起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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よく考えたら今週投稿してない事に気付いた。


第二十四話:0079/06/02 マ・クベ(偽)と外人部隊

6月に入り、いよいよイタリア攻略が迫ってきた。シーマ少佐は受領した潜水艦隊の慣熟訓練の為に部下共々セバストポリに移動、デメジエール少佐も陽動のため旧スロベニア首都、リュブリャナに移動している。俺はと言えば指示された鉱物資源の採掘ノルマをこなせなかったため、この二日は報告書と改善内容の書類作成に追われている。いや、一月も無いのに生産量1.5倍になんて出来る訳ねえだろ、って言えたら楽になるんだけどなぁ。

それから昨日、ハマーンちゃんからメールが届いた。困ったら連絡してって言ったので、お礼とかで連絡して良いか迷ってたそうな。スカーフのお返しって薔薇をあしらったブローチも届けられた。男が付けるには少々可愛らしいデザインだが、折角もらったので身につけていたら、ウラガンは妙なものを見る目で、エイミー少尉は物欲しそうに見ていた、やらないよ?

そうそう、アッザム(仮)もこの5日間で大凡組み上がっていて、後は武装の取付けと起動試験を待つ状態だ。パイロットをどうしようか悩んで、海兵隊とかに良い奴居ないかなーってシーマ少佐に聞いたら、すっごい渋い顔で言われた。

 

「能力的には、心当たりがあります。能力的には」

 

なんで二回言った?どんな奴かと聞けば、曰く別の海兵隊に所属している少尉とのこと。優秀だが極めて態度が悪く協調性が低い、おまけに言動に妄言が交じることがある。正直今居る部隊でも持て余していて、近々別の隊に転属させる予定らしい。え、それ本当に大丈夫な人材なの?

 

「言ったとおり能力は一級品なんですよ。他の所と軋轢を生まずに引き入れるとすれば、あれ以上は思いつきません」

 

シーマ少佐がそこまで買っているなら間違いなかろうと言う訳で、早速キシリア様にお強請りしたら、向こうの部隊がすぐ了承したとかで1週間ほどで転属してくる事になった。

ついでにドズル閣下の件について謝罪したら、むしろこちらは苦笑された。

 

「ドズルの兄上は軍政に疎いからな。まあ、あまり出しゃばり過ぎて向こうの連中と変な諍いでも起こさなければ構わん。宇宙攻撃軍が強くなって困ることもないしな、こちらからもある程度便宜を図ろう」

 

あれ、案外仲悪くないのかな?結構この兄弟サツバツしてるイメージなんだけどな。

 

「こちらからも伝えておくことがある。直ぐに指令書も行くと思うが、イタリア半島攻略支援にMS特務遊撃隊を1つそちらに回す。物資の補給を貴様の所に任せたい」

 

「承知しました。それで、到着はいつ頃に?」

 

「2日後の予定だ」

 

いや、もっと早く言ってよ!?なんてことがあった5月末。言われた通り連絡があって、遊撃隊の人達が基地にやってきた。出迎えておいちゃんビビったね。

正直、外人部隊なんて呼ばれて冷遇されているってのは知ってたから、ある程度は酷い状況なんだろうなーって想像してたけど。いや、これは想像以上だわ。

まず移動手段。全部サムソントレーラー。しかも現地の部隊から一々融通してもらっているらしい。どれも懸命に整備したのは解るが、あちこちパーツが欠けていたり、タイヤが足りなかったりと割と酷いことになっている。肝心のMSも3機だけで予備機は無し。こちらも装甲のあちこちがくたびれていて中にはクラックが入っている部分さえある。うん、これは酷い。

 

「これは、態々お出迎え頂き有り難うございます。大佐」

 

「いえ、名将であられる貴官を迎えられ、私こそ光栄です。ダグラス・ローデン大佐」

 

そう言って手を差し出せば、朗らかな笑顔で握り返してくるダグラス大佐。はっはっは、目が笑ってないぞう、このタヌキ親父め。

 

「お疲れでしょう、高級ホテルは無理ですが基地に部屋を用意しました。ひとまずお休み下さい」

 

「感謝します、大佐」

 

一旦別れて執務室に戻ると、俺はため息を吐きながらウラガンに確認した。

 

「ウラガン、確かフロッガーへ改修待ちのザクが何機かあったな?」

 

「調整済みで装備の取り付け待ちが6機、整備済みが3機、整備中が5機であります」

 

俺の言葉にすぐ詳細を答えてくれるウラガン。すげえ、全部覚えてるの?

 

「それと守備隊向けに陳情していたギャロップがあったと思うが」

 

「1機は第2駐機場で点検中、もう1機は明日の補給便で到着予定です。最後の1機は来週の予定ですが」

 

うん、決めた。

 

「整備済みのザク3機とギャロップ2機を遊撃隊に回す。ザクは予備パーツも3機分だ」

 

「宜しいので?」

 

一応確認するウラガンに笑って返す。

 

「折角支援に来てくれた部隊だぞ?装備が不十分で戦えませんなどと言われてみろ、送って下さったキシリア様の面子まで潰しかねん」

 

という建前だ。ダグラス大佐は親ダイクン派だったせいで冷遇されている。本人が優秀なせいで部隊が戦果を挙げれば挙げるだけ危険視されて、より冷遇されるという悪循環。身内で足を引っ張り合いながら戦争するとか、我が祖国は随分余裕のようだ。うーん、片っ端からミサイルに詰めこんでジャブローに撃ち込みたい。

それはさておき、他の遊撃部隊員達も随分と重たい背景を背負い込んでいる。家族を人質にとられていたり、旅行中に故郷を壊滅させられていたり、売春婦の私生児で国籍がなくて強引に軍に入れられたりと、よくもまあ集めたなと言うような訳ありばかりである。このまま冷遇し続けたらそれこそ連邦のスパイに鞍替えしてもおかしくないぞ?

そんな訳で懐柔の意味を込めて飴を用意する。本当はMSもグフⅡやドムを都合したいところだが、相手は文字通り世界中を飛び回っている遊撃部隊。うちでずっと面倒が見られるなら問題無いが、他の戦区に行ったら最悪MSを奪われかねない。良くても新鋭のホバー機の補給は渋られること請け合いである。であるならば、補給が容易なザクⅡの方が都合が良いだろうという判断だ。あとせめて物資は目一杯渡しておこう。ウラガン経由で挙がってきた補給品のリストを片っ端から上方修正してサインしておいたら、警戒心丸出しの顔でダグラス大佐が挨拶に来た。お礼なら別に良いよ?

 

「…格別の配慮、感謝しますマ大佐」

 

「当然の事をしたまでです、お気になさらないで下さい」

 

笑顔で告げたら益々顔が険しくなった。なんだよ、フレンドリィにいこうぜ?暫く見つめ合っていたが、不意にダグラス大佐は溜息を吐いて首を振った。

 

「私も狸を随分やっていますが、貴方の方が一枚上手なようだ。降参です、お答え頂きたい、我々に何をさせるおつもりか?」

 

え?イタリア半島攻略の支援だけど。つうかその辺りの指令は欧州方面軍司令部からもらってんじゃないの?

 

「何をも何も、あなた方にして頂くことは司令部から指令が届いているかと認識していましたが?」

 

「惚けないで頂きたい。私がダイクン派でザビ家から疎まれているのはご存知の筈だ。その私が率いる部隊にこれだけ便宜を図ったと知れれば貴方の立場も悪くなるだろう。そこまでする以上指令以外に何かやらせたい事がある、そう考えるのが自然でしょう?」

 

頭良いとそこまで考えちゃうんだね。

 

「そこまで深い考えはありませんよ。少し恩を売って反感を抑えられたら僥倖、くらいの浅知恵です」

 

正直キシリア閥の中だと俺もう結構微妙な立ち位置だしね!キシリア様が目を掛けてくれてなかったら、とっくに何処かの辺境基地に左遷されてると思う。

 

「解りませんな、冷遇されている我々に恩を売って貴方に何の得があるのです?」

 

ああ、もう面倒くさいなあ。

 

「むしろ優秀な部隊を機能不全にして何の得になるのか教えて頂きたいですな。私に言わせれば政治闘争など壺1つ分の価値もない。そういったことがやりたいのなら独立を勝ち取ってから存分にやられるが宜しい」

 

今はそんなこと言ってる余裕なんて無いでしょうよ。そう視線を送れば、面を食らった表情で息を呑むダグラス大佐。たく、どいつもこいつもお気楽だ。

 

「まだ信じられないと言うならこう考えては?悪辣な基地司令が物資不足やMSの不調を理由に作戦行動が消極的にならないよう、事前に逃げ道を潰したのです。精々渡した物資分暴れて頂きたい」

 

 

 

 

食えない男だ。素直にダグラス・ローデンはそう思った。キシリア少将の懐刀であるこの大佐の事だ。先ほどの言葉は無論本心ではあるまい。

考えられるとすれば、自身に恩を売り、それを足がかりにダイクン派を切り崩す、あるいはダイクン派そのものをキシリア閥に取り込もうという魂胆か。

正直借りは作りたくないが、はっきり言って部隊の方は限界に近い。ここで物資を受け取らないという選択は部隊が苦しくなるだけでなく、MS遊撃部隊は部隊の状況や戦局よりも思想を優先するなどという醜聞に繋がりかねない。そうなれば同じダイクン派からすら距離を置かれる危険がある。今ですら綱渡りの兵站なのだ、そうなれば早晩部隊は壊滅するだろう。

 

(始めから選択の余地のない選択肢か、あくどい事をしてくれる)

 

降参の意味を込めた握手を交わし、形だけの感謝を告げ部隊へ帰ってみれば、そこは既に基地司令の毒牙にかかった後だった。

殆どの隊員が久し振りに手に入った嗜好品を思い思いに堪能しており、主計に至っては陳情を遙かに超えた物資の補給に涙ぐみながらリストを持ってきた兵士に感謝を伝えている。今までの状況が状況だっただけに戸惑っているものも少なからず居るが、殆どは基地司令に好意的な感情を抱いているのは明白だ。

 

「お疲れ様です、大佐」

 

そう声を掛けてきたのは部隊の中核であるMS部隊長のケン・ビーダーシュタット少尉だ。横には秘書官のジェーン・コンティ大尉と整備班長を務めているメイ・カーウィン技術少尉もいる。ケン少尉は困惑顔、ジェーン大尉は眉間にしわを寄せ、メイ少尉は笑顔と反応は様々、その意見も随分と分かれていた。

 

「随分な対応ですが、一体どんな取引をなさったんです?」

 

「マ大佐はキシリア閣下の懐刀です、あまり借りを作るべきではないかと」

 

「ぴっかぴかのザクだよ!それも3機!でもどうせなら新型くれれば良いのにね?」

 

部下の反応を見て、ダグラスはため息を吐く。

 

(悪魔と契約する時の気持ちが分かった気分だ)

 

出来ることなら奪われる魂が自分のものだけである事を。ダグラスはそう願わずにはいられなかった。




流石基地司令!なんたる邪悪!

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