやはり虎、なんてゴマ擂る奴らが増えたらしい。先日苦笑しながらそんなことを言っていた。

 

「それで、大佐。今回の件についても断ることも出来るが、どうする?」

 

本音から言えば断りたい、すっごい断りたい。けど補給線の防衛を一手に引き受けている宇宙攻撃軍に弱体化されるのは、死んでも避けたい事柄なのである。

 

「言った手前というものもございます。それに断って補給線の維持に支障が出るなどと言うことになれば、それこそ兵達に顔向けできません」

 

ある程度考えてはいるしね。俺の表情から何か悟ったのか、楽しそうな表情に変わったガルマ様が問うてきた。

 

「大佐がそう言う顔をするときは、決まって我が軍に良いことがある。教えてくれ大佐、今度は何を思いついたんだ?」

 

「いつもの再利用でございますよ。つきましては、ガルマ様に骨を折って頂きたいのですが」

 

そう言えば、苦笑交じりにガルマ様は了承の言葉を口にする。

 

「補給線の事となればこちらも他人事ではないからな。それで?私は何を用意すれば良い?」

 

直ぐ動いてくれる上司って本当に素敵だと思う。

 

「では、そちらの倉庫で埃を被っている試作MAを開発スタッフごと送って頂きたい」

 

 

 

 

相変わらず妙なものを欲しがる男だと、ガルマ・ザビは内心苦笑しつつ了承の言葉を口にした。指定されたMAは開発計画の最初期に設計されたもので、性能不足から繰り返し再設計されたものの、要求を満たせなかったことから、搭載している拡散メガ粒子砲のテスト後に廃棄が決まっている機体だった。

 

「正直、あれはMAとしては性能不足だと思うのだが」

 

そう言えば笑いながら大佐は肯定した。

 

「そうでしょうな、しかし突撃艇として見れば、破格の性能だと思いませんか?」

 

「それはそうだが、調達コストが違いすぎるだろう?」

 

比較的高額のジッコでさえ、件のMAに比べれば十分の一以下だ。

 

「逆ですよ、その程度の価格でMSに代わる戦力が調達できるのです」

 

その言葉に、ガルマはつい渋い顔になってしまう。確かに現状、攻撃艇や突撃艇は数合わせくらいの価値しかなく、戦闘に用いれば手酷い損害を被ることは間違いない。確かに価格で言えばMSより割高であるが、これらがMS並の戦力として数えられるようになれば、今後の部隊の補充は随分楽になる。何しろこれらの搭乗員はMSに転科できない人員ばかりなのだから。そうなれば正面戦力不足から促成されているMSパイロットを余裕を持って補充できるようになり、国全体としても人的資源の浪費を抑えられるだろう。

気持ちが揺れ掛けている所に大佐は更に畳みかけてきた。

 

「考えてみて下さい。開戦当初と現在では我が軍の台所事情は変わっております。水や空気、鉱物資源の制限が大きかった当初とは異なり、地上からそれらを送れる分、資材という面での資源は余裕が出来ています。一方で人的資源の補充は絶望的です。我々にとって今最も失えない資源は、人そのものなのですよ」

 

 

 

 

と言う訳で、とりあえずデータだけ先に送ってもらいました、黄色くて丸くて憎い奴。ジオン屈指の色物枠ザクレロ君。アッザムの方が一段落して鼻歌歌ってたジョーイ君を見かけたので、次これベースで宇宙用MA作るよーって言ったら愉快な顔して開発室の方へ走っていった。ははは、ドップの時を思い出すなぁ。

正直最初はアッザム(仮)をベースに宇宙機も調達したいなと考えていたのだが、現段階での製造コストをウラガンに纏めてもらったら、かなりグロイ数字になっていた。うん、ムサイとお値段一緒とかちょっと良く解らない。量産化すれば多少はマシになるとはいえ、流石にそんなもんぽこじゃか作っていたら財布に穴が開いてしまう。おまけに技術者の皆さんが頑張ってくれたおかげで大気圏内運用に特化しすぎていて、仮にベースにしても互換できるパーツは50%くらいだという。それならいっそ安価な別の機体を用意しようと思った訳である。と言う事でガトルとジッコを調べてみたが、双方共に現状で設計限界ギリギリまで性能向上が図られており、これ以上となれば根本的な構造の変更が必要になるらしい。ザク並にするにはどの程度変えないとダメなの?って聞いてみたら、互換できるとしたらコックピットくらいとか返事がきた。それ、完全新型と何も変わらん。じゃあビグロの廉価版ならどうかと思ったんだけど、そもそもビグロがまだできてない。どころか俺がドムとかグフとかヒルドルブとかで予算食ったせいで宇宙用機体の開発は後回しにされてたらしく、どうも史実より開発が遅延しているようだ。ビグロ待ってたら数ヶ月先まで再建着手できん。なので、今あるもので間に合わせようと考えた結果、色物君の出番となった訳である。

まあ、今回は大体やりたいことが決まっているから、それを技術部にお願いする事になる。折角なので要望を纏めるついでにちょっと意見とか聞いてみようとデータをウラガンやエイミー少尉にも見せたら、二人ともこれは酷いって顔でこちらを見てきた。だが残念、マ・クベは引かぬ。

 

「言いたいことは、大体解っているつもりだ」

 

こいつデザインもさることながら運用方法も奇天烈だからなぁ。自分の中でかみ砕けなかったのだろう表情で、エイミー少尉が控えめに口を開いた。

 

「あの、艦隊の防空網に拡散ビーム砲を用いて穴を空ける、と言うのは解るのですが、その後の対艦戦闘をヒートナタにて行なうと言うのは?」

 

「ジオンの技術者はどうも白兵戦信仰の宗教にでもはまっているのだろう、忘れて良い」

 

MSより運動性に劣るMAではあり得ないからね。ウラガンの方は複眼が気になるのか、目を細めたり画面を近づけたり離したりして頻りに目の錯覚を疑っている。すみません、それ本当に複眼なんですよ。

 

「今回のコンセプトは高速、瞬間火力、そして一撃離脱を考えている。複眼式よりもモノアイを複数用意した方が理に適っているな」

 

恐らく拡散ビーム砲の残滓でセンサーに障害が出るのを数で補おうというつもりだったのだろうが、小型になる分センサーの性能は落ちるか、高価になってしまう。そしてそこまで頑張って拡散ビーム砲を搭載する意味があるかと聞かれれば、俺としては首をかしげざるをえないというのが本音だ。

そもそも、俺がこの機体に求めているのは先ほどの台詞に集約される。なのでそこに必要のない装備や機能は出来る限り減らすか限定する方針だ。ガルマ様には大見得切ったもののお値段が安いに越したことはないしな!

 

「防空網への対処は散弾砲で代替する。その分空いたスペースを利用してジェネレーターをアッザムのものと同じものにして、タカミ中尉の設計したメガ粒子砲を可能であれば連装で装備。出来ればパイロンを追加して対艦ミサイルを2発程度積めると尚よい」

 

確か、統合整備計画のせいでポシャったツィマッドの試作機に搭載予定だったショットガンが開発済みだったはずだから、それを流用する予定だ。高速突入、一撃離脱かつ攻撃目標が敵艦艇であることから、出来れば実弾とビーム両方の攻撃手段は持っていたいし、瞬間火力を考えれば砲門数は多いに越したことはない。まあ、機体のサイズからして2門積めれば御の字だろうけど。

俺の言葉に慌ててメモを取り始めるエイミー少尉。おお、技術部に伝えてくれるんかな?なら折角だし思っている事全部言っちゃおう。

 

「突入するという性質上正面装甲は厚くしたい。運動性についてはある程度諦める、と言うよりは旋回性を犠牲にして加速性を確保する」

 

「それでは被弾率が上がるのでは?」

 

「ある程度は装甲でカバーする。ただし、主砲、副砲クラスは避けられる程度の運動性は確保したい。たしかツィマッドがゴッグの関節に面白い構造を使っていたと思う。あれでメインブースターを連結すればある程度偏向させられるだろう」

 

推進器そのものを振り回せば、元の機体より大分運動性は上がるだろう。後はそうだな。

 

「ついでに牽引用のワイヤーとグリップなどあれば便利かもしれんな」

 

「ワイヤーとグリップですか?」

 

「うん。…唐突だが、ザクⅡのR型は性能は良いのだが配備数が少ない。何故か解るかね?」

 

「高いからでは?」

 

即答するエイミー少尉。うん、正解。

 

「その通り。軍は現状のR型の戦果では大量配備は割に合わんと思っている訳だ」

 

さて、ではR型が何故割に合わないのか?最大の問題はプロペラント容量不足による稼働時間の短さだろう。簡単に言えば推進剤を2倍使うなら、母艦から出撃して帰ってくる行動半径は半分。戦闘中も使うのだから戦える時間も半分、これでは使い勝手が悪いと思われても仕方がないだろう。では何故こんな機体が採用されているかと言えば、このあたりも総司令部の見通しの甘さから来ちゃっていたりする。

総司令部が想定していたMSの主任務は、所謂空母から出撃する航空機の役目だ。当初想定されていた戦闘は作戦に従い決められた地点へ侵攻、戦闘を行なうというものだ。この場合であれば、タイムスケジュールはしっかりと管理されているから、移動の大半を慣性航行に頼っても問題無かった。つまり移動中のプロペラント消費を殆ど考慮しなくて良かったのだ。

ところが、戦争の長期化が確定すると任務ががらりと変わった。大規模かつ綿密なスケジュールのもと行なわれる軍事行動はほぼ無くなり、その分遭遇戦や哨戒に引っかかった敵への緊急展開といったMSを迅速かつ柔軟に展開させる事が多くなった。加えて、当初想定されていたミノフスキー粒子散布下に於ける艦隊戦距離では、思っていたよりも母艦に対する艦砲射撃の脅威度が高いことが、一年戦争初期の連邦艦隊との艦隊戦の戦訓から明らかとなっており、母艦をより後方に下げる必要が生じたことからも、プロペラント消費増大の問題が顕在化してきたのである。

このため、優速であることは評価されたが、練度の低いパイロットではプロペラント管理のシビアなR型は現場から歓迎されなかったのである。ついでに言えばルウムでベテランを多く失った事もこの状況を後押ししている。

さて、そこでだ。ザクレロにサブフライトシステムの真似事をさせたらどうなるだろう?

 

「戦場への行き帰りを気にせず戦えるとすれば、R型の価値は一気に高まる。ザクが急に高性能になれば、面白いことになると思わないかね?」




ザクレロは頑張れる子…ザクレロ?

後イフリートは犠牲になったのだ。

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